バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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18 捜索

 いよいよ戦争が始まった。

 そして開始から1分程で部屋の外が騒がしくなった。

 

『こらぁ! 開けなさい!! 鍵を閉めるのはルール違反よ!!』

 

 扉越しなんでちょっと分かりにくいが、この声は友香(ゆうか)のものだろう。相当頭に血が登っているようだ。

 

 坂本が分かりやすく『301号室に立てこもる』と宣言していたおかげで友香は確認もせずに真っ先にここに来た。完全に坂本の掌の上だな。

 

 

 今回の盗撮の件はFクラスの連中はあくまでも『怪しい』だけであり、確固たる証拠など無い。

 あったとしても、私刑なんて論外だ。

 尤も、これは俺が男だからそう感じるだけで女子だったらもっと別の考え方をするのかも……いや、御空でも同じ事言いそうだな。アレが特別なだけかもしれんが。

 

 そういう訳で、今回の件は明らかにFクラスに非は無い。少なくとも現状では。

 にも関わらずこうやって暴走しているというのは少々見苦しいな。

 

 俺がもうちょっとでも頑張って居ればこんな展開は止められたんだろうか?

 もし次の機会があるのなら……ちゃんと止められるような存在になりたいものだ。

 

 

 しばらく待つと鍵が回る音がした。それと同時に友香とCクラスの女子たちが部屋に雪崩れ込んでくる。

 

「つまらない事で時間を取らせないで! 今日こそあなたたちに引導を……って、根本くん!? どうしてここに居るの!?」

「友香、Fクラスの奴らを探しているなら連中はここには居ないぞ?」

「そんなはずは無いわ! この部屋に立てこもるって話を聞いていたし、ちゃんと入っていく姿も確認したわよ!」

「つい数分前までこの部屋に居た事、そして扉から出なかった事も事実だ。

 あろうことか窓から出て行ったからな」

「は? ま、窓……? ここは3階よ!?」

「あいつらならそれでも飛び降りかねないが……そこはちゃんとロープを使っていた。今頃1階のどっかの部屋に居るだろう」

「どっかの部屋って、どこよ!?」

「俺もそこまでは聞いてない。虱潰しに探すしか無いだろう」

 

 坂本が御空に頼んだ事の1つ目は『Bクラス男子の部屋の窓を全て開けておく事』だったらしい。

 食堂や浴場等の施設は1階や地下にあるので、そこに近い部屋はAクラスとBクラスが独占していた。

 坂本はAクラスも味方に付けていたみたいだから今1階の窓はほぼ完全に開いているはずだ。その中のどこかなんて全く分からない。

 

「根本くん、どうしてそんな事を知ってるの? まさかアイツらに協力して……」

「俺の事よりも、坂本を探す方が先だろ? さぁ、早く行くといい」

「……それもそうね。後で絶対に話を聞かせなさいよ!」

 

 そう言い捨てて友香たちは部屋を後にした。

 その気になればもうちょっと時間稼ぎができただろうが、代表の居場所を自力で探すようには誘導できた。こんなもんで十分だろ?

 後は頼んだぞ。我らが副代表様。

 

 

 

 

 

 

「……ヒマだね」

「そうだな」

「……戦争中じゃというのにこんなにのんびりしてて良いのかのぅ?」

「いいんじゃないか、別に」

「……トランプがあれば暇つぶしくらいはできただろうにな。

 アレって5デッキも使う必要あんのか? 1個くらい余るんじゃないか?」

「……さぁな」

 

 私が必死に作業している間、Fクラスの人達はヒマそうにしながらも好き勝手話していた。

 そんなにヒマなら手伝って貰いたい気もするけど今私がやっている作業は他人がおいそれと手出しできるような代物ではない。

 中途半端な覚悟で手出しされて失敗されたら泣く事になるからFクラスの皆さんの対応は正しい対応と言える。言えるけどさ……

 

 

 しばらくすると廊下の方からバタバタという足音が聞こえてきた。私の予想ではCクラスの人達は虱潰しに部屋を回るか、あるいは一直線にここに来るか。

 どちらであっても問題ない。間もなく扉は開かれるだろう。

 タイミングを見計らって……3・2・1……今!

 

『失礼しま……えっ?』

 

 名前も知らないCクラスの女子が扉を開ける直前に、組んでいた10段を越えるトランプタワーを揺すって、崩した。

 扉を開けた彼女が目撃したのはパラパラと崩れ落ちるトランプ。

 あー、ここまで組むの大変だったのになー。やってらんないわー。落とし前付けてもらわないと。

 

「……あなた、良い度胸ね」

『ひぃっ!? ご、ごめんなさい!』

「あなた達が戦争をするのは勝手だけどねぇ……人に迷惑がかからないようにやりなさい!!

 廊下を走るの禁止! いきなり扉を開けるのも禁止!! サッサと全員に通達しなさいっ!!!」

『は、はいっ!! すいませんでしたっ!!!』

 

 大声で言い放ってやったので情報はあっというまに伝わるだろう。単純に調査ペースが落ちるし、この部屋は近付き難い部屋として扱われる。しばらくは時間が稼げるでしょう。

 さて、トランプタワーの再建でもしましょうか。あわよくば同じ手で時間を稼ぎましょう。

 

「うわぁ……力技だぁ……」

「力技だが有効な手だ。怒っている人間ほど話したくない存在は居ない。

 明確に『侵入禁止』を宣言すればルール違反だが、相手が勝手に近付きにくいと感じる分には全く問題ないというわけだな」

「普段の試召戦争ではこういった手は使えぬのかのぅ?」

「似たような事は不可能ではないが……かなり厳しいな。

 この部屋の構造……入り口からだと部屋の隅まで視線が届かないからこそ俺たちが隠れられている。

 それに、本来はもっと大人数でやるもんだしな。隠れるなんざまず無理だ」

「代表1人を隠すくらいはできるのではないかのぅ?」

「それこそ無理だ。戦争中は代表の位置が常に公開されている。

 今だって小山が気付いていないから隠れられているだけだ。気付かれたらアッサリ乗り込まれる」

「なるほどのぅ……」

「……どうでもいいけど、御空さんがやたら高いトランプタワーを高速で組み上げてるのはスルーなんだな」

 

 流石に場所を断定されたら止めるのは厳しい。いやまぁ不可能ではないんだけどね。

 でも、これで私の仕事は十分果たした。そうでしょ? 坂本くん。






「お~、やってるな~」

「この貸しは利子を付けて返してもらうからね」

「やれやれだな。
 ……根本も働いてるみたいだな」

「ええ。代表は君達の部屋の鍵締めとロープの処分をやってもらったわ。
 処分って言っても、窓から投げ捨てただけだけど」

「……そもそも何故ロープがあるのかというツッコミはアウトだろうか?」

「そ、そこはホラ、拷問器具が置いてある施設だし!」

「……まぁ、頑張って調達したとしておこうか」

「そうよ! 私としては代表にはもうちょっと雑談で時間を潰してもらいたかった気もするんだけど……小山さんにクールダウンさせる暇を与えないっていう意味ではサッサと切り上げるのもアリなのよね。悩ましい問題だわ」

「そしてお前の方は……トランプタワーか。
 宮霧も突っ込んでいたが、お前手先器用だな」

「……知ってる空凪くん。この学園ではね? 手先が器用じゃないと高得点なんて取れないのよ」

「…………そう言えばそうだったわ。愚問だったな」


「では、次回もお楽しみに!」
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