バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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20 暗殺者の予定

 今回の戦争で僕がやるべき仕事は『敵の代表である小山友香の暗殺』だ。

 クラス代表というのは大抵は自陣の安全な所に引きこもって指示を出している。暗殺に限らずちょっとした事故で戦死したら目も当てられないから妥当な判断だ。

 そんな防備の堅い陣地に侵入して代表を葬るのが僕の役目なのだが……

 

「……アレってどう思う?」

「……ちょっとマズいんじゃないかしらね……」

 

 僕の隣に居る木下姉に疑問を投げかけてみたが、どうやら同じ意見のようだ。

 僕と木下姉の視覚に狂いが無ければ、どう見ても小山が前線に出ている。

 普通なら戦争をアッサリと終わらせられるチャンスができると喜ぶ場面なのだが……今の状況を考えると全く喜べない。

 何とか小山を引きこもらせる方法があれば良いんだがな。

 僕が前線に出れば点数でビビらせて相手に引っ込んでもらう事は不可能ではないかもしれないが……それだと暗殺ができなくなる。

 雄二の命令では機会があるまで待機との事だが……仕方あるまい。

 

「……ちょっと行ってくるわ」

「えっ? どこに? ちょっと!?」

 

 

 

 

 

 

 追ってくるCクラスの奴らから逃げ回る。ここまでは予定通り。

 問題なのは……小山が先頭に立って突っ走っている事だな。

 試召戦争としては明らかに愚策だ。だが、あいつにとっては試召戦争ではないんだろうな。

 ……理由はどうでもいい。どうするべきか。

 

「坂本くん。大丈夫?」

「ん? ああ……って、お前はっ!?」

 

 走っている俺に平然と併走して語りかけてきたのは見知った女子の姿だ。

 

「えっ、剣の妹……あれ? 姉だっけ? 空凪さんじゃないか!」

「姉よ。ちゃんとその粗末な脳味噌に刻んでおきなさい。

 それはそうと坂本くん。当初の予定と随分ズレてるように見えるけど?」

「ああ、その通りだ」

「私の行動は予定通りで大丈夫なの?」

「…………」

 

 コイツの予定か……コイツの予定なぁ……

 確かに想定外の事が発生しているが、まだ何とかなる範囲内だ。

 

「……まだ大丈夫だ。本当にヤバかったら作戦なんて無視しても構わないが、まだ狙える。

 だからお前は予定通りに行動しててくれ」

「……おーけー。じゃ、頑張ってね」

 

 ……あの様子なら向こうの方は大丈夫そうだな。後はこっちで何とかするだけだ。

 小山を引きこもらせるにはどうすれば良いか。いくつか選択肢はあるが、手っ取り早いのは危機感を抱かせる事だ。

 前線に居たら危ないぞと思わせることに成功すれば無事に引きこもってくれるだろう。

 その為には……

 

「秀吉、パス!」

「む?」

 

 さっきから腕に装着していた白金の腕輪を秀吉に渡す。

 コイツの効果は『召喚フィールドの作成』であるが、教師のフィールド作成と違って召喚を同時に行う事はできなくなるというデメリットを持つ。

 だから戦力が一番低い奴に使わせるのが望ましい。

 ……明久と康太も五十歩百歩なんだけどな。秀吉が安定しているのに対して、こいつらは特化した科目はとことん高い。やや運任せだが相手を脅す効果はこっちの方が高いだろう。

 ちなみに、宮霧は実技科目まで含めて安定して高い。Fクラスにしては、だが。

 

「雄二よ、これをどうするのじゃ?」

「少し走るペースを落とす。そうすりゃ数人だけ追いついてくるはずだ。

 俺が合図を出したらフィールドを展開してくれ」

「むぅ……大丈夫なのかのぅ? 相手はCクラスじゃろう?

 雄二がやられてしまえば終わりじゃぞ?」

「俺はいきなりは召喚しない。まずは明久と宮霧が召喚。

 科目を確認してから康太も召喚してくれ。点数が一桁の科目は召喚しなくてもいい」

「おいおい、吉井は回避が上手いからってのは分かるけど、オレは捨て駒か?」

「お前は全科目で安定してるからな。即死しなけりゃ十分だ」

 

 白金の腕輪で生成されるフィールドの科目はランダムだ。実際に召喚して点数が表示されるまでは分からない。

 康太にとって極端に点数の低い科目が選ばれていらアッサリと死ぬので、先に即死はしないであろう2人を出して科目を確認してから召喚するかを決める。

 

「っと、どうやら来たみたいだな。秀吉、やれ!」

起動(アウェイクン)!」

「Fクラス吉井明久が勝負を挑む! 試獣召喚(サモン)!」

「同じく宮霧伊織が挑ませてもらう。試獣召喚(サモン)

 

 明久達の召喚獣が出現する。

 特に返事も無く3秒が経過して、追いついて来た2人の女子の召喚獣が強制召喚された。

 何故返事が無かったか、その理由は見れば分かる。

 

『ゼェ、ハァ……や、やっと追いついた……』

『よ、ようやく観念したのね……ハァ、ハァ……』

 

 俺たちはまだまだ余裕があるのに対し、相手は息も絶え絶えだ。

 召喚獣バトルにおいてもかなり有利になるな。

 

 

  [フィールド:化学]

 

Fクラス 吉井明久 41点

Fクラス 宮霧伊織 89点

 

Cクラス 161点

Cクラス 165点

 

 

 化学、か。なら問題ないな。

 

「康太、俺たちも召喚するぞ。試獣召喚(サモン)!」

「…………試獣召喚(サモン)

 

 

Fクラス 坂本雄二 192点

Fクラス 土屋康太  42点

 

 

「あっ、ムッツリーニに1点だけ負けたっ!」

「…………」フッ

「いや、オレはまだしも代表やCクラスから見たら五十歩百歩だからな?」

「お前ら、無駄口叩いてないで増援が来る前に片付けるぞ!」

 

 という訳で4人で袋叩きにしてサクッと倒した。

 相手が疲弊してたおかげでアッサリと終わった。

 鉄人がどこからか現れて戦死した2名を拉致って行ったが、それをのんびりと見送る余裕は俺たちには無い。

 

「こら待ちなさい盗撮犯ども!!」

「秀吉! 腕輪を外せ! 逃げるぞ!!」

「うむ!」

 

 白銀の腕輪は基本的には一度使うと時間切れになるまで効果が持続する。教師達は自由にオンオフできるのにな。

 だが、腕輪を外す事で強制終了する事が可能だ。コストは変わらないのでちょっと勿体ないけどな。

 

「雄二、これ繰り返してたら勝てるんじゃない?」

「いや無理だろう。白銀の腕輪はそこそこ点数を消費するし科目はランダムだからバクチ要素が強い。

 それに、今ので警戒される。バラバラにならないように3~4人で固まって行動するようになるだろう」

「う~ん……上手く行かないものだね……」

 

 そして小山が警戒して引きこもってくれたら良いんだが……次の手を考えないとな。

 






「なまじ頭が良い相手よりも中途半端なバカの方がよっぽど厄介って言うね」

「バカっていうのはバカにできないからなぁ……」

「戦況はちょっと劣勢みたいね。いやまぁ、たった5人で25人相手にしてる時点で劣勢と言うか白旗上げるレベルだけど」

「その状態から比較して考えるなら大分優勢と言える……言えるけど意味が無いか」

「そうね。現状が劣勢。それ以上でもそれ以下でも無いわ」

「ま、雄二なら何とかしてくれるだろ!」

「……フラグかしらね。

 では、次回もお楽しみに!」
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