バカ達と双子と学園生活 Take2   作:天星

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21 運命の選択肢

「…………こっちはとっくに準備完了しているんだけどなぁ……」

 

 僕の視線の先には小山が居る。雄二の姿は見えないが、声は聞こえる。そんな場所に今僕は居る。

 

 女子と男子には体力差がある事は説明するまでも無い事だが、それでも限界はある。力技の逃走が苦しくなってきたと判断した雄二は籠城作戦に切り替えたようだ。

 ただでさえ狭い部屋の入り口だが、部屋の中の畳を使って更に狭くしている。立体映像っぽい存在である召喚獣にとって壁は無いに等しいが、畳は床として作られているので障害物足り得るようだ。

 そんな小細工に加えて明久の操作技術があれば1時間は耐える事が可能だろう。

 

 しかし、暗殺目標である小山もずっと前線に居るのでは意味が無い。

 一応、本当にヤバくなったら独断で動いて良いとは言われているので僕が乱入すればこの状況を打破できる可能性はあるが……その後の勝ち筋が見えないから無理だな。

 

 他の手段としては……例えば今サボっているFクラスの連中が参戦すれば危機感を覚えて流石に引いてくれると思う。

 尤も、危機感を覚えるのは小山だけでなく他のCクラス男子達も同様。間違いなく参戦してくるだろう。

 小山だけに影響を与えるには動かす人数は最小限でなければならない。そして、その最小限の人数で影響を与えられる程の力を持つ存在は限られている。

 

「……良くも悪くもあいつ次第か。あいつにとっては運が良かった……と言えるか」

 

 もうしばらく静観するとしよう。戦局が動くまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

  [フィールド:数学1A]

 

Fクラス 吉井明久 32点

 

Cクラス 172点

 

 

「代表、どーすんだこれ」

「……とにかく凌ぐしか無い。明久がヤバくなったらフォローに回ってくれ」

「それしか無いかぁ。りょーかい」

 

 開始時点で人数に5倍の開きがあり、各々の戦闘力でも点数だけを見るなら倍以上の戦力差がある。

 かなり単純に考えても10倍の戦力差があるにも関わらずここまで保っている。それだけで十分に驚嘆に値する。

 だからここで負けても代表を恨む事はあるまい。元々最低辺な設備が更に悪化するだけだ。オレは気にしないさ。

 

「……もしもだが、オレも吉井も、土屋も抜かれたらどうする?」

「そこまで追い込まれたら建て直しは不可能だ。逃げ出す事ももうできないし、潔く小山に特攻してやるさ」

「なら、何としても保たせないとな」

 

 戦争に介入できる存在が限られている以上はここからの逆転の目は薄い。

 今日という日が終わるまで耐えれば引き分けの目は……いや、無いか。あの小山が大人しく諦めるようには到底見えない。

 だが、仕切り直す事はできるだろう。ひとまずはそこを目標に耐えるとしようか。

 

 

 ……そう、思っていた。

 

 

「ようやく、ようやく追いついたわよアキィ!!」

「美波!? 助けに来てくれた……わけじゃなさそうだね……」

「皆退いて! ウチがケリを付ける! 試獣召喚(サモン)!!」

 

 

  [フィールド:数学1A]

 

Fクラス 島田美波 199点

 

 

 試召戦争は他クラスからの介入はルールで禁止されているが、同士討ちを縛るルールは存在しない。

 実はこれが全て演技で、増援に来てくれたとかだったら凄く有難いんだが……そんな事は無さそうだ。バカで鈍感な吉井でも分かるくらい殺気立ってるし。

 

 島田さんの数学の点数は、Bクラス上位並って所か。さっきまでとはワンランク上の相手になる。

 それに加えて、Fクラスとして培ってきた召喚獣の操作経験もある。吉井でも厳しそうだな。

 

「吉井、交代するか? 休む時間を稼ぐくらいはできると思うけど」

「大丈夫。まだ戦えるよ!」

「……そっか。すまないな。頼りきりで」

 

 確かに戦況は変わったようだ。悪い方向に、だが。

 これ以上変な事が起こらないで欲しい。

 ……けど、それは儚い願いだ。島田さんが来たって事は必然的にもう1人も……

 

 

「ぜぇ、はぁ……ま、間に合った! ようやく追いつきました!

 み、皆さん逃げ回りすぎですよ!!」

 

 

 当然のように、彼女は来た。

 Aクラス並、いや、Aクラス上位レベルの点数を持つ化け物染みた点数を持つ彼女、姫路さんが。

 

「瑞希、ようやく来たのね。さぁ、一緒に戦いましょう!」

「……すいません、ちょっとやりたい事があるので一旦戦闘を止めていただけないでしょうか?」

「え? いいけど……」

 

 島田さんも、他のCクラスの生徒も召喚獣を後ろに下がらせた。

 その空いたスペースに姫路さんが歩み出る。

 

「吉井くんに……いえ、皆さんにお訊ねしたい事があるんです」

「こんな時に!? 一体何を?」

「皆さんは……今回の騒ぎにおける盗撮の犯人ですか?」

 

 随分と今更な質問だな。一体何があったんだ?

 姫路さんからの質問の意図を考えてみる。が、その前に吉井が答えた。

 

「勿論、違うよ! 僕達は盗撮なんてしていない!」

 

 土屋なら別件でやってる気はする……というのは今は黙っておこう。

 

「この期に及んでシラを切ろうって言うの? ホント良い度胸ね。

 瑞希、サッサとやっちゃいましょう」

「……そうですね。真相が分かったわけではありませんが、私がすべき事は分かったと思います」

 

 そう告げた姫路さんは2~3歩前進し、そしてゆったりした動作で後ろを向いた。

 

「……瑞希?」

「美波ちゃん、ごめんなさい。

 これが、私なりに悩んで決めた選択なんです。

 さぁ皆さん、構えてください。Fクラス姫路瑞希が、ここに居るCクラスの皆さん全員に試験召喚勝負を挑みます! 試獣召喚(サモン)!!」






「お~、姫路さんの見せ場だね!」

「この色々と異常な試召戦争の中で一番輝く場面で参戦したな。
 尤も、本人にそんな意図は無いだろうが」

「筆者さんの意図としても『姫路さんは体力少ないから一番最後に出てきた』ってだけなのよね。
 あえてケチ付けるなら島田さんがちょっと遅い気がするけど……それ以外は本当に偶然なのね。
 流石は原作メインヒロインと言うべきかしら」

「本作の初稿を書いてた時も本当に意図せずにこの立場に収まってたからな……いや、ホント凄い奴だよ」


「では、次回もお楽しみに!」
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