姫路参戦。しかも味方として。
この思いも寄らない幸運に対する代表の反応は意外なものだった。
「……はぁ……」
「えっ、どしたの代表。これって逆転のチャンスだよな?」
「ああ、うん。姫路が来てくれた事は良いんだ。凄く有難い。
ただ、うちの副代表を名乗るバカについて思いを馳せていた所だ」
「?」
「見てりゃ分かる。
あ、明久、姫路にバトンタッチして離脱してくれ」
「え? うん、分かった」
吉井がフィールドから出た事により残ったのは姫路さんと島田さん、あとCクラスの女子数名になった。
「瑞希っ、そんな……どうしてなのよ!!」
「……私はただ、信じたいと思っただけです。さっきの吉井くんの言葉を」
「あんな言葉を!? 口先だけなら何とでも言えるじゃない!
それに、アキ達が犯人じゃないなら一体誰だって言うのよ!!」
「そんな事は分かりませんよ。だけどそんな事は関係ない。
私が信じたいと思った。それだけでここに立つ理由としては十分です!!」
「っ!!!」
姫路さんが勢いよく啖呵を切った。
味方になったフリをしただけの可能性も疑って注意深く観察してたけど流石にここまで演技って事は無いだろう。
……無いはずだ。
しかし、どうする気だろうか? 流石の姫路さんでも1人でCクラス数名の相手は厳しそうだ。
召喚獣の腕輪とかがあればかなり強そうだけど……
[フィールド:数学1A]
Fクラス 姫路瑞希 384点
調子が悪かったのか足りていないらしい。少々苦しいかな。
「美波ちゃん、退いては……くれなさそうですね。
であれば、覚悟を決めて下さい。あなたが吉井くんを傷付けようとするのであれば、私はあなたを倒します」
「……そう、分かった。どうしても瑞希はそっちに回るのね。
だったら、戦うしか無い。行くわよ!!」
そして、島田さんとCクラスの人達が再び動き出した。
さっきまで吉井の召喚獣が居た狭い廊下部と違い、姫路さんは部屋の外の廊下に居る。
一対多で囲まれて袋叩きにされる位置。しかしそれはこの上なく有利に働いた。
「それでは、使わせていただきます。セット!」
あまり聞き覚えの無い言葉と共に召喚獣に些細な変化が現れた。
[フィールド:数学1A]
Fクラス 姫路瑞希 384 → 374点
僅かに召喚獣の点数が削れ、それとほぼ同時に召喚獣の腕に腕輪が現れた。
「お願いします! 焼き払ってください!!」
そして、召喚獣が熱線を放ち、直戦上に居た数体の召喚獣を消し炭にした。
「……代表、あの腕輪って……」
「『白の腕輪』の効果だ。点数10点を引換に召喚獣が点数に関わりなく腕輪を装着する代物だな。
ほら、さっきから姫路が左の手首に着けてるだろ?」
「……あっ、ホントだ」
真っ白な安っぽいプラスチック製の腕輪。
かなり目立たないそれが、確かに姫路さんの手首にあった。
「……あれ? アレって副代表が持ってたヤツだよな?」
「ああ。きっと剣が渡したんだろうな。
あいつ、報連相を何だと思ってるんだろうな……」
「……そっか、それでさっきあんな憂鬱そうにしてたのか」
下手したら敵に回ってた可能性も十分にある姫路にアレを渡すのは諸刃の剣だ。
味方になるという確信があったのか、それとも何も考えていなかったのか。
……あの副代表の事だから後者であっても全く不思議ではない。
「これで一安心だな。後は勝ち筋に持っていくだけだ。
いくら小山でも姫路の前に立ちたいとは思わないだろう」
「ん~……でも、あんだけ腕輪を連発してたらすぐに枯渇しないか? 大丈夫か?」
「それも問題ない。別の科目の教師を既に呼んでいる」
「いつの間に!?」
「ついさっきだ。ほら、やってきたぞ」
オレの耳に届いたのはドタドタと廊下を走る音。そして野太い声。
「戦死者は補習!!」
「木内先生! フィールド消してくれ!
鉄人っ! フィールドを張ってくれ! 科目は現国!!」
「呼んだってこういう事かよ!?」
確かに、相手を戦死……いや、味方でも誰でも良いから戦死させる行為は鉄人を呼ぶ行為だ。副代表が昨日も一昨日もやってたみたいに。
そして、補習講師である西村先生は学年主任の高橋先生と同じくあらゆるフィールドを張る権限を持っている。
センター試験に則った10科目に加え、普段は選択しない科目、そして実技科目。合計で実に20科目にもなる。
2年生の前期までの授業に含まれていない科目に関しては流石の姫路さんも良い点数は取ってない、と言うか試験すら受けてないだろうが、使える科目が半分あるだけでも十分だ。
科目変更には相手か味方のいずれかが全滅する必要があるが、姫路さんなら殲滅は普通にできる。できなかったとしてもオレとかにバトンタッチして自殺すれば良いだけの話だ。オレ達の命が尽きる前にCクラスの命運が尽きるだろう。
「坂本、鉄人と呼ぶな。
ほら、張ったぞ」
「サンキュー鉄人!」
「……フィールドを消しても良いんだが?」
「ぐっ……くそっ、どうすれば……」
「いや、普通にお礼を言えよ!!
ありがとうございました! 西村先生!!」
「……まあいいだろう」
西村先生が呆れたような顔で代表を見る。
学校の問題児である代表達が西村先生と相性が悪いのは知ってるけどこういう時くらいは普通にしててくれよ。
「行きます、
[フィールド:現代国語]
Fクラス 姫路瑞希 392 → 382点
再び姫路が召喚し、更に白の腕輪を使用して戦闘準備を完全に整えた。
この点数を見てもなお小山が突っ込んでくるなら普通に撃退して戦争に勝てそうだな。
「くっ……全軍撤退! 急いで!!」
……ま、そうなるな。
後は副代表が何とかしてくれるらしい。続報を待つとしようか。
「撃退終了だな。後は小山を倒すだけだ」
「白の腕輪が輝いてたわね~。
……外見は安っぽいプラスチックだけど」
「白の腕輪は筆者の『何かオリジナルの腕輪を作ってみたい!』という願望から生まれた代物だ。
作成当時はここまで活躍するとは一切考えていなかったらしい」
「……そんな経緯なのにここでは大活躍してたのね」
「テキトーに作った物が大活躍するって結構あるからな。この駄作者の小説では」
「……ああ、確かに」
「より正確には、筆者が適当に用意した状況に対して僕がどういった行動を取るだろうかと考えながら書いているらしい。
白の腕輪なんて物があったらこういう風に使うだろうな、と」
「な、なるほど……」
「この人ならこういう行動をする、あの人はこうなる。
そのシミュレートの繰り返しで状況が変化していき、物語が紡がれる。
そんな感じだな」
「では、次回もお楽しみに!」