お色気の術を極めたら都市伝説扱いされるって誰が予想出来る?   作:榊 樹

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九喇嘛の尾獣玉々が人気過ぎて笑った。

うちは一族と日向一族が好きな方は見ない事をおすすめします。


全てを見破る眼と見通す眼・・・その先に見たモノは

俺にとって、それは家族以外に対して初めて抱く感情だった。いや、家族にすら抱いた事は無いし、これからも決して抱かないような、そんな特別な感情。

 

その時の光景を思い出すだけで胸の奥が焼き尽くされる程に燃え上がり、一瞬だけだがそれ以外がどうでも良くなった。母なんて足元にも及ばない。この世のあらゆる存在を超越し、完成され尽した美がそこには有った。

 

目が離せなかった。未だ幼い身であったにも関わらず、心の中にはドス黒い感情が渦巻く程にソレに魅了された。

 

あれが欲しい。

俺だけのモノだ。

誰にも渡したくない。

 

 

その感情に従い、手に入れる為に無意識に手を伸ばし━━━━━気付けば、布団の中に居た。

 

傍らには目が腫れている弟が俺に身を預けて眠っている。何が起こったのかがよく思い出せない。

 

部屋に入って来た母さんが目を覚ました俺に気付いて、慌てて駆け寄って来た。その音を聞いてサスケも目を覚まし、泣きながら抱き着かれた。

 

 

未だに状況は分からないが取り敢えず、心配を掛けた事は分かったので大丈夫と二人を慰める。落ち着いてから何があったのかを聞けば、森の中で血塗(ちまみ)れになって倒れていたらしい。

 

それを聞いて俺は驚いた。恐らく、記憶にあるあの人を見ている時にヤラれたのだろうがまるでそんな気配はしなかったからだ。

 

 

他のモノが眼中に無い程に集中していた?

だが外傷は倒れた時に負ったと思われる痣しか見当たらない。

ならば、何らかの術か?

だが血塗れになる程の術を掛けられて、その時だけでなくこうして思い返してもまるで分からないのもおかしい。

 

 

そうして悩んでいると心配そうに覗き込むサスケと驚いたように口許に手を当てている母さんに気が付いた。どうしたのか、と聞けばサスケに目が変だと言われ、母さんから鏡を渡された。

 

 

そこには瞳孔の周りの輪に勾玉模様が3つ浮かんだ真紅の瞳、写輪眼が映っていた。

 

 

 

 

その日の夜に父さんに呼び出された。写輪眼の開眼による賛辞を受け、何があったのかを聞かれた。俺はそれに対し、本当の事を言わなかった。

 

覚えていない、心当たりが無いとそう嘘を吐いた。実際、あの後に何があって血塗れになったかなんて分からないし、どうして写輪眼が開眼したのかもよく分からない。

 

だけど、幾ら尊敬している実の父親でもこれだけは言えない。サスケにも心配させてしまうがアレの存在が他者に知られるよりはマシだ。例え弟だろうと、いや弟だからこそ教えてなるものか。

 

 

「イタチ」

 

「ん?母さん、どうかした?」

 

「何か、あったんでしょ?」

 

「ッ!?」

 

 

ただ数日後に何故か、母さんだけには隠しているとバレた。母さん曰く、女の勘だから父さんもサスケも気付いていないと言われ、ホッとしたのだが言わなければ、バラすと脅されてしまった。

 

でも、母さんにバレた事は別にショックでもなんでもなかった。寧ろ、ちょっと嬉しいような、よく分からないが負の感情では無かったと思う。

 

だが父さんにだけは知られたくない。それだけはどうしても嫌だったので嘘を吐くのではなく、観念して少し(ぼか)して本当の事を話した。

 

 

「ある人に・・・出会ったんだ」

 

「人?」

 

「今でも鮮明に思い出せる程に綺麗な人だった。思い出すだけで胸が締め付けられて、もう何度も夢に見ている。でも、すぐそこに居るのに幾ら手を伸ばしても届かない。無駄だと諦めようとしても時間が経つ程にその気持ちは強くなる。・・・母さん、俺は自分が分からないんだ。この気持ちがなんなのか。よくないモノだと分かっていても・・・抗う事が出来ない。抗いたくない」

 

 

そう言う俺に母さんは微笑ましそうな眼差しで「あらあら」と言うばかり。無性に腹が立って柄にも無くムッとしてしまうと、しゃがんだ母さんにソッと抱き締められ頭を撫でられる。

 

何をしているのかは分かるが、何の為にしているのか分からない。だが先程から嬉しそうに笑う母さんから、この気持ちの正体を明かされた。

 

 

「イタチ。それはね、恋っていうのよ。決して『よくないモノ』なんかじゃないわ。確かにソレは時に美しかったり、醜かったりするけどね、その気持ちだけは『悪いモノ』と決め付けて捨ててはいけないわ。必ず、大切にするのよ」

 

 

その言葉に全てを理解出来たとは言えない。だけど、この気持ちに名前を与えられ、雷に撃たれたような、そんな感覚がした。

 

家族を思うのも悪くないが、それ以上に向き合ってみればこの感情もそんなに悪くない。寧ろ、心地良いとすら感じる。写輪眼のお陰か、あの時の光景はいつまで経っても色褪せる事すら無い。

 

逢いたい、とそんな想いが日々強くなっていく。暗部に入り、部隊長となった頃に上層部が血眼になって探している『女狐』という存在を知った。

 

それが俺の探し求めている存在と同じだと気付いたのは、カカシさんに『女狐』の真実を教えて貰った時だ。そして、その日から俺も女狐捜索に関わるようになった。と言っても三代目率いる里の上層部ではなく、同じく探していたダンゾウ様の下でだがな。

 

情報提供が無ければ、あのエロジジイ共に月読で永遠に拷問を与えてやる所だった。

 

 

女狐捜索を始めても父さんに気付かれた様子は無い。約束を守ってくれた母さんに安堵するが、外から帰って来る度に「どうだった?」とニヤニヤしながら聞いて来るのは止めて欲しい。

 

サスケにも教えたくないから、せめてアイツの居ない所で聞いてくればいいのに・・・全く、嫉妬した弟も可愛いがなんとも複雑な気持ちだ。

 

任務と嘘を吐き、サスケと遊ぶ時間が殆ど無くなったのは少し反省している。すまないな、サスケ。お前にも教える訳にはいかないし、どうしても見付け出さないといけないんだ。将来はお前の義姉になる存在なのだから。

 

 

だが彼女とはそれっきり二度と会う事は無く、あの日を迎える事となった。

 

 

 

 

眼下に両親が背を向けて座っている。覚悟したその背にやはり、敵わないなと思ってしまう。刀を握り直し、俺も覚悟を決める。

 

 

「父さん・・・母さん・・・・・・俺はッ・・・」

 

「・・・分かってるわ、イタチ」

 

「・・・イタチ・・・最後に約束しろ」

 

「!」

 

 

後悔に耐え切れず、懺悔の言葉を口にしようとして、それを言わせないかのように言葉を被せられた。それどころか、こんな俺を理解してくれて約束する程に信頼までしてくれる。

 

 

「サスケの事は頼んだぞ」

 

「・・・・・・分かってる」

 

 

握り直した刀が震える。決めたつもりの覚悟が揺らぎそうになる。まだやり直せるのではないか?まだどうにかなるのではないか?と未練が頭を駆け巡る。

 

サスケを辛く苦しい道に歩ませてしまうのが・・・何よりも恐ろしい。

 

 

「恐れるな・・・それがお前の決めた道だろ。お前に比べれば、我らの痛みなど一瞬で終わる」

 

 

━━━━考え方は違ってもお前を誇りに思う

 

 

「・・・・・・ッ」

 

 

涙が溢れ出す。止めようとすればする程に流れ出てくる。こんな親不孝者を誇りに思うなんて。例え嘘だろうと救われた気がするから。

 

 

「あ、じゃあ折角だから私とも約束しなさい」

 

「え・・・あ、はい」

 

 

序のように最後の約束を取り付けてくる母さんに困惑するが、すぐ我に返る。あ、涙引っ込んだ。

 

 

「イタチ。あの日に言った事、覚えてる?」

 

「・・・はい」

 

「・・・?」(何の話だ?)

 

 

『あの日』、恐らく俺が自身の気持ちを母さんに打ち明けた日だろう。未だに理解出来たとは言えないが、よく覚えている。

 

 

「ならいいわ。イタチ、これは母さんの教訓よ。初恋は実らない、なんて言うけど、そんなのは負け犬の遠吠え。私の子なら、万華鏡写輪眼を使ってでも堕としなさい。恋は惚れたら負けなんて事は無い。惚れなかったら、そもそも恋なんて始まらないわ。惚れて負けなら、相手をもっと惚れさせればいい。貴方にはそれだけの魅力がある。・・・母さんとの約束よ。絶対に堕としなさい。出来なかったら、あの世で月詠説教するわよ」

 

「・・・・・・それは・・・嫌だな・・・」

 

 

諦めたつもりは無かった。だけど、未だに何一つとして近付けていない現状に焦り、何処か傍観していたのかもしれない。

 

力強い母さんの助言に、もうそんな生温い気持ちは無くなった。

 

 

「・・・さぁ、もう言い残す事は無いわ。一思いにやって頂戴」

 

「・・・はい」

 

「・・・・・・」

 

 

もう、手に震えは無い。一太刀で終わらす為に目を逸らさず、刀をその背に殺意を持って振り下ろ━━━━

 

 

「ちょっと待て」

 

「!・・・父さん?」

 

 

あと数cmの所で父さんから待ったの声が掛かった。ここまで来て何を言うのか想像が付かず、ジッと見詰めてしまう。横で母さんも怪訝そうに睨んでる。

 

二人の視線を受け、父さんは重々しく口を開いた。

 

 

「イタチ・・・お前、好きな子が出来たのか?」

 

「え・・・・・・え?・・・あ、はい」

 

 

え、今聞く?死に際にそれを聞くの?

 

 

「そうか・・・・・・いつからだ?」

 

「『いつ』って・・・」

 

「いつから、その子を好きなんだ?」

 

「・・・写輪眼を開眼した時です」

 

「え、そんな前から?」

 

「アナタ、素が出てるわよ」

 

 

・・・早く殺してもいいだろうか?

 

 

「どんな子だ?綺麗系か?可愛い系か?俺の子だから、やはり綺麗系な気がするな。・・・もしや、最近写輪眼を開眼したあの茶髪の子か?なぁ、どうなんだイタチ」

 

 

・・・シリアスな顔で言う事じゃないと思うのは俺だけか?今、息子に殺されようとしてるのに、なんでこの人はこんなにもウキウキしてるんだろうか?

 

 

「・・・・・・言いたくありません」

 

「む、何故だ?恥ずかしがる事は無いぞ。どんな子でも父さんは歓迎する。お前の選んだ子だ。きっと立派な人に違いない」

 

「・・・嫌です」

 

「アナタ、早く殺されないとサスケが戻って来るわよ」

 

「分かってはいるが、やはり父親として息子の恋路は気になるものだ。特にイタチは何かと成長が早かったし、そう言った類の話も聞いた事が無かったからな・・・で、そこの所はどうなんだ?」

 

「言いません」

 

「どうしてだ!?」

 

 

言わない。死に際の願いだろうと絶対に言わない。早く斬ってしまおう。それがいい、そうしよう。

 

 

「ふんッ!」

 

「甘い!」

 

 

いや、『甘い!』じゃねぇよ!なに土壇場で白刃取りしてくれてんだ!何気に万華鏡写輪眼になってるし・・・さっきの格好良かった父さんは何処に行った!?

 

 

「父として、息子の将来は不安なものだ。たとえ、お前であってもな。あと、『息子さんを私に下さい』というのも体験してみたいんだ」

 

「アナタ、私の眼を見て」

 

「ん?すまないが、今は大事な男の話をしているんだ。幾らお前とて邪魔は━━━━━━」

 

 

『万華鏡写輪眼 幻術 "月読"』

 

 

バタリとその場に倒れる父さん。

ふぅ、と息を吐く母さんの右眼には勾玉模様が3つ浮かんだ写輪眼、左眼には中心に穴が空いた十字の手裏剣を軸に四方向に黒い丸が一つずつ浮かんだ万華鏡写輪眼と思われる眼が現れていた。

 

 

「本当に世話の焼ける人。助言はしても親が割って入ったらダメでしょうに。・・・イタチ、この人は私が抑えたわ。サスケももう戻って来るだろうから、早くしなさい」

 

「はい」

 

 

ザクッと倒れている父さんの急所に突き刺す。一瞬、痙攣した後に完全に力が抜けて動かなくなった。そして、父さんの傍で座った母さんも斬り殺す。

 

 

「ふふっ・・・これで・・・ずっと一緒よ・・・・・・アナタ・・・」

 

 

父さんに寄り添うように倒れた母さんが最後に万華鏡写輪眼で何かをして事切れた。母さんの瞳にはもう光すらも映っていなかったが、その顔は何処までも幸せそうだった。

 

・・・・・・父さんの顔は何故か俺が刺した時よりも酷く苦しそうで、まるで腹を包丁で何度も突き刺されたような顔をしていたが・・・・・・おかしいな。一発で決めた筈なのに。

 

 

◇◇◇

 

 

それはまだ二歳の誕生日を迎えて間も無い日の事だった。

 

父上が倒れた。

 

発見された時、血の海に沈んでいたらしい。外傷は無く、何者かに襲われた形跡も術の影響を受けた痕跡も無い。

 

原因は何一つとして分からないがその後も床に伏せる父上は度々、血の海に沈んだ。

 

消去法から原因不明の病であると判断された。俺も納得はいかなかったが白眼を持っている我ら一族ですら、何の証拠も手掛かりすらも得られない現状ではその判断に従うしか無かった。

 

原因不明の不治の病に父上は日々窶やつれていき、日向の天才と言われていた自分が何一つとして力になれない無力さが歯痒かった。

 

しかし、毎日血の海に沈む訳ではなく、調子がいい日に日向宗家である父上の兄上とそのご息女との面会を行った。

 

それは俺に呪印を刻む日でもあった。

 

最初はこの呪印が何なのか分からなかった。だが、あの日。ヒナタ様の修行を父上と共に見守っていたあの日に俺は悟った。この呪印の意味と父上の身に本当は何が起こったのかを。

 

父上の不知の病は病などではなく、この呪印の所為だった。確かに何かをされた形跡は無かった。しかし、同時に病に侵されている形跡も一つとして無かったのだ。

 

脳をかち割り、実際に殺す事すら出来る日向の呪印。その影響で一時的に何らかの損傷をし、あれだけの血を吐き出したのであれば、『原因不明の病』と宗家が決断を下した理由も誤魔化す為だと納得がいく。

 

それでも父上本人は飽く迄も自分は病なのだと言い張るから。きっと、それは俺に日向家への憎しみを抱かせない為なのだろう。だから、俺は父上の顔に泥を塗らないよう表向きは知らないフリをした。

 

しかし、雷の国の忍頭がヒナタ様を拐う事件が起こった事により、そんな父上の気持ちを踏み躙るかのように宗家はある決断を下した。

 

雷の国が突き付けて来た条件、日向ヒアシの死体を寄越せ、という理不尽な要求に対して、木の葉はそれを承諾し、父上をヒアシ様の影武者として差し出した。

 

腸が煮えくり返る思いだった。呪印により人生を縛られ、その身を文字通り削りながらも宗家の為に尽くしたにも関わらず、己の死に方すら決めさせてはくれないのか。

 

ほんの少し産まれるのが遅かったというだけで、こうまで差が出るものなのか。

 

 

己の宿命に絶望し諦めながらも、それでも強い怒りが、復讐心が自身を突き動かした。歴代でも最高峰の才能を持つと言われる自分の能力と宗家への怒りを原動力に俺は強くなった。

 

強くなって強くなって・・・・・・そうして負けた。(みな)が嘲笑い、実力の無かった落ち零れに俺は負けた。

 

もう何の為に生きていけばいいのか、分からなかった。実現出来ると微塵も思っていない日向宗家へのハリボテの復讐心で鍛え上げた己の力も所詮は落ち零れにすら劣る程度の物。

 

もういっそ、死んでしまった方が楽なのでは無いか。このまま日向の為に尽くす人生を歩んだとしてもその先に待っているのは脳裏に焼き付いた父上のような末路。

 

せめて、自身の死ぐらい自分で決めたい。

 

 

そう思った時、日向の現当主であり、父上をあのような末路へと導いた元凶であるヒアシ様が訪ねて来た。もしや、俺が死のうとしたのを勘付いて、都合が悪いから止めにでも来たのだろうか。

 

そんな何の根拠も無い邪推が頭を過ぎるがヒアシ様の用件は全く違った。

 

あの日、父上が死んだ前の日に何があったのか。その真実を知らされたのだ。何を今更、と思ったが渡された巻物に書かれた字は懐かしき父上の物だった。

 

少し疑念が残りつつも巻物を開いて読み解いていく。

 

 

『ネジよ。私に残された時間はもう僅かしか無い。その限られた時間を使い、伝えておきたいことがある』

 

(伝えておきたいこと?)

 

 

心当たりが無い。生前、父上からはそういった旨の話は全く聞かされていなかったから。何なのか、好奇心に従って続きを読み進める。

 

 

『ヒナタ様を拐おうとした雷の国の忍頭は逆にヒアシ様に殺された。だが、雷の国はヒナタ様誘拐を認めようとはせず、ヒアシ様が忍頭を殺した事のみを問題とし、木の葉にヒアシ様の死体を寄越せと理不尽な要求を突き付けて来たのだ』

 

 

それはあの日に起きた出来事であり、それからの顛末も俺が知っている物と相違無かった。だが、結果が同じなだけでそれまでの過程は真逆の物だった。

 

父上は己の意思で死んだ。最後の最後で自らの死に場所を見付ける事が出来たのだ。分家として怨んでも、兄弟として愛した兄の為に。そして、木ノ葉の里の為に自身の人生に終止符を打ったのだ。

 

 

「・・・父上」

 

 

土下座をするヒアシ様を見て和解したのだが、少し疑問が残る。父上の病について、全く明かされていなかったのだ。いや、恐らく呪印なのだろうが・・・病についても呪印についても一切の説明が無いのはおかしい。

 

もう一度読み返し、何かしらのヒントになり得る物が無いかを確認した。確認して確認して・・・そうして、終わりかと思っていた巻物にまだ続きがある事に気が付いた。

 

それは締め括られたと思っていた最後の言葉から、巻物数回転分程の空白が続き、その一文が綴られていた。

 

 

『ここから先はお前が、もう大人だ、立派な男だと自分自身に胸を張って言えるようになってから読むんだ』

 

(・・・?)

 

 

言葉通りに受け取るなら、大人は成人してから・・・男とはどういう事だ?俺は立派かどうかは兎も角、正真正銘の男だ。髪を伸ばしているが実は女とか、そういった趣味がある訳でも無い。単純に父上の真似だ。

 

この先を見れば意味が分かると思い、紐解いていくがまたかなりの白紙を空けて一言。

 

 

『本当に大人になったか?』

 

 

無視して捲ると再び。

 

 

『本当に本当に男になったんだな?』

 

 

はよ話せや。

 

 

『そこまで知りたいなら仕方が無い。これから話すのは私とヒアシ様しか知らぬ、私の病の秘密だ』

 

 

 

 

私の身をヒアシ様の身代わりとして差し出す事が決定した日の夜。私はヒアシ様と二人きりで最後の会話を交えていた。

 

 

「・・・なんの用だ?」

 

「なに、未だに決心が付いていない駄目な兄に話をしに来ただけだ」

 

「・・・・・・下がれ」

 

「ですが・・・」

 

「構わん。下がれ」

 

「・・・はっ」

 

 

ヒアシ様がお付に退出を促し、私は白眼で誰も居ないかを見渡す。確認が取れてヒアシ様の前に座れば、何事かと眉をひそめていた。

 

 

「そこまで重要な話なのな?」

 

「それは貴方が決めればいい・・・私の病の話だ」

 

「!・・・何か知っていたのか?」

 

 

日向一族が総力を結集して調べたのに何一つとして分からなかった病。何れは日向一族全体がその危機に脅かされるのではと危惧していたヒアシ様は目の色を変えた。

 

その勘違いに思わず、フッと笑みが溢れてしまう。

 

 

「これは病などでは無い」

 

「・・・なんだと?」

 

 

私の一言に怪訝な顔をするヒアシ様に懐かしむ様に一つ一つ説明していく。

 

 

「私は日向一族が、そして貴方が憎かった。たった数秒産まれるのが遅かっただけで私は分家として、貴方は本家の日向一族当主として、決して縮まる事の無い差が開いた」

 

「・・・・・・」

 

「分家という理由だけでこの呪印を刻み込まれ、私は日向の傀儡と化した。自由など無い。まるで鳥籠の鳥のように餌を与えられ、縛られ続けて。飛び立てぬと分かり切った空を夢見て・・・そうして今まで生きて来た」

 

「・・・・・・すまぬ」

 

 

耐え切れなくなったのか、ヒアシ様は弱々しく謝罪を口にした。私の境遇に心を痛めていると知れて、今の私にはそれだけで嬉しく思う。

 

 

「せめて、少しでも誰かの役に立っているのだと、私という存在に何かしらの価値があったのだと思える様に自身の一族が守っている里を度々白眼で見渡していた。そんな時だ。ある人を見付けた」

 

「・・・人?」

 

 

虚空を見詰めて思わず、恍惚とした表情になってしまう。思い出しただけで胸が高鳴る。

 

 

「美しかった。誰もが寝静まった、月明かりが照らされる森の中でその方はただ静かに佇んでいた。たったそれだけで私は目が離せなくなった。気付いた時には朝になり、身体中が血だらけになっていた程に夢中になっていたのだ」

 

「・・・・・・その者が原因と言う事はなんとなく分かったが・・・一体、お前の病とどのように関係しているのだ?」

 

 

未だに要領を得ないヒアシ様に、目を瞑り瞼の裏に焼き付いたあの姿を鮮明に思い出してハッキリと告げる。

 

 

「エロかった」

 

「は?」

 

「エロかったのだ。まるでエロの権化の如く、エロエロだった。着物、恐るべし。着物を着ていたから完全に油断していた。肌蹴るとあそこまでのボインが出てくるなんて・・・この白眼を持ってしても見抜けなかった」

 

「は?」

 

「あちらからは見える筈が無いのに、その妖しく光る紅い瞳で流し目に見られた時は・・・・・・股間の点穴を突かれてしまい、もう色々とエラい事になってしまった。具体的には股間の柔拳が剛拳になったりと・・・日向なのに」

 

「は?」

 

「そう言えば、木ノ葉の上忍であるマイト・ガイも相当な剛拳の使い手だとか。・・・いえ、別に変な事は考えてないですよ?」

 

「は?」

 

「話を戻しますが、私は彼女を見た時に悟ったのです。自身が産まれて来た本当の理由を。私は彼女の美しく、そしてエロい身体を覗きmゴホン・・・見守る為に産まれて来たのです」

 

「は?」

 

「彼女のお陰で日向に産まれて、そして当主よりは何かと融通の利く分家となってよかったと初めて思いました。日向という鳥籠に囚われていたと、わたしは思い込んでいただけ。本当の自由はすぐそこにあったのです。・・・だから兄上、私は分家の宿命として死ぬのではありません。彼女の素晴らしさを後世に残す為に己の意思で死ぬのです」

 

 

言いたい事も言い終えてスッキリしたので一礼をして退出する。これで少しは踏ん切りが付いてくれた事だろう。

 

私が退出し、一人残されたヒアシ様。

 

 

「・・・・・・・・・は?」

 

 

虚空に消える兄の声が私の耳に届く事は無かった。

 

 

 

 

「「は?」」

 

 

二人揃って意味不明とばかりに声を上げる。

 

ネジは何がなんなのか理解出来ず、ヒアシはなんでこんなの書いてんだアイツ、と神経を疑ったが故に。だが、何度読み返してもあの時の事が割と鮮明に書かれている。

 

揃って白眼を使用しても結果は同じ。何を言うでもなく、ネジから距離を取るヒアシ。それを見越して二人の間に巻き物を中に投げるネジ。

 

 

「「『八卦掌・回天』!!」」

 

 

なんとなーく、これは残したらマズイ物だと察した二人は見事に日向の秘術により、巻き物は粉々に擦り切れて隠蔽工作が完了した。

 

回転を終えた二人は向き合う。和解したと言ってもネジの方はほんの数分前には殺意を抱いていたのだ。やはり、少し気マズい所もあるのだろう。

 

ヒラヒラと舞い落ちる紙屑を見詰め、重々しくネジは口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所で股間の点k」

 

「知らん」




あれ?木ノ葉の二大瞳力のお兄さん達を書こうとしたのに、はっちゃけたお父さん達になってしまった気がする。

・・・ま、いいか。

副題、ちょっと誇張し過ぎとは思いますがあんまり気にせんといて下さい。


今作のキャラについて(捏造)

【うちは ミコト】(イタチとサスケの実母)
・うちはフガクを巡って、本人の預かり知らぬ所で起こった正妻戦争の勝者
・正妻戦争の最中に写輪眼の過程をすっ飛ばして万華鏡写輪眼を開眼
・開眼理由→(愛している人を力尽くで手に入れられない程に)弱い自分自身の失意にもがき苦しんだ結果、開眼した
・上記の理由や他の者の開眼理由を全く知らない事により、写輪眼または万華鏡写輪眼の開眼条件を『己の愛が成就しないと分かっても尚、望み、渇望すると開眼する』と考えている。イタチが写輪眼の開眼理由について隠し事をしていたと気付いたのは殆どこれが原因。イタチに対してのみ、割と当たっていたのでタチが悪い。
・左右の瞳力は以下の通り
右眼:別天神
→正妻戦争で死んだ者達を『任務などで死んだ』という幻術をうちは一族全体に掛けた。内容として、『一度は悲しんだが既にその悲しみは乗り越えた』というのも付け加えられており、更にその時のうちは一族は里内でも孤立気味だったので気付く者は誰一人として居なかった。因みに同じく別天神を使用する『うちはシスイ』にこの能力の事を教えたが、自身が使える事は黙っていたのでイタチしか母親の万華鏡写輪眼を知る者は居ない。(イタチはどんな能力かは知らないが、シスイから誰に教えられたのかを聞いたので大方の検討は着いている)
ミコトが万華鏡写輪眼の事を黙っていたのは別天神がバレる可能性を極力排除するため。写輪眼はついでに黙ってただけ。能力的にはシスイの万華鏡写輪眼と変わらないが、ミコト自身のチャクラがシスイよりも少なかったので再発動に二十年を要した(死ぬ間際には充電が間に合わなかったので普通の写輪眼となっている)
左眼:月読
→イタチと全く同じ。死に際に使用し、最愛の夫と『一瞬で永久の時』を過ごす為に使用した。・・・・・・でも多分、ミコトが死ぬと開放される・・・と思う、きっと。・・・・・・・・・フガクさん、強く生きて。あ、もう死んでたわ。
・死を選んだのはクーデターが成功しようが失敗しようがフガクと共に過ごせる時間が極端に減ると判断したから。それなら月読空間に閉じ込めた方がいいだろう、と結論を出した。
・(ノリと勢いで)須佐能乎(を考えてみた)
チャクラの色は橙で、第二形態はイタチと同じく女神像の姿。 武器はノコギリ一本であり、『あらゆるチャクラを切断出来る』能力を有している。チャクラの鎧である須佐能乎に対しては絶大な効力を発揮するがその反面、人体や木遁、土遁などのチャクラを有していようと実体を持ったモノは斬れない。しかし、切断能力が機能しないだけで刃が凹凸になっているので普通のノコギリや鈍器のように使用する事は可能。
実は正妻戦争中に戯言を吐いていた一人の腹を掻っ捌いていたりいなかったり・・・。

「ほぉら、やっぱり嘘だったんじゃないですか」


【うちは フガク】(イタチとサスケの実父)
・他キャラに巻き込まれただけで特に変更点は無し
・死ぬ間際なので開き直って親バカを発揮しまくった
・近しい年代の女性が何故かミコト以外に居なかった為に立場的に独身という訳にもいかず結婚した。
・不意打ちで月読空間に入れられ、脱出しようと試みたが妻からの狂気的な愛情を滝のように受け、精神的に折れて失敗。


【うちは イタチ】
・サスケへの愛情は原作通り。だけど、それ以上が現れてしまい、サスケとの交流が更に激減。サスケの病み度が原作よりも上がったり・・・。
・本来、イタチの最初の班のメンバーが殺されて完全に写輪眼が開眼するが今作ではその前に開眼したので・・・うん、(班の皆さん)ドンマイ。
・万華鏡写輪眼は原作通りにシスイの死によって開眼しました。シスイさん、流石です。
・実は母さんも開眼していて内心物凄く慌てそうになったが、「まぁ、母さんだし・・・」という謎理論で納得した。
・親子揃って病んでる気がするけど、この一族はこれがデフォルトだからへーきへーき。


【日向 ヒザシ】(ネジの実父)
・白眼といふは覗く事と見付けたり
・股間シリーズに味を占めた作者の被害者
・原作よりも早く救われて(?)、色々と吹っ切れた人
・診察として何度も白眼で己の身体を見られたので、いつ他の白眼に(警護などで)見られているのかが分かるようになった。結果、ヒザシが女狐を覗き見してる所を目撃した者は誰も居なかった。
・女狐の中身を見ない理由
→人の断面図を見て何が楽しい?
・女狐を割と高頻度で見付けられた理由
→白眼で見ている為に女狐に見られていると気が付かれていなかったから(見失うと次の場所を探し当てるまで見る事は出来ない)
・その美しさとエロさを後世に伝えようとしたが自身の語彙力では表現し切れなかったので、自分は救われたという結果だけを残す事で凄さを伝えようとした。尚、色々とガバガバな模様

【日向ヒアシ】(ヒナタとハナビの実父)
・フガクと同じく、特に変更点は無し
・回想では途中から完全に脳がショートした木ノ葉最強の日向家当主
・弟の遺言を最後まで見ておらず、真面目な部分しか見てなかったので凄いテンパってた
・度々、三代目様と秘密の会議をしているのだとか。内容はネジすらも知らされていない

【日向 ネジ】
・修行ばかりしてたから、割とピュア
・父親がああなったが、こっちも変更点は特に無し
・股間の点穴が気になり過ぎて、自分で突こうとしたらヒアシ様に全力で止められた。そういう意味じゃない


【女狐を写輪眼、白眼で見た場合】
〘写輪眼〙
チャクラを色で見分けているだけなので何かしらの術を発動している事は分かる。しかし、常に全身を静かにチャクラが覆っているので経験の浅い者であれば、気付かない場合もある。また、白眼のように見通せないので普通に女狐を視界に入れてしまう為、見分ける以前に鼻や意識が保つかが問題となる。

〘白眼〙
この世界では色も見える設定。普通に見通せるが女狐が妙な拘りを発揮し、中身や点穴に至るまで見掛け状は作り変えれるので初見だと殆ど見抜けない。日向の中でも良い眼を持ったネジなら、初見で違和感を感じれるかも。しかし、中身を見る前に必然的に外側・・・つまりは容姿を見てしまうので基本的に男は中身まで辿り着けず、鼻血を出してぶっ倒れる場合が多い。


因みにこの二つの能力を持つ一族の中で女狐を見たのはヒザシとイタチだけ。

ネジは見てはいないので女狐の凄さ(エロ)がよく分からず、強いて言えば父上を形はどうあれ救ってくれたから、会って感謝を述べたいと思っている程度。サスケはそもそもイタチと女狐が関係している事をまだ知らないし、女狐の存在も都市伝説程度にしか思っていない。


[ちょっとしたお巫山戯コーナー]
仮に万華鏡写輪眼の開眼時に抱いた思いで能力が決まるとしたら。(鬼滅の刃の血鬼術を見てて思い付いた)

【うちは ミコト】
別天神:全てが偽りでも貴方の隣に寄り添いたい
月読:貴方と私だけの世界でずっと一緒に・・・

【うちは イタチ】
天照:永遠に燃え尽きぬ恋心
月読:いつまでも貴女を閉じ込めていたい

こんな感じですかね。


流石にこれ以上、股間シリーズは無いと思います。と言うか、思い付かない。ナルトのお色気の術を見て股間が反応してしまい、邪魔だと感じたカブトが
「股間の経絡系を切った。これで僕の大蛇んぽ丸はもう勃たない」
とかそんな下らないのばっか考えてしまうので、もうキッパリとやめた方がいいと感じました。多方面から怒られそうな気がしてならない。


次回はちょっと迷ってます。大蛇ん・・・大蛇丸様の木ノ葉崩しの予定。ペイン辺りをちょっとやりたいけど、そうすると時系列がワケワカメに・・・。イタチをもう少し掘り下げたかったけど、ネタが思い付かなかったので急遽、ネジを投入しました。なのでもしかしたら、またイタチの話になるかも・・・。と言うか、暁の話の可能性もある。

ちょっと作者自身、自分で書いたのに情報量が多くて処理し切れていないです。なので書き直しが結構あったりしますがご了承下さい。


-追記-

多分、本編に関わらないくらい割とどうでもいい事なのですが、女狐はイルカと同期です。

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