お色気の術を極めたら都市伝説扱いされるって誰が予想出来る?   作:榊 樹

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今作初の女性キャラが一気に登場。


女狐は女じゃないのかって?

・・・・・・貴方はそれでいいのか?


目覚め

テンテンは伝説の三忍の一人である綱手姫に憧れた木ノ葉の下忍だ。今は下っ端だが、いつの日か彼女のような素晴らしい忍びになりたいと、常日頃任務に励んでいる。

 

例え、濃ゆ過ぎる上司とそれに感化された濃い同僚、そして比較的常識人で優秀だが偶に天然を発揮するもう一人の同僚に囲まれていようともテンテンはめげずに頑張って来た。

 

最近、なんか自分がツッコミ役として定着しつつある現状に不安が過ぎるが、腐る事無く頑張って来たのだ。

 

あの惨劇を目の当たりにするまでは。

 

 

 

 

今日はチームとしての修行の為に修練場に集合だった。中忍試験が終わり、自分は中忍になれず、濃い方の同僚は再起不能の大怪我を負ってしまった。

 

悔しさから、結構早くに出たのだが修練場からは既に戦闘音が響き渡っていた。

 

とは言っても集合時間までまだかなりの余裕がある。やる気に満ちているのは自分だけではないと駆け足で近寄ると叫び声が聞こえて来た。

 

 

「ネジィィィィィ!!」

 

 

それは聞き覚えのある暑苦しい上司の声。

そしてもう一つは━━━━━━━

 

 

「ガイ先生ェェェェ!!」

 

 

まさか、と思って急いで向かう。濃い同僚の声では無い。そもそも彼は真面に動く事すら出来ないのだ。そうなれば、消去法から一人しかない

 

嘘であってくれ、と願いながらもテンテンは走る。未だに響く戦闘音のする方へ。

 

そして、そこで見た物は━━━━━

 

 

「ヌゥェズゥィィィィィィィ!!」

 

 

拳を振るう顔面が濃ゆ過ぎる全身タイツの変態こと、木ノ葉の気高き碧い猛獣と自称するガイ先生と━━━

 

 

「グゥアィスゥエンスェェェェェ!!」

 

 

同じく全身タイツで拳を振るう天才で常識人だった筈の同僚・・・木ノ葉の名門、日向家の天才と謳われた『日向ネジ』の変わり果てた姿だった。

 

 

「・・・は?・・・・・・は?」

 

 

ボケが強過ぎるこの班でツッコミ役として(不本意ながら)鍛えられたテンテンですらも何も言えなかった。理解すら出来なかった。

 

雄叫びを聞いた時点でなんとなく予想はしていた。

 

あぁ、きっと落ち零れのナルトに負けたショックであのネジがおかしくなってしまったのだ、と。冷静で貴重だったツッコミ役(偶にボケる)はもう居ないのだ、と。

 

熱血漢が増えて、更に暑苦しい班になると・・・そう思っていた。まさか、緑の変態がもう一人増えるなんて思いもしなかった。

 

やはり、天才か。

 

凡人の考えなど軽々と飛び越えて行った。回転のし過ぎでネジの頭の螺子(ねじ)が全て抜けてしまったのだろうか。なんか、髪も肩までバッサリと斬ってるし。

 

それでも似合ってるのが無性に腹立つ。

 

テンテンが我に返ったのは二人が一切防御も回避もせずの殴り合いが一段落ついてからだ。最後はネジが後方の木に吹き飛ばされる結果で終わった。

 

 

「ネジよ、悲しき男の(さが)を知らぬお前に・・・勝利は無いのだ」

 

「ガイ先生」

 

「ん?・・・おぉ!テンテンか!よく来たな!」

 

「そう言うのはいいんで説明してもらってもいいですか?」

 

「お、おう・・・分かった」

 

 

テンテンはキレていた。よくも貴重なツッコミ役をボケに染めてくれやがったなテメェ、と怒りの点はズレていたがキレていた。

 

そんなテンテンにビビりながらも何故ネジがああなったのかを説明してくれた。

 

なんでも中忍試験が終わり、大蛇丸の木ノ葉崩しの後始末が終わって落ち着いた頃にネジがガイ先生の所に訪ねて来たらしい。

 

 

『ガイ先生、俺を弟子にしてくれ』

 

 

開口一番にそう言われ、ガイは困惑したものの数秒後にはそのネジの白眼に宿る熱く燃える想いに感化されたのか、ガイの手にはいつの間にか緑のタイツが握られていた。

 

 

「それでネジはあんな風に・・・おーい!大丈夫ー?」

 

「・・・くっ・・・・・・殺せ・・・」

 

 

四つん這いで落ち込むネジにあれは暫く触れない方がいいと判断したテンテンは自身の修行内容を仰ぐ為にガイに向き直り、そして目にする。

 

キラリと白い歯を光らせ、緑タイツを差し出す猛獣の姿を。

 

 

「・・・・・・」

 

「ふっふっふっ」

 

「・・・今日ちょっと用事を思い出したので帰ります!!」

 

「テンテン、天才からは逃れられんぞ?」

 

「なっ!?ネジ!?」

 

 

しかし、回り込まれてしまった!

 

 

「ちょ!そこを退きなさいよ!」

 

「断る。お前もあれを着るんだ」

 

「さてはアンタ、道連れが欲しいだけでしょ!」

 

「ふっ、よく分かったな。・・・その通りだ!幾ら機能がいいからってなんで俺がこれを着ないといけないんだ!?弟子入りの為、父上が何を見たのか知る為に甘んじてこの仕打ちを受けているがッ・・・・・・限度があるだろ!?」

 

「知らないわよぉ!!アンタが勝手に始めた事でしょうが!!私関係無いわよぉ!!」

 

「・・・テンテン、俺は・・・俺達は同じ苦楽を共にした班の仲間だろ?」

 

「・・・そ、それがどうしたっていうのよ・・・」

 

「リーもガイ先生も・・・そして俺もこれを着ている・・・・・・後は・・・分かるな?」

 

「嫌よ!絶対に着ないから!何を言われようとも絶対に・・・・・・」

 

「着てくれたら新しい忍具を好きなだけ買うぞ。・・・ガイ先生が」

 

「ネジ貸しなさい。くノ一の真髄を見せてあげるわ」

 

 

ツッコミ役、堕ちる。

 

 

 

 

忍びという人生を送り、鍛えられた少女の美しき肉体。幼くも滲み出す色気を含んだ少女の扇情的なボディライン。それらを覆い隠すのは一枚の全身タイツ。

 

それが身体にピッタリと張り付き、余す事無く、いや寧ろ裸以上に魅力を際立たせる。露出は無いがそれがより想像を掻き立たせる。

 

恥ずかしいのか、顔を赤らめ、モジモジと内股を擦り合わせ、両手で抱えるように胸を抱き締めるテンテン。それを世紀末のような画風となったガイとネジがガン見する。

 

微動だにせず、腕を組む二人は唐突に向き合った。

 

 

「ガイ先生、今なら父上が言っていた事が分かった気がします。今一度、お手合せを」

 

「ネジよ、どこからでも掛かって来るがいい。気高き猛獣は退かぬ!媚びぬ!!省みぬ!!!」

 

「ぬおぉおおお!!」

 

 

ネジの全身から、チャクラがユラユラと立ち上って来る。本来、可視化出来ない筈のソレがそういう才能の無いテンテンやガイにも鮮明に目視出来る程に。

 

対してガイは先程とは別人のようになったネジを警戒し、八門遁甲を六門まで一気に開いた。

 

 

「行きます、ガイ先生!」

 

「来い、ネジ!!」

 

「『柔拳法 八卦百二十八掌』!」

 

「『朝孔雀』!」

 

 

互いの拳がぶつかり合う。真正面からの単純な衝突で柔拳が剛拳に勝つ事は出来ない。技術で劣っていれば尚のこと。

 

「二掌!四掌!八掌!十六掌!三十二掌!六十四掌!百二十八掌!!」

 

「あーちちちちちちちち!!」

 

 

しかし、空気の摩擦で発生したガイの飛び出す灼熱の剛拳はそのどれもがネジの拳の前に打ち破られる。

 

 

「何ィ!?」

 

 

これには流石のガイも驚いたがそこは上忍。だが即座に冷静に分析してその正体が分かったものの、より驚くだけだった。

 

よく見てみると濃密なチャクラを手に纏い、衝突のほんの一瞬だけ放出し、相殺していた。それも正面ではなく、脆い側面から。

 

量は少ないが密度が大きい分、面積が大きくただの熱であるガイの朝孔雀よりも強固だった。

 

ガイはこれ以上は無駄だと判断し、技を中断する。

 

 

「ふっ、流石だなネジ。一体、お前の心に何があったというのだ?」

 

「簡単な事です。俺には白眼がある。人よりも一度に多くの視点から見る事が出来るこの眼が。・・・テンテンのお陰で気付く事が出来ました」

 

 

そこで言葉を区切り、相変わらずの画風でテンテンの方を見るネジ。突然、そんな影が差した濃い顔で見られると勿論テンテンは驚く。

 

 

「ふぇ!?え、ちょ、な・・・なによ?」

 

「テンテンのあの溢れんばかりの素晴らしさ。それを一方向からしか見ないなんて勿体無い!」

 

「その通りだ、ネジ!女体とはどの角度から見ても素晴らしき物!熱き青春を送るに不可欠な存在なのだ!」

 

「そしてこれが、俺の導き出した答えです!テンテン!もっと滾るポーズを頼む!!

 

「はぁ!?滾る何がよ!」

 

「ナニがだ!」

 

「だからどういう事よ!!」

 

「いいから、兎に角くノ一らしいポーズをするんだ!!」

 

「え、えっと・・・」

 

 

ネジの気迫と元々混乱したのもあって、流される感じでポーズを取り始めるテンテン。前屈みになって襟を少し伸ばして、谷間が見えそうで見えないようにする辺り、なんやかんや言って彼女もノリノリである。

 

同時にガイの方に向き直るネジ。無論、テンテンの事はバッチリと見ている。白眼で。白眼に死角は無いのだ。

 

 

「ほぉあぁぁあ!」

 

「むっ!何だとぉ!?」

 

今一度、ネジのチャクラが膨れ上がり、かと思えば次の瞬間には消えていた。否、それは消えたのではない。更に高密度となって、ネジの両手の間に収束されたのだ。

 

 

「これが柔拳と剛拳を合わせた、新たなる力!喰らえ、『日向 剛掌波』!!」

 

「マズイ!?『八門遁甲 第七驚門 開』!!『昼虎』!!」

 

 

まるでビームの如く、突き出した手の平から放つチャクラの奔流を前にし、強烈な危機感を覚えたガイは七門まで躊躇無く解放した。すると己の青くなった汗が蒸気となって青いオーラを生み出し、ガイが更に構えを取るとそのオーラは白い虎へと姿を変えた。

 

 

「吠えろ、青春!!」

 

「無駄だ!この技は全てをすり抜ける!そう・・・服以外全てな!!」

 

「なっ、なにぃぃぃぃ!!?」

 

 

ガイが感じた危機感、それは身体的な恐怖ではなく・・・もっと別の・・・悍ましいナニか。その正体はすぐに分かる事だろう。

 

そう、何故か大事な部分だけ残して、宙を舞うガイを見れば。

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

自分で加勢し、自分でやっておきながら、見るに堪えないというような顔をする二人。色々なショックで心が耐え切れなかったのか、ピクピクと痙攣するガイ。

 

上と下は計三枚の葉っぱでなんとか隠されていた。

 

 

「・・・どうすんの、あれ」

 

「流石にあのままにしておく訳にもいくまい。最悪、二次被害が起きてしまう」

 

「凄いわねー。ガイ先生は遂に天災の域までいったのねー」

 

「努力って・・・凄いな」

 

「こんな事態にした張本人の貴方が言ってんじゃないわよ・・・って、ネジ。鼻から血が出てるわよ?」

 

「む・・・本当・・・・・・ブハァッ!!」

 

「ちょ、ネジ!?急にどうしたのよ!?」

 

 

突然、鼻から大量の血を吹き出して倒れたネジ。端的に言って、もう限界だった。ネジが得た力(?)は要は性欲が原動力なのだ。それも解放せずに貯め続けた性欲。

 

見えそうで見えない、その先を見てみたい、だけど見たくもない。そんな葛藤が産んだ貪欲な探究心の力。この渇きを癒す為の力。

 

代償として、元々そういう耐性が一切無かったので許容限界を迎えるとこうして倒れる。そうとは知らず、結構真面目に慌てたテンテンだが幸せそうなネジの顔を見て、一度シバいて冷静になる。

 

冷静になったからこそ、気が付く。

 

 

「・・・・・・え、どうすんのこれ」

 

 

因みに七門を発動した代償で服を着せる事も布を被せる事も出来なかったガイを止むを得なく、放置したテンテン。

 

木ノ葉の気高き蒼き猛獣、ここに散る。

 

・・・・・・実はテンテンがそっち方面(お色気の術)に目覚めたのはまた別のお話。彼女の明日はどっちだ!?

 

 

 

 

一方その頃、『砂漠の我愛羅』との対決で左腕と左脚を粉砕骨折という洒落にならない重症を負ったリーは憂鬱な入院生活を送っていた。

 

ただ骨折しただけなら、ここまで彼は落ち込まなかった。と言うのも骨折自体は修行中によくやっていたからだ。

 

ならば、何故こうもこけしみたいな顔で彼が虚空を眺めているのかと言うと最悪の場合、忍び人生が終わり兼ねないからだ。それも高確率で。

 

これまでは努力をし続ける事でなんとか乗り越えて来られた。だが今回のこれは・・・もうどうしようも無いと思わせる程に絶望的な状況だった。

 

多くの忍び、下忍にすらなっていない見習いにも笑われ続け、それでも己を曲げずに努力して来た。だがそのどれもが天才の前には塵芥のように破れ、今その努力すらも失おうとしていた。

 

半生を賭して己を鍛え続けた物が一瞬に消え去るというのは幾ら、根性を鍛え抜かれたリーでも耐え難い物だった。

 

そんなリーだったが視界の端に靡くカーテンに気が付いた。窓を開いた記憶が無く、なんと無く気になって窓の方を向くとそこには一冊の本が置いてあった。

 

手に取ると栞のように一枚の紙が挟まれていた。それは達筆と見せ掛けて普通に汚い文字が書かれた手紙だった。

 

 

『リーよ。何事もまずは気力、即ち元気である事だ。

 

病や怪我を治すのもまずは精神的に元気である事が復活への足掛けとなる。表面上、元気でいろと言う意味では無い。偽りの無く、心から元気にならねばならん。しかし、現状挫折したお前に元気で居ろ、なんて言うのは酷な話だ。

 

そこで!この俺からこんな物をお前にプレゼントしようと思う。俺達上忍やあの火影様も愛読している凄い本だ!これを見たら、お前もすぐに元気になる事だろう。寧ろ、元気になり過ぎて暴発してしまわないか心配なくらいだ。

 

この本を読むに当たって注意事項がある。いいか、リーよ。これは言わば、秘伝書のようなものだ。誰にも見られていない所でこっそりと読むんだ。そして誰にも内容を他言してはならん。以上の点を踏まえた上でじっくりと楽しむといいぞ。

 

マイト・ゲイより

 

P.S.

 

好きな子を妄想しながら見ると、より盛り上がるぞ』

 

 

「ひ、秘伝書・・・・・・!?」

 

 

リーは感激した。まさか、ガイ先生がこんな才能の欠片も、将来の希望すらも無くなった自分に未だ期待し、秘伝書までも授けてくれるなんて、と。

 

なんか題名が『イチャイチャパラダイス』とか言う、ちょっとやそっとレベルじゃ無いくらいに気になる物だが、恐らくそれはカモフラージュだろう。

 

キョロキョロと忙しなく周りを見渡し、誰も居ない事を確認してから震える手で本を開く。果たして、そこに書いてあったのは━━━━━━━

 

 

「ぬおっ!?こ、これはぁ!!?」

 

 

━━━━━━━普通に題名通りの内容だった。

 

 

「い、いけません!こんな!こんなハレンチな・・・・・・ふぉぉおおお!!!」

 

 

目を片手で覆い隠しつつもチラチラと隙間から見て、しっかりともう片方の手で捲るリー。確かにこれは誰にも見せられない。主に読み手の有り様を。

 

 

「しっ、しかし!これはガイ先生から態々頂いた物!実は背表紙の方に何が重要な情報が・・・・・・ぬっふぉおお!!」

 

 

ある意味重要な情報があり、更に赤面するリー。そこに数秒前のこけしはもう居なかった。秘伝書恐るべし。

 

 

「はっ!?そう言えば、ガイ先生は好きな人を想像した方がより、効果があると・・・いえいえ!それはいけません!サクラさんをこんな!こんな・・・淫らな・・・・・・・・・ブハッァ!!」

 

 

リー(むっつり)、ダウン。

 

病室を血塗れにし、より入院生活が長引いたがなんやかんやで彼は入院生活を満喫した。

 

因みに戻って来た綱手姫の治療ではなく、胸を一目見たお陰で完治し、盛大に感謝された綱手姫が困惑するのはまた別のお話。

 

存在するだけで周囲を癒す女神とか言われ出した姫は泣いていい。主に男性陣から。

 

 

 

 

日向ヒナタは疲れていた。

 

彼女は『日向家』の次期当主であり、幼い身でありながら毎日過酷な訓練に身を費やしている。しかし、幾ら血の才能があろうとも齢十にも満たない幼子には無理があった。性格が争い事に向いていないのであれば尚の事。

 

今日もボロボロになり、疲労困憊でその日の修行を終える。他の同年代の子達のようにあまり自由が利かず、かなり気が張られた生活を送っていた。

 

そんなヒナタの密かな楽しみ兼息抜きは想い人との逢引。

 

この日も連日の修行で疲れ切った身体と精神を癒す為に彼の元へと向かう。しかし、ヒナタには少し気掛かりな事があった。

 

ここ最近、想い人の様子が何やらおかしい。

 

修行の息抜きに想い人の後ろを隠れながら追い掛けるヒナタはそう感じた。いや、別にストーカーではない。日向家として、立派な忍になる為の訓練の一環として自主的に彼の後をバレないように追跡しているだけだ。

 

白眼を使わない理由?

 

どうせなら想い人を生で見たいからですが何か?

あわよくば自身の存在に気付いて欲しいからですが何か?

 

つまり、列記とした逢引である。

 

閑話休題

 

ここ最近の彼は何処か元気と言うか、活き活きしている。常日頃から彼を監s・・・見守っていたヒナタだからこそ、その変化は火を見るより明らかだった。 

 

これまでは暗く悲しそうだったから、この変化は本来はヒナタにとっては好ましい事だ。

 

しかし、ヒナタも年頃の女の子。想い人がいい方向に成長した事に自身が関わっていないのは、心にモワモワとした感情を湧き出させる。

 

日向ヒナタは・・・疲れていた。

 

 

 

 

女狐は疲れていた。 

 

その原因はナルトにある。味を占めたのか、彼がココ最近女狐の家で膝枕をして貰って睡眠を取っている。

 

最初の方は疲れ過ぎて深い眠りに就いていたからなのかまだ良かったが、数日後から驚く程に喧しい(いびき)を搔くようになった。おまけに何処からか感じる肉食動物のように獰猛な視線。

 

身体と精神のダブルパンチで全く寝れていなかった。 

 

そんなある日、珍しくナルトが静かに眠った。しかも、膝枕から抜け出しても起きる様子は無い。数日ぶりに訪れる穏やかな睡眠のチャンスだった。

 

この日を夢見て、ふかふかにお日様干ししていた布団に潜り込み、いざ寝ようとした時・・・インターフォンが鳴った。

 

出たくなかった。真冬の炬燵のように出たくなかった。だがインターフォンは怖いくらい正確に一定の感覚で鳴り続け、止む気配は無い。するとナルトが身動ぎし、今にも起き出しそうになった。

 

慌てた女狐は急いで布団から抜け出し、玄関に出る。こんな傍迷惑な事をしてくれたのは何処の誰だ、と確認する為に。

 

 

「・・・・・・」「・・・・・・」

 

 

そこに居たのは黒子のような衣装に身を包み、所々に治療の後があるナルトと同じくらいの大人しそうな少女。インターフォンに指を掛けて固まる少女とそれを見て「誰だこの子?」と全く心当たりが無く呆然とする女狐。 

 

静寂を破ったのは少女の方だった。

 

 

「あ、あの!・・・夜分遅くに・・・申し訳ありません」

 

 

正確にはまだそこまで遅くないが、今の女狐には最悪のタイミングである事に違いは無い。怒鳴りたいがオドオドしている少女を見るにそうすると怯えて長引く、と疲れ果てた頭で結論を出す。

 

早く済ませたい女狐は完璧な仮面を付けて、人の良さそうな笑みを浮かべて少女と視線を合わすべくしゃがみ込んだ。

 

 

「そんな事は無い。・・・所で(うち)に何か用かな?」

 

 

万人が見惚れる程の笑顔を目の前にしても少女が動揺する様子は無い。何やら恥ずかしそうにモジモジしているがどうやら別の案件みたいだ。

 

 

「え、えっと・・・お尋ねしたい・・・事がありまして・・・」

 

 

中々切り出さない少女に必死に己を抑える女狐。もう本当に早くして欲しかった。ニコニコと笑って目を細めているがその勢いで寝てしまいそうな程に眠いのだ。

 

そんな願いが叶ったのか、少女は決意を固めた表情で顔を上げる。心做しか、瞳に光が無い気がしたがそんな事を気にする余裕は今の女狐には無い。

 

 

「な、ナルト君のッ・・・お、お義母様ですよね?!」

 

「・・・・・・」

 

 

女狐の思考は停止した。

 

そもそもの大前提として女狐は男だ。まかり間違っても母にはならない。変化すれば・・・・・・と、そこまで考えて凄まじい悪寒がしたので女狐は思考を打ち切った。

 

因みに今の女狐には、変化していて他者からしたら何処からどう見ても女にしか見えないので父の方が有り得ない、という考えは抜け落ちている。

 

もう意味が分からなさ過ぎて理解が及ばない。疲れ果てた頭では処理し切れず、だからと言ってこのまま黙っておくと話が進まないので適当に肯定しておいた。馬鹿である。

 

 

「えぇ、そうですが・・・それが何か?」

 

「わ、私・・・ナルト君と将来を誓い合った仲でして・・・」

 

「と言うと・・・許嫁という奴かな?」

 

「許嫁・・・・・・はい!そうです!」

 

 

女狐は、少女(ヒナタ)は・・・・・・疲れていた。

 

例え、女狐が少女の事を見てボロボロであるものの『なんか良い所のお嬢様っぽいなぁ』などという浅はかな考えから出た言葉を少女が『許嫁・・・凄く良い響き!』という浅はかな感情からの肯定をしようとも、残念ながら訂正する者はこの場に一人として居ない。

 

先の会話に何一つとして真実が無かろうとも、互いが互いの言葉を本当だと信じてしまい、取り返しのつかない事態へと陥ってしまう。

 

何故なら、二人は・・・・・・疲れ果てているのだから。

 

 

「態々、訪ねてくれたのにすまない。今、ナルトが寝たばかりなんだ」

 

「はい、知ってます」

 

「?・・・それに私も少し疲れてて・・・悪いけど、また明日に出直してくれないかい?どうせなら、きちんとおもてなしがしたいんだ」

 

「あ、明日も!?き、来ても・・・いいんですか?」

 

「うん、ナルトが居るかは分からないけどね」

 

「いえ!大丈夫です!」

 

「そっか、それじゃあね。帰り道は気を付けるんだよ」

 

「はい!それでは失礼します、お義母様!」

 

 

満面の笑みで帰って行く少女にニコニコと手を振る女狐。見えなくなった瞬間、大きな溜め息を吐いて部屋の中に入り、布団に潜る。

 

ぐっすり眠れたものの、次の日に頭を抱えたのは言うまでも無い。




オリ技紹介

『変異』

使用者:女狐

流石に変化の凄い版とか言い続けるのは面倒だと感じたので適当に名前を付けました。何かいいのあったら普通に感想とかで書いて・・・・・・いいんでしたっけ?
能力は一話で大雑把に書きましたので少し詳しく書きます。
違いとして、原作に存在する術で比較すると普通の実体が無い分身と木遁・木分身くらいの差があります。常に一定のチャクラを全体に覆っているのでチャクラを使っていない状態を知らなければ、写輪眼でも見抜くのは難しい・・・と思う。普通の変化と違い、どれだけ攻撃を受けても、例え意識が無かろうともチャクラが切れないか、自分で解かない限りは変化が解ける事は無い。細胞を作り替えるとまではいかないが、その気になれば特定の姿で固定出来るがそれはまだしない。未だに最高の女体を探究中だから。
難点として、今回のヒナタのお義母様事件のように疲れている時はつい変異した状態で出てしまう事があるくらい。チャクラ消費量は慣れもあるが割と少ない方。習得難易度は兎も角、チャクラ量で言えばアカデミーの者でも半日は持続出来る。


『日向 剛掌波』

使用者:日向ネジ

後に日向家史上最低最悪最凶の禁術と言われる程の恐ろしい技。原理としては放出したチャクラを超極小の風の刃のような形にさせて回天の要領で手の平で回転させながら圧縮。解き放つ事でそちらの方向に爆発的な速度で飛び出す。細胞レベルの隙間を埋めなければ、必ず通ってしまう防御不可能な技。しかし、殺傷能力は無く、何故か服だけにしか効かない。まぁ、女体を更に美しく(ネジ視点)させる為の技だからねー。
初の使用相手がガイ先生ってお前・・・。
内容は巫山戯ているが何気に螺旋丸より上の難易度だったりする。


ほい、キャラ紹介


『女狐』

・今回、出番はあんまり無し
・なのにこの影響力・・・流石は都市伝説
・気付いたら、母親になってた狐
・九喇嘛の妄想が捗る
・実は狐と口寄せ契約を結んでいる
(出すタイミングが無かったのでここで少し紹介)


『マイト・ガイ』

・字が汚過ぎてリーにゲイと誤読された可哀想な眉毛
・昼虎を使った後、様子を見に来たカカシに雷を流されてまさかの放置。アイツ何しに来たんだ。
・朝孔雀百裂拳が真正面(細かく言うと側面)から突破されて、割とショック受けてた
・裸よりも恥ずかしい格好をされて許容限界を超えた
・いつものタイツは恥ずかしくないらしい

『ロック・リー』

・師匠により、あちら側に引きずり込まれた哀れな弟子
・またの名をムッツ・リー
・最近、想い人が綱手姫に変わりつつある
・助けられたからね、仕方無いね


『日向ネジ』

・まさかの二度目の出演
・この後、どっかのネジと似たような行動を取り始めるがこっちはバレないように出来る才能があるのでタチが悪い
・組手中になんか最近、色気が増して来たヒナタ様が目に入り、誤って組手相手のヒアシ様に剛掌波を打ち込んで技の存在が発覚
・幼くして白眼の本当の使い道(父上視点)を体得しつつある
・エロい女体を見ると戦闘力がアップするが直後に鼻血を出して倒れる諸刃の剣。リーの酔拳みたいな感じ


『日向ヒナタ』

・一途ないい子
・なんやかんやで女狐はナルトの実母でなく、養母という所まで落ち着かせる事は出来た。本人は近所の仲の良いお姉さんで通そうと思ったのにどうしてこうなった?・・・と首を傾げている
・ナルトを自分の虜にするべく、女狐に師事を受けているが、そもそも女狐を見慣れているナルトにお色気の術は・・・・・・
・好きなものはナルト、好きな人はナルト、好きな食べ物はナルト


『テンテン』

・くノ一の真髄、見付けたり
・下手すれば、二代目女狐になったりならなかったり
・今後、忍び服がズボン無しのチャイナドレスっぽくなる(fgoの楊貴妃みたいな感じ)
・ツッコミ役が悪堕ちしたので第三班が完全に魔境と化した
・一応、ツッコミはするがボケにも手を貸す(無自覚)


本編では書いてませんけど、ネジのガイ先生との修行は大体一週間弱くらい。剛拳に関してはサスケも体得出来たし、ネジも余裕でしょ、という事で許して。

本来は前回の次回予告通りにしようと思ってたんですけど・・・NARUTOを見直してたら、テンテンめっちゃ可愛くね?と思って、気が付いたらこんな事に。


『没ネタ』
ネジ「八門遁甲 第零肛門 開!!」
ブリリリリブリュブリュリッ!

『没理由』
これは汚い

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