全身無職に改造されたが、今は何とか時計屋やってる   作:ひょっとこハム太郎

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「一夏の思い出・弐」

 

 

 

 

 

「えー、それでは皆様。ご唱和下さい」

 

 

 恐らくは何らかの密談を交わすため造られたであろう政府保有のプライベートビーチで、優斗は鹿爪らしい表情で宣言した。

 砂浜を区切るように左右には壁が、正面には白い砂浜と青い海が広がり、反対には海を一望できるよう一面ガラス張りの白い別荘が建てられている。

 

 真夏の太陽が照り付ける中、別荘から伸びる木製のテラスの上に、青年と少女達は横一列に手を繋いで立っていた。

 

 

『海だーーーーーー!!!』

 

 

 或る者は満面の笑みを浮かべながら両足を折り曲げて飛び。或る者は呆れながらも、付き合いだからと小さくジャンプ。或る者は偶にはこういう馬鹿騒ぎも悪くないと続く。

 一者一葉の反応を見せながらも、全員が両手を繋いだまま腕を振り上げ、海へとやってきた喜びを叫びつつテラスから砂浜に向けて飛び降りる。

 

 これが海にやってきた者の日本の作法と優斗が宣った結果である。

 日本の文化に疎いか、或いは日本での生活が短い者はあっさりと信じ込んでしまった。なお、生粋の日本人であるはずの響と翼も根が真面目故、二人同時に“なんとぉ!?”とありもしない作法に驚愕し、相方に突っ込まれる始末であった。

 

 

「海だーーーーーーーーー!!!!」

「え!? ちょ、ちょっと、優斗さん!? うわわ、あわわわわっ!! 高いです! 視点が高くて怖いっ!!」

「海だーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

 既にテンションが壊れてしまっている優斗は背後からエルフナインの脇に手を差し込んで持ち上げると肩の上に乗せる。

 所謂、肩車の体勢を取ると砂浜を猛然と走り始めた。上がったテンション故の特に意味のない爆走であった。

 

 エルフナインの頭が上下左右に揺れ動き、振り落とされぬように必死になって頭にしがみついている。ちょっとしたジェットコースター状態だ。

 

 

「ほんとハシャいでやがんな……それでいいのかよ、二十五歳」

「まあ、いいではないか。誘った甲斐があったというものだ」

「そりゃそうなんだろうが、アレはちょっと…………エルフナイン涙目じゃねえか」

「あー……あーあー……飯塚さん、その辺りで。でないとマリアが」

 

 

 クリスはテラスに腰を下ろし、頬杖を付いて砂浜を走り回る優斗(バカ)と目を回しているエルフナイン(被害者)を眺めている。

 年上の癖に妙に子供っぽい優斗に、辟易としながらも決して嫌いとは口にもしないし、考える事もない。

 それは彼もまた彼女にとっては恩人であり、響とよく似たバカだったからでもあったのだろう。

 

 その隣に立った翼は諦めの境地であった。一応、言葉では止めようとしてはいるが、意気というものが決定的に欠けている。

 過去、味わってきた数々の出来事を思い出していた。脳裏に過るのは、ニンマリ笑う奏と一緒になって無邪気に笑う優斗。思い出すだけで頭が痛くなるような悪ノリに晒されてきたが、不思議と不快感だけはない。

 そういった年相応な青春とは無縁だったからだ。憧れてなどいなかったし、自身の選択が間違っていたなどと思ってもいないが、味わってみれば存外に悪いものでもなかった。

 

 

「いい加減にしなさい!!」

 

「ひぶぅ……!?」

 

「遅かったか……!」

 

「ふっはっ! 笑っちゃ悪いが笑っちまうな。あぁ~あ、バカみてぇ」

 

 既に青い顔をしていたエルフナインを救出するべく、狙い澄ましたビンタを喰らわせるマリアの姿に、翼は思わず片手で顔を覆う。

 そして、ビンタを喰らった優斗の顔が面白可笑しく変形する様に、クリスは思わず吹き出すのであった。

 

 

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 

「ふぅーっ、こんなもんかなぁ」

 

 

 額の汗を拭い、短い髪を掻き上げる。

 片手にはハンマーが握られており、今し方まで砂地専用のサンドペグを打ち込んでいた。

 彼の目の前には、少女達ならば全員が入れるほどのタープが張られており、その他にも三基のビーチパラソルが突き立てられ、その下には同じ数のビーチチェアが並んでいる。

 

 全て彼が一人で建てたものだ。

 炎天下の中では手伝いもなければ、悪態の一つも吐きそうなものであるが、快適に遊ぶための準備も彼にとっては楽しみの一つであるようだ。

 

 ちょうどその時、別荘から着替えを終えた少女達がやってきた。

 

 

「優斗さ~ん! どうですか? 褒めて!」

「いいね! 特に色がいいよな! 向日葵みたいな立花には似合ってる! フリルもなんか花びらみてぇ! 最高!」

「いやぁ、それほどでもぉ~~~、あるんですけどね!」

「いいよいいよ! もっと自信持って! 立花はカワイイ!」

「……あぅ」

 

 

 いの一番に声を掛けてきたのは、砂浜に走ってきた響であった。

 優斗が振り返れば、目に飛び込んできたのは眩しい黄色のビキニであった。

 上にも下にも可愛らしいフリルが付いており、元気が一番と言った具合の彼女には精一杯の乙女らしさを演出しているかのようだ。

 

 男特有のいやらしい視線を一切飛ばさず、ニコニコと笑いながらストレートに褒めちぎる。

 似合っているという言葉だけではなく、花に例えられたのが嬉しかったのか、頬を掻きながら照れ隠しに胸を張ってみせたが、更なる追い打ちに頬を染める結果となってしまった。

 

 

「ふふ、響ったら照れちゃって」

「小日向もいいよ! シンプルイズベストってのはこの事だな! 控えめな性格が出てる感じ、甲乙付けがたいね!」

「……うっ、男の人に褒められるの、ちょっと恥ずかしいかも」

「恥ずかしがらないでいいんだ! 小日向の良い所を全面に押し出してこ!」

 

 

 響の後にゆっくりと現れたのは、白いワンピースタイプの水着を来た未来。

 華美な装飾はなく柄もないシンプルさであったが、その分だけ本人の清楚さや慎ましさが表しているかのよう。

 

 余り派手な柄を着る勇気がなかっただけなのだが、それを逆に褒められて、やや赤面してしまう。

 

 

「ったく、チョロい連中だな」

「何だよ、おい。お前も可愛いかよ。ハイビスカスの髪飾りなんかしやがって。似合ってんな。お前も可愛いかよ」

「………………やっぱ、あたしもチョロかったわ」

 

 

 自分はこの二人とは違うと言わんばかりの表情でやってきながら、即落ち二コマを見せたのは響と同じく赤いビキニのクリス。

 但し、布の面積がやや広い。小柄な身体に似合わず、出る所が大きく出ている故、致し方ない。

 とは言え、コンプレックスではないにせよ、その肢体に男の視線を常に感じる彼女には、買ったばかりの髪飾りに目を付けられたのがツボに入ったらしく、辛うじて顔を片手で覆い隠したが、真っ赤になった耳が見えているので余り意味がない。

 

 

「私は私は!」

「えぇい、あたしの肩を掴んで跳ねるな!」

「ちょっと背伸びした感はあるが、いいぞいいぞぉ。流石は元気っ子だな。色合いの似合っている。来なさい、撫でてやろう」

「えへへ~」

 

 

 クリスの後ろでぴょんぴょんと跳ねながらアピールしていたのは、これまた緑のビキニを切歌。腰の横についたリボンが愛らしい。

 年齢よりもずっと幼い反応を見せるが、跳ねる度にぽよんぽよんと双丘が揺れている。

 しかし、優斗はそんなところには視線すら向けず、変わらぬ元気さが何よりも良いと頭を撫でる。まるで年の離れた兄妹のようだ。

 

 

「……どうですか?」

「いきなり来たなぁ。でも、ちょっと嬉しそうだな。月読も実は結構テンション上がってんな。愛い奴め」

「…………ぶい」

 

 

 切歌の隣に静かに控えていた調は、桃色のオフショルダーワンピース。

 表情筋に中々変化が見られず、感情が希薄と勘違いされがちだが、どちらかと言えば激情型の彼女。

 その些細な表情の変化にも、身内以外に気付いて貰えるのは珍しいのか。はにかんだような表情でVサインをしてみせる。

 

 

「さあ、真打ち登場よ」

「はぇ~、そういう水着もあるんだな。可愛いよりも寧ろカッコいいわ」

「ふっ、まあとうぜ――――」

「いややっぱ可愛いわ。マリア可愛いよかわいいよマリア。結構無理してるの隠してるのが可愛いよ」

「うっ、狼狽えるなっ! 狼狽えるなっ!!」

 

 

 サングラスを目元から頭の上に移動させながらやってきたマリアは、やや珍しい白いワンショルダービキニに、同色のパレオを合わせていた。

 今は国連のエージェントであるが、昔とった杵柄でチャリティーライブも開催している彼女の事、褒められ慣れている。程度の低い褒め言葉など一蹴する。

 かに思われたが、それが仮面に過ぎないとあっさり見破られてあっさりと轟沈。素の彼女は寧ろ弱々しさある女性なのだ。狼狽えても仕方がない。

 

 

「ふふ、姉さんもハシャいでる」

「はぁ~~~~~~~~~~~~…………無理。しんどい。天使かよ」

「分かる。分かるわよ、優斗。セレナは地上に舞い降りた天使よ。いえ、切歌も調も天使だったわね。…………ハッ!? 私達、もう既に天国にいるのではないかしら……?」

「それな」

「そうやって、姉さんも優斗さんもからかうんだから……!」

「「はぁ~~~~~~~~~~~………………大天使かよ」」

「んもぅ……!」 

 

 

 普段、自己主張の少ない野に咲く花のようなセレナには、少しばかり不釣り合いな白いビキニであったが、上から羽織ったパーカーのお蔭で上品さが損なわれていない。

 マリアの妹だけあって、たわわかつ立派に成長しているが、生来の天真爛漫さや純粋さは微塵も失われていない。天使の天使たる所以だろうか。

 マリアは半ば本気で、優斗は半分以上冗談で涙を堪えるように目元を押さえるが、更にからかわれていると思ったのか、頬を膨らませてそっぽを向いた。これでは二人の反応も無理はない。

 

 

「相変わらずの姉バカぶりだな、マリアは」

「はい、そんな翼には不意打ちのパシャー」

「急に何をするのですか」

「いや、八紘さんにちょっとLINEをね。流石に撮られ慣れてるだけあって完璧ですね、これは。あなたの娘はこんなに成長しましたよっ、と」

「ちょ、え? 何処でお父様のLINEなど!?」

「いや、この前、親子で時計直しに来てくれたじゃん。なんかあったらアフターサービスするからって言ったら快く教えてくれたけど?」

「わ、私も知らないのに……いや、そうじゃない。や、やめ、止めて下さいっ! やめてぇぇぇええッ!!」

「やだなにこの翼さん、可愛すぎ」

 

 

 現役アイドルの翼は、最も布面積の少ない三角ビキニ。下半身の角度もかなり際どい。

 写真集も発売されているのでは羞恥を感じないのも無理はない。と言うよりも、自身の剣と鍛えた肉体に恥じる部分など何もないのだろう。

 不意打ち気味に写真を取られても、バッチリと決め顔で取られていて隙がない――――ように見えたが、最近関係が良好と改善されてきた父親に水着姿の写真を送られるのは流石に嫌だったらしい。涙目になりながらアワアワし出す可愛い剣であった。

 

 

「いやぁ、翼をおちょくるのが上手いよなぁ、ホント」

「ポニテ、だとぉっ!?」

「おっ、何だ? どうした? 好みか、好みなのか?」

「やめろよぉ! そういうのホントやめてぇ! 普段と違う髪型を水着に合わせるとかさぁ! 男心がきゅんきゅんすんだろうが!!」

「んー? そんなにぃ? そんなにかぁ? 仕方ねぇなぁ。ほぉれ、セクシーポーズゥ♡」

「はぁ、そういう露骨なのはいらねぇんだよなぁ。千年の恋も冷めたわ」

「急に冷静になんなよ、腹立つ!!」

「いってぇっ!!」

 

 

 同じく現役アイドルの奏は、ホルターネックの黒いビキニ。

 露出は翼ほどではないが、マリアに勝るほど豊満な肢体は正に視覚への暴力であったが、優斗がきゃーと叫んでへたりこみながらも褒め称えたのは、普段とは違う髪を上げたポニーテールの方であった。

 これまで少女達に見せてきたものとは全く違う反応気を良くした彼女は、両手を膝に宛てがい二の腕で胸を強調するポーズを取ったが、そういうのは優斗のツボではなかったのか、すくっと立ち上がる。今にも唾を吐きそうな表情だ。

 流石にこれには頭にきたらしく、奏は痛烈なローキックを見舞うが、彼も叫んではいるが足を上げて防御している辺り、予定調和であったようだ。

 

 

「うーん、ちょっとひらひらが多かったかなぁ……」

「おっ……んー、新品かな?」

「はい、前回は皆さんに選んで貰ったので、今回は自分で選んでみました! って、アレ? どうして新品だと?」

「いや、値札付いてるし」

「あうぅ。や、やってしまいましたぁ。恥ずかしい……!」

「うーん、でも初めて買うにしてはセンスいいんじゃねーかなぁ? ほら、取ってやるよ」

「お願いしますぅ……」

 

 最後のエルフナインは、あちこちにフリルがついた蒼い女児水着。

 知識量は兎も角として、身体つきも実年齢も低い彼女にはこれで十分であっただろう。

 指摘されたうっかりに頭を抱えて蹲る。どれだけ知識があっても経験がないアンバランスな精神が発露しただけではあるが、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 

 

「で、優斗さんは」

「なぁんでウェットスーツなんだよ? ここじゃ、サーフィンなんて出来ねーぞ」

「いや、これドライスーツだから。ちょっと違う」

 

 

 見目麗しい彼女達に反して、優斗はガッチガチに固めた黒いドライスーツ姿であった。手首足首と首から上しか肌色が見えていない。

 それでも身体の線が浮き出るので、肉体の屈強さは見て取れる。尤も、少女達はこれよりも遥かに逞しい肉体を日常的に目にしているので、特に感想はない。寧ろ、ドライスーツという異質さばかりが目に映る。

 これでダイビングでもするのなら兎も角、砂浜ではそぐわないにも程がある。ウェットスーツとは異なり、ドライスーツは水を通さない。利点は他にもあるが、この炎天下では相当に熱いはずだ。

 

 サーフィンという可能性もあったが、クリスが言ったように此処は遠浅で波も穏やか。とてもサーフィンなど出来はしない。

 

 

「皆には一度言った事があるが……いや、エルフナインにはまだだったな。オレには秘密があるんだよ」

「ひ、秘密……ドライスーツとどんな関係が……!」

 

 

 神妙な面持ちで訥々と語りだ出した優斗に、ごくりと生唾を飲み込んで次の言葉を待つエルフナイン。

 しかし、そんな二人の様子とは裏腹に、他の少女達は、またか、と言った感じの表情をしている。

 

 

「オレは昔、全身を無職に改造されてしまってな」

「ぜ、全身を無職に……! そ、そんな! …………あれ? …………無職は改造されてなるものではないですよね???」

 

 

 一瞬、衝撃を受けたようにエルフナインの背後で雷が落ちるようなイメージが降って湧いたが、冷静に咀嚼してみれば、彼の言い分は何から何までおかしかった。

 大量のハテナマークを飛ばされるが当の本人は、ふっ、とニヒルに笑うばかり。エルフナインの困惑はどんどん増していく。

 

 その時、優斗の頭を軽く(はた)きながら、マリアが助けに入った。

 

 

「その通りよ。優斗が言ってるのは、大病を患って手術を受けたというだけ」

「高校入った途端に病気になって、手術受けて治ったけど高校中退せざるを得なくて路頭に迷ったから、全身無職に改造されたのと同義なのでは???」

「……ああ、そういう。なら、間違ってはいない……のかなぁ?」

「いやいやいや、エルフナインちゃん。間違ってる、間違ってるよ」

「お前のそのネタ面白くねぇんだよ。笑うに笑えねぇっての。温度差で風邪引くわ」

 

 

 マリアが語った言葉こそ、全身無職に改造された、の意味であるようだ。

 今でこそ時計屋として生計を立てているが、中々に壮絶な過去である。尤も、この場にいる少女の大半は遥かに壮絶な過去を背負っているのだが。

 

 面白いかはどうかは兎も角として、そうした過去をネタに出来る強さを持っていると見るべきか、はたまたTPOを弁えない愚か者と見るべきか。

 響や奏の反応を見る限り、この場においては後者であるようだ。

 

 

「ま、兎も角な。その時の後遺症で日常生活には問題ないんだが、オレの身体、皮膚が罅割れたみたいになってんだわ」

「魚鱗癬の一種でしょうか?」

「そんな感じだったかねぇ。他にも頭と内臓と骨を同時に別の病気を併発しましてね」

「ほぼ全身じゃないですか!?」

「割とマジで死を覚悟したわ。そういう訳で、風呂に入っただけで染みるのに、海なんて入ったらオレは痛みで死んでしまいます」

『ええええええええっ!?!?!』

「ははは。ナイスリアクション!」

 

 

 流石に詳しい病名や後遺症は聞いていなかったのか、優斗を除いた全員が絶叫を上げる。

 それはそうである。アレだけハシャいでいたというのに、これでは海に誘った意味がないも同然だ。

 海に入れない人間を海に誘うなぞ、最早イジメも同然だ。その上、足として車まで出して貰っている。とてもではないが、善良かつ正義感の強い彼女達には耐えられない。

 

 

「ど、どうして言ってくれなかったのですか!?」

「いや、だって折角、誘ってくれたし」

「そういう事情なら誘わねぇよ! あたしら最低じゃねぇか!」

「気にすんなよぅ。そのために、来る途中で水着買うって言ってドライスーツ買ったんじゃん」

「男の人の水着にしては、妙に大きい袋だと思ってましたけど、そういう……」

「あー、もう! 他に隠してる事はないデスか! ないデスね!?」

「隠し事はあるさ。親や嫁さんでもねーのに何でもかんでも語るワケねーだろ。だが、此処では関係ないから安心安心。さあ、海を楽しむぞ!!」

『安心よりも不安の方が大きい!』

 

 

 海を満喫する気満々の優斗に、少女達は再び絶叫した。上へ下へと散々振り回されているのだ、無理もない。

 

 何はともあれ、こうして砂浜での思い出作りが始まった。

 九人の少女と一人の青年という奇妙な組み合わせであったが、この一時に奇跡はない。

 後に残るものは有り触れた夏の記憶。いずれは薄れていくばかりでありながら、だからこそ美しく輝かしい、生涯の宝となる思い出だけだった。

 

 

 

 

 

 

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