全身無職に改造されたが、今は何とか時計屋やってる   作:ひょっとこハム太郎

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「一夏の思い出・伍」

 

 

 

 

 

「はふぅ、満腹ですぅ」

「あ~、いっぱい食べたぁ! 満腹幸福大満足ッ!」

「腹ぁ一杯だ、ちょいと喰い過ぎたな」

「もう、響もクリスも食べた後に横になったら牛さんになっちゃうよ」

 

 

 BBQを終え、食後の満足感と気怠さの中、優斗と調、切歌を除いた皆がタープの下で休憩を取っていた。

 食後の急な運動は危険だ。消化のために胃に集まる血液が筋肉へと集まってしまい消化不良の原因となり、胃へ負担を掛けてしまい、嘔吐しかねない。特に泳ぐと言った全身運動はその典型、十二分な休息を取ってからでなければならない。

 各々が好きな形で身体を休めていた。いの一番にサマーベッドを占領した響とクリスは正に至福の一時。エルフナインの隣りで砂浜に座った未来の冷水を浴びせるような言葉も届いていないようだった。

 

 

「しかし、後片付けを飯塚さんと月読、暁に任せてよかったのだろうか」

「止めとけ。翼が行っても逆にエラいことになるぞ」

「その方が無難でしょうね」

「ふ、二人とも、いくら事実とはいえ酷いッ!」

「…………」

 

 

 響とクリスが横たわるサマーベットの後側で、輪を描いて座っているのが翼、奏、マリア、セレナの四人。

 翼は背筋を伸ばして正座、奏は豪快に胡坐をかき、マリアは足を横に崩して座り、セレナはペタンと尻を砂浜につけている。座り方にもそれぞれの育ちと性格が現れていた。

 

 翼の何から何まで世話になりっぱなしの現状を気にした発言であったが、奏とマリアは彼女の引き起こしてきた災禍を思い出しているのか、真顔であった。

 歌手として海外へと羽撃いているツヴァイウイング。海外の宿泊先となったホテルは翼が止まればものの一日で空き巣に入られたかのような惨状と化す。衣服は脱ぎ捨てるか広げられて散乱し、小物は何処へ行ったのか分からない。テレビのリモコンを探すのも一苦労である。

 片翼である奏、共にチャリティーライブに参加する機会の多いマリアは、マネージャーである緒川と共に十や二十できかない回数を汚部屋へと立ち向かっている。

 

 そんな翼がBBQの片付けになど参加すればどうなるか。

 鎮火させた筈の炭に再び火が付き、そのままひっくり返して砂浜を灰で汚し、洗おうとすれば灰と水が飛び散り、食器の割れる音が連続する悲劇は想像に難くない。

 その程度であればまだいい。防人を理由にまたトンチキさが全面に押し出された行動でもされれば、本気で怪我人が出かねない。二人の真顔もやむなし。

 片付けられない女としての自覚はあるが、それはそれとして不甲斐なさから涙目で悲鳴じみた声を上げる。それでも二人は、頑として譲らぬ姿勢で首を振った。年長者として年下を守る義務があるのだ。

 

 悲劇とも喜劇とも取れるやり取りの中、ただセレナだけが憂いの表情を浮かべていた。

 

 

「あー、疲れたデス」

「私達、頑張った」

「二人ともよくやった。お前達の勇姿はこのBBQ将軍の目に焼き付いたぞ」

「まだやってんのかよ、そのキャラ」

 

 

 疲れの色が濃い切歌とやや得意げな表情の調、その後ろには頑張りを認めるように頷いている優斗の姿があった。

 BBQ用品を全て綺麗に洗い、車に運ぶのは重労働。主に調が洗いを、切歌は優斗と共に拭き取りと車への積み込みをそれぞれ担当したが、まだまだ成長しきっていない身体の持ち主には少々酷であったかもしれない。

 

 まだBBQ将軍とかいうキャラを押している優斗に奏は呆れの視線を向けていたが、当の本人は手伝ってくれた二人の頭を豪快に撫で回すばかり。

 撫でられている方は、はにかんでいだけで抵抗はしない。こうした父や兄のような存在に褒められた経験がないからだろう。慣れない気恥ずかしさと暖かさに身を任せてしまいたくなる気持ちも分からなくはない。

 

 

「ほらほら、優斗さんは此処デス」

「正に両手に花。男冥利に尽きる」

「両手に花ねぇ。セレナは兎も角、マリアは薔薇みたいに触れたら怪我する系の……」

「――――何?」

「いででで、な、なんでもないですよぉ?」

 

 

 切歌と調に手を引かれ、半ば無理矢理にマリアとセレナの間に座らされる。

 並の男なら美女二人に挟まれれば萎縮してしまいそうなものだが、年下の美少女九人の中に下心無しで飛び込んで一緒に遊べる男には何の動揺も見られない。

 寧ろ、反応を見せたのは他の者だ。奏はピクリと片眉を上げ、そんな相方の様子を溜息を吐きながら見て見ぬ振りをしている翼、してやったり顔の切歌と調。各々の思惑が見て取れる。

 

 それぞれがそれぞれの慕い方をしているものの、特に切歌と調に関しては一際強く兄のように慕っている。優斗さんお兄ちゃん化計画を口にしたように、マリアかセレナとくっつけようとしている節すらある。

 面倒見、良し。誠実さ、良し。総合的な人柄、良し。ルックス、並。コミュ力、最強。収入、詳しくは聞いていないがそれなり。ゆるふわ悪ノリ大好きさが偶に瑕であるが、必要以上に人を傷つける真似をしないので許容範囲。マリアもセレナも憎からず思っている。確かに優良物件と言える。

 マリアは精神的に脆い部分があるし、セレナはセレナで優しすぎて断る事を知らない部分がある。不安にもなろう。二人共、口ばかり達者な男にコロっと騙される可能性が高い。家族として、そうした自体を防ぐために、いっその事……! という建前の下に立てられたのが優斗さんお兄ちゃん化計画であった。最も、二人のためというよりは、家族になれば毎日遊んで貰えるという気持ちが強そうなあたり、年相応である。

 

 とは言え、優斗は冗談半分に余計な事を言って、マリアに耳を引っ張られている辺り、どうなる事か。

 

 

「それよりも優斗さん。ちゃんとご飯食べました?」

「……う、バレてたか」

「気付かないほど気が効かない女だとでも思ったの?」

 

 

 マリアから耳を離された瞬間、反対側からセレナにズイと迫られ、優斗は頬を掻く。その姿にマリアは呆れ顔で溜息を吐く。

 どうやらセレナが憂いていたのは、そういう理由であった。BBQの最中、肉や野菜、魚介を焼く姿ばかり目撃していたが、逆に食べるところは殆ど見ていない。彼女にしてみれば自分達ばかり楽しんで、申し訳ないのだろう。

 

 

「そういうとこだぞ、ほい」

「へいへい、どうも。まあ、楽しみすぎて夢中になりすぎたわ。無職に改造されてから食細くなってんだよ。内蔵、色々切り落とされちまったしなぁ」

「ですから、そういうことは軽々しく口に………………いえ、食が細くてよくそれだけの身体を保てますね。叔父様のような……」

「あの人と一緒にするの止めてくれる???」

 

 

 奏も気付いていたらしく、心配そうな表情で冷茶の入ったコップを渡した。体調と言うよりも、楽しむ事を名目にして自分をないがせにする在り方を心配しているようだ。

 

 けれど優斗は反省はしているようであったが、反論として自らの境遇を明かす。

 内臓系の病は、元々ある肉体の治癒力を頼りに、生きるために必要な機能だけを残して患部を切除する場合が大半。思い出したくもない過去らしく、珍しく苦虫を潰したような表情だ。

 

 少女達も中々に重い過去を持っているが、とてもではないが此処まで明け透けにはなれない。

 それを言い訳のために、軽く明かされてはどんな表情をしていいのか分からない。ただ、翼ははたと気づく。彼女の目からは控えめに見て、優斗の肉体はアスリートレベルに完成されている。骨の太さも、筋肉の量も常人離れしている。一切鍛えずにこれならば確かに弦十郎ともタメを張れる天性の肉体の持ち主だ。

 だが、優斗にしてみれば嬉しくも何ともない。比較対象として遥かに格上過ぎて、不遜にもほどがあるからだ。

 

 

「と、兎に角、夕食はしっかり食べて下さいね?」

「セレナの言うこと、ちゃんと聞きなさい?」

「そうだね。セレナの言うことだからね。セレナの御言葉は全てに優先しないとね」

「分かればいいのよ、分かれば」

「姉さん、優斗さん?」

「「ヒェッ」」

 

 

 当初の位置からおかしな方向に転がり始めた会話を、慌てて軌道修正するセレナ。

 その頑張り屋さんな姿に、マリアと優斗は思わずホッコリ。だが、低くなったセレナの声に、同時に短く悲鳴を上げる。

 普段、怒らない人間を怒らせると怖い。翼も口元を引き結び、奏は頬を引き攣らせ、切歌はマリアの腕にしがみつき、調はだらだと冷や汗を掻いている。どうやら、少女達のヒエラルキーにおいてセレナは頂点に近い立ち位置のようだ。

 

 私は真面目に言ってるんです、という強い圧とオーラに優斗とマリアはこくこくと頷くばかりであった。

 

 

「お、おほん。あー……えーっと、と、ところで、叔父様や緒川さんは元より、藤尭さんや友里さんとも知り合いだそうですね」

「……んッ!? んぁー、そうだなぁ。立花と小日向に出会って、その後、立花が天羽をウチに連れてきたろ? で、連鎖して翼が来て」

「もうその時点でかなりの芋蔓」

「だよなぁ…………で、天羽とか翼が変なのに引っかかってないか弦十郎さんと緒川さんが一緒に見に来て、行き倒れてる雪音に餌付けしたらノイズの事件に巻き込まれて、その後に藤尭さんと友里さんとも知り合ったんだよなぁ。改めて考えるとなんだこれ」

「ちょっとした特異点になってるデスよ」

「ほんとにな。何だこれ、どうなってんの? 全員とLINE交換してるけどさぁ」

 

 

 可憐さを残したまま加速度的に恐ろしさを増していくセレナから救うように、翼は無理矢理話題を方向転換させる。

 カタカタ震えるばかりであった優斗は、内心では拍手喝采を与えながら乗るのだったが、加速度的に目が死んでいく。

 

 彼は、彼女達や弦十郎を筆頭とした大人達が何をしているのか、何と戦っているのか踏み込んで聴いてはいない。守秘義務といった小難しい契約を結んでいたし、それほど興味があったわけでもないからだ。ただ、ノイズといった超常災害に立ち向かっている事や多くの人命を救っている事は知っている。

 正直、そんなものに関わりたくはなかったのだが、どういう訳だか自分は何もしていないのに周りに集まってくるのだ。それは目も死のうというもの。

 だが、彼は彼で人が良い。関わりたくない繋がりなど絆ごと断ってしまえばいいものを、楽しいから、良い人だから、と続けているのだから。

 

 

「弦十郎さんとはこの間、映画に行ったし」

「あー、弦十郎の旦那、映画について話し合える相手に飢えてたしなぁ」

「緒川さんとはたまたま昼飯時に会って、お気にの定食屋に一緒に行ったわ」

「そう言えば、そんな事を言っていたような……」

「藤尭さんとは飲みに行ったろ?」

「二日酔いで気分悪そうにしていたのを見たけど、そういうこと」

 

 

 次々に明かされるコミュ力無双に、優斗なら納得という反面、呆れも強い。

 響や切歌も中々のコミュ力の持ち主であるが、流石に彼ほどではない。それほど深い関係ではないにも関わらず、積極的に相手の懐に踏み込んでいける躊躇の無さは真似できまい。

 

 

『へー、弦十郎さん、映画好きなんだ? 今度、オススメ教えてよ。何なら一緒に見に行かね?』

『あ、緒川さんじゃん。どうしたの? 昼飯まだなの? じゃあ美味い場所教えたげるよ。行こ行こ』

『あれ、藤尭さん? 一人で飲み行くの? 付き合うから奢って奢って』

 

 

 それぞれの状況と台詞が、それぞれの頭の中にありありと浮かんでしまう陽キャ具合と警戒心を解きほぐす善人振り。

 国連所属可の組織の一員が一人の一般人と付き合いが合っていいのか、と考えるだろうが、その辺りは大人同士。守るべき秘密を口にせず、逆に聞きもせず、あくまで対等の友人・知人としての付き合っていくのならば問題はない。

 

 微笑ましいやら羨ましいやら。

 人付き合いがどちらかと言えば苦手な調や翼など尊敬の眼差しすら向けていた。

 

 

「で、友里さんは何か合コンの人数合わせに付き合わされた」

『ちょっと待て』

「えッ!? ちょっと何この空気怖いッ!!」

 

 

 が、それも其処まで。特大の地雷を自ら踏み抜いた。

 この男、基本個人の地雷原でタップダンスを踊っても互いに無傷で生還するが、対人関係では別である。

 自分が重要視されている、好意を寄せられているなどとは考えないので、自分の発言がどれだけの威力を秘めているのかも考えないし、思い至らない。好意を寄せられたとしても、自分では応えられないと無下にしてしまう。

 

 急速に凍り付いていく場の空気に優斗は恐れ慄く。夏場だというのに氷点下のようだ。

 

 異様に鋭い目線で貫いていくる奏、マリア、セレナ。

 片手で覆い隠してやってしまったなと言わんばかりに首を振る翼。

 ぶーぶーとブーイングしてくる切歌と調。

 それだけではない。休みながら話を耳にしていたらしい響はサマーベッドから半分だけ顔を出して無表情で覗き込んできている。

 クリスと未来は、優斗の不用意さを咎めるように重苦しい溜息を同時に吐いていた。

 ポカポカと日光浴をしているエルフナインだけが唯一の癒やしである。なお、空気の変化に気付いていないので救いにも助けにもならない模様。

 

 

「…………いやらしい」

「いやあの、月読、合コンって言っても、別にいやらしいことするわけじゃないんだよ?」

「不潔デス」

「不潔じゃねーし! 婚前交渉なんて不健全だろーがッ!!」

「これ、本気で言ってるんでしょうね……」

「おら、正座だ。このED野郎」

「天羽ッ、その手のシモの話を入れてくるのは止めるんだッ! オレがお前等にどれだけ気を使ってると思ってるッ! 主にセクハラと条例と児ポ法的な意味で!!」

「そんな事より優斗さん、正座をしましょう?」

「………………は、はい」

 

 

 突如として始まった己の魔女狩りに、何とか話題を切り替えよう試みるも悉くが失敗。

 逃げ場もなくなり、年下の少女達に対して縮こまって正座に移行する情けない二十五歳。頭の中にあるのは、どうしてこうなったという思いだけである。

 

 

「じゃあ、まず合コンは何次会まで行ったの?」

「は、はい、マリア検察官。ご、五次会くらいまでですぅ……」

「ほぉーう? そんなに行ったら朝までコースだな?」

「天羽裁判官、朝まで飲んで騒いで遊んでました……」

「そして、途中でいやらしいことをしたんですね?」

「セレナ裁判長ッ! やってません! 誓っていやらしいことなどしてませんッ!」

「優斗さん、それ本当ですよね? 嘘ついてませんよね? 信じていいんですよね?」

「た、立花弁護人、目が怖いッ! やってないッ! それでもボクはやってないッ!」

「この状況でもボケられるとか余裕あんな、コイツ……」

「そんなだから優斗さんは優斗さんなんだよね」

「シャラァップ!! 雪音傍聴人は黙っててッ! 小日向傍聴人、オレがオレである事がそんなに悪いことなのぉッ!?」

「……??? 優斗さんは優斗さんのままで素敵だと思いますよ?」

「エルフナイン、君だけがオレの光だぁッ!」

「エルフナイン、君は関わらなくていい。薄汚れた大人の言い分などにな」

「あぁッ! 全てが闇に閉ざされたぁッ!!」

 

 

 必死。正に必死の形相で真実のみを語る。

 ニコニコと笑いながら目が笑っていないマリア。今にも唾を吐きそうな奏。圧の強い無表情を向けてくるセレナ。影になっても分かる暴走状態時のようなまんまるお目々を向けてくる響。

 四人に囲まれて見下され、いよいよ命の危機を覚える優斗であったが、何が悪かったのか全く気付いていない辺り重症である。頭の病気は未だに治っていないようだ。

 

 そんな彼の様子に、クリスと未来は海の彼方を眺めながら茶々を入れ、エルフナインが救いになるかと思われたが、翼の無慈悲なインターセプトが炸裂する。

 

 

「まあ、其処まで言うなら信じてやるか。藤尭さんと一緒で童貞ということだな」

「天羽、やめよ? ホントやめよ?? シモの話もオレと一緒に無関係な藤尭さんへ無慈悲な致命傷を与えるのやめよ???」

「実際、何処まで行ったのかしら?」

「ホントに何もないって。オレは盛り上げ役やってただけだし。つーか盛り上がり過ぎてだーれも連絡先交換してねーでやがんの。後で友里さんに怒られたんだけど。理不尽過ぎない???」

「友里さんったら……それ、合コンと言えるんですか?」

「さあ? 飯食って酒飲んでカラオケ行って酒飲んでボーリング行ってダーツやってビリヤード遊んで酒飲んで帰るのが合コンと言えるなら合コンだろう」

 

 

 ようやく緩んできた場の雰囲気に、優斗はホッと息をつく。本人は知らないところで致命傷を食らっている藤尭に涙しながら。

 

 本当に優斗は数合わせだったのだ。

 友里としては生粋の陽キャである優斗を呼べば盛り上がると思ったのだろう。装者達の幾人かが好意を向けているのを察している故に、もし彼がそのような雰囲気になるようであれば邪魔をするつもりでもあった。

 

 ただ、彼女のあわよくば彼氏ゲット合コン作戦に破綻を来したのは何時だったか。恐らくは優斗を呼んだ時点であろう。

 彼の場を盛り上げる能力は一流を通り越して常軌を逸していた。誰も彼もが酒の魔力と彼の陽キャぶりの前にテンション爆上げ、バイブスMAXといった感じで、何時の間にやら男と女の何やかやなど吹き飛んでいた。合コンに参加していた者は、あくる日に楽しかったなぁと思った瞬間、あれだけ仲良くなったのにも関わらず、誰とも連絡先を交換していない事実に戦慄したと言う。

 

 

「セレナ裁判長ッ! 以上を以て、優斗被告人の無罪を主張します!」

「立花弁護人、今さっきまで君、何一つ弁護してくれてませんでしたよね? でしたよね?」

「飯塚被告人の無罪を言い渡します」

「やったぜ、逆転無罪狂い咲きィッ! でも君等、怖すぎない? 最近の若者ホント怖い。合コンくらいで……」

『――――――は?』

「ホント最低だよね、合コン。いやらしいッ! そんなのに参加する奴の気がしれないわッ! 全くそんなのに参加したのは誰だッ!! ボクですッ!!!」

 

 

 再び、冷たく尖りだした四人の視線に、無抵抗主義を主張するかのように音速の土下座を見せる優斗。情けなさも此処まで来ると清々しい。

 

 

(しかし、飯塚さんは皆の好意に気付いていないのだろうか……)

(朴念仁ってレベルじゃねーぞ)

(やったデス、調。あたし達の計画に支障なしみたいデスよ)

(そうだね、切ちゃん。でも、マリアもセレナも奥手だから、私達が頑張らないと……)

(確実にわざとやってるんだろうなぁ、アレ。優斗さんくらい察しが良ければ、気付いてないわけないし…………あーぁ、響も皆もかわいそ)

(…………皆さん何の話をしてるんだろう?)

 

 

 

 

 





――――こうして夏は過ぎて行く。各々の思いや願いを乗せて。

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