もう一人の勇者 作:大和
それから三日、遂に帝国の使者が訪れた。
現在、迷宮攻略に赴いたメンバーと王国の重鎮達、そしてイシュタル率いる司祭数人が謁見の間に勢ぞろいし、レッドカーペットの中央に帝国の使者が五人ほど立ったままエリヒド陛下と向かい合っていた。
「使者殿、よく参られた。勇者方の至上の武勇、存分に確かめられるがよかろう」
「陛下、この度は急な訪問の願い、聞き入れて下さり誠に感謝いたします。して、どなたが勇者様なのでしょう?」
「うむ、まずは紹介させて頂こうか。光輝殿、前へ出てくれるか?」
「はい」
という声で天之河は一歩前にでる。
俺はそれを見ると軽く腰にある剣をすぐ抜けるようにする
やばいなあの男
俺は平凡そうな顔に背もそんなに高くない
でもそれ以上にこの中で俺と同じくらいの剣の腕がある。
隙のない体に背はきちんと伸びており、
面白いほどこっちを見ている
それも多分変装。かすかに耳から魔力が流れている。
……よくも悪くも明らかに敵意を持っている
それは確実だし、多分隙を見せない方がいいだろう
「……次、大久保球児。」
「……」
俺は無言で一礼する。その時先読と殺気から俺は剣を取り出しすぐに防御に回る
するとかーんという音が流れすぐさま金属音が流れる
「ほう〜これを防ぐか。」
「…そっちこそ随分派手な挨拶じゃねーか。」
俺はバックステップを踏み相手を睨む
「球児。」
「シズ来るんじゃねーよ。このおっさんお前より強いから。明らかに殺す気できたし俺でさえこのステータスで勝算は6割くらいしかないからな。」
「……ほう坊主。お前だけはやり甲斐がありそうじゃねーか。」
「うっせ〜よ。皇帝陛下。さっさと死ね。」
俺はピンを取り出しそして足元に投擲すると限界突破を初手から使う
虹色のオーラが流れ、俺はいかにも隙だらけのように見えるように誘導するが
「……ちっ。降参だ。」
舌打ちして両手を上げる皇帝陛下。限界突破使った時点で負けることが確定したからだろう
「……」
俺は未だに警戒を取っていると肩を竦め剣を納めると、右の耳にしていたイヤリングを取った。
すると、まるで霧がかかったように護衛の周囲の空気が白くボヤけ始め、それが晴れる頃には、全くの別人が現れた。
四十代位の野性味溢れる男だ。短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。
その姿を見た瞬間、周囲が一斉に喧騒に包まれた。
「ガ、ガハルド殿!?」
「皇帝陛下!?」
すると驚くが俺は未だに剣を出し限界突破を続ける
「お前どこで俺が皇帝陛下だと気付いた。」
「座り方だ。明らかに護衛のはずなのに座り方に隙がなく姿勢や視線が俺を向いていた。皇帝陛下は王女から戦闘好きで強い奴を従えたいそれも実力主義であるなら一番強い俺に喧嘩を売ってくるのは当たり前だろうが。」
「一番強い?そこの勇者よりもか?」
「当たり前だ。あいつはただの子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口で、実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだ。勇者を試しにきたんだろうから先に伝えておくよ。」
するとざわざわと声が王宮内に広がる
「……ほう、その心は。」
「一つは年齢、二つ目は宗教問題、三つ目は戦争の立ち回り方って言ったところか?」
「おおむねあっているな。やめだ。こいつはバケモンだ。どうせ奥にいる3人もきづいていたんだろ?」
「いや左に3人。右に2人もいるから合計8人だろ?皇帝陛下の護衛がそんなに少ないはずないからな。」
「……」
すると驚いたように俺を見る。どうやら図星らしい
「ちっ。こいつだけは認めてやる。お前名前は?」
「大久保球児。」
「お前帝国にこないか?優遇するぞ。」
敵意がなくなったことで俺は限界突破や武装を解除する。
「まぁ俺はそっちの方がやりやすそうだし、そうでもいいけどやめとくよ。生憎誰かを殺してまでも守りたい奴がいるからな。」
「ほう。女か?」
「……否定はしない。片想いなだけだけど。」
なんとなくだけど嘘はつきたくなかった。すると目を見開いてそして笑い始める
「……やっぱお前欲しいな。側近としておいときてぇ。多分実力まだ隠してやがったし。忠誠心の塊みたいな奴だしな。」
「案外馬は合いそうだけどな。あんたみたいな上がいたら面白そうだしこんどは俺がそっちに行かせてもらうさ。ちゃんと客として。」
「ほう。それなら楽しみに待っておくとするか。」
すると俺と皇帝陛下の笑い声がこだまする
それにただ呆然と他の人は首を傾げる
結局腹黒い奴同士の戦いなんて分からないものである
「……随分攻めたね。」
「思いっきり雷が落ちた後に話す言葉かそれ。」
俺は翌日の朝食前に思いっきりシズから絞られてそして泣かれて。かなり精神的にボコボコになった俺はぐったりとしてしまう。
「はぁ、たく過保護すぎるんだよ。あいつオカンかよ。」
「まぁ、雫ちゃんも意識している証拠だと。」
「意識してんのか?あいつ。俺から見たら俺が弟分としか見られてないと思うんだが。」
……すると否定できないと思っているんだろうか白崎は気まずそうに目線を逸らす
「はぁ、まぁゆっくり焦らず頑張るさ。俺と結ばれなくてもあいつが幸せになってくれれば俺はそれでいいし。」
俺はそうやって黒パンを食べようとすると白崎がクスって笑う
「……なんだよ。」
「なんかいいなって思って。大切にされているんだね。雫ちゃん。」
「なっ。」
白崎は笑い続けると俺は言い返そうとしたが
「…好きなんだから仕方ないだろうが。」
俺は照れたほおを隠しながら朝食をかきこむ
「んじゃ部屋戻っている。シズにもそう伝えておいて。」
「うん。それじゃあ後で。」
「あぁ。」
俺はため息を吐きそして外を見る
……しかしその二ヶ月後
俺たちは目をそらし続けていた現実を突きつけられることになる