もう一人の勇者 作:大和
「なるほどな……やっぱ魔人族は帝国と樹海にも手を出していたか」
「肯定です。帝国の詳細は分かりませんが、樹海の方は強力な魔物の群れにやられました。あらかじめ作っておいたトラップ地帯に誘導できなければ、俺達もヤバかったです」
ハウリア族や亜人曰く、樹海にも魔人族が魔物を引き連れてやって来たらしい。【ハルツィナ樹海】は大迷宮の一つとして名が通っているから魔人族が神代魔法の獲得を狙っている以上当たり前と言えば当たり前だ。
「……はぁ、んでハウリア族はその後そいつらを撃退したものの帝国が労働力不足で亜人を奴隷として労働力を捕まえたのか。……悪循環だな。」
「えぇ。しかし、ボス。〝も〟ということは、もしや魔人族は他の場所でも?」
「ああ、あちこちで暗躍してやがるぞ? まぁ、運悪く俺がいたせいで尽く潰えているけどな」
「お前が狙いの一つでもあるのだから当たり前と言ったら当たり前なんだけどな。」
「それもそうか。」
ハジメはため息をはくと
「まぁ、大体の事情はわかった。取り敢えず、お前等は引き続き帝都でカム達の情報を集めるんだな?」
「肯定です。あと、ボスには申し訳ないんですが……」
「わかってる。どうせ道中だ。捕まってた奴等は、樹海までは送り届けてやるよ」
「有難うございます!」
「姫さんもそこで別れるけど気をつけてくれ。一応ハジメが小型のゴーレムを作ってくれたから何かあったら連絡してくれ。一応護衛としても使えるらしいから。」
「大久保さん。ハジメさん本当にありがとうございました。」
「いや。こっちこそお世話になった。」
といい都から少し離れた場所で姫さんたちとパル達を降ろした。そして、一行は【ハルツィナ樹海】に向かって高速飛行に入るのだった。
「……これはすげぇな。」
初めてはいる樹海は一寸先を閉ざすような濃霧をもって歓迎を示した。
亜人族がいなければ絶対に感覚を狂わせるようだが亜人達が周囲を囲むようにして先導してくれる。
そうして歩くこと1時間
「ハジメさん、武装した集団が正面から来ますよ」
「あぁ、10人だな。戦意は獣人族がいるからかないみたいだけど」
シアと俺がそう告げると周辺の亜人が驚く
武装した虎耳の集団が現れた。全員、険しい視線で武器に手をかけているが、彼等も亜人族が多数いる気配を掴んでいたらしい
「お前達は、あの時の……」
「知り合いか?」
「あぁ、前に樹海によった時にな。」
「一体、今度は何の……って、アルテナ様!? ご無事だったのですか!?」
「あ、はい。彼等とハウリア族の方々に助けて頂きました」
虎の獣人は、ハジメに目的を尋ねようとして、その傍らにいたアルテナに気がつき素っ頓狂な声を上げた。そして、アルテナの助けてもらったという言葉に、安堵と呆れを含んだ深い溜息をついた。
「それはよかったです。アルフレリック様も大変お辛そうでした。早く、元気なお姿を見せて差しあげて下さい。……少年。お前は、ここに来るときは亜人を助けてからというポリシーでもあるのか? 傲岸不遜なお前には全く似合わんが……まぁ、礼は言わせてもらう」
「そんなポリシーあるわけ無いだろ。偶然だ、偶然」
シアが、こっそり何があったのかを簡潔に説明すると、
「なんか日本にいた時のハジメみたいだな。」
俺がそう呟くとメイと香織が頷く
「それより、フェアベルゲンにハウリア族の連中はいるか? あるいは、今の集落がある場所を知ってる奴は?」
「む? ハウリア族の者なら数名、フェアベルゲンにいるぞ。聞いているかもしれないが、襲撃があってから、数名常駐するようになったんだ」
「そりゃよかった。じゃあ、さっさとフェアベルゲンに向かうぞ」
「あいよ。ついでにここ俺の気配感知半分くらいエリア削減くらうからシアもお願いしていいか?多分同じくらいのエリアだし。」
「わかりました。」
そして辿り着いた先には巨大な門が崩壊しており、残骸が未だ処理されずに放置されたままだった。
「ひどい……」
誰かがそう呟くが
戦争や進行って基本こういうものだと割り切っている。
俺はぶっちゃけ帝国と考え方が似ていて強い方が正義という考え方だ
「……とんだ再会になったな、南雲ハジメ。まさか、孫娘を救われるとは思いもしなかった。縁というのはわからないものだ。……ありがとう、心から感謝する」
「俺は送り届けただけだ。感謝するならハウリア族と球児にしてくれ。俺は、ここにハウリア族がいると聞いて来ただけだしな……」
「球児?」
「全員を奴隷紋から解放した俺の親友だ。」
「どうも。」
俺は軽く頭を下げる
「それは本当にありがとう。」
「別に。こちらこそ親友がお世話になったみたいで。」
と俺は頭を下げる
「まぁ、貸し一つってことでお願いします。また力を借りるときがあるかもしれないので。」
「うむ。分かった。」
その後、ハウリア族はタイミング悪くフェアベルゲンの外に出てしまっているが直ぐに戻るはずだと聞き、アルフレリックの家で待たせてもらうことにした。アルフレリックの言う通り、差し出されたお茶を一杯飲み終わる頃、ハウリア族の男女が複数人、慌てたようにバタバタと駆け込んできた。
「ボスゥ!! お久しぶりですっ!!」
「お待ちしておりましたっ! ボスゥ!!」
「お、お会いできて光栄ですっ! Sir!!」
「うぉい! 新入りぃ! ボスのご帰還だぁ! 他の野郎共に伝えてこい! 三十秒でな!」
「りょ、了解でありますっ!!」
「……こいつら見ると弟子を思い出すな。」
「あぁ、なんか既視感があると思ったらそういえばあなたにもそういえばいたわね。」
ここまではひどくないはず
俺はそんなことを思いながら俺はお茶を飲む
「あ~、うん、久しぶりだな。取り敢えず、他の連中がドン引いているから敬礼は止めような」
「「「「「「「Sir,Yes,Sir!!!」」」」」」」
多分これ止まらないな
俺は苦笑すると
「ここに来るまでにパル達と会って大体の事情は聞いている。中々、活躍したそうだな? 連中を退けるなんて大したもんだ」
「「「「「「きょ、恐縮でありまずっ!!」」」」」」」
最後が涙声になっているのはご愛嬌。ハジメは、感動に震えるハウリア達にパル達から預かった情報を伝える。すなわち、カム達が帝都へ侵入したらしいという情報を掴んだ事と、自分達も侵入するつもりであること。そして、応援の要請だ。
「ハウリア族以外の奴等も訓練させていたみたいだが、今、どれくらいいるんだ?」
「……確か……ハウリア族と懇意にしていた一族と、バントン族を倒した噂が広まったことで訓練志願しに来た奇特な若者達が加わりましたので……実戦可能なのは総勢百二十二名になります」
多いな。
帝国ほどではないが亜人は小さな村が多く並び生活していると聞いている
「それならそれを軸に救出作戦の軸を練ればいいか?」
「あぁ。それくらいなら全員一度に運べるな。……イオ、ルニクス。帝都に行く奴等をさっさと集めろ。俺が全員まとめて送り届けてやる」
「は? はっ! 了解であります! 直ちに!」
するとえっってシアが俺たちを見るけどハジメが仲間の家族を見捨てないっていうのを俺は分かっていた
「ハ、ハジメさん……大迷宮に行くんじゃ……」
「カム達のこと気になってんだろ?」
「っ……それは……その……でも……」
ハジメに図星を突かれて口籠るシア。
どうせハジメのことを気遣っていたのはあまりあって時間がたっていない俺でも分かることだ
ハジメは、余計な手間を取らせていると恐縮して口籠るシアの傍に寄り、そっとその頬を両手で挟み込んだ。
「ふぇ?」
突然のハジメの行動に、シアがポカンと口を開けて間抜け顔を晒す。そんなシアに、ハジメは可笑しそうに笑みを浮かべながら、真っ直ぐ目を合わせて言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「シア、お前に憂い顔は似合わねぇよ。カム達が心配なら心配だって言えばいいだろう?」
「で、でも……」
「でもじゃない。何を今更、遠慮なんてしてるんだ? いつもみたいに、思ったことを思った通りに言えばいいんだよ。初めて会った時の図々しさはどこにいったんだ? 第一、お前が笑ってないと、俺の……俺達の調子が狂うだろうが」
「ハジメさん……」
ぶっきらぼうではあるが、それは紛れもなくシアを気遣う言葉。シアを想っての言葉だな。それを理解して、シアは自分の頬に添えられたハジメの手に自分のそれを重ねる。
「あまり実感がないかもしれないが……これでも、その、なんだ。結構、お前の事は大切に想ってるんだ。だから、お前の憂いが晴れるなら……俺は、俺の全力を使うことを躊躇わない」
「ハジメさん、私……」
「ほら、言いたいこと言ってみろ。ちゃんと聞いてやるから」
頬に伝わる優しくも熱い感触と、真っ直ぐ見つめてくるハジメの眼差しに、シアは言葉を詰まらせつつも、湧き上がる気持ちのままに思いを言葉にした。
「……私、父様達が心配ですぅ。……一目でいいから、無事な姿を見たいですぅ……」
「全く、最初からそう言えばいいんだ。今更、遠慮なんてするから何事かと思ったぞ?」
「わ、私、そこまで無遠慮じゃないですよぉ! もうっ、ハジメさんったら、ほんとにもうっですよぉ!」
拗ねたように頬を膨らませているが、その瞳はキラキラと星が瞬き、頬はバラ色に染まっていて、恋する乙女を通り越して完全に愛しい男を見る女の顔だった。
シア自身、そこまでハジメに遠慮しているという自覚はなかったのだが、ライバルが増えてきたため、無意識のうちにいい所を見せようと気張ってしまっていたんだけど
「シアちゃんはもっと甘えないとダメだよ。」
「……ん。シア、可愛い」
「ふむ、たまには罵り以外もいいかもしれんのぉ~」
「うぅ~、羨ましいよぉ~」
とハジメの女たちはそんな反応を見せるんだけど
「……おい。なんでお前ら俺を見る。」
谷口とシズ、そしてなぜかアルテナは俺の方を見ていた
「……なんか既視感があるんだけど。親友っていうことも似るのかしら。」
「もうシズシズいいなぁ〜。鈴も言われてみたい。」
「そうですわ。」
なんで修羅場っぽくなっているの?
俺は少し戸惑うとどこかからか自業自得という声が聞こえてきたような気がした
その時、ちょうどいいタイミングでイオがやって来た。どうやらハウリア族の準備が整ったようだ。滅茶苦茶迅速な対応である。
俺達は、アルフレリックとアルテナ達の見送りを受けながら樹海を抜け、帝都に向けて再びフェルニルを飛ばした。