もう一人の勇者 作:大和
翌日俺とハジメ、そしてメイは後方の方を歩いていた
というのも俺は気配感知、メイは罠感知スキルを使い周囲を警戒しているからだ
浅い階層の迷宮は良い稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。馬鹿騒ぎした者が勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地宜しく迷宮を犯罪の拠点とする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立したのだとか。入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているらしい。
その中でも俺たちは戦闘組でもなく後衛、それも
「すいません。右曲がったところにトラップです。」
「あぁ、それなら左から行こうか。」
とか
「左サイドからおよそ5匹ほどの敵気配があります。」
「うむ。それじゃあ次の組み準備しろ。」
などと情報伝達係として仕事をしている
というのも簡単にいうならばメイとハジメはステータスが普通の転生者よりも低く、そして弱いのが特長だからだ。
弓よりも魔法の方が使いやすく、それも威力が高いせいで弓術はあまり慕われていない職業であり、
そして何より、唯一アーティファクトがない職業だったのだ
弓は古代から使われていたらしいがここは科学より魔法が優れているので弓は基本は使わないらしいのでメイは王宮の人から迫害されていたんだが
「お前らえげつない戦い方するな。」
俺はメイとハジメの連携がすごくえげつない戦い方をしていたのに気づいていた
というのもメイが麻痺属性の弓を撃ち動きを止めそれを確実に錬成で穴に埋め二人でタコ殴りにするという
……モンスターが可愛そうな戦い方をしていた
「……はぁ。」
俺は近づいてきた敵を切り捨てながらの警戒を怠らず進む
「……言っとくけど球児の方が可哀想だからね。」
「バインドからのアーティファクトの斬撃の組み合わせは卑怯だよ。」
光属性初級魔法で普通の魔力だったらあんまり効果のないバインドは俺が使うと本当に鉄の網ほどの束縛効果を与えることができる。
なおこれをシズに一度やったところガチで怒られ1時間正座のまま俺の部屋で説教をくらうことになった
詠唱時間短いし、一番扱いやすい束縛魔法だったしな
「はぁ。階段からおりると擬態したモンスターが3いや4体ほどいますね。」
「ほう。気配感知だと擬態したとかはわからないはずだが。」
「気配が動くことがないモンスターはこの階層ではロックマウントしか出現してないですよね?」
「そうだな。マッピングデータにはそう書いてあるし間違いはないだろう。」
「ロックマウントは壁に擬態して冒険者を襲うってハジメが言っていたんで。それなら擬態しているって考えても不思議ではないと。」
「ほう。」
すると感心したようにハジメと俺の方を見るメルド隊長。
ダンジョンを考えるとトラップやモンスターの予習をするのは当たり前だろう
「……弱点は。」
「ロックていいながらも比較的柔らかいモンスターで直接攻撃に弱い。そのぶん体力が高いし正直見た目は気持ち悪いけど、油断さえなければ一人でも勝てる相手です。」
「……」
するとふっと笑い
「次から、キュウジが前衛につけ。気配感知は光輝と交代だ。」
「えっ?」
すると天之河が驚いたようにメルド隊長を見る
「ちょ、何でですか?」
「今までの戦闘を見ていると派手さはあるが周囲のことを全く考えていない戦闘と敵と接近したら確実に殺し、前衛職にも関わらず後方、それも周辺の警護を自分から頼みでたキュウジの方がダンジョン探索に向いている。」
「なっ?」
「……俺はやめておいた方がいいと思いますよ。」
冷淡に答えながらも気配感知は続けてる。
とりあえずラストの20層くらいなら前衛を任されても大丈夫だろう
「うむなぜだ?」
「前衛の連携については俺はこのメンバーであれば八重樫としか連携練習をとっていません。前衛の連携はかなりシビアで一つ間違えても致命傷になる可能性があります。」
「……ほう。しかしそれを試すのが訓練だと思うが。」
「悪いですけどここはダンジョンだ。決して訓練ではなくどこから襲われてもおかしくはないし命がけで来ている。……俺も連携練習ではなく、王国兵士を相手に実践練習を多くとっていたのは悪いですが、それでもダンジョン内での戦闘はソロでない限り今は役立たずなんで。」
……するとメルドは苦笑する
「分かった。そのまま気配感知を続けろ。俺の負けだ。」
すると全員が首をひねっているが俺は大体意味がわかって軽く舌打ちをしてしまう
簡単にいうならば試したのだ
本当に冷静に対応できるか、ちゃんと実践で使えるかを
「……はぁ。」
そしてロックマウント討伐も危なげながらというより一部の生徒のおかげで危険に犯されながらも倒すととある綺麗な鉱石がある
「……あれ、何かな? キラキラしてる……」
その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。
そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディコライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
「そうなのか?」
「うん。グランツ鉱石とは、言わば宝石の原石みたいなものだ。特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入んだって。」
「へぇ〜。」
なるほどな。確かに綺麗だな
「……まぁ、興味ないけど。」
「だろうと思った。」
呆れているハジメに、少しだけ引っかかることがある
「……罠感知に引っかからないのか?」
「ううん。引っかかっているけど多分あんな露骨な罠誰も引っかからないと思って。」
「おま。それ。」
フラグと言おうと思った時だった
唐突に壁をよじ登りある男子生徒がグランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。
「おい。それはトラップだ。早く降りろ。」
大声で俺が叫ぶとみんなが俺の方を見る
しかし反応していないところを見るに聞こえないのかその振りをしているのか。
「チッ。野郎。ハジメ、メイ絶対に離れるな。シールド。」
俺は無詠唱で効果時間30分間魔耐と耐久をあげる魔法を二人にかける
男子生徒がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。
魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。
「くっ、撤退だ! 早くこの部屋から出ろ!」
メルド団長の言葉に生徒達が急いで部屋の外に向かうが……間に合わなかった。
部屋の中に光が満ち、俺達の視界を白一色に染めると同時に一瞬の浮遊感に包まれる。
俺達は空気が変わったのを感じた。次いで、ドスンという音と共に地面に叩きつけられた。
俺はすぐさま気配感知を使うと
「……やばい。囲まれている。魔力感知に下からの魔力の反応があります。」
「なんだと。」
「階段側に多数。橋側に一体の敵感知です。多分橋側は強い魔力がかなり濃いので強い個体だと。」
「……くそっ。」
ここはなん層なのかもわからずただ俺は立ち上がり警戒する
「とりあえず俺は階段側に行って道を開きます。ハジメ、メイ。」
「うん。気をつけて。」
「僕たちは大丈夫だから行ってきて。」
すると笑顔で送り出してくれる二人に小さくありがとと呟く
「シズ。悪いけど。」
「えぇ。手伝うわ。」
「あぁ、よろしく頼む。」
そして目の前に多数の魔法陣が浮かびあがり、骨格だけの体に剣を携えた魔物〝トラウムソルジャー〟が溢れるように出現した。空洞の眼窩からは魔法陣と同じ赤黒い光が煌々と輝き目玉の様にギョロギョロと辺りを見回している。その数は、既に百体近くに上っており、尚、増え続けている。
「こりゃ全力を出すしかないな。ガーディアン。」
すると薄い光を俺とシズの周りを浮かび吸い込んでいく。
「どういう効果の魔法なの。」
「被ダメージを1時間半減させる奥義魔法だよ。図書館で伝記があったからついでにできるか研究していただけ。結構魔力持っていかれたからこれ以上はさすがに魔法を使えないけど。」
俺が一番優れているのは身体強化魔法であり、大抵のものは使える
「……とりあえずやるぞ。」
その声を皮切りにトラウムソルジャーは突っ込んできた