もう一人の勇者 作:大和
……目が覚めるとそこは闇の中だった
「……ん?ここは?」
「えっ?球児?」
「大久保くん?」
するとシズと白崎の声が聞こえ、そっちを見ると涙を浮かべたシズの姿があった
「……どうしたんだよ。っていてて。」
と俺の肩を見ると肩から切り傷ができているのが分かった
「……」
夢じゃない。
落下して行く二人の姿が思い出されるけど
「……悪い。心配かけたな。」
俺はかばった方の手を向け、シズの頭を撫でるとシズが俺に抱きついてくる
「お、おいシズ。」
「……バカ。本当にバカ!!なんでいつもあんたは私を庇って。心配をかけて。」
……これ完全に10年前と同じようなことか
「悪いって。生きているだけマシだろうが。」
「……雫ちゃん私と大久保くんをずっと寝ずにつきっきりで看病してたらしいから。」
「だろうな。こいつが俺以外の前で泣き出すって結構珍しいからな。今迷宮から何日目。」
「今日で一週間だって。私は大丈夫だったんだけど、大久保くんは一度心肺停止状態になったから。」
「……マジで?」
俺は首を傾げると白崎は頷く。
「それに前に一度だけ起きたらしいんだけど、どうも発狂していたらしくて。すぐに数人ばかりで眠らせないといけないことになったらしいよ。」
「……なるほど。ストレスに耐え切らなくてオーバーヒート起こしたのか。」
俺は少しだけため息を吐く
そしてしばらく頭を撫でていると泣きつかれたのかシズはスースーの寝息をたて始める
「……そういえば雫ちゃんと仲よかったんだ。」
「仲がいいっていうより同じ道場仲間なんだよ。3歳の時にこいつの家の裏道場に入門したから。天之河とかも俺はよく知っているな。あいつとももう12年くらいか。小学校同じだったし。ついでにメイも。」
「えっ?」
「お前とも同じ学校だったんだぞ。まぁ同じクラスに高校まで一度もなったことはないし、俺は野球ばっかりだったから。」
中学は別の中学に進学し、ハジメと出会ったんだけども
「お前のことはよく話してくれていたんだぞ。こいつを天之河といつも一緒にいたから一時期ちょっかいかけられていたことも知っているしそれを陰ながら少し噂を流して自体を消息させたりしてたから。お前がいつもいてくれたおかげでこいつにとっては救われていたんだってさ。」
少し苦笑してしまう。
「……ぶっちゃけお前が知らないだけで俺は結構知っているんだよ。白崎が中学くらいからハジメのことを気になり出したのも知っていたしな。こいつから知っている。てかお前に貸した本俺がハジメから仕入れてそれをお前に流していたんだからな。」
「……そうなんだ。」
「……気にすることないと思うぞ。こいつ甘えること俺にしかみせないから。」
俺は少しだけため息を吐く
「こいつ、剣術を習っているせいか弱みを他に見せたがらないんだよ、こいつかなり繊細で傷つきやすいし。普通ならもっと甘えさせるべきなんだけど……それでも一番弱みは俺にしか見せたがらない。というより俺はこいつが弱いところが普通だからな。だから気にしているんだよ。」
「もしかして普段苗字で呼んでいるのも。」
「それっていうよりも天之河が原因かな。……こいつが他の男子と仲がいいところを見るとこいつが二股かけているとか散々なこと言われるだろうしな。」
「……もしかして大久保くんって雫ちゃんのこと。」
多分こいつは気づいているだろう
だから本心で俺は笑って
「好きだよ。10年以上ずっと片想いが続いているな。けっこう露骨だと思うんだけど全くこいつ気付かないし。」
「……」
「……生きているさ。ハジメなら。」
「えっ?」
俺は不安そうな少し震えている
「生きているさ。あいつ頭がいいし地下にもぐれば潜るほどいい鉱石が取れる。現代武器さえ作れたら迷宮攻略も夢ではないし、一応俺がかけた耐久アップのバフがついていたしな。」
「……」
「不安なのは分かるけど。俺たちもできることからやっていこうぜ。少しずつでもいいから強くならないといけないし、かなり強くなっているはずだ。ついていけるように、俺たちは俺たちなりに強くなろう。今度は絶対に守れるように。」
もう二度とあんな目はしないように
何もできないのはもういやだから
「……うん。」
すると白崎も頷く。
「……はぁ、俺も明日から訓練に参加するから連絡したいんだけど。」
「……でも動けないよね?」
「動けないし。……流石に寝させてやるか。多分こいつほとんど寝てないだろうし。……そういや、あれからどうなったんだ?近況とか。」
「私も雫ちゃんもあまり。でもしばらくはお休みしているらしい。」
「そういえばあいつらを襲った火球の原因ってどうなっている?」
「……一応クラスメイトの誰かが放った流れ弾ってことになっているけど。」
「……流れ弾か。なるほどな。」
俺は少しため息を吐く
こいつに話したら多分壊れるのは明確だろうし、これに関しては俺は何もできないか
……はぁ。頭がいてぇよ。
「……どうしたの?」
「いや、なんでもない。とりあえず明日からの策を考えるか。どうやってバカたちを動かそうか考えなければいけないし。」
「……雫ちゃんから聞いていたけど本当に性格悪かったんだ。」
「…素直だったら飯をくっていけんからな。それに慣れとかないといけないのかもな。もうそろそろ。」
俺は息を吐きそして決意する
そして
「人を殺すことにも慣れておかないとな。」
俺の言葉に白崎は驚くが静かに頷く
これからのことに思うと俺と白崎は息を呑むのだった