Charlotte Bravely Again(st)   作:天然の未

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 特別篇です!
 時系列的には第五話と第六話の間となっております。
 僕は基本的に数字は半角にしているのですが、第何話、というときは原作に則り漢数字を、また半角数字だと変だな、と思うところにも漢数字を用いています。紛らわしかったらごめんなさい。
 では本編をどうぞ。


特別篇 幸せの形、償いの形

「能力は......『幸運』です」

 

 

 その日の生徒会活動は、松山のそんな一言から始まった。

 

 

「......幸運、ですか?」

 

 

 早速、茜が疑問の声を漏らす。彼女が私服なのは、この学校が休日は私服で登校しても良いという一風変わった校則を有しているからだ。

 

 

 休日とは名だけだな、と夕輝は今日もため息を溢す。今は夏休みだと言うのに7日あれば5日は能力者が現れるため、夕輝はこれでまあまあ忙しい毎日を送っていた。

 

 

 勿論、それ相応の手当ても出るので家計的には助かっているのだが。

 

 

「どんな能力なんだ?」

 

 

 殆ど上級生とは関わらないからかも知れないが、松山は夕輝が唯一平語で接する2年生だった。身長が低いせいで上級生と感じさせるものがないからかも知れない。

 

 

 松山は夕輝の疑問に答える。

 

 

「詳細は......よく分かりません」

 

 

「え?」

 

 

 松山の言葉が意外だった夕輝は頓狂な声を出した。

 

 

「......それはどういうことですか?」

 

 

 松山に限って、今までこんなことはなかった。彼の能力は、『能力の詳細』と能力者の『位置』、そしてその能力に相応しい『日本語訳』を知ることができる、というもの。その能力をもってして彼が『能力の詳細が分からない』と言うのはどういうことだろう。

 

 

「......僕の能力は、能力者が実際に能力を使っている様子のイメージが映像で頭の中に流れるというものです。例えば雪さんの能力を検知すれば、頭の中に......そうですね、マネキンが何らかのオブジェクトを引き寄せている映像が流れるわけです。しかし、今回はそのマネキンが何もしていなかったんです」

 

 

 なるほど。マネキンを使う辺りが若干滑稽だが分かりやすい説明だ。

 

 

「にしても、『幸運』か......」

 

 

 聞く限りでは、今までとは一風変わった能力。何せ、アバウト過ぎる。恐ろしくすら感じるレベルだ。

 

 

「とにかく、行ってみましょうか」

 

 

 茜は、夕輝に()()声をかける。今現在、ここにいるのは夕輝と茜、そして例によって夕輝たちとは行動を共にしない松山だけ。

 

 

 沙良がいないのは、夏休みは彼女のバンド『Rest Arts』の活動が忙しいらしく、今は日本列島を巡っている──いわゆるツアーを開催しているから。

 

 

 巧と雪がいないのは、今日は巧の母の診察に2人で付き合っているからだ。最近、雪はだいぶ巧の母と親しくなったようで、雪と巧の母が世間話なんかをしているのを目撃してしまった日には、改めて巧の母がつい最近まで下半身麻痺の状態にあったとは思えなくなってしまう。

 

 

 それぐらいに、不思議な出来事でもあった。

 

 

 あの日──。

 

 

 何故、巧の母は絶望的な麻痺から回復したのか。

 

 

 能中が? いや、けれど彼は──。

 

 

「夕輝くん?」

 

 

「......ん?」

 

 

 気付くと思考に熱中し過ぎていたようで、至近距離まで近付いてきた背の低い茜に見上げられていた。

 

 

「うおっ」

 

 

「うわっ」

 

 

 夕輝が驚くと、その反応に驚いて茜も思わず声を出した。そこでやっと冷静になる。

 

 

 今最優先すべきは能力者だ。

 

 

「ああ、いや......そうだな」

 

 

 先程の茜の言葉に答える。茜は若干呆れたような面持ちでしっかりして下さいと言わんばかりに夕輝を捉えつつ、

 

 

「ほら、行きますよ」

 

 

 と言った。

 

 

「気を付けて」

 

 

 いつも通りの松山の見送りの言葉が聞こえると共に、扉が閉まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「松山はこの公園を指定したんだな?」

 

 

「ええ......。公園......ってことは、友達とでも遊んでいたんでしょうか。今は移動している可能性が高いですね......」

 

 

 それなりの面積がある、木々に囲まれた公園。少なくともある一点から全体を見渡すことはできないような。

 

 

「二手に別れて能力者を探しましょう」

 

 

「......ああ、そうだな」

 

 

 茜は太陽光がギラギラと照り付ける遊具のある方を、夕輝は木の日陰になっている静けさ溢れる方を捜索することになった。

 

 

 しかし、今回ばかりは人手が欲しかった。5人中3人がいないとなると、流石にこの広い公園を捜索するには労力がかかりすぎる。まして、能力者は既に移動しているかも知れないとなれば、砂場の中からザルで砂金を掬うようなものだ。見付かるとは思えないが──。

 

 

 それにしても涼しいな、と夕輝は上を見上げる。8月になってからはずっと暑い日が続いており、今日──8月24日も相変わらずの真夏日だったのだが、この高い木々で天を覆われた日陰地帯はそんなことは知らん顔してブルーシートを敷いてご飯を食べる家族なんかが沢山見られ、中には気持ち良さそうに眠っている人もいるぐらいに冷涼で心地よい場所だった。

 

 

 鳩が5、6羽、幾年かの歳月をかけて出来た枯葉の土壌を歩く。夕輝が近付いても逃げないのは、ここらの人間が自分たちに危害を加えようとしないことを知っているからだろう。平和なのは良いことだ。

 

 

「能力者......こんな風に歩いてて、見付かるのか?」

 

 

 独り言を溢す。もしかしたらこの沢山の家族の中に能力者がいるかも知れないと言うのに、こんな風に全てを素通りしていてもあまり意味がないのではないか、と思ってしまう。

 

 

 そうして1人、歩くことおよそ5分。

 

 

 やっと見付かったのは──彼は恐らく、能力者ではない。ただ、能力者であるかどうかを置いておいても夕輝にとって気になった、というだけだ。

 

 

 能力者でないと思う理由は単純。

 

 

 彼は明らかに小学生だ。100歩譲っても中学とギリギリ言えないぐらいの幼い少年は、そこに1人座っていた。

 

 

 先程の人々が密集していたエリアとは一変して、閑散として人気(ひとけ)のない森の奥。そこにぽつんと立っていた細い木と背中合わせで座っていた。そこだけ周囲に樹木がないため、スポットライトのように日が射している。

 

 

 体育座りをし、俯いた目をつばのある帽子で隠している少年。

 

 

「......」

 

 

 何と声をかけようか考えていると、少年の方が気付いたようだ。

 

 

「......? おまえ、だれだよ」

 

 

 少年の第一声はそれだった。声は高い。まだ変声期を迎えていないようだった。

 

 

 彼は不審そうな目で夕輝を睨んでいる。何と言おうか迷っていると。

 

 

「もしかして、ふしんしゃだな!? おれをさらおうとしてるのか、このやろう!」

 

 

「ぐぁおっ!」

 

 

 立ち上がった少年に物凄い勢いで大事なところを殴られた夕輝。これは流石に酷過ぎる。理不尽を定義するならこういうことだろうと思う出来事は一瞬にして夕輝を圧倒し、その場にうずくまらせた。

 

 

「ケーサツよぶぞ!」

 

 

「待て、待て待て待ってくれ」

 

 

 夕輝は1人でいる少年を心配する気持ちで声をかけたと言うのに、これでは割に合わないのではないか。早口になってしまうのも許してほしい。

 

 

 そんなとき。

 

 

「......なーにやってるんですか」

 

 

 後ろから声がしたので、尻をつき出した大変に不格好な姿勢で首だけで後ろを振り向くと、そこには茜が佇んでいた。

 

 

「茜」

 

 

 主観的にも客観的にも凄くダサい。股間を押さえている様なんてもっての外だ。

 

 

「どうしたの? 迷子かなあ?」

 

 

 そんな夕輝を見事にスルーし、茜はその少年のもとへ。しかもいつもなら聞くことのできない──少なくとも夕輝は今まで一度も聞いたことのない平語で少年に話しかけているではないか。

 

 

「な、なんだおまえ」

 

 

 少年は茜を警戒。少し劣性になってしまっているのは、夕輝もよく知る茜の不思議な圧にやられているからだろう。

 

 

「なんだじゃなくてなんですか、お前じゃなくてあなた、でしょ」

 

 

 弟を説教する厳しい姉のような口調と振る舞いで茜は人差し指を立てる。

 

 

「私は友利茜という、優しいお姉さんです。この人はその付き添い」

 

 

 夕輝を手のひらで指してご丁寧に紹介してくれる。やっと痛みが引いてきて立ち上がるところだった。

 

 

「お名前は?」

 

 

 少年は疑わしそうに茜からは目を逸らして夕輝を睨んでいたが、やがて降参するように小さな声で、

 

 

璃玖(りく)

 

 

 と斜め下向きに呟いた。

 

 

「璃玖くん。名字は?」

 

 

「......そんなのない」

 

 

「え?」

 

 

 ふてくされたみたいな様子の彼は、その質問に不満でも抱いているようだった。奇妙に思いながらも茜は続けて問いかける。

 

 

「璃玖くんは何でこんなところにいるのかな? お母さんは?」

 

 

 こうして聞いていると、茜は平語を使っていても何の違和感もない。むしろしっくりくるぐらいだ。

 

 

 茜の質問に璃玖はしばらく答えなかった。夕輝は何となく事情を察する。

 

 

「......いねえよ、そんなもん」

 

 

 その勘は外れてはいなかったようで、璃玖なる少年は数秒後そう呟いた。

 

 

 家出だろうか。何となくだが、そんな気がする。

 

 

「そっか......璃玖くんに兄弟はいる?」

 

 

 こくり、と今度はすぐに頷く。

 

 

「ねえちゃんがいる」

 

 

「お姉さん?」

 

 

 うん、と首肯して、

 

 

「でもほんとのねえちゃんじゃない」

 

 

 と言った。

 

 

「......そうなんだ。ねえ、どうしてお家を出てきちゃったのかな?」

 

 

 どうやら茜の考えもそれだったらしい。否定をしないことから考えても、彼は家出少年で間違いないだろう。

 

 

「だって......おれはずるいんだ。ずるいから、おばさんにでてけっていわれた」

 

 

「......ずるい?」

 

 

 どうやら璃玖の発した単語に何かの引っ掛かりを感じたらしい茜。茜のこの反応はそういうことだ。

 

 

「ずるいって、どういうことかな?」

 

 

 すぐに詳細を尋ねる。まさか、この少年が能力者なんだと思っているのではあるまいな、と茜を見るが、夕輝のそんな疑問には全く気付かない様子だ。

 

 

「......おればっかいいことがあるんだ。だからおばさんがおこる。やりたくてやってるわけじゃないのに」

 

 

 璃玖の言葉に、夕輝の脳内を電流が走る。

 

 

 まさか。

 

 

「......そっかー。大変だね」

 

 

「でも、もういいんだ。おれはひとりでいきることにしたからな!」

 

 

 少年はポケットから取り出した500円玉を掲げて胸を張る。唐突にそんなことを言い出すので、茜も流石に目を丸くした。家出する子供なら一度は考えることかも知れないが、ここまで堂々と言われるとびっくりしてしまう。

 

 

 茜は何かを考えるようにわざとらしく唇に指を当てて、

 

 

「......うーん。じゃあ璃玖くん」

 

 

 こんな提案をした。

 

 

「今日はその家出のお試しで、私たち3人で一緒に過ごしてみない?」

 

 

「......え?」

 

 

 こんなお姉さん的茜は初めて見る。その姉的部分が小さい子供には受けが良いと知っているかのようだ。案の定と言うか、璃玖は茜の屈託なさそうな笑顔に既に魅了されているようだった。

 

 

 って、急に何を言い出すんだ。

 

 

「別に、良いけど......」

 

 

 ちゃっかり了承している璃玖。女には気を付けるように指導しておかなければならないので、茜の意見には賛成することにしよう。何せ、夕輝はこの友利茜の正体を知っている。

 

 

 可愛いのは見た目だけ。他人に対して特別厳しい性格でこそないが、彼女が少なくともこんな優しい笑顔を素でしないことを夕輝は知っている。勿論、だからこそリーダーが務まるということもあるのだが。

 

 

「おい、茜」

 

 

「彼で間違いありません」

 

 

「え?」

 

 

「さ、行きましょう」

 

 

 威勢よくそう言うと、立ち尽くしたままの璃玖の手を引く。夕輝は直前に茜が発した、夕輝の発言を遮った言葉を聞き逃しはしなかった。

 

 

『彼で間違いありません』。夕輝は逆に、彼が能力者であるということに確信すら抱いている茜が不思議だった。何せ、どう見ても小学生。能力を発現するだろうか。

 

 

「じゃあ璃玖くん......せっかく家出したんだし、ちょっと悪いことしちゃおっか」

 

 

 と思っているそばから、茜がまたおかしなことを言い始める。一体何をするつもりなのか。駆け足で歩き始めた茜と璃玖に追い付く。

 

 

「......あ、でもその前に......」

 

 

 間もなく正午。茜の特性を鑑みれば、次に彼女が何を言い出すかなど夕輝には簡単に分かった。

 

 

「お腹すきましたね」

 

 

 茜はあからさまに夕輝に視線を向けてきた。ねだっても何も出ないぞ、と思いながらため息をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 流れで来てしまったが、これで本当によかったのだろうか。普段は大抵、能力者にすぐに話をつけるか逃げられて追うかの2択だったので、今回のようなケースは初めてだった。もしかしたら茜もそうなのかも知れない。

 

 

『幸運』の能力。もしこの少年が能力者なのだとしたら──その確信が茜にあるからこうして彼を連れて歩いてきたのだが──どうやって能力を使用しないよう促せば良いのか。

 

 

 聞けば小学6年であるらしい璃玖。複雑な家庭事情は置いておくとしても、家出とはよく決心したものだ。よほどのことがあったのかも知れない。

 

 

 それで。

 

 

「......ここって」

 

 

「私イチオシのお好み焼き屋さんです。入りましょう」

 

 

 軒の上にギターが飾ってあるのは良いとして、看板が気になった。少なくとも夕輝の目からは、『お好み鉄板焼』の文字の下に書かれたその店の()()()名称を確認することができない。

 

 

 何故なら、本来の名称が『RYUYA』という赤く乱暴な文字で上書きされていたから。今では殆ど見かけなくなった提灯もぶら下がっており、その店が結構な歴史を持っているのだと一目で想像できる古風な外観。

 

 

 その扉をがらがらと横にスライドさせ、暖簾をくぐる。

 

 

「いらっしゃぁ~い」

 

 

 入ってすぐに、のろまで悠然としたきれのない声が聴こえてきた。男性の声。

 

 

「3人です」

 

 

「はぁいよぉ」

 

 

 やって来た50代ぐらいの男性の髪は奇抜で、紺藍色のどちらかと言えば長めな髪の前髪辺り一部分だけが紫色で染まっている。

 

 

「3名様、ご来店でぇ~す」

 

 

 彼の案内のもと、夕輝たちは靴を脱いで座敷の席に着いた。周りを見ると他に人はいないようで、完全にこの空間には店主らしき男性と夕輝たち3人だけだった。

 

 

 彼はこの店を1人で切り盛りしているのだろうか。ならば今の言葉は何の報告だったのだろう。

 

 

「ご注文はぁ?」

 

 

 店主の人好きする笑顔と声に茜は着席した璃玖を見て、

 

 

「璃玖くん、何食べたい?」

 

 

 と尋ねる。

 

 

「うーん」

 

 

 茜に問われて、璃玖はメニューを一通り眺める。しばらくもせずに彼は1つを指差して、

 

 

「これ」

 

 

 と答えた。まあまあな種類の中で言うと比較的安価のそれはモダン焼き。

 

 

「分かった。......じゃあ、モダン焼き3つで」

 

 

 璃玖に答え、店主に顔を向けるとそう言った。3つと言うくらいなのだから、3人分を考慮したのだろう。璃玖が夕輝たちと同じ量を食べるとは思えないが。

 

 

「自分らで焼くかぁい?」

 

 

 店主の言葉に慣れのようなものが感じられるのは、毎日毎時間繰り返して同じ文句を口にしているからだろう。

 

 

「はい」

 

 

 そう答え、茜は店主から既に材料たちとどろどろの小麦粉がごちゃ混ぜになり焼くだけになった状態の具材が入ったボウルを3つ、そして焼きそばと豚肉を順番に受け取って各々に配った。

 

 

「ごゆっくりぃ~」

 

 

 店主はそう言ってその場を離れた。

 

 

 早速、焼き始めることにする。ヘラを持ったままあたふたしている璃玖を茜が優しく落ち着けつつ、ボウルの中身を流し込む。と言うよりは殆ど固体なのでスプーンで鉄板に乗せていくのだが、その量は始めは半分ぐらい。ジュー、と気持ちのいい音がして、早速芳しい香りが漂う。

 

 

 続いて、間髪入れずに濃いめの焼きそば。もう既に美味しそうだ。そこに薄い豚肉を何枚も重ね、その上にこれでもかとボウルの残り半分を乗せてあとは待つ。

 

 

「ほら、璃玖くんもやってみて」

 

 

「......うん」

 

 

 始めは生意気な態度を取っていた璃玖だったが、だんだんと茜のペースにはまってきている。表情は会ったときとは全く逆でちょっと楽しそうに見えたので、来た甲斐があるというものだ。

 

 

 茜に倣って同じ作業を続ける。無言で見守る茜は、やはり姉のような、もっと言えば母性さえ感じさせるもので、夕輝を何だか不思議な気分にさせる。

 

 

「......夕輝くんはやらないんですか?」

 

 

 ちょうど璃玖が豚肉を乗せているあたりで茜はぼーっと肉が並んでいくのを観察していた夕輝に尋ねた。

 

 

「え? ああ、やるよ」

 

 

 言われてみれば、お腹が空いてきた気がする。今日は春が昼ご飯を準備している微妙なタイミングで松山からの電話が入ってしまったので、1時過ぎのこの時間に空腹感に苛まれるのも当然と言えばそうだった。

 

 

 同じ作法で、具材を鉄板に乗せていった。

 

 

 しばらくして、茜はヘラを使い自分で鉄板に乗せたモダン焼きの焼き目を確認した。

 

 

「んー、いい感じですね。ひっくり返します」

 

 

 もう片方の手にもヘラを持って、

 

 

「璃玖くん、見てて」

 

 

 軽くウィンク。もしや気取っているのか。

 

 

 茜はそのままずるずるとヘラを潜り込ませ、間髪入れず一気にひっくり返す。

 

 

「えいっ」

 

 

 思いきりよく宙を舞ったそれは、そのまま見事鉄板に着地した。非常に手際がいい。

 

 

「璃玖くんも」

 

 

 と言ってヘラを璃玖に渡す。彼も律儀に茜を模倣して裏の焼き目を確認すると、もう片方を潜り込ませた。

 

 

「......」

 

 

 沈黙を貫いたまま、彼は目の前のモダン焼きをじっと見つめる。その緊張感は夕輝にまで伝わって、何だかこちらが怖くなってきた。

 

 

 彼はごくりと唾を飲み込むと、ままよとばかりに持ち上げて、そのまま勢いよくひっくり返した。

 

 

 べちゃ、と音を立てたそれは、熱々の鉄板の上で静止。極めて綺麗とは言えないが、茜のものにも引けをとらないくらいには整っている。

 

 

「できた」

 

 

 達成感を覚えているのがよく分かる表情。この辺りは全く普通の小学生だ。得意気なのは彼の気質だろう。璃玖という少年は意外と分かりやすい性格をしている。

 

 

「おぉ、凄いねぇ。上手くできてる」

 

 

「......べつに」

 

 

 そんな璃玖だが、茜に撫でられながら褒められると今度は照れたような、気恥ずかしそうな顔をして何やらぼそぼそと呟いた。褒められ慣れていないこともよく分かる。

 

 

 夕輝は璃玖にどこか自分と似た部分も感じた。

 

 

「......じゃ、俺にもやらせてくれ」

 

 

 璃玖が渡してくれたヘラを使って、さっとひっくり返す。こういうセンスは家庭環境上、人よりはあるつもりだ。

 

 

「よっ」

 

 

 その光景をぼーっと眺めていた璃玖は、どこか浮かない表情をしていた。何を思い出しているのやら。

 

 

 そろそろソースでもかけようかと思っていると、天井の方から音楽が流れてきた。始めは別段そのことを気にも留めなかったが、蓋を開けた時点で反応したのは茜だった。

 

 

「あ、この曲......」

 

 

 音の鳴っている方の天井を茜は見上げる。夕輝と璃玖ももそれにつられてスピーカーの方に視線をやった。

 

 

 女性ボーカルのゆったりとした曲。美しい音色だった。今風の洋楽、というイメージの曲調。流行りの曲だろうか。

 

 

「お嬢ちゃん、知ってるのかい?」

 

 

 茜は水を注ぎに来てくれた店主に問われ、記憶を辿った。確か──。

 

 

「『ZHIEND』でしたっけ」

 

 

 それは夕輝にとって、初めて聞く名だった。ただし、今回は今までのように、単純に夕輝に普通の人のような常識がないから、というわけではなさそうだった。それは店主の喜ばしそうな顔から見てとれる。

 

 

「お嬢ちゃん、通だねぇ」

 

 

「父が昔、よく聴いていたんです」

 

 

 うんうん、と店主は腕を組み、満足そうに首を縦に振る。それから目を開くと得意そうに、

 

 

「一度、ZHIENDのボーカリストがうちに来たことがあるんだよぉ」

 

 

 と言った。

 

 

「......そうなんですか?」

 

 

 茜が店主の言葉に少しばかり驚いた表情を浮かべたのは、彼女が約30年前のZHIENDというバンドに結構尊大なイメージを抱いていたからだ。

 

 

 世界中で人気を博したというわけでなければ、日本でも飛び跳ねて知名度があったというわけでもなかったが、それでも一部コアなファンからの人気は絶大で、まさに近未来的な音楽だった──らしい。

 

 

 彼女は父にそう聞いていただけで、茜がその曲を聴いてそう思ったわけではない。かつてZHIENDのような曲は俗にポストロックと呼ばれたが、現在ではこちらの音楽も主流なロックに含まれたりしているそうだ。時代の変遷はときに、音楽の種の定義まで変えてしまうようだ。

 

 

「ほら」

 

 

 店主が持ってきたのは、よく見かけるサイン用の色紙。ボーカリストの名前が書いてあるようだ。

 

 

サラ・シェーン(Sara Shane)......」

 

 

 夕輝はその名を何となく読み上げてみた。

 

 

「サラさんは盲目でねぇ、その日は1人で杖をついて来てたのさぁ」

 

 

 いちいち語尾が伸びるせいで話がいまいち入ってこないが、そのボーカリストが盲目の女性であることは理解した。

 

 

 と、瞬間店主の顔のパーツが中心に寄る。しわが目立った。今にも泣きそうな顔だ。

 

 

「でもその1カ月後......ZHIENDは突然、解散を発表したんだっ! うあぁっ......! サラさん! 何てことなんだぁっ!」

 

 

 発する全ての言葉に濁点が付いているような40~50代男性店主の嘆声。そして遅れてやってきた嘆息。

 

 

 忙しい人だ。璃玖も呆れ顔を作る。

 

 

「......そろそろ焼けたんじゃないかぁい?」

 

 

 と思いきや、また店主はもとの気さくな笑顔に戻ってモダン焼きを指差すとそう教えてくれた。

 

 

「あ、ほんとだ。ありがとうございます」

 

 

 茜が礼を言うと、店主はそのまますぐにその場から立ち去る。どうやらご満悦な様子だったのは、珍しく一昔前のバンドを知っている女子高校生に出会ったからだろう。

 

 

 曲が終わり、また別の曲に。同じZHIENDの曲だ。先程とはまた違う曲調のそれは、ドラムが律儀にテンポを刻む曲だった。

 

 

「はい、夕輝くん。どうぞ」

 

 

 どうやら既にモダン焼きを皿へと移したらしい茜からヘラを受け取り、夕輝も自分のモダン焼きを皿に運んだ。

 

 

「いただきまーす」

 

 

「いただきます」

 

 

「......いただきます」

 

 

 茜に続いてモダン焼きに手をつける。箸で生地を割ってみると、そこにはぎっしりと焼きそばが詰まっていた。

 

 

「うわあ、美味しそう」

 

 

 茜はそれを言うと同時にそのまま大きな一切れを口に入れた。

 

 

「はむ。......あっつ」

 

 

 目をしばたかせながら、口の前に手をやってはふはふと空気を送っている。こういう仕草はとても可愛らしく、小動物を彷彿させる。

 

 

「でも美味しい」

 

 

 たいそう満足そうな表情。茜は先程からずっと空腹状態だったようで、いつも以上に美味しそうにモダン焼きを食している。

 

 

 いや、単純にこの店のお好み焼きが美味しいからなのか、と思ったのは夕輝がそれを頬張ってからすぐだった。璃玖は美味いとも言わないが、ただ黙々と食事を続けている。貪るという表現すらできてしまいそうな程一心不乱に食べ続け、口の周りには茜が店主の話に耳を傾けながらかけたソースがたっぷりと付着している。

 

 

 もしかして、朝ごはんも食べずに飛び出してきたのだろうか。そう思わせるに十分な食べっぷりで、10分もあれば夕輝たちと同じ量のモダン焼きを完食していた。

 

 

 茜より食が早い人間は初めて見たので、夕輝は呆気にとられた。

 

 

「......ごちそうさまでした」

 

 

「ごちそうさま」

 

 

 この2人を見ていると、カルガモの親子を見ているような気分になる。こういう役も似合ってしまう茜が恐ろしい。

 

 

「夕輝くん、まだですかー?」

 

 

「おいゆうき、まだかー?」

 

 

 どうやら茜はすっかり璃玖を味方に付けてしまったようだ。上司だったらパワハラだぞ、と思いながらもモダン焼きに舌鼓を打つ。これはなかなか美味かった。

 

 

 そうして璃玖が夕輝に文句を言うのに飽きてきた頃には夕輝はそれを完食しきった。あれだけリーズナブルなお値段でこれが食べられるなら、茜なら毎日来ていてもおかしくない。

 

 

「失礼な。1ヶ月に1回ぐらいですよ」

 

 

 十分多い気もしたが、この美味しさなら分からんでもなかった。最後に水を1杯口に含むと、夕輝は手を合わせごちそうさまをして、

 

 

「よし、行くか」

 

 

 と茜に声をかけた。

 

 

「あ、食べ終わりましたか」

 

 

「おそいぞー」

 

 

 ふてくされたみたいな表情で璃玖は文句を垂れる。まだ出会って間もないと言うのに、いつの間に夕輝より偉い立場になったのだろう。

 

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

 

 茜は鞄を取って立ち上がった。璃玖に視線を向ける。

 

 

「お姉ちゃんたちといっぱい、悪いことしようね」

 

 

 こんな子供に一体何を教えようとしているのか、小悪魔的に彼女は笑った。流石に苦笑いが溢れる。

 

 

「ありがとうござぁっしたァァ──ッ」

 

 

 最後にすっかりテンションの上がってしまった店主の声を聞いて、夕輝たちは店を後にした。

 

 

「さあ、遊びましょう! 大人の悪い遊びです!」

 

 

 自分が大人でもない茜が威勢良く雄叫びをあげた。名乗りさならがだ。彼女の瞳からは興奮の色が見え、璃玖も煌々とした眼光を大型のモール型ショッピングセンターに向けている。

 

 

「......」

 

 

 思っていたより何倍も健全な場所で良かった。茜のことだからその辺りは弁えているとは思っていたが、それにしても璃玖が思いの外喜色を露にしているのが気になる。こういう場所に来たことはないのだろうか。

 

 

「今から私たちはゲームセンターに行きます。どうです? ちょい悪な感じがしませんか?」

 

 

 ちょい悪ランキング第153位の発表会だっただろうか。ちょい悪にしてはちょい過ぎる。健全なのは良いことだが。

 

 

「......なら、早く行くぞ」

 

 

「はい」

 

 

 茜が先頭を璃玖の手を引いて闊歩する。行進曲も聞こえそうな勢いだ。夕輝たちはショッピングモールに入り、3階のゲームセンターをエレベーターで目指す。

 

 

 3階です、という機械音を聴きつつ扉が開くと、そこには雑然とした騒音の空間がすぐ目の前に広がっていた。

 

 

「うわぁ......」

 

 

 感嘆の声を発したのは璃玖だったが、夕輝も正直小学生の彼と同じ気持ちを共有していたと思う。理由は簡単で、夕輝がこういう場所に一切来ないからである。

 

 

 ちょい過ぎると言いながらも、ちょい悪と言うに相応しいような気がしてきた。いや、かなり悪......?

 

 

「何をやるんだ?」

 

 

「そうですねー......。あれとかどうですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 璃玖と向かい合わせに立ち、睨み合う。ぴりぴりとした空気感が流れているのが手に取るように分かった。夕輝は手に握ったマレットでプラスチックの円盤を放つ。

 

 

「ほっ」

 

 

 直線を描いて璃玖のフィールドに向かったパック。勿論夕輝は子供相手に本気を出すつもりはなく、故にそのパックは緩慢な動きのまま璃玖に弾き返された。

 

 

「えいっ」

 

 

「うおっ」

 

 

 それがまあまあな速度で飛んできたので、夕輝は少し焦って思わず強めに弾いてしまった。

 

 

「あっ!」

 

 

 驚愕の声をあげた璃玖の陣地を真っ直ぐ貫いて、プラスチックパックはマレットを横切るとフィールド奥にするりと消えた。

 

 

 時代を感じる陽気な音が鳴る。

 

 

 先制点。

 

 

「あー、やられた」

 

 

 璃玖は悔しそうに唇を噛む。

 

 

 健全な遊びだと今なら断言できる。

 

 

 エアホッケーという遊びを夕輝は初めてプレイしたが、何ならスポーツ感覚でできるのが良い。

 

 

「夕輝くんは大人気(おとなげ)ないですねー」

 

 

「......」

 

 

 全くそう言われて仕方ないので、何も反論しないことにした。それこそ大人気ない。

 

 

「じゃあ、つぎはおれからだ!」

 

 

 落ちたパックを取り出して、もう一度フィールドに置く。フェイントでもかけるようにいくらか間を置いて璃玖は円盤を放った。

 

 

「えい!」

 

 

「......おっと」

 

 

 これがなかなかのスピード。返すので精一杯だった。

 

 

「むっ」

 

 

 璃玖も譲らない。先程の1点のせいで、早くもムキになっているのだろう。璃玖の返したパックは何度も壁を跳ね返って夕輝のゴールに鋭い角度で潜り込もうとする。

 

 

「おっと」

 

 

 何とか触る。パックはゆるゆると璃玖に近付いていった。

 

 

 璃玖の逆襲はここから。

 

 

 パックを返せはしたが、それで気が緩んだのかも知れない。あるいは焦って注意散漫になったのかも分からない夕輝の懐に、璃玖が返した高速のパックは一気に音を立てて飛び込んだ。

 

 

「......?」

 

 

 気付いたときにはパックはフィールドから消失していた。からん、という音と共に先程の陽気なサウンドが流れる。

 

 

 今度は璃玖の1点だ。

 

 

「やった!」

 

 

「......やられた」

 

 

 子供らしく喜ぶ璃玖に対し、夕輝は落胆を露にした。

 

 

「へっへー、どうだ」

 

 

 たかが1点を取っただけだと言うのに、勝ち誇ったような笑みを浮かべる璃玖。

 

 

 これが一気に夕輝に火を着けた。恐らく夕輝の深層心理に潜在的にあるのだろう負けず嫌いの部分が刺激されたのだろう、夕輝は目を閉じて深呼吸をする。

 

 

 落ちたパックを取り出して、フィールドへ。

 

 

 いざ、勝負──!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な......」

 

 

 からん、という音に乗せて現れた騒がしい音に、黄色く光る数字は5。隣でしょげている1は敗北感溢れる佇まいで鈍い光を放っていた。

 

 

「よっしゃあ!!」

 

 

 1対5で夕輝の惨敗。

 

 

 エアホッケーで小学生に完敗した残念な夕輝には目もくれず、茜は天使の微笑で璃玖に近付くと、

 

 

「凄いねー」

 

 

 と頭を撫でた。

 

 

「何で......」

 

 

 夕輝はまだ、この圧倒的な点差を受け入れられなかった。予定では4対4の状態まで持っていった上で最後に価値を譲るという大人な行動をするつもりだったのだが、それどころか本気を出して負けてしまったのだ。

 

 

「ゆうき、だいじょうぶか?」

 

 

 何故小学生に呼び捨てにされなければならないのか、とは思いつつもそれは負けた苛立ちを流れやすい言い訳にしているだけだと自分を戒める。

 

 

「大丈夫だ。......次行くぞ」

 

 

 

 

 

 と言うわけで、今巷で人気らしいゲームをプレイすることになった夕輝たち一行。そのゲームの名はずばり、『SILENT OF THE DEAD 4』。プレイ料金は3人でも100円のお財布に優しい値段設定となっているが、気になるのはその中身。

 

 

「ぞんび......」

 

 

 璃玖はそれを大いに警戒していた。タイトルは読めないのだろうが、ゾンビが溶けたみたいな緑色で表記された禍々しい英語に戦々恐々している。

 

 

 ──しかし、茜によるとそんなのは杞憂らしく。

 

 

「さあ、始まりますよ」

 

 

 100円を投入すると出現したのは、それはそれは可愛い見た目のゾンビ達だった。

 

 

「行きますよぉー。えい!」

 

 

 手に握った光線銃型のコントローラーを操作して、真っ先に真ん丸おめめのゾンビを1体撃破したのは茜。ゾンビの口から目の細い可愛いイラストの魂が抜けて昇天していく。

 

 

 タイトルからは想像もできない緩さだった。

 

 

 後で聞いた話だが、『SILENT OF THE DEAD 4』は元々本格派のゾンビゲームだったものが長い期間変遷を遂げて出来たものらしく、特に2から3の変化は思いきったらしい。経営状況に低迷を見せていたゲームをコンセプトからガラッと変化させ、一見怖そうな雰囲気だがいざ始めてみると可愛いキャラクターたちがゆるゆると襲ってくる、というものにした結果、家族層にまで人気を博し今なお続くロングセラーへと繋がったそうだ。

 

 

 もっとも、元々のシリーズのプレイヤーたちからは批判が殺到したそうだが。

 

 

 とまあそんなこんなで変化を遂げたゲームをプレイし続け、1分もするとゾンビの量も結構増加、中には歩く犬や猫のゾンビなんかも登場し始めた。茜によると、あれらが強いらしい。

 

 

「えい! えいえい!」

 

 

 江戸っ子みたいな掛け声で璃玖は銃を打ち続ける。どう見ても当てずっぽうなのだが、これが意外にも全て当たるから恐ろしい。全て、とは100%の意味で、むしろ外れることが一度もない。夕輝や茜よりよっぽど上手いのは才能だろうか──。

 

 

 と思ったところで、ふと思い出すものがあった。それが璃玖の能力。

 

 

『幸運』とは抽象的な言葉だが、もしこれが彼の能力によって引き起こされたものならば、色々と説明がつく気がしてきた。

 

 

 いや、これだけではない。よく考えたら先程のエアホッケーにしたって、彼の打った全てのパックが壁を乱反射して上手いこと夕輝のゴールに入ったのは偶然だろうか。

 

 

 そんなことを考えていると。

 

 

「ゆうき、なにしてんだ。かせ」

 

 

 本来1人1つのコントローラーであるのを、璃玖が無理矢理奪って二丁拳銃状態に。

 

 

「えい! やあ!」

 

 

 木刀で悪人を成敗する暴れん坊将軍のような掛け声だが、夕輝から奪った拳銃から発せられた光線も全て敵ゾンビにクリーンヒットしている。

 

 

「......凄いな」

 

 

「え? へっへ、そうだろ」

 

 

 思わず心の声が漏れたのを璃玖は聞き逃すことなく、得意気に、銃を持った右手の人差し指で鼻を掻いた。

 

 

 どちらかと言えば彼の能力と、そしてすぐに彼が能力者であると判断した茜に対する言葉だったのだが、敵のレベルが時間が経つにつれて上がっていたということもあり、いずれにしても璃玖は調子に乗りすぎてしまったようだ。

 

 

 璃玖が画面から目を離したその瞬間、隙あらばとゾンビたちはまっしぐらに璃玖に襲いかかった。

 

 

「あー!」

 

 

 すぐに気付いた璃玖が何とか体制を立て直そうと両手銃を連射するも、時既に遅し。

 

 

 だんだんと画面に埃がたまるエフェクトがかかってくる。日常系ネコ型ロボット系アニメとかで殴り合いがあると急に発生し、所々手足や頭が出てくるあれだ。血の赤で染まっていくとかじゃないのが可愛くて良いのだが、璃玖にはその可愛さを堪能している余裕は勿論なく。

 

 

 結局、画面は埃で覆われ、GAMEOVERの文字列が表示された。

 

 

「あー」

 

 

 記録としては結構良い方なのだろう。特に時間制限とかはなく、ゲームオーバー=ゲーム終了タイプのゲームなのだからすっきりしないラストは必然だ。

 

 

「やられちゃいましたね」

 

 

 割合楽しそうに銃を振っていた茜も、少し残念そうに腰に手をあてた。

 

 

「じゃあー、そうですね。次はUFOキャッチャーでもしますか?」

 

 

 茜は慎重に押し込んでいたボタンを離す。ボタンの光が消え、ほっと一息つく。緊張の瞬間だ。

 

 

「ふー、なかなか緊張しますね」

 

 

 その緊張は空気感染でもするように夕輝や璃玖にも伝わってくる。特に璃玖は不安そうな表情で、心音がこちらまで伝わってくるようだった。

 

 

 茜がガラスの向こうを睨む。標的(ターゲット)はただ1つ。

 

 

 ピンクの熊のぬいぐるみ。大きさは生まれたての赤子ぐらいだが、違うのはもふもふの毛が全身を覆っていることだ。可愛らしい赤のリボンも耳に付いている。

 

 

 ウインウインといわゆるロボットのような音で奥に進んでいくアーム。茜がボタンを押すとやはりその光が消え、ぴたりとアームが静止。ゆっくりと、垂直方向に降りていく。

 

 

「いけっ」

 

 

 茜に従うようにアームは熊のぬいぐるみを鷲掴み、しかしその輪郭をなぞるように上手く抜けると、虚空を挟んだまま本部へと帰還し、律儀にも口を開いてくれた。

 

 

 失敗。

 

 

「惜しかったな」

 

 

 夕輝はと言うと、茜より先に2回だけやってみたが思いの外難しく彼女にUFOキャッチャー権を譲った。器用さなら茜の方があるイメージだったからなのだが、意外とこれが彼女にも厄介な代物のようだ。

 

 

 その後もう二度茜がチャレンジするも失敗。特にその熊が欲しかったわけではないのだが、UFOキャッチャーは取れそうで取れないから泥沼に嵌まる。500円6回を選択したため、残り回数はたった1回。

 

 

「じゃあ......璃玖くん、やってみて」

 

 

「えっ」

 

 

 想定外だったようで、あからさまに驚く璃玖。夕輝も実際のところ茜が璃玖に頼むとは思っていなかった。

 

 

「......おれにはむずかしいかもしれない」

 

 

 そう言いながら璃玖はズボンの裾をじっと見つめる。日本語は苦手ではないようだが、思いきりは少々弱いのだろうか。

 

 

 茜はそんな璃玖の顔と同じ高さになるようにぴょこんとしゃがんで、彼に優しく微笑む。

 

 

「......大丈夫。璃玖くんならできるよ。それに、お兄ちゃんにもお姉ちゃんにもできなかったんだから、心配しなくても大丈夫だよ」

 

 

 つまり、失敗を心配する必要はない、ということだ。璃玖は恥ずかしそうに下を向いていたが、指をもじもじと動かしたあとちらりと茜の表情を伺うとそこに屈託のない笑顔があったからだろうか。優しく微笑む彼女に、璃玖はすっかり頬を上気させてしまい──けれどやはり、単に嬉しかったのだろう。

 

 

「......うん」

 

 

 璃玖の目に輝き。彼は低い背をつま先立ちで何とか伸ばし、ガラスの内を覗き込んだ。

 

 

「いくぞ」

 

 

 点滅したボタンを押し込んむと、三本手のアームは線香花火のようにゆらゆらと危うく揺れながら横移動を始めた。まるで景品をキャッチするつもりなどなさそうに、悠然と。

 

 

「うぅー」

 

 

 ボタンは小学生でも優に押せる程度の高さにあるが、ガラスの奥をちゃんと見るには璃玖の背は少し低かった。うめき声は、足が限界を迎えようとしているにも拘わらずそんなのは知らん顔でのんきに動くアームに対する煩わしさから来るものだろう。

 

 

「ふうー」

 

 

 横移動を終えた時点で一度休憩。数秒の後、すぐに璃玖は真剣な面持ちになり、再び背伸びをする。

 

 

 上向き矢印のボタンを押し込む。

 

 

 ゆっくり、ゆっくりと熊に近付いていく銀色のアーム。糸1本で吊るされているため、非常に不安定な動きを見せる。

 

 

 しかしやはり、一番厄介だったのはその動きの遅さだったようだ。先程の背伸びの疲労もまだ残っている璃玖にとってそれは中々の障害だったようで、ぷるぷると震えていた足はとうとう限界に達した。

 

 

「わっ」

 

 

 璃玖は両足のバランスを崩し、後ろに倒れそうになる。瞬時に茜が反応し、彼を支えたおかげで何とか転ばずに済んだが、ボタンを押さえていた腕力は緩んでしまったようだ。

 

 

 黄色の光が消える。

 

 

「ああ......」

 

 

 誰からでも分かる璃玖の落胆の声。彼が想定していたよりも遥かに手前でアームは静止してしまったのだ。

 

 

 アームは位置的に熊に届きそうもない。

 

 

 残念だったなと夕輝が諦めていると。

 

 

「......えっ?」

 

 

 落ち込んだ璃玖にやっていた視線をあの透明な箱の中に向けると、降下していったアームの先端が熊を──正確にはその熊の頭に付いたタグを──掴んでいるのが見えた。

 

 

 それだけではない。どさくさに紛れて横に居座っていた色違いの青の熊も上手く挟んでいる。恐らくアームの腕力だけでは掴めないのだろうが、ピンクの熊の圧力が加算されて無理矢理押し付ける形で首尾よく運んでいる。

 

 

「おおお......!?」

 

 

 危うい動きでバックホームしていく。これが落ちそうでなかなか落ちない。

 

 

 目の前で起こっていることが俄には信じられなかったが、間もなくそれは所定位置に戻るとその腕を大きく開き、2頭の熊を落下させた。

 

 

「......」

 

 

 余りの驚きにしばらく声を出すことができない。足元の『PRIZE OUT』と表記された景品を取り出す窓に茜が近付き、前に押して2頭を取り出した。

 

 

「ほら、やっぱりできました」

 

 

 茜は璃玖を振り返って、明るく微笑んだ。胸に熊を抱えて。

 

 

 それが、夕輝の頬すらも少し赤くさせる程に可愛らしかった。白く整った歯が輝いて、眩しいくらいだった。

 

 

「はい」

 

 

 夕輝でそれなのだから、その熊らを茜に渡された璃玖はもっとだっただろう。ついでに頭まで撫でられている。一体何度撫でるのか。

 

 

「......」

 

 

 璃玖は受け取った熊たちをしばし眺める。何も言わないので、どうしたのかと思っていると。

 

 

「これ......」

 

 

 上目遣いで茜と夕輝に交互に視線を飛ばして、

 

 

「これ......あげるよ」

 

 

 と言った。

 

 

「え?」

 

 

 小さな風を吹かせるくらいに真っ直ぐ伸ばした手でピンクの熊を差し出された茜は戸惑って声を出した。夕輝も何だか意外だった。このUFOキャッチャーに関しては夕輝が金を出したのだが、どうせ後で生徒会から埋め合わせは出るのだろうし、そうでなくてもこれらは璃玖にあげるつもりでいたからだ。

 

 

「ふたりにあげるよ」

 

 

 ふてくされたような言い草だが、単に照れ隠しだろう。俯いていても紅潮した顔がよく見える。

 

 

 茜は少しの間考えるともなくうーんと唸って、

 

 

「......そっか」

 

 

 と答えると、ピンクの1匹を受け取った。

 

 

「ありがとう、璃玖くん」

 

 

 そして、もう一度屈託なく微笑む。璃玖は答えはせずに、夕輝にも近付いて青の熊を渡した。

 

 

「......ありがとう」

 

 

「......べつに」

 

 

 相変わらず素直ではないが、彼なりの愛情表現と取ったって間違いではないんじゃないかとすら夕輝は思った。少なくともそう取って反論する人間はいないだろう。

 

 

 ──それにしても。

 

 

「疲れたな」

 

 

 何やかんやで一通り遊びきり、気付けば午後5時。

 

 

「そろそろ──」

 

 

 帰ろうか、と言おうとしたところで、はっとした。疲労は怖い。ときに自らの目的さえも忘れさせてしまう。

 

 

 今、自分たちが璃玖の家出の手伝いをしているということを夕輝は完全に忘れていた。

 

 

「はい」

 

 

 答えたのは茜。『はい』とは何に対しての返事だろうか。

 

 

「そろそろ行きましょう」

 

 

「え?」

 

 

 すぐには茜の言っていることが理解できなかった。

 

 

「もう十分遊びましたし」

 

 

「......?」

 

 

 もしや、茜は帰ろうとしているのか。そんな考えが夕輝に過った。

 

 

「じゃあ璃玖くん、行こっか」

 

 

「......」

 

 

 璃玖は俯いて返事をしなかった。ただ、少し寂しそうな顔をしているのは確かだ。そもそも璃玖は家には帰りたくないはず。

 

 

 茜に何か声をかけようとしていると。

 

 

「花火大会」

 

 

 茜がどこからか薄い紙を取り出して、そう言った。

 

 

「......花火大会?」

 

 

「はい、今から花火大会に行くんです」

 

 

「何で」

 

 

「ここではもう十分遊びましたから」

 

 

 璃玖は茜を見上げる。茜の提示した紙は花火大会のチラシ。それを膨れた頬で見つめているのは何故だろうか。

 

 

「ほら、璃玖くん行くよ」

 

 

 そう言って茜が璃玖の手を引く。璃玖は少し困惑した様子だったが、特に拒否とかはせずに彼女に続いた。

 

 

 夕輝は今一、茜の真意を理解できていなかった。流れで璃玖の家出の手伝いをすることになったが、よくよく考えればそれをしてどうなるのか。璃玖に付き合えるのは今日ぐらいだろうし、能力についても今のところうやむやになっている。

 

 

 不安も隠せはしないが、それでも茜に付いていってしまうのは彼女に対する信頼だろう。夕輝は茜に頼りっぱなしだ。茜は本当に頼れるリーダーだな、と──この頃の夕輝はまだ、そう思っていた。

 

 

 約20分をかけて、夕輝たちはもと来た道を逆に歩いた。理由は簡単、茜の言う花火大会が、璃玖と邂逅した公園で開催されるものだったからだ。

 

 

 昼間に来たときとは比べ物にならない人口が密集しており、沢山の屋台が並んでいた。

 

 

「花火は8時からみたいなので、それまで適当にぶらぶらしましょう」

 

 

「うん」

 

 

 璃玖と手を繋いで歩いている茜の後ろをぼーっと歩く夕輝。辺りを見渡すと、浴衣姿のカップルや夕輝たちと同じような私服の高校生、家族連れなど老若男女がざわざわと行進している。

 

 

 もっとも、夕輝たちだって端から見ればそのうちの一部なのだが。

 

 

「璃玖くん、どこ行こうか?」

 

 

「んー」

 

 

 璃玖はしばし考えながら辺りをキョロキョロすると、

 

 

「じゃああれ」

 

 

 近くにあった屋台を指差した。

 

 

「りんご飴かぁ。美味しそうだね、行ってみようか」

 

 

 茜は満面の笑みでりんご飴の屋台へと足を運んでいく。自分も食べる気なのは間違いないだろう。

 

 

「夕輝くん、食べます?」

 

 

「え?......いや、いいよ」

 

 

「じゃあ2本で」

 

 

 この費用も生徒会から出ると思うと少し胸が痛いので、夕輝は食べないことにした。自分で払うと言っても聞かないだろうし。

 

 

 10分程待った甲斐もあり、茜と璃玖は無事、りんご飴の獲得にこぎつけたらしい。

 

 

 と。

 

 

「あっちゃー」

 

 

 屋台の男性が間抜けな声を出した。

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

 もとは差し出そうとしたのであろうりんご飴を茜に見せて男性は説明する。

 

 

「これ、結構欠けちゃってて売り物にならないなぁ。......そうだ」

 

 

 彼はすぐに何を閃いたように瞬きをして眉をぴくりと動かし、

 

 

「良かったら僕、もらってくれないかな」

 

 

 璃玖に向けて眼光を飛ばした。

 

 

「え?」

 

 

「勿論お代は取れないけど、良かったら」

 

 

 急な提案に戸惑った様子の璃玖。けれどすぐに、

 

 

「......じゃあ、もらう」

 

 

 と答えるとその頭の欠けたりんご飴を受け取り、その後で欠けていない綺麗なりんご飴が茜と璃玖にそれぞれ渡された。

 

 

「ありがとう」

 

 

「いやいや、こっちこそありがとうね、僕」

 

 

 まだ若い男性はニカッと笑うと璃玖の礼に礼を返した。

 

 

 両手にりんご飴を持って、璃玖は茜の隣を歩く。そうして徐々に屋台から遠退く。

 

 

「よかったね」

 

 

 思いがけない偶然でりんご飴を多くゲットしてしまった璃玖は、何か言いたそうに口をぱくぱくさせていた。それを茜に見付かる。

 

 

「......どうしたの?」

 

 

「え......いや」

 

 

「え?」

 

 

「え」

 

 

「?」

 

 

 茜が人混みの中、低姿勢になって璃玖を覗き込む。しばらくそのまままじまじと璃玖を見つめ、結局これ以上は無駄かと茜はまた背を高くすると、前を向いて歩き始めた。璃玖と夕輝も続く。

 

 

 数秒して、璃玖が立ち止まった。今度はどうしたのかと茜が聞こうとすると、そんな茜は知らん顔で璃玖は夕輝を振り返った。

 

 

「......ゆうきにあげるよ」

 

 

 璃玖は俯いたまま夕輝にりんご飴を差し出した。

 

 

「え?」

 

 

 突然のことに驚く。あるいは、先程ぬいぐるみを渡された茜もこんな気持ちだったのだろうか。

 

 

「ほら、2本もいらないから」

 

 

「良いのか?」

 

 

 と言うのは、()()()()良いのか、という意味だ。

 

 

 璃玖が差し出したのは、欠けた方ではなく綺麗な丸のりんご飴だったのだ。

 

 

「いい。おれはこっちがいいんだ」

 

 

 欠けたりんご飴を眺める璃玖の表情は、心なしか綻んでいるように見えた。それは伝染し、夕輝の顔までも自然と綻ばせていた。

 

 

「そうか。分かった。じゃあ頂くことにするよ」

 

 

 夕輝は璃玖から片方のりんご飴を受け取ると、

 

 

「ありがとうな」

 

 

 彼の頭を茜みたく自然に撫でてやった。父親にでもなった気分だった。璃玖は下唇を噛んでいる。恥ずかしさの表れだろう。

 

 

 ただし、間違いなく『欠けた方が良い』という言葉は璃玖の本心だろう。

 

 

 また、歩き始める。日暮れまではあと40分ぐらいだろうか。

 

 

「なみせ」

 

 

 璃玖が口を開く。夕輝と茜は背の低い彼に視線をやった。

 

 

「おれの、いまのみょうじ......波瀬(なみせ)

 

 

 小さな声だったが、こんな人混みでも聞き逃しはしなかった。

 

 

 波瀬。

 

 

「波瀬......素敵な名字だね」

 

 

 茜がどこか遠くを眺めるようにそう呟いた。

 

 

「おれは......あのおばさんとおなじみょうじになるのはいやだったんだ。でも、ねえちゃんとおなじみょうじなのはいやじゃない」

 

 

 段々と、璃玖の家庭事情が分かってきたような気がする。勿論、敢えては言わなかったが。

 

 

「そっか。璃玖くんはお姉ちゃんが好きなんだ」

 

 

「うん」

 

 

 璃玖はどこか物悲しい顔をしている。

 

 

「ねえちゃんは......やさしいんだ」

 

 

 すぐに、それが璃玖のどんな気持ちを表現しているのかまでの理解が及んだ。もし、茜がここまで考えていたのなら彼女はかなり計算高く──優しい人間だな、と夕輝は思った。

 

 

「......あれ」

 

 

 しばしの沈黙の後、璃玖はまたある屋台を指差して言った。

 

 

「金魚すくい?」

 

 

「うん」

 

 

 璃玖は首肯して、茜を引っ張る形で金魚すくいの屋台に進んだ。

 

 

 

 

 

「いっぱい取れたね」

 

 

 手のひらに乗るくらいの大きさの袋に金魚が6匹。

 

 

「ぜんぜんやぶれなかったから」

 

 

 彼の言葉の通り、ポイと呼ばれる金魚を救う道具に貼ってあった和紙はどうしたことか中々破れなかった。店主がぎょっとしていたのは、恐らく今まで一度も璃玖のような事態がなかったからだろう。

 

 

 よくあるぼったくり。それなのに璃玖のポイだけが中々破れなかったのは、最早偶然ではないだろう。

 

 

 もっと言えば、先程のりんご飴に関しても──あのタイミングで欠けたりんご飴が生産されてしまったのは、偶然などではなく璃玖の能力による必然。そう考えるのがこの場では一番合理的な判断とされてしまうだろう。

 

 

 そして夕輝が気付いているということは茜も当然気付いている。ゲームセンターに言ったのは能力の検証のためでもあったのだろう。容易に想像がつく。

 

 

 日はいつの間にか暮れていた。

 

 

「俺、ごみ捨ててくるよ」

 

 

 夕輝はちょうど、目線の先にごみ箱を発見した。と言っても結構遠くなのだが──この人の多い花火大会、言わば祭りだというのに、ごみ箱の周りに思ったよりごみが散乱していない。

 

 

「じゃあ、私たちはこの辺りにいますね」

 

 

 茜はそう言って璃玖と留まる。夕輝はごみ箱を目指して歩いた。

 

 

 人混みは夕輝の行く手を結構阻んだ。そもそもの距離が遠かったのでたどり着くまでに5分はかかる。

 

 

 ごみを捨て終え、夕輝はまた片道5分ぐらいの道のりを、ただ何となく璃玖のことを考えながらゆっくりと戻った。

 

 

 そして戻ってすぐに気付く。

 

 

「......どこだ?」

 

 

 2人がいない。またどこかの屋台をふらついているのだろうか。このような場所で行く先も知らず彷徨することの危険さは分かっていると思うので、彼女は言った通りこの辺りにいるはずだ。

 

 

 いや、茜のことだ、食べ物につられて屋台を転々としている可能性だってあり得る。

 

 

 夕輝がそんな風に考えていると。

 

 

「──商売上がったりだ!」

 

 

 突然、叫び声が聴こえた。その方向に体を向ける。昔ながらの頑固親父を想起させる声はこの場を貫いていたらしく、他の人の目も十分に引いていた。

 

 

 すぐそこの屋台。『くじ引き』と大きな字で書いてあって、そこから怒鳴り声。内容は『商売上がったりだ』。

 

 

 始めは、何が起こったのか全く理解できなかったが、すぐに璃玖がそこを走るのが見えたのがある1つの事実を夕輝に連想させた。

 

 

「......璃玖?」

 

 

 そしてそれは間違いなかった。

 

 

「璃玖くん!」

 

 

 叫んだのは茜。すぐに彼女に近付く。

 

 

「夕輝くん、実は」

 

 

「言わなくても何となく分かる。それより璃玖を追いかけるぞ」

 

 

 結局、逃げた能力者を追いかけるという点においてはいつもと変わらないみたいだ。

 

 

 ただし、今回は事情が違う。

 

 

「璃玖!」

 

 

 気付かないうちに、かなり離れてしまった。璃玖は小柄な分人混みを抜けるのが異様に速い。

 

 

「璃玖! 待て!」

 

 

 彼の小さな背中がもう遠くに見える。

 

 

「おい!」

 

 

 そうして璃玖はだんだんと遠くなっていった。追いかけるのに必死で周りは見えない。

 

 

 夕輝より小柄な茜の方が少しばかり速かった。いつの間にか彼女は夕輝より遥か前にいる。

 

 

 しばらくの間追いかけると、広く人の少ない公園の奥──森林の奥の静寂な空間に出た。

 

 

 それは間違いなく、夕輝が璃玖と遭遇した場所に続いていた。

 

 

 夜の森林をかき分け、ただひたすらに走る。ざくざくと鳴るのは地面を踏む音。自らのスピードで夕輝の上着は翻っている。璃玖はもう見えなかった。けれど、どこにいるのかは直感的に理解し得た。

 

 

 茜もそれを分かっていたようだ。真っ直ぐ進む。

 

 

 つまり、璃玖と遭遇した場所へと。

 

 

 一足先に到着した茜は、そこに木陰で直立し動こうとしない璃玖を発見した。

 

 

「......璃玖くん」

 

 

 遅れて夕輝もそこにたどり着く。

 

 

「璃玖くん......璃玖くんは何も悪くないんだよ?」

 

 

「......うるさい」

 

 

 璃玖は背を向けたまますぐに茜に牙を剥く。

 

 

「なにもしらないくせに」

 

 

 ぼつりと呟く。あるいは拒絶かも知れない。

 

 

「わかったようないいかたするな。これは......おれのせいなんだ」

 

 

 何故だろうか。璃玖の言葉の一つ一つが、嫌に冷静に聞こえてくる。

 

 

「おればっかりいいことがあるせいなんだ」

 

 

「それは璃玖くんのせいじゃ......」

 

 

「でも」

 

 

 璃玖は心なしか、先程より大きな声で茜を遮った。

 

 

「でも、おれはしってた」

 

 

「......!」

 

 

 茜は初めて言葉に詰まる。きっと驚かされたのだろう。

 

 

 璃玖が、ただの偶然だとは思わずに自分の能力を自覚していた、ということに。

 

 

「おれはわかってたんだ。わかってたのにくじびきした。それでどなられた」

 

 

 ただ事実のみを告げる璃玖の口調は小学生のものだと思うにはあまりにも冷淡だった。

 

 

「だから......おれがわるいんだ」

 

 

 ぽつ、と音がした。いや、音はしなかったのかも知れないが、少なくとも夕輝の脳はそう判断したのだ。

 

 

 背を向けた璃玖の足元に何かが落ちた。

 

 

 この場所だけ木があまり生えていないせいで、月はそれを綺麗に照らしていたのだ。

 

 

 涙だとすぐに分かった。

 

 

「......璃玖」

 

 

「......」

 

 

 夕輝が璃玖の名を呼ぶ。返事は返ってこない。

 

 

 夕輝は考えながら、そっと言葉を紡ぐ。

 

 

「......そうか。璃玖は分かってたんだな......」

 

 

 多少芝居がかっているのは承知だが、今この場でそんなことに言論してくる人間はいないと夕輝はわかっていた。

 

 

「それなのにくじ引きをして、案の定当たりばっかり引いて......怒鳴られたのか」

 

 

「......」

 

 

 璃玖に怒鳴った男もどうかと思うが、璃玖が自分の幸運(ちから)を認めていたと言うならば、それはやはりあまり好ましくないことだ。

 

 

「そっか......」

 

 

 生徒会という立場はこのためにあるのだろう。能力を私利私欲に使う人間を抑止するために。

 

 

 けれど──今だけ夕輝は、その立場を放棄することにした。折衷案とも言えるだろう。

 

 

 今日一日を一緒に過ごしたというただそれだけだが、夕輝はもう知っていたのだ。

 

 

 璃玖は根は優しい人間なんだ。

 

 

 家庭事情については詳しく聞かない。聞いたところでどうしようもないから。

 

 

 能力についても言及はしないでおこう。きっとこの能力は、夕輝たちが何か努力したところで止められるものではない。

 

 

 だから、せめて。

 

 

「なあ、璃玖?」

 

 

「......」

 

 

 背を向けた璃玖の両肩を手のひらで触れ、こちら側を向けさせる。璃玖は抵抗はしなかった。夕輝は彼と同じ目線の高さになるまで背をかがめる。

 

 

「璃玖には良いことが沢山起こる。そうだろ?」

 

 

「......」

 

 

 間を置いて、璃玖はこくり、と頷いた。

 

 

 夕輝は彼の瞳をじっと視線の奥に見据え。

 

 

「それって......凄いことじゃないか?」

 

 

「え......?」

 

 

 まるで未知の時代の化石を見付けてしまった古生物学者のようなおどけた口調で言ってみせると、璃玖は驚いて、俯いた顔を上げた。

 

 

 彼の幼い顔を目の前に、夕輝は優しい笑顔を作った。

 

 

「さっきはその力のせいでおじさんを怒らせちまった。けどさ......その力は、璃玖次第できっと、良いことにも使えるんだよ」

 

 

「......!」

 

 

 潤んだ瞳が月光を反射している。夕輝はまた微笑みを作る。

 

 

「だから、もうちょっと頑張ってみないか?」

 

 

 言うと、すぐに風が吹いて草木をざわめかせた。それが広い空間にこだまし、真っ暗な空に吸い込まれていくのが分かる。余りに綺麗な静謐が流れる。

 

 

 璃玖はいくつか逡巡していた。そして、何かを思い出していた。自分の世界の中で唯一優しい誰かを。

 

 

 今日、それが2人増えてしまった。

 

 

「......うん」

 

 

 それを思い出してしまっては、もう答えるのは時間の問題だったのだ。

 

 

「行く。戻る」

 

 

 花火大会に戻る、という意味()あるだろう。けれど、本心はもっと別だ。

 

 

 夕輝はそれを、今は気付かなかったことにする。

 

 

「そうか......じゃあ、行こうか」

 

 

 わしゃわしゃと雑に璃玖の髪を乱す。反射的に彼は目を閉じた。

 

 

 璃玖の手を引く。しばらくの間、茜は口を丸くしていたが、やがてそれは微笑みに変わると1歩先の璃玖と夕輝に追い付き、夕輝に握られていない方の璃玖の手を握って隣を歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 人混みに戻ってすぐに、幼い女の子の声が聞こえた。

 

 

「ねーえー、あれほしいー」

 

 

 日が暮れてからはもう結構な時間が経ち、体もそろそろ疲労を本格的に訴えてきた頃だった。

 

 

 声のした方を見る。浴衣のよく似合う可愛らしい女の子が、母とおぼしき困り顔の女性の服を引っ張っていた。

 

 

『しゃてき』と平仮名で表記された屋台の前。提灯が辺りを照らす光景はなかなか情緒的で、浴衣姿の人は全て江戸時代からタイムスリップしてきたかのように見える。

 

 

 少女が指差していたのは──またお前か、と夕輝は思った──青いスライまるの大きなぬいぐるみ。普通に買ったら3000円はするのだろうが、この射的は一回500円らしい。

 

 

「......」

 

 

 璃玖はそれを何とも言えない表情で見つめる。それもそうだろう。先程あんな話をしたばかりなので、きっと璃玖は今頃葛藤している。

 

 

 10秒程の時が経過し、少女の母が何やら少女を説得し始めたところで、璃玖が何も言わずに前に出た。5、6歩歩くと射的の屋台の目の前。少女とその母の注意を引くように足音を立て、ポケットから500円玉を取り出す。

 

 

「......いっかい」

 

 

「毎度」

 

 

 500円で3発とはなかなかエクスペンシブな値段設定だなと思いつつ、茜を隣に夕輝は璃玖を見守った。女児と母は目を丸くしている。

 

 

「......」

 

 

 璃玖はごくりと唾を飲み込む。

 

 

 一般的な輪ゴム鉄砲。見るとその射的は景品そのものを撃ち落とすものではなく、その周辺にある的を倒して、その数だけ高価値な景品を受け取れるというものらしい。

 

 

 つまるところ、3発全てをスライまるの周りの的に当てればスライまる獲得である。

 

 

 じりじりと的に近付くように、璃玖は前かがみになる。鉄砲をしっかりと構え、片目を瞑って照準を合わせる。

 

 

 ──パン、軽めの音が鳴る。輪ゴムが黄色く高速に宙を平行移動し、的に当たる。

 

 

 的は倒れた。

 

 

「よし」

 

 

 誰にも聴こえないような小さな声で呟く。

 

 

「もういっぱつ」

 

 

 すぐにもう一度輪ゴム鉄砲を構えると、今度はあっさりと2発目を発射。またも的を撃ち落とすことに成功した。

 

 

 少女は母の裾を掴んだまま思考を放棄したように口を小さく開いて微動もさせない。

 

 

「さいご」

 

 

 璃玖は三度(みたび)用意された輪ゴム銃を構えると、緊張の面持ちで的とにらめっこする。汗が流れているのは提灯の光の反射で分かった。

 

 

「......おにいちゃん、がんばれ!」

 

 

 ふと、璃玖の隣から幼い声。何を隠そう、彼の女児である。彼女はもう既に自らがスライまるを獲得することなど忘れたように、璃玖の起こすショーに見入っていた。

 

 

「......」

 

 

 敢えて振り向きはしないが、璃玖は答えるように口を固く結ぶとそのエネルギーで一気に引き金を引いた。

 

 

 空を翔る黄色の和。提灯にも似た色のそれは空気の間を通り抜けて一直線に的へ向かい──見事命中。クリーンヒットだ。

 

 

 的が倒れる。

 

 

「......」

 

 

 何に体力を使ったのか、璃玖ははあはあと息を立てていた。瞳はいつにも増して輝いている。

 

 

 遅れて──カランカラン、とベルの音が鳴った。

 

 

「お兄ちゃん、おめでと~」

 

 

 やる気なさそうな店主の声。手首だけでベルを振っている。

 

 

「ほい、これ景品のぬいぐるみね」

 

 

 眼鏡と無精髭をまとったおじさんはそう言うと、璃玖に特大のスライまるを渡した。

 

 

 ぱちぱち、と小さな1つの拍手。

 

 

「おにいちゃん、すごぉい!」

 

 

 隣からの声は女児のもの。彼女は満面の笑みを浮かべていたが、璃玖が俯き加減で自らに近付いてくると徐々にそれを解いた。

 

 

「......おにいちゃん、どうしたの?」

 

 

 女児は尋ねる。璃玖はいくらかの間を開けて、

 

 

「......これ、おまえにやるよ。ほしがってたろ」

 

 

 とスライまるのぬいぐるみを差し出した。

 

 

「え、いいの?」

 

 

 彼女は少しばかり意外と言うか驚いた表情をしていたが、やがてこくりと璃玖が頷くと、だんだんとその表情に明かりを取り戻していった。彼女の周辺の夜だけが間違って明けたのではないかと思うほど。

 

 

「ありがとう!」

 

 

 少女はスライまるを抱き寄せた。

 

 

 璃玖はそのまま、やがて彼女が手を振って屋台の前を去り、見えなくなるまで屋台の前に佇み続けた。

 

 

 夕輝は茜と共に璃玖に近付く。

 

 

「......ほら、言っただろ。できたじゃないか」

 

 

「......うん」

 

 

 璃玖は心なしか照れたようだった。

 

 

 それから。

 

 

「......あのさ」

 

 

 こういう良くある話のオチはいつも、ただの1つだけ。最後は皆、自然とそこに集まる。

 

 

 茜もそれを分かっていたから微笑んだのだろう。どこか寂しそうにも見えるのは気のせいであってほしくはないし、恐らく気のせいではない。夕輝も同じだから。

 

 

 璃玖は思いの丈をいとも簡潔に述べる。

 

 

「おれ、やっぱりうちにかえりたい」

 

 

 と。

 

 

「......うん」

 

 

 茜は嬉しそうで、反面何かを惜しむようだった。

 

 

「おばさんはこわいけどさ、でももうおれはだいじょうぶなんだ。ねえちゃんがいるし......あかねとゆうきがたくさんおしえてくれた」

 

 

 ただただ真っ直ぐで真摯な眼光を夕輝と茜に向ける璃玖。たったの1日だが、彼は少し変わった気がする。

 

 

 あるいは、元に戻ったのかも知れないが。

 

 

「きょうはほんとうに、ありがとうございました」

 

 

 ぺこり、と頭を下げた璃玖。その小さな体は可愛らしかったし、まるで我が子のようにいとおしかった。

 

 

 今の夕輝と、茜にとっては。

 

 

「......またいつか会おうね」

 

 

「今度は出会い頭に殴ったりするなよ」

 

 

 小学生の璃玖には、自分より背の高い2人がとても頼もしく、そして特別に思えた。

 

 

「うん」

 

 

「りく~~!」

 

 

 声がしたのは璃玖の返事と同時。どこか抜けた感じの女の声だった。ちょうど夕輝の視線の先。誰か走ってくるのが分かる。

 

 

 逆光でシルエットになり背景を際立たせっていた女は徐々に近付き、やがて夕輝は彼女が茜より幾分か背の高い女子であると結論付けた。

 

 

 推定高校2年と言ったところか。

 

 

「ねえちゃん」

 

 

「もう璃玖、どこ行ってたの~。探したんだから」

 

 

 もしかしたらお祭りに来てるんじゃないかと思って来てみたら、と彼女はぷりぷり言う。頬を少し膨らませていることからも、彼女の弟を叱責する気持ちや心配する気持ちが十分に見てとれた。

 

 

「ごめん......」

 

 

 璃玖がしょんぼりと謝罪の念を述べると、彼の姉はしゃがんで、

 

 

「もう......無事でよかった」

 

 

 と彼を誰より優しく撫でた。

 

 

 ──勝てないな。茜はやっぱり寂しかった。

 

 

 けれど、これで良いのだ。

 

 

 不意に、目尻に光るものが浮かんでしまった。それを夕輝に悟られる前に、茜はすぐさま拭った。これで結構彼女は涙もろいのだ。

 

 

「......この人たちは?」

 

 

「あかねとゆうき」

 

 

 璃玖の返答に姉は2人を交互にキョロキョロ見る。それから、

 

 

「......璃玖がお世話になったみたいで、ほんとにごめんなさい」

 

 

 と頭を下げた。

 

 

「......いえ」

 

 

 茜はもうあと少しで震えそうな声で短く答え、

 

 

「じゃあね、璃玖くん」

 

 

 静かに微笑んだ。

 

 

「うん」

 

 

 別れを惜しんでいるのは璃玖もだったようだが、彼はそのまま姉に手を引かれながら、この人混みの中を見えなくなるまで歩いていってしまった。

 

 

 その間2人は勿論、何も発しずに彼の背中を追っていた。

 

 

「......行っちゃいましたね」

 

 

「......ああ」

 

 

 子が一人立ちするときはこんな気持ちになるのだろうか。いつかまた会えるだろうか。

 

 

 そんなことをずっと考えていた。

 

 

「今回は......夕輝くんに助けられてばかりでした」

 

 

「え?」

 

 

 茜はどこか自分を咎めるように言った。

 

 

「夕輝くんが璃玖くんに話しかけていなければ、私は恐らく彼を見逃していたでしょう。彼は能力を発言するには余りにも幼いですから」

 

 

「......そう言えば」

 

 

 夕輝はふと、疑問に思ったことを思い出す。

 

 

「璃玖は何で能力を発症したんだ?」

 

 

「......まあ」

 

 

 一息ついて、

 

 

「能力は病気ですからね、個人差がありますよ。それに......」

 

 

 欲望が大きければ、と言いかけてやめた。まだ夕輝に話すべきではない。随時、能力と欲望の相関関係については伝えることにしよう。

 

 

「やっぱり何でもありません」

 

 

「......? そうか」

 

 

 茜が踵を返す。

 

 

「私たちも帰りましょうか」

 

 

 背中で手を組んで振り返る。その動作は客観的にもとても可愛らしかった。

 

 

 夕輝は一瞬首肯しようとしたのを思いとどまって──。

 

 

「なあ」

 

 

「?」

 

 

 茜を止めた。折角の機会だ。こんな場所に他に来る用事もないだろうし、と思い提案する。

 

 

「花火......観てかないか?」

 

 

 それを言ったのと全く同じタイミングで、空に大きな大きな花が咲いた。虹色の花だ。

 

 

 その花の散る音が鼓膜に届く。茜は唇に人差し指を当てて夜空を見上げると、視線を夕輝に向け、端的に答えた。

 

 

「そうしましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人は花火の観やすい広場に移動した。

 

 

「......綺麗だな」

 

 

「ええ」

 

 

 花火を夕輝の隣で観ながら、茜は最後にこんなことを問いかける。

 

 

「今日のこと......」

 

 

「ん?」

 

 

 茜は夕輝の目は見ずに、ただあの空の花火だけを見つめて一言。

 

 

「......どこまでが、『幸運』能力の仕業だったんでしょうね」

 

 

「え?」

 

 

 そして、聞き返すのは野暮だと言わんばかりに1つ、特大の花火が空を弾けた。




 特別篇をご閲覧頂きありがとうございました。
 彼のお好み焼き屋さんが登場しました。店長は原作より喋らせたので、どういう口調にさせるかは悩みのタネでしたが、結果的にあのようになりました。
 実は原作と矛盾してしまうように見える部分がありましたが、意図があるので、んっ? となってしまった方も引き続き読んでいただけるとありがたいです......。
 これからCharlotte Done Edition(s)に入っていきます。が......実は私、天然の未は多忙を極め始め、これからは毎日投稿は厳しくなってきてしまいます。申し訳ございません。
 次回までにだいぶ間が空いてしまう可能性があります。ご了承下さい。
 Charlotte Bravely Again(st)を読了してくださった方々、本当にありがとうございます。続編をお待ち頂ければ幸いです。
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