Charlotte Bravely Again(st) 作:天然の未
そう言えば作品説明みたいなところにCharlotte Zhiendは短編と書きましたが、短くはないですね。ちょっといじっておきました。
それでは、前回あんなことがあった彼女が一体どうなったのか。最後まで、最後までじっくりと、ご覧下さい! 大事なことなので2回言いました。
その能力は、過去に起きた全ての事象を
そしてそれらをこの目に焼き付けるのだ。
まるで起こった事象を私の網膜に保存するみたいに、全ての事実が目の奥にくっついていく。そして残る。
視力が落ちていく理由はそれだった。
そして、それでいいと思った。
視力の限界まで、時間を遡ることを決めた。能力を使っている間も意識はしっかり働いていて、体はどこにあるのかは分からなかったが一緒についてきていることは分かった。
浮わついた感覚が体を包み込み、心を覆っている。頭から落ちていくような無重力感が襲う一方、頭なんてそもそもないんじゃないかとも思える。
──ここまでにかかった時間は実に0秒。
いや、それでは不十分かも知れない。
正確には──数学的に言うなら、極限まで0に近い時間、すなわち瞬間──だろうか。
あるいは永遠のような時間。
そんな時が過ぎ去って。
気付けば私は──知らない場所にいた。
そしてそこで、彼女に出会ったのだ。
──始めは、まだ自分の現状を把握しきれていなかった。
ただ、目の前が真っ暗だったことを覚えている。目を開けている感覚があり、自分が瞬きをしていることも分かるのに、何も見えなかったのだ。
それはとても怖いことだった。恐ろしくて震え上がるようだった。私は少なくともここが静かな場所であって、かつ風が吹いているから外であることを認識していた。足を前に出すと、何か鋭く柔らかく細長いものが足に当たる。それで気付いたのだが、それは辺り一面にあった。
風がそよいで、さあっと潮が引くような音がする。足元の細いものも一緒に揺らめいた。
そうか──草原。
私は草原の中にいる。
そしてこの場所には、私以外に誰もいない。
──そうだ。
体が若返ったりはせずに時間旅行をしたのならば、私にはまだ能力が残っているはず。
私は、自分の周囲にいる人間を探知する能力を使った。
「──っ!?」
すぐに後ろを振り向いたのは、誰かが後ろに立っているということに気付いたから。
「......あなた、何者ですか」
彼女はすぐに口を開く。そしてその口調は訝しむようなものだった。彼女は私に話しかけてきたが、私は彼女が何者なのかを知らない。
「......十中八九、先の時代の略奪能力者............やはりそうでしたか......。まさかこんなことが二度も繰り返されるとは」
彼女は呆れたように、あるいは恐れるように呟く。私はそれに酷く驚愕した。何故なら彼女は、私が略奪の能力を有していることを言い当てたからだ。彼女はこう続ける。
「ということは......私と同じくコピー能力者は不老不死に......あるいは私がそう仕向けるのか......何にせよ、面倒なことになりましたね......」
彼女はひとりでにぼそぼそ言葉を並べつつ、それらを反芻する。思考を働かせているようだ。
「......バタフライエフェクトの生じない、既定事項を作る時間旅行......存在の環がここにも......」
「......?」
何なんだ。
そこにいることは知っているのに、姿が見えない。何を呟いている。どうして私が略奪能力者であると知っている。
問い詰めたいが、言葉が出ない。
恐怖と驚きが大半だった。
額が突如冷たくなる。
「っ!?」
「ちょっと、失礼しますよ」
そう言うと、彼女はしばらくそのまま、たぶん指先で額に触れていた。指は2本、それがどの指なのかまでは分からなかった。
そうして数十秒。とうとう彼女は指を離す。
「......なるほど。これはまた特殊......いえ、能力者なんですからむしろこっちの方が一般的ですかね」
まるで自分と対話するかのように話す彼女。間もなく彼女は私の肩に触れる。
「......場所を変えて話をしましょう、岩下沙良」
「......!」
彼女は私の名前を知っていた。あるいは今知ったのかも知れないが、何にせよ私はそれにおののき、彼女が間もなく私と自分自身を小さな部屋にテレポートさせたことにはしばらく気付かなかった。
「......あんた一体......何者なんだ」
私は何とか言葉を振り絞る。声で同い年ぐらいなことは分かっていたが、素性も全く知れない。
けれど恐らく──能力者。そうでなければ彼女が私の名や能力のことを知っていることに説明がつかない。
まさか、心を読む能力......?
「心を読む能力、ですか」
「っ......」
やはりそうだ。だから私のことを......。
「いえ、それは違います。......正確に言えば、心を読む能力も私の力の1つで、あなたが何者かを知ることができたということ自体は、記憶を読む能力とこの世界の仕組みに帰属します」
「......?」
私には、彼女が何を言っているのかが全く分からない。能力が2つ、それと記憶を読む能力。
まさか額に指を当てられたとき、あのとき私は記憶を読まれていたと言うのか。
それに、この世界の仕組みとは一体何だ。
「......記憶を読んだ限りでは無害そうですね......少なくともここからあなたが悪い向きに変わることはなさそうです。では話すとしましょうか」
「......何を話......いや、そもそもあんたは何なんだ? 能力を2つも持ってるなんておかし......」
詰問するように言いかけて、私はふとこんな考えに至ってしまう。
「......まさか......」
あり得なくはない話だ。何故なら私がそうだから。私は能力を複数持っており、何なら夕輝だって──他人に乗り移る能力と先入能力、と考えれば2つの能力を有していることになる。
つまり、似たような能力。
夕輝に、あるいは私に。
「......惜しいですね」
彼女はどこか楽しそうに笑う。勿論表情は見えないが、それぐらいは声で分かる。
「惜しい......?」
その言葉に疑問を抱く。何かが間違っていたということなのだろうが、真意は掴めない。そんな私の疑問を彼女はほどいた。
「私の能力は......『コピー』、あるいは『略奪』......何にせよ、あなたや音永夕輝という人物と全く同じ能力です」
「......は......」
声が漏れる。力のない声だ。それで気付いたのだが、私はどうやらかなり精神的に追い詰められていたようだ。
それは別に彼女の言動に対してではなく、単純に──自分が本当に過去に飛んできてしまったんだな、と確信していたからだった。
ここは私の知っている時代じゃない。そしてもう戻れない。
そんな思いにあてられてしまっていた。
彼女はやっとのことで自らを名乗る。
「......私は15世紀のコピー、もとい略奪能力者......名はアイと言います」
「......?」
彼女の口から出た遥か昔を表す言葉に強烈な疑問を抱くが、それを尋ねる前に彼女は言い放った。
「岩下沙良。......今からあなたに、世界の真実とあなたが犯した罪のことをお話ししましょう」
「......罪?」
反復して聞き返す。
「ええ、罪です。あなたがしたことが何を意味するのか......そうですね、分かりやすいところから説明しましょうか」
それから私の反応を待つまでもなく──彼女は余りにも突然に、こう言い放ったのだった。
「あなたが使った時間旅行能力は......元はあなたの姉のものでした」
「──え」
まさかこのときは思いもしなかった。
姉貴が何故廃人になってしまったのか。
夕輝がこれからどうなるのか。
そして──私が
その全てを彼女──アイから聞かされたとき、私はこれ以上ない程に絶望することになる。
3日後。
私はただ
それなりに広いその家は、アイが私に用意してくれたものだった。曰く、それは造作ないことらしい。彼女が持つ数えきれない程の能力をもってすれば、事実の改変だって容易い。
私の戸籍を作り、私に時間を与えた。
──ちょっと、考えさせてくれないか──
私は昨日、彗星が存在する理由や、夕輝が略奪の運命と不老不死を背負うのであろうことや、姉貴のことを教えてくれた。私が知らなかった姉貴の人生のことを。
曰く、私に残っていた『時間旅行』能力の使われた痕跡を調べたのだと言う。そんなことまで、と思ったが、彼女にはできる。
姉貴は時間旅行に変化する前の、
アイは別にそれについてどう思っているわけでもなければ、私が自殺するまでの過程も、自殺してからのことも、そしてこの時代に来るまでのことも気にしていない様子だった。防げないことだとか既定事項だとか言っていたので、きっと今彗星があることと同じように、私の行動までも"存在の環"で片付けようとしているのだろう。つまり、あって仕方ないことであってかつ、なければなれないことであると。
──私は違った。
姉貴は確かにズルをした。本来ならできないはずのことをして、自分の運命を変えたのだ。それは決してあり得ないことで、"正しいのは"彼女が能力を持たずに為したことなのである。
けれど、私が自殺しなければ彼女はああはならなかったのだ。あるいは私が略奪能力を使い続けて、やがて世界の能力を奪う必然性にも気付ければ。全ては私が弱かったからだ。
バタフライエフェクトならば、まだ他人事で済むような気がしていた。本当の才能はバタフライエフェクトなどでは崩せないし、現に1周目と2周目のどちらでも成功している人間はいた。
けれどこれは違う。明らかに原因は私にあった。彼女の能力を私が──奪った──ことが原因で、彼女はAlisaになれなかったのだから。
そして、夕輝のこと。
何よりも、このことが私には大きく突き刺さった。アイが『呪い』と呼ぶ不老不死に彼はなってしまったのだ。
それは保険であり、同時に罰。
どちらも同様に作用しているのだ。
何かを得ると何かが失われるように、どちらがどちらの副産物であるわけでもなく、ただ同時に存在しているだけ。
だから仕方がない──とは私には言えない。
私のせいだ。
私のせいで夕輝は、もう引き返すことのできない運命を背負ってしまった。唯一それを回避する方法は、夕輝が──これも変な話だが──私の弟の怜の能力を奪わないことだが、果たしてあいつがそんなことをするだろうか?
夕輝は、もし全てを知っていたとしても人類を救う道を選ぶ。そんな気がしてならない。
そうでないことを祈りつつ、あるのはただ1つの大きな絶望だけだった。
怜や、私のせいで運命が変わってしまった人たちに償うために飛んできたはずなのに。
私は──最早、償いようのないことをしでかしたのではないか?
そう思った瞬間、もう何もできなくなってしまった。
だから私はここにいる。ここで独り、ただ飲み食いもせずに呆然と時間に流されていた。こういうのは得意だ。以前も家に引き込もって時間を悪戯に過ごしていたのだから。
けれど違うのは、こんなにお腹も空いていると言うのに、何かを食べる気力もないということ。
もう私には何もできない。そんな風にすら思えてしまうのだ。
腹がぐうと鳴る。
もう駄目だ。償うなんて傲慢だった。
私はこのまま死ぬのだろうか──。
けれど、何日経っても私は死ななかった。
アイが私を生かしていたのだ。
空腹で死なないように、食事と同じ効果を私に幾度も付与した。ただし、私の前に直接は現れなかったが。
私はもう何日ここでこうしているのだろう。
3日かも知れないし、1週間かも3週間かも分からない。
ただ、私はここにいた。
そしてそれだけ長い時間何もしていないと、私はとうとう無気力に飽きてしまった。
ふと思い立ちテレビをつけてみる。盲目の状態で何とかリモコンを探し出し、電源を入れた。
私にはその音しか聴こえない。私は自分がひたすらに孤独であるような気がした。
テレビは今日が2006年の12月であることと、最近起こった出来事を教えた。しかし目が見えないとどうもそれらの事実が嘘なのではないかと思えたりしてしまう。今が2006年であることも分かっていたつもりだし確信していたのに、一方で現実そのものを拒否している自分がいることも確かだった。
番組を変えてみる。朝なのか夜なのかぐらいは私にだって分かる。こんな目でも、差す光の濃淡はギリギリ分かったのだ。
つまり、今は夜である。
それは音楽番組だった。私のいた時代にはもうやっていない番組『M盤!』。音声の質だけではそこまで時代の差を感じないが、曲が始まったところで分かる。
だいぶ違う。いわゆる古さみたいなのを感じる。平成って感じだ。
何よりコード進行。どの曲も比較的綺麗なメジャーコードやマイナーコードで構成され、オンコードだって想像を裏切らない。リズムも同様だ。
メロディにこそ近しさを感じるが、やはり全体を通して2040年の曲とは違う。少なくとも私や『Drealy Machine』の曲とは全然違う。
私は知っていた──私の作っていたような曲は、この時代では『ポストロック』と呼ばれていたんだと。そして目新しいものだった。やがてそれが浸透する頃になると、その名称自体が消えてひとくくりにロックになった。時代を経て音楽は定義ごと変わっていくのだ。
そして私は平々凡々とした、私のいた時代ではダサいとすら言われてしまうような音楽に──どうしてか、聴き入っていた。
その全てが私を感動させ、私は自分が目を開けていたのか閉じていたのかすら知らない。ただ、美しいと思った。
そしてそれはきっと、そこに偽りがなかったからだろう。私のような偽りが、私の見てきたような嘘がそこには介在せず、純粋に彼らは音楽を楽しんでいるように思えたのだ。音楽のために音楽をしている──そんな風に思えた。
では私はどうだったのか。
今なら自信を持って言える。違った。
ライブで沢山の人間を感動させたとき、私はこの身に余る程の幸福感を覚えた。私が奏でる音楽で、私以外の人間を魅了する。そのとき私は確かに楽しんでいたのだ。
けれどそれはうわべの楽しさでしかなかった。音楽を本当に楽しめてなんかいなかった。
そしてそれはきっと、私の根底に後ろめたさがずっと付きまとっていたからだろう。どんなに表面的な成功をしても、根本が駄目だった。だから私は結局、彼らのようにはなれなかったのだ。
1時間が過ぎ、番組が終わる。CM中に流れている曲もやはりちょっとダサかったが、私はその音楽を決して馬鹿にしたりなんてできなかった。
私の何倍も、何十倍も
どうして私にはできなかったのか。そんなことは分かっている。私に音楽への尊敬と敬愛が足りなかったからだ。虐めを原因に逃げたからだ。
そして2周目では、自分以外の誰かの力でズルをして音楽を創っていた。そしてそのハリボテを、私は本物だと思い込むようにしていたのだ。
けれどそれは結局のところやはりただのハリボテで、それに気付いた上で無視していた。無視することで音楽を続けられたのだ。
結果、後からツケが回ってきた。無視は無視であって、認知していないことにはならない。自分が無視していることを認めてしまった瞬間、全てはハリボテと化したのだ。
もっとも、始めから全てはハリボテだったわけだが。
今の私にはもう、何も残っていない。
「......あなたもまた面倒な人ですね、岩下沙良」
「......え」
突如、声が聞こえる。私はそちらを振り向いた。振り向いたけれど真っ暗だった。
「お前、アイ......か?」
「私以外の誰があなたの家に不法侵入すると言うんですか」
あっけらかんと口にするアイ。開き直りみたいなテンションに私は置いていかれる。
「......何しに来た」
私はアイのことをまだ疑っていた。しかしそれは懐疑的というよりは、彼女のことを余りにも知らない──そして、彼女の存在はあらゆるものにとっての脅威なのだ。
「......別に何ってわけではありませんが......ずっと何も食べていなかったでしょう? どうです、たまには私とご飯を食べませんか」
「......え」
その余りに急な提案に、私はかなり驚いた。
「オムライス作るので待ってて下さい......いえ、別に能力でできるんですけどね、最近目を付けてる3人きょうだいに触発されまして、オムライスを作ってみようかなと」
「......?」
私はアイの言う意味を全くもって理解していなかったが、その後聴こえてきた音や漂う匂いから彼女がオムライスを作っていることは分かった。
「よし......出来ました。テーブルまで来て下さい」
「......」
まだ少し不本意ながら立ち上がり、アイの声のした方へ向かうのだが、どうにも方向感覚が分からず、おまけに色々なものに衝突してしまう。そんな私の様子を恐らく見て、アイは呆れたように聞いてきた。
「......どうして視力が完全になくなるまで時間移動したんですか」
その質問に、私はどこかほの暗い気持ちを隠せず歩みを止める。
果たして、どう答えるのが正解なのだろう。
「......おおよそ想像はつきますがね......あなたは自分が何かを失うことで、つまり視力や地位や名誉や才能や、普通に生きる権利を失うことでけじめをつけようとしたんでしょう」
「......っ。その通りだ......」
アイは、私さえ知らない私のことを知っている。私の気持ちを私以上に理解している。
「取り敢えず、オムライスです。ピザソースは入っていませんが......」
「......ピザソース?」
「いえ、独り言です」
私はやっとのことでテーブルに到着すると、恐らく前方にいるのであろうアイの気配を感じながら、手を合わせる。
「......いただきます」
「どうぞ」
言いつつ、アイも手を合わせているような気がした。ゆっくりと、音を立てないように。
私は彼女のことを不思議に思った。
オムライスを一口頬張る。何とかスプーンで食べることはできる。
「......美味いな」
「そうでしょう。今の私にはその辺の一流シェフなんかより美味しい料理が作れます。まあ能力は使ってないんですけどね」
「......」
アイはどこか愉快そうにオムライスを食べる。しばらく会話はなく、ただ久々のご飯を私は噛み締めていた。飯がこんなに美味いものだとは思わなかった。
そうしたまま5分ぐらいが過ぎる。オムライスは恐らく残り少なくなっていた。アイが何も言葉を発しようとしないので、私は思いきって尋ねてみた。
「......どうして......急にあたしのところに来たんだ」
「......はい?」
それは、問いの意味を理解していないというよりは、理解した上で聞き返すような白々しい言い口で、けれど私は促されるようにそれを敷衍する。
「......お前の目的は何だ? あたしをどうするつもりだ? まさかあたしに料理を振る舞うために来たわけじゃないよな。......いいさ、あたしはこのオムライスに毒が入ってたって構いやしない。あたしを利用するつもりならそれでもいい。だから本当の目的を教えろ」
「......」
そもそものところ私は戸惑っていた。空腹状態ながら死にもしなかったのは、明らかにアイの仕業だ。けれど、彼女にそれをする理由があるようには思えない。
彼女は小さく息をついて、それからしばらく黙って──こう答えた。
「......勿論、ただ料理を振る舞うためですよ」
「っ......」
その言葉は、どうしてか。
とても演技とは思えない程、私には寂しく響いたのだ。
「......何だよそれ」
ふと、スプーンが落ちる音が聴こえる。木製のスプーンがかんかんと鳴った。
私の手から落ちたようだった。
「......本当に、あなたは面倒な人です」
「......」
彼女はそう言うと、かたんと小さな音を立ててスプーンを置いた。それからこう続ける。
「あなたが自分でも気付いていないようなので言いますが、思うに......あなたは罰を欲しているのではないでしょうか? それは視力や何かとはまた別の罰。音永夕輝という人物やあなたの姉に対する償いとして、あなたは罰されたがっている」
「......何だよそれ......」
まるで私のことを知ったように彼女はつらつらと発言する。そしてそんな説明を聞くと、私は自分が苛立っている理由に気付いてしまうようだった。
罰、か。
「あなたが苛立っている理由はひとえに──もしやあなたを罰することができるかも知れない私があなたを積極的に生かそうとしているからでしょう。あるいは料理を振る舞うこともその原因になっているようですが」
「......」
反論の余地もない。論駁などできやしない。
恐らくアイの言っていることが正しいのだと思ってしまったのは、彼女の言葉に少なからず納得してしまっている自分がいたからだ。
そしてそんな私を否定するための言葉を彼女は投げ掛ける。
「......ですが、そんなのは全くもって見当違いなことです」
「......え?」
私はそのとき顔を上げることで、始めて自分が俯いていたことを理解した。目が見えないと、自分の姿勢も分からなくなる。
アイは人差し指を私の前で立てたらしかった。
「例えばそれで私があなたに苦痛を与えたとしましょう。あなたに罰を与え、あらゆるものをあなたから奪い、あなたを生きている限り逃れられないあらゆる痛みにさらしたとして......果たしてそれで、何が変わるでしょうか?......何も変わりません」
「......」
彼女の言葉は正論だった。けれど、そうではないのだ。罪には罰を与えるべきで、それは現実に影響しようがしまいが変わらないこと。その私の考えをアイは分かっているはずだ。
「勿論あなたの言いたいことは分かります。それは飽くまで理論であって、あなたの感情論に従うなら然るべき罰が必要だと」
「......」
アイは考えるようにうーん、と唸って、思い付いたように口調を変えた。
「では、こういうのはどうでしょう」
「......?」
私は先程まで"罰"に対して否定的だったアイがまるで罰を与えようとするような言い出しに疑念を抱きつつ、彼女の言葉を待った。
「例えば......今日からまたアーティストとして活動する、とか」
「......は......?」
私はまるで彼女の言っていることを理解しなかった。
アーティストとして活動する? そんな馬鹿な。
「けどそれじゃあ、あたしがこの時代に飛んできた意味が......」
「いえ、むしろ逆です」
私を遮るようにアイがずばっと言い放つものの、まだ私には分からない。
「逆......?」
「ええ、あなたは自分が私利私欲で有名アーティストになったがために沢山の人間を不幸にした......そのことに罪悪感を抱いているわけです。ですから、あなたはアーティストという肩書きやその名誉を全て失うために、言い換えればアーティストでなくなるためにここに来た。......それはあなたの願いであり、償いです。ならば私があなたに与える罰は単純......分かりますね?」
「......っ」
彼女が何を言おうとしているか私には分かってしまった。そしてその上で、一体どういうつもりなのか全く分からなかった。
「
「......そんなの......!」
「ま、どうせ後々必要になること......でしょうし」
彼女の言う"罰"に納得いかず反論しようとするが、遮られてしまう。少しばかり熱くなっていて、付け加えられた言葉の意味は深く考えなかった。
「......後はあなた次第です。......やりますか? やりませんか?」
「......」
しばらく黙る。混乱が大きかったし、まだ納得できていなかったのだ。そんなことをしては本末転倒なのではないか、と。
アイは見事に私の心を読んで、言った。
「本末転倒と
「......」
そう言われて、ふとこんな考えが過る。すなわち、私はもうアーティストになったところで嬉しくも何ともないのではないか、と。
「現実に影響してもしなくても変わらないんですよね?」
そして間もなくアイに追い討ちをかけられる。
思えば──きっと私は怖かったのだろう。音楽活動を再び始めることで、また表面上の快感に自分自身が浸ってしまうのではないかと。それを恐れていた。
だが。
「......分かった」
考え抜いて、辿り着いた答えはこれだった。
私が罰を必要としている以上、否定する権利はない。それは至極当然のことで、だから怖くてもやらなければならない。
いや──怖いからこそ、やらなければならないのだ。何故ならこれは罰だから。
アイはこくりと頷く。
「......では、頑張って下さい。勿論土台は能力で作って下さいね? ただし、大人になってもそれが崩れない程度に、ですが」
彼女の言っている意味は何となく分かった。私は小さく頷く。アイはそれで納得したようだった。
「では、残りのオムライスも食べましょうか」
その言葉に従って口に運んだ残りのオムライスは、もうすっかり冷めてしまっていた。
私はバンド活動を始めた。自分を純イギリス人の
バンド名は『
私の人生はもう終わっており、私はもう何者でもない。そのことを決して忘れないようにするために付けた名だった。
私はアイと2人でイギリスの小さな家に暮らしていた。そしてそこで沢山の曲を作った。その全てが私の人生にまつわる歌であるのは、私が音楽を楽しめないようにするためだ。
自分の過去を思い出し、自分のしたことを懺悔するための歌。後悔するための歌。
罪滅ぼしなんてできっこなかったが、私はずっとそれを続けていた。
自殺する瞬間のことを歌った『Fallin'』は瞬く間に人気となり、私はポストロック界を背負うことになるであろうルーキーとまで称された。滑稽な笑い話だ。
それからもう1つ。母さんの歌を作った。母さんは20代前半──父親と別れるまでは詩人で、私はいつかその詩を見たことがあったのだ。
自分のもとから消えた恋人に想いを馳せる詩。怜が父とおそろい、と言ったのはその詩を何となく知っていたからであり、いくつかの曲はそこからインスピレーションを受けて書いた。『Adore』はその1つだ。
母さんの歌を作った理由はひとえに、それをすれば彼女の気持ちが少し分かるような気がしたからだ。全てが私のせいだったからとは言え、姉に優しい言葉を投げ掛けてやらなかったのも、私の金に目を眩ませていたのも事実だ。私は母さんを許すつもりはない。
──けれど。
そんなヒステリックな人間は、私の最も嫌った人間は、紛れもない私の母なのだ。最後まで彼女のことが分からなかったからこそ、私は彼女を理解したかった。
結局、分かりなんてしなかったが。
そうして、怜の頬の傷と父の頬の痣を時折混同させたり、敢えて恋愛チックな歌詞に懺悔の言葉を隠したりして、私は次々曲を作った。
そうして、8年ぐらいが経った頃だっただろうか。
能力を失った私はまた舞台に立って、最近発表した新曲『Trigger』を歌っていた。日本の音楽業界ではどこかのバンドのボーカルをアイドルが務め人気を博していた頃だ。
それは──突然の出来事だった。
歌っている最中に突然、音が消えたのだ。マイクを握っていたはずの手はいつの間にか下りており──私は椅子のようなものに座っていた。
「何が......」
呟きと同時に、鼻と耳に違和感があった。
まず始めにいい匂いがしたのだ。コーンポタージュのような匂い。
そして鼓膜を揺さぶったのは、挨拶の声。
『おはようございます』
それは斜め前から聴こえてきたもので、その
『今日は2007年1月24日、水曜日です。今朝入ったニュースを──』
「は────」
「......こればかりは仕方がないことだったので」
そして、目の前から聴こえた別の声は──アイのものだった。私はまた驚愕する。
「アイ!? そこにいるのか!? どうして......」
「乙坂隼翼が
「......え?」
その発言の意味を理解せず、私は思わずおかしな声を漏らした。
だってそうだろう。彼女の言葉の中には、私が存在を大まかに知る人物の名前があった。
乙坂隼翼。
そして──
「覚えていませんか?......あなたの知る乙坂隼翼は、盲目だったはずです」
「......!」
そう言われて思い出す。私は能力によって、断片的に乙坂隼翼のことを知った。彼と彼らの企てのこと、琴羽のことなどをだ。
そしてそこにいた彼は、確かに盲目だった。
「彼が今回の周期の
「......!」
まるで自明のことのように淡々と告げるが、告げられる側の私は驚きを隠せないでいた。
「じゃあ......」
「彼の弟、乙坂有宇が略奪能力者ということになります」
「......」
私はその人物のことを知らなかった。
「あなたと初めて出会い、記憶を見た日から疑ってはいましたが......まさか本当にそうだったとは」
「......」
「これはまた......退屈になりそうですね」
「......え?」
色々知った風な態度を取り、アイはその上で随分と面倒そうにため息を漏らした。
「本来、
「......?」
言わんとしていることは何となく分かった。『
しかし、ならばどうして。
その答えを彼女は提示してみせた。
「ただし──私とあなたを除いて」
「......え? それは......どうしてだよ」
突然突きつけられた飛んでもない事実にかなりの衝撃を覚えつつもすぐに問うことができたのは、この短い間に頭の片隅である程度の事実を整理していたからだろう。
アイは答える。
「恐らく、同じ能力を持っているからです。私は彼と同じ『
つらつらと述べるアイ。後半は今考えたことをそのまま口に出している感じだった。
「そしてあなたの姉は
「......ちょ、っと待ってくれ」
彼女の独り言に付いていけない私はそれを制止する。彼女は私の胸中を察したか覗いたかは知らないが、分かりましたという風に言う。
「......つまりですね、私とあなたはこれから、乙坂隼翼が能力を使った回数だけ、彼と同じように2007年の今日からやり直さなければならないということです」
「え......」
「その回数は、彼が盲目になるまでですから......数十回。100もいかないでしょうが、20では済まないでしょう」
「......!」
次々と信じられないことを私に教え続けるアイ。彼女も少しメンタルをやられたような言い方だった。私はこんなことを聞いてみる。
「......例えば......先に乙坂隼翼の能力をお前かあたしが奪うことはできないのか? そうすればそんな面倒なことには......」
「いいえ」
飽くまでも冷徹、かつ冷淡に彼女は首を横に振る。見えるわけではないが、今の私は他人の動作も何となく分かるようにまでなっていた。
「それはできません。私には
「え......?」
その意味を始めは全く理解しなかった。私はしばしその言葉を頭の中で反芻し、思考を巡らせ──。
「──まさか」
気付いた。
「ええ、あなたの記憶では乙坂隼翼は盲目になっていました。その原因として考えられる可能性は1つ。彼が視力を引き換えに、能力を最後まで使ったからです」
「......存在の環」
そんな言葉が漏れるぐらいには、ことの本質を既に理解してしまっていた。
「ええ、ですからもし彼の能力を奪ったとしても......奪う前に戻されるとかが起きるだけでしょう。時間的な矛盾を世界は許しませんから」
彼女は以前、1秒前の過去に飛んで自分に自分の能力を奪わせようとしたことがあるらしい。しかし結果は失敗だった。時間旅行する前に戻されていたんだとか。
もしそれが許されてしまえば、能力の数が不確定になるから。
「ええ。彼らは日本の能力者をまとめる組織を作ろうとしています。それは今回の
私とあなたが初めて出会った場所に、と彼女は付け足す。そう言えば私は何もない草原にタイムスリップしていたが、思えばあそこは併設のマンションがあったところなのだろう。正確には、これからマンションが出来るところ。だって、私は時間旅行する前マンションの自分の部屋にいたのだから。
「ですからそれまで、待たなければなりませんね。今回を8年として、それが20回以上......160年以上は、同じことを繰り返さなければなりません」
「......それは......
「ええ。......どうせ罰なんです。無限地獄みたいで退屈でしょう?」
アイはけらけらと笑う。彼女の本意はずっと分からない。
時折、私はアイの溢したある言葉のことを思い返し、そしてその意味を考えていた。
──ま、どうせ後々必要になること......でしょうし──
そのときは深く捉えはしなかったが、今になってその言葉は思ったよりも重要なのではないかと思い始めた。
「なあアイ......」
「では、まずはイギリスに引っ越すことからですね......流石の私でも、こればかりは時間がかかってしまうものですから。明日まで待ってて下さい」
「......」
尋ねようとしたが、わざとらしく遮られてしまう。心を読んでいるのか、読まずとも分かるのか。
ともあれ、こうして私の、サラ・シェーンとしての2周目が始まった。
Zhiendとして活動を始め、若返りにより復活している能力を使ってすぐに有名になった。加減は以前と同じで、イギリスではそこそこトップ、けれど他国の人間は殆ど知らないぐらい。
日本語の詞も書いたのも以前と同じで、けれど新曲は作らなかった。もともとある曲──『Fallin'』や『Blood Colour』や『Live for You』や。あるいは『Trigger』を、どれも1周目と全く同じ時期に発表した。そうしろとアイに言われたからだ。
勿論、これが音楽の力の偉大さと
そして、8年が経ち。
私はライブ中、突然音が消えたのを理解してとてつもなくやるせない気持ちになった。すぐにアイが家へテレポートしてくる。
「......これは、結構......堪えるな」
「そうでしょうね。8年ともなれば余計に......もうやめますか?」
「......」
そんな問いかけをしてきたアイ。勿論答えは1つだったし、そんなことは彼女も分かっているのだろう。
「......やるよ、勿論。これが私の背負うべき罰なんだ」
「......そうですか」
小さく笑みを作って頷くと、アイはまたテレポートした。イギリスに家を立てに行ったのだろうと分かる。
私は漠然と思った。
──アイは、平気なのだろうか。
160年──下手したらそれが500年とも600年ともつかないのに、どうしてあんな平気そうな声をしているのか。
私には、知らないことが多すぎる。
3周目からは盲目にもすっかり慣れ、1人でも外出することは難しくなくなった。
4周目からは歌やギターに更に磨きをかけ、ファン層を増やしてしまった。この辺りは反省点だ。
そして5周目からは──今が何周目かを考えないようになっていた。別にそうする必要はなかったし、思い出そうとすれば思い出すこともできた。何せ全てが8年という長いスパンの間に起きた私の快進撃、と端からは見えるものであり、だから忘れるはずもなかった。
同じ歌を歌い続けた。嫌気が差してしまう程歌い続け、私は私の知らなかった私の曲のことを知るようになっていた。
様々なことを知った。
さあ、今は何周目だ?
私は自分に問いかける。自分を挑発する。
そうして、答えがない問いを繰り返す。
あとどれぐらいだ?
この呪縛はあと何年続く?
そしてその度、私は思い出す。
私はもう、終わっている。
『私』はもう
私は世界の一部と化した、盲目のサラシェーン。世界は私ではないが、私は世界なのだ。
ならば、何周目であるかなど関係ない。
あと何年? 愚問だ。
長い時間でやっと、私はそれを理解した。
そうして──長い長い8年を過ごし続けたある日のこと。
私は気付いた。恐らく最長ではないか、と。
長くても2016年の1月まで。そしてそれは乙坂隼翼が能力の消失を危惧した結果だとアイが言っていた。
そのアイはと言えば。
この8年は会っていない。ずっと日本にいて、私の知らない何かをしている。
「......まさか、な」
と、呟いた瞬間。
またしても突然、空間が静かになり、暖かくなった。何度も嗅いだ匂いだ。
「......っ」
分かっているとは言え、慣れたとは言え、普通の人間ならとっくに死んでいる年月を生きてきた私は再び聴こえたニュースの音に諦めの吐息を漏らした。
「......久しぶりだな、アイ」
「......気付いてましたか」
この頃になると、もう自分のいる空間に誰がいて誰がいないのかまでを察知できるようになっていた。他人の溢す声や言葉やその調子や、あるいはため息からその人の心境を理解できるようになっていた。
「流石ですね」
「......嫌なスキルだと自分では思ってる」
ストレスが増えた。ただでさえいつ気を狂わせようかという最中であるのに、他人の心がほぼ読めるようになってしまっては。
これも罰だろう。アイはきっとここまで考えていたのだ。
そして、そうならば余計に私はそれに耐えなければならない。私が望んだんだ、受けて立とうではないか。
さて......あと、何回だろうか。
そんな風に思っていた。
彼女が次の言葉を発するまでは。
「──乙坂隼翼が、最後の
「......え......」
その言葉を聞いて、私はしばらく悟性すら働かせられない状態に陥った。
今、何て。
「これであなたへの罰は終了ですね......お疲れ様でした」
「ちょ、っと......待てよ。それって......」
私は戸惑いを、驚きを隠せない。声を出した瞬間働き始める脳は、私をとある感情で侵していく。
高揚感とも言えない複雑な感情は、正と負のどちらにも働いていた。
「言った通り、もう繰り返しはありません。あなたはこの呪縛から解放されます。が......私から最後のお願いです」
「......?」
私はまだ感情や理解の整理が追い付かないまま彼女に耳だけは傾けていた。他にはコーンポタージュの匂いぐらいの情報しかないから。
「今回も8年間、私が良いと言うまでバンド活動を続けて下さい。サラ・シェーン......Zhiendのフロントマンとして」
「......それは......」
「最後の罰です。そしてこれは必要なことなんです。私はあなたを利用し続けていました。
「......?」
私はその意味をすぐにアイに尋ねようとした。ひょっとして、今まで疑問に思っていたことが氷解するのではないかと思ったからだった。
けれどアイはまるでそれを阻むかのように早口で続ける。
「イギリスに家を立て、あなたをイギリス人のサラ・シェーンにします。私は日本に残りますが......頼みましたよ、サラ」
「それって......」
聞く前に、アイは瞬間移動してしまった。またイギリスの記録などを捏造して私のいるべき記録を作り上げるのだろう。
私は訳も分からずただ呆然としていた。
それから1日経ってこちらに戻ってきたアイにイギリスにテレポートさせられると、とうとうもう私は彼女に会うことはなかった。
そこからは──アイに言われた通り、また今までと全く同じことをした。能力を使ってアーティストになると、間もなくZhiendを立ち上げフロントマンとして活躍した。
それの持つ意味は分からなかったが、私はどこかそれに、単純な作業以外の目的を見出だしているようだった。
呪縛から解放されたからだろうか。自分の瞳が虚ろであることなどとっくに知っていたが、それでも心の奥に何か熱いものを感じてしまっていた。
私はその気持ちの理由を知らなかった。
どうして、こんな大嫌いな曲を歌い続けて、それで──。
とうとうその日がやって来た。
「......Why avoid me? shit」
私は道行く学生に避けられて不機嫌になる盲目の女性を演じていた。乙坂有宇に接触するためだ。
彼の目の前を通り──そして、アイは言っていた。彼なら間違いなく反応するだろう、と。
そして。
「えっと......ハウ......!」
8年ぶりにアイが姿を現したことにも驚いたが、本当に彼が話しかけてきたことにも少なからず驚いた。すぐに私は彼に駆け寄る。
「お前は......モダン焼きを食わせてくれるのか......」
かなり圧をかけて、これ以上ない程の至近距離で尋ねる。乙坂有宇に接触するための口実は何でもいいと言っていたが、こんな下らないことでもいいのだろうか。そもそも私は何故彼に接触しなければならないのかを知らなかったし、今乙坂有宇が
能力を自覚しているのか、していないのか。乗り移るだけの能力だと思っているのか、それが略奪能力であると知っているのか。
ともあれ彼と話をつけて、私はお好み焼き屋に向かった。
「いらっしゃぁい」
けだるげっぽくも独特のテンションで店主はオーダーを取る。
「広島焼き1つ」
「あと生中」
「はぁいよぉ」
「えっと......僕は烏龍茶。......あ、いや、広島焼き2つで」
順に、乙坂有宇、私、店長、乙坂有宇だ。店主が奥に消えていくのを足音で確認しつつ、私は目の前から聴こえる不安定な息遣いに意識をやっていた。
何か、ある。
「ぷは──っ! くぁ──っ! 効く──!」
ビールを飲んで、あからさまにテンションを上げる。正直のところ、結構テンションは上がっていた。そこに店長。
「自分らで焼くかぁい?」
乙坂は気遣うように、
「あ、いや、この人目が不自由なんで焼いて下さい」と応じた。
「はあいよお!......って、ハぁっ!?」
すると、店長はやけにアメリカンなテンションで私の真横まで顔面を近付けてきた。
「目が不自由って......あなた、まさか......!」
最後の方は凄く早口になっている。明らかに私の正体に気付いた風だった。
「ちぃーっす! Zhiendのボーカル、サラ・シェーンでぃえーす」
悪戯っぽく言ってみたのは、早くも酒に酔いかけていたからだろうか。
店主は驚いた様子で私の登場を歓びながら、明日のライブに来ることを伝え、サインを頼んできた。軽く答えて、彼が持ってきた色紙にサインを書いてやる。前の方から感心したような視線を何となく感じたことについては今は触れないでおいた。
「ありがとうございまーっす! ではこちら......お召し上がり下さイヤァァァァッ!」
ハイテンションすぎた彼は広島焼きを置いて、この場から去る。唾がかかったらどうする。
私は生地の薄い広島焼きを食べながら、飽くまで自分がイギリス人であることを誇張するように言ってみた。「流石ジャパン!」
それから、適当にモダン焼きの美味さを楽しみつつ、間もなく完食。乙坂も食べ終わったようだった。
「ありがとうございっしたー! ライブ、楽しみにしてまーっす!」
店主の声を鼓膜に感じながら、私と乙坂は店を出た。
「悪いな、ご馳走になって」
感謝だか謝罪だか分からない声を漏らす乙坂に、私は気になっていたことを尋ねた。
「ところでさーぁ?......あんた、何か良くないことでもあったのか」
「え?」
急に何を言い出すのか、とでも言いたげだったので、私は付け加える。
「息遣いや声色で分かるんだよ。ずっと悲愴感丸出しなんだよなぁ、あんた」
「それは......えっと」
「誰か、身近な人を失った、とか」
言った瞬間、乙坂は言葉を詰まらせた。どうして分かるんだ、という風に。
諦めたように表情を緩ませ言う。
「......凄いな、その通りだよ」
そして──ここからは完全に私の勝手なのだが、アイには乙坂有宇と接触しろと言われただけだし責められはしないだろう。
「良かったら、聞かせてくれないか?」
私はそれから、乙坂の妹さんが事故で亡くなったという話を聞いた。それなりのショックを覚えた。1つは乙坂の妹の死に対してのショック。もう1つは『略奪』能力者の妹、『崩壊』能力者の死に対するショックだった。しかし私はそのことが未来にどう影響するのかを知らない。少なくとも私がいた時代は平和だったので、乙坂は略奪を始めるのだろう。
ケムリを上げさせてくれ、と言ったのは、別にイギリス人の振りをしたからではない。イギリスに住んで200年以上、私は線香というものに一度たりとも触れることはなかったのだ。
何とか頼み込んだのは、やはり乙坂に対してこの短時間でも恩を感じていたからだろう。私のそれが演技ではあったものの、私にモダン焼きを食わせてくれたのだから。
乙坂は優しい人間だった。
「なあ、1つ頼みがあるんだが」
夕暮れの光が果たしてオレンジ色なのかは分からなかったが、窓から差すその光を浴び、線香の香りを鼻腔で感じ、そして乙坂の妹に追悼の念を捧げていると乙坂はそう切り出した。
「ん?」
私は少し顔を上げ、後ろの乙坂を振り向きはせずに応じる。乙坂はこう言った。
「会ってほしい人がいる」
乙坂は、Zhiendファンの兄妹の兄を私に会わせたいと言い出した。その口調からただのファンではなさそうなことは分かり──私はそれを了承した。
今、乙坂は家の外で誰かと電話をしている。恐らくその兄妹の、妹ってところか。
間もなく戻ってきた乙坂は時間のことを気にしていたが、私はそんなことは気にしない。せいぜいボディガードの黒服にマネージャーの元へ連れていかれ、説教を食らうぐらいだろう。
そもそも明日のライブは日本に来るための口実で、本来の目的はこっちだ。
私はふと思う。乙坂は略奪能力者で、私も同じく略奪能力者だった。きっとここには、私にしか分からないことがあるのだと思う。
だから、こう言った。
「最早、あんたの大事なことは、あたしにとっても同じぐらい大事なことになってんだよ」
それは紛れもない本心で、私は乙坂のことを恩人だとも思っていたし、哀れにも思っていた。
そして何より──私は私を乙坂に重ねたのだ。
似ている。そう思ったから。
その病院は遠くにあるらしく、私は乙坂の袖を掴みながら歩いた。そんなことをしなくてもいいぐらいには盲目にも慣れているし、杖があれば何とでもなるのだが、ここはこいつの優しさに甘えることにした。
その道中も、乙坂は重苦しいため息をつく。指摘すると彼は、何でもお見通しだな、と呆れたように言った。
その後、折角の電車なので立ち食い蕎麦に寄り、これを考えたやつにリスペクトの念を抱くとか言ってイギリス人感を出しつつ、私たちはバスに乗った。
「デリケートな部分で悪いが......その目、完全に見えないのか?」
どうやら質問をしたいようだったので、「勿論いいよ」と答えると、そんなことを乙坂は尋ねてきた。サインのことが気になったのか、それとも私のことが気になったのか。私は自嘲するように答えた。
「ああ、何も見えない」
すると乙坂は、やはりこう聞いてきた。
「サインが書けるってことは、生まれつき見えないってことじゃないよな」
「......ああ」
予想通りの質問にすぐ答えつつ、私は話してみることにした。
「......でも、これは懺悔なんだ」
「懺悔?」
「......罪滅ぼしのようでもあるな」
乙坂はきっと、これから私が話すことの1割も理解しないだろう。けれどそれならそれで、別にいい。
「お前は人生について考えたことがあるか?」
「......藪から棒に何だ」
「人生っていうのは、一度きりのものだろ?」
「勿論」
私は、遥か昔──まだ自分が『岩下沙良』の1周目だったときのことを思い出す。
「あたしは、バンドのフロントマンとしてステージに立つことを夢見ていたんだ」
乙坂はただ私の話に耳を傾ける。
「けど、あたしの人生、気付いたときには手遅れで、その夢を叶えることはできなかった」
それから思い出したのは、廃人になって家に引き込もっていたときのこと。16で酒を飲んだ記憶。また自分を馬鹿にするように続ける。
「歌もギターも下手っくそで、テレビでは、年の近い奴らが歌で称賛を浴びててさぁ......」
調子を落として、言った。
「──神を恨んだ」
それは演技でも何でもなく、本心だった。しかし乙坂はやはり分からないという口ぶりで不思議そうに言う。
「でも、今はそうなってるじゃないか」
「それはズルをしたからさ」
あっけらかんと口を開いてみたものの、乙坂は理解はしない。
「ズル?」
そんな風に私の言葉を反復するだけだった。私はついに自分のことを打ち明けるように、自分の失態を話す。
「それも、自分の欲だけのためにな」
それは、紛れもない真実。
「日本でも、すげー売れたことがある。社会現象、時の人。......そういう成功の仕方だ」
淡々とただ事実を述べ連ね、乙坂はそれをただ聞いている。
「莫大な金が動く。周りの目も変わる。結果、家族にも迷惑をかける」
家族──私は姉貴のことを思い出していた。Alisaになれず、私に代わるように廃人になってしまった姉貴。
そして、怜のことを思い出した。
「......金目的で弟が誘拐されたことも、ある」
それは決して真実ではない。そう思い込んでいただけで、実際は私の能力が目当てだった。けれどどちらにせよ、私欲で能力を使い続けたせいで、私は怜を苦しませてしまったのだ。切り替えて言う。
「だから、そういうのはやめにしたんだ。......結果、地味なバンドのフロントマンになる決心をした。最後にゃ......引き換えに視力を渡して、
「誰に?」
「そりゃカミサマだろうよ」
私は当たり前のように笑ってみせる。乙坂には理解の及ばない範囲だ。
「まあ、今のあんたには分からないだろうな」
どうやらこいつは、『略奪』能力のことまでは自覚していないらしい。
私はそのとき初めて気付く。もしや私がこの時代に来た理由が償い以外にあるとするのなら──それはきっと、今のためだったのではないか。
ウォーカー作品の中でも特に私が気に入っていた作品。それが『隠者のパリノード』だった。琴羽と仲良くなったきっかけはあれだった。
あの作品の最大の秘密は、"隠者"から主人公に届いた日記の内容が、"その日"にならないと見られない理由にあった。
隠者の正体。
それは──未来の主人公だったのだ。
未来の主人公が過去の自分に送った日記。それは主人公自身が最悪の未来を変えるために、自分に対する忠告として送った日記だった。
しかし未来は不確定だから、日記はその当日にならないと見られなかった。日が経つごとに日記の内容が薄れて見えなくなっていったのは、未来が変わったからこそだった。
ならばきっと、今の私は──隠者の日記だ。
隠者じゃない。何故って、隠者『岩下沙良』はもういないから。私はその残りかす、ただの日記だ。
けれど、ただの日記にもできることはある。
同じ失敗を繰り返さないために、略奪能力者が略奪能力者に対して送る忠告。
未来からのメッセージ。
私は乙坂に、にっと笑んで言った。
「けど、もしそんなときが訪れた日にゃ......上手くやれよな」
私はきっと、このために飛んできたのだ。
これで、少しは償いになっただろうか。
「すまないな......こんな遠い場所まで連れてきて」
階段を共に上りながら、乙坂は私を気遣う言葉を投げ掛けた。私は少し嬉しくなる。
「ほう?......自分で気付いているか?」
だからこんなことを言ってみた。
「今のあんたはとても優しい」
乙坂は驚いたような息を漏らす。
「かつては、そうじゃなかったんだろう」
それは乙坂の雰囲気から何となく分かることで、何よりこいつは私に似ていたのだ。
「自覚はないが......そうかもな」
少し照れ臭そうに、あるいは本当に自覚無さそうに返事をする乙坂。
「きっと、良い出会いがあったんだなあ」
付け加えて言うと、乙坂は何か──あるいは誰かを思い出すように夜空を見上げる。大切な人のことを思い出しているのかも知れない。
私は何だか寂しくなってしまった。
──私にも、こうなれる未来があったかも知れない、と。
「うぅぅぅう! うぅ! あぁぁあ! うぅ! あぁぁあっ!」
どういう状態になっているか分からない、心の準備をしておいてくれと言われたので、ある程度そのつもりで中に入ったのだが──そこにいた青年は、我を失ったように唸り声を上げながら、布団の羽毛を次々むしっては投げていた。その音だけが聴こえる。
「また鎮静剤が切れてる」
「......凄く、奇妙な感覚だ」
私はその声に、近しさと禍々しさと、どうにも近寄りがたい感覚を覚えた。その声は既に、人間の形を留めていなかったのだ。
「なあ、その人は、今何をしているんだ?」
聞くと、乙坂は答える。
「え......作曲、らしい」
それを言われて私は、近しさの正体に気付く。
この人も作曲をしているから、同じ匂いを感じたのだろう。
「そっか......そいつぁ、予想以上にヘヴィだな」
すると、乙坂は彼について教えてくれた。
「......かつてはあんたのバンドに憧れて、ギタリストとしてメジャーデビューする寸前だった人だ」
乙坂の説明の中にはどこか、隠し事をするような雰囲気を覚える部分があった。それで私は気付く──もしかしてこの青年は......能力者だったのだろうか、と。
「......そっか......」
そう思ったら、私は考えるより先に前に向かって歩いていた。
「え、おい......!」
乙坂は私に手を伸ばそうとするも、直前で止める。
例えば、ずっと誰かを傷付けていた、誰かを苦しめ、貶め、誰かの幸せを奪っていた私の歌で、救われる人がいたら。
もう一度だけ、この瞬間だけ、私は戻れるだろうか。この僅かな間だけ、私は誰かのために──この人や、この人を想う人たちのために、歌を歌えるだろうか。
Looking up high, found a steel tower
Wondering how I would feel, if I fall down
Was it a dream? I saw deap red
Chasing, for what's far ahead, always yearning
Don't know why but the beauty
I really want may seem to be awkward to someone's eyes
『Fallin'』は、岩下沙良が初めて死んだときの歌だ。あるいは、もうあのとき私は死んでいて、2周目の私は岩下沙良ではなかったのかも知れない。
何が正しいのかなんて分からないけれど──そんな歌で、私はどうやら奇跡を起こしたみたいだった。
歌っている間は気付かなかったが、青年はいつの間にか唸るのをやめて、歌い終わる頃には私に注意を向けていた。目こそ見えないが、それぐらいは分かる。
乙坂は驚いたように彼に近付く。
「友利一希さん......僕のことが分かりますか? 妹の奈緒さんのこと、覚えてますか?」
その口ぶりから、どうやらその『ナオ』ってのが乙坂にとっての大切な人なのだと分かる。
「ナ......オ......」
先程まで唸り声を上げていたはずの彼は、その名を呟いた。乙坂は息を荒くする。
「......そうです! 奈緒です!」
「......ナオ......」
今度は先程よりも流暢に反復した『友利一希』なる青年。茜と同じ名字なのは──流石に偶然だよな。
「良かった......」
「何やら、奇跡でも起きたようだな」
安堵に胸を撫で下ろし、声を少し震わせる乙坂。
「ああ......あんたの歌が起こしてくれたんだ」
きっと涙目になっていることだろうことが分かる。それが何よりも嬉しかった。
「心底、嬉しそうだな。......私も同じくらい、嬉しいよ」
私は......たった今、奇跡を起こしたのだ。諦めていた歌で、誰かを苦しめるための道具でしかなかった歌で、私は今、この人を、乙坂を、乙坂の大切な人をきっと救ったのだ。
「ああ......。ありがとう」
微弱な意識が窺える友利一希青年の前で、乙坂は私に感謝をした。
こちらこそ、ありがとうな。
帰りのバス。
「一歩前進、と言ったところか?」
「......ああ、そんなところだ」
乙坂は本当に嬉しそうで、高鳴る鼓動が分かるようだった。
「今日は充実した1日を送れて、良かったよ」
乙坂には感謝してもしきれない。彼はこんなことを言った。
「......そういや、明日あんたのライブ、行く予定なんだ」
「ほおう?」
今更だな、とか思いつつ私は、乙坂の言葉を噛み締めて頷いた。
「だったら、あんたというお客がいることを意識しながら歌うよ。それに、あんたの大切な人も来るんだろう。その人のためにもな」
またしても言い当てられたことにびっくりしながら、乙坂は答えた。
「......ああ、頼む」
バスは夜の山道を駆けていった。
その後、黒服に連れられ、車に乗せられてマネージャーの元へ連れていかれた後、説教を受けながら私は考えていた。
罰として続けていた音楽で、私は人を救った。そしてそのことに歓びを覚えてしまった。
私はとうとう、救われたような気持ちになってしまったのだ。
ならばきっと、Zhiendはもう畳まなければならない。Zhiendは飽くまでも、"終わり"でなければならないのだ。
後悔はしていない。できれば後悔する形でZhiendの幕を閉じたかったのだが......私は人を救ってしまった。
果たして、許されることだろうか。
そんなことを考えた。
そして翌日。
私はステージに立って、歌っていた。勿論、乙坂とあいつの大切な人のことを考えながら。
歌い続けて、残りは2曲というところに差し当たった。そのうちの1曲は、日本初お披露目である。私はスポットライトに当てられ、沸き上がった観客の熱を感じながら叫んだ。
「『Trigger』!」
と同時に曲が始まる。私は叫ぶように歌った。
Come now heading to the oblivion to the darkness sink me
Future is lonely as it seems to be and I am reaching from there
そしてこの歌はきっと乙坂を震わせているだろう。私は今、純粋にライブを楽しんでいた。
後からアイに聞いた話だが──この曲の途中、乙坂は大声を上げてすぐに倒れたそうだ。
"記録の痕跡"、そうアイは言っていた。
曰く、
ただし、鉛筆で書かれた筆跡──例えばその黒鉛の部分を消したとしても、消しゴムはついてしまった痕まで消すことはできない。
今までのリープで私に毎回Zhiendを作らせ、同じ曲を同じ時期に発表させたのは、その痕跡を何重にも重ねて、濃くするためだった。
何故?
乙坂に自ら、自分の記憶を思い出してもらうためだ。
痕跡は形を残し、乙坂の記憶をとうとう呼び覚ました。『Trigger』は名の通り、その引き金だったのだ。
それから間もなくして、また
友利一希さんの前で歌った記録はなくなってしまった。しかもアイの話によれば、私はもう乙坂には会えそうにないらしい。
ならばせめて──あいつには会わずとも、友利一希さんの部屋に面会に行こう。アイに頼めばその瞬間だけでも、家族ということにぐらいさせてもらえそうだ。
そこでまた『Fallin'』を歌おう。奇跡は起こせるのだから。
Zhiendは半年後に解散した。最後の日は日本のライブで、マネージャーや多くの人間は反対したが、ここが私の原点なんだ──そう伝えると、納得こそしなかったが何とか私の意思を汲んでくれたようだった。
そしてその日、私はその足をお好み焼き屋に向けた。あそこの店長は私に会って喜んでくれていたからな。またサインをしてやろう。そうだ、モダン焼きもメニューに入れるよう頼んでみよう。
乙坂と出会った道を歩く。お好み焼き屋の後は面会だ。友利奈緒さんや乙坂のためにも、もう一度奇跡を起こしてみせる。
2040年8月某日──私は能中という男の『治療』能力を奪い、深山の母さんが寝ている隙に彼女を治療したわけだが......。
同じようにアイが友利一希さんの大脳を治すのは、もう少し先の話だ。
私は真っ暗闇の先を見据えて、杖を片手に道を踏み締めていった。
というわけで、これにてCharlotte Zhiend、とうとう完結致しました。これで本二次創作も全て終了です。
嘘です。
CDEのAnother Epilogueの如く、最後にもう一話あります。小さな小さな、あるいは大きな大きなお話です。
もうしばしお待ち下さい。
ところでなのですが、隼翼の時間跳躍の回数。彼は一体何度現実のやり直しをしたのでしょうか。使う度に視力が落ちる能力で、視力が潰えるまで──というのは分かるのですが、原作ではそれについての具体的な言及はなく、コミカライズではこれがせいぜい1桁程度なのかな、という描き方になっていたため、永遠の謎でした。そして永遠ですからこれからも謎であり続けるのでしょう。
そんなお話を挟みつつ後書きでした。
では次のお話、本当に本当に最後のお話をお楽しみ下さい。