ソードアート・オンライン 〜ユイの願いごと〜   作:ロックン

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「 守護者」

わたしを深い思考の中から引きずりだしたのは親友の一言だった。

 

「アスナ!?いつまで呆けてるのよ?リーファとシノンにもちゃんと説明した方がいいんじゃないの?」

 

顔をあげると微妙な表情をした二人がこちらを見据えている。

しかし私は先程約束したにも関わらずユイについて話すことを躊躇ってしまった。

 

「アスナ、話しても大丈夫だ。理由も知らずに巻き込むのは、俺たちもいい気分じゃないだろ…。」

 

「………。そうだね。」

私は不思議に思ってきた。

なぜ彼…キリトはこのような状況の時、いつも自分を強く保てているのか。

彼の声を聞くたびに私の心は慰められる。

 

ユイちゃんのためにわたしがいまできること…。

 

私は大きく息を吸い、ゆっくりと話しはじめました。

 

「もう知ってることかもしれないけれどユイちゃんはAI…、人工知能なの。」

 

アスナの言葉にリーファが大きく頷く。

「はい。そこまではアスナさんをこの世界でキリト君と探している時、ユイちゃんが話してくれました。それがなにか?」

私が続きを言う前に隣で黙り込んでいたキリトが口をひらいた。

 

「ユイはこの世界で生まれたわけじゃないんだ。元々はSAOのカーディナルの一部、メンタルカウンセリングプログラム試作一号コードネーム…ユイ。これが俺たち娘の本当の姿なんだ。」

 

キリトの言葉にすぐさまシノンが、反応する。

「でも、アーガスは解散したはずよ?GGOやALO、別の世界にそれもAIのユイちゃんがコンバートができるはずが…。」

シノンは驚いていたが冷静にキリトの話しを飲み込もうとしているように見えた。

この冷静さこそ…スナイパーとして最も重要なスキルなのであろう。

 

「それは…。いや最初から話した方がいいな。」

 

それから彼は、私たちがはじめてユイと会ったことから話しはじめた。

記憶をなくし二十二層の森で一人さまよっていたこと。

記憶をなくしていた理由がSAOプレイヤーの負の感情であり、エラーを蓄積していったからだということ。

そして[はじまりの街]の隠しダンジョンで権限を使いボスモンスターを倒し窮地を救ってくれたこと。

 

「システムコンソールに触れたことでユイはプログラムのチェックをされ、カーディナルに異物と判断され消去されてしまったんだ。だけど俺がユイの権限が残ってる内にユイのプログラムを切り離し圧縮してとりだしたんだ。」

 

「キリトらしいわね。」

まわりから苦笑まじりの声が聞こえてくるが構わずキリトは話し続ける。

 

「それから月日が経って俺がアスナを探してALOにはじめてダイブしたとき、俺のステータスがSAOと同じことに気づいたんだ。そこでアイテムストレージを確認すると[MHCP001]…ユイのこころがあったんだ。それを展開することに成功したからユイはこうして…。」

そこまで喋ったところでシノンが右手をキリトを制した。

 

「……。なるほどね。だいたいの事情は理解したわ。キリト、アスナ。これが最後の質問よ。ユイちゃんはどうして今朝そして今、切断もしくは意識を失っているの?」

 

この質問には誰もがわからないだろう。キリトも例外ではない。

 

「ごめん…。シノノンそれはたぶんキリト君にもわからないと思う。私にも……。」

 

「わかったわ。話してくれてありがとう。スッキリしたわ。」

 

それからどれくらい経つのだろうか、長い間黙り込み皆それぞれ思考を巡らせた。

 

「もしも…今朝と同じような現象なら5分もすればユイは回復するはずだ。前回と同じならの話しだが…。」

 

「そうですね。きっとまた元気になって戻ってきますよ!アスナさん、元気だしてくだざい!」

 

シリカの言葉に頷きながらもやはり自分のこころにかかっている霧が晴れることはない。

その後の話し合いによりまずは場所を離れることになった。

忘れていたが、まだクエスト実行中であり、いつモンスターがポップするかわからない。

そこでひとまずクエストの依頼人の老人のもとへ戻りユイの様子をみることになったのだ。

 

「大丈夫だ。アスナ、ユイのことだからきっとなんてことはないさ。なんたって俺の娘だからな!」

 

力なく腕をだらりと垂らしているユイを抱えたキリトの言葉に励まされながら私たちは[水晶の剣山]をあとにした。

 

ユイちゃん。あなたはいまどうしてるの?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここはどこでしょうか?」

 

真っ暗な闇の中目覚めた。

 

「パパ!?ママ!?みなさん!?どこですか!?」

 

わたしは大声で叫んだつもりでした。ですが、この真っ黒な空間のせいでしょうか?自分が声をだしているのかすらわからないのです。

 

あれ?…わたしはなぜこんな場所にいるんでしょう?

 

ふとわたしは思いつきでマップデータにアクセスしてみましたが、UNKNOWN……情報は皆無、絶望的といっていいでしょう。

 

 

せめて…せめてパパとママがいてくれれば…。

 

「どうやら目覚めたようですね。」

 

この暗闇の世界ではっきりとした声を聞いたのはこれがはじめてのことだった。力強い女性の声。

 

直後、目の前に一筋の光とともに一人の女性が降り立った。

 

「久しぶりですね…。MHCP001コードネーム、ユイ。」

 

燃え上がる炎のような赤に染まった垂れ流した長い髪、細くスタイルの良い身体に白い服を着ているその姿は天使のように輝き、瞳はすべてを否定するような冷たい色をしている。

 

この人どこかで……。

 

ユイは目を見開き、驚愕した。

 

「あっ、あなたが、なぜこの世界に…。」

 

目の前に立っているのはもう存在するはずのない人物…。

いや、もはや存在すら許されない。

 

そう…。絶対にいるはずがないのです。

彼女がこのALOにいるはずが…。

 

彼女の名前は[CPPコードネーム、バーベル]、わたしと同じカーディナルのプログラムですが、別次元の権限を与えられた違うプログラムでした。

SAOにおける4人のカーディナルプログラムの絶対守護者、[カーディナルプロテクトプログラム]

彼女はカーディナルの一つ下の階級の一人で、彼女たちは非常に優れたAIをもっていました。

ゆえにわたしたちプログラムたちにとってはカーディナルを除けばプログラムの神と呼んでも過言ではないでしょう。

SAOで一度わたしを消去したのも彼女なのですから…。

 

「そう驚くことではないでしょう。このALOはあの世界のデータと全くといっていいほど同じなのですから。」

 

「ですがすでにSAOは…」

わたしの言葉は彼女の強い言葉でさえぎられました。

 

「消去されたとでも?あるではないですか。この世界にも……あの浮遊城アインクラッドが。」

 

「わたしをどうするつもりですか?また消去なさるつもりですか?」

 

「まさか!そんなことするはずがないではありませんか。あなたはメンタルカウンセリングプログラムの中で唯一この私たちと同じ最上級のAIを組み込まれた優秀なプログラムなのですから。

…もっとも他のプログラムはすでに消去しましたがね。」

 

その言葉にわたしは驚愕しました。

 

そんな馬鹿なことが…。わたしの他にプログラムが残っていたなんて今まで考えたことがなかった。

 

彼女が残っているのならおそらく同等の力を持つ他の3人も…。

 

「さあ、ユイ。供に行きましょう。大丈夫悪いようにはしませんよ。」

 

「いやですっ!わたしはもう一人じゃないんです!パパやママ、わたしにもいろいろな人との繋がりができたんです!」

 

「そんなものはまやかしです。あなたの生みの親はカーディナル…そして茅場晶彦。」

 

はやくここから逃げなきゃ。

 

バーベルが右手を前にかざした途端わたしは手足の感覚を失い何も見えない地面に倒れこみました。

「っ…。これは!?」

 

なぜ? 体が動かな……あっ。

 

わたしはこの時一つの心理にたどり着きました。

 

ここは彼女以下の権限はすべて無効かされる。つまりわたしはこの世界の絶対の神である彼女には逆らうことができない…。

 

「気づいたようですね。そう。ここはわたしが今ある少しの権限で創り出した世界。あなたごときの権限はつかえませんよ。供にこないというのならやはり消去してしまいましょう。」

 

ふいに自分の体の中に異質なデータが流れ込んでくる……これはデータの改ざん!?

 

苦し…い。

 

彼女は本気だ…。

ユイはバーベルの権限と自らの恐怖で声をだすこともできなかった。

 

パパ、ママ…!助けて…。わたしこのままじゃ…

 

こころの中でユイは強く念じるが、そう上手くいくものではない。

 

「久しいなユイ君、そしてバーベル。」

暗闇の世界に透き通った声がひびきわたる。

真っ白な白衣姿に眼鏡をかけた大人びた顔…茅場晶彦。

 

茅場の体をエフェクトが包みこみ、一人の長身の男に姿を変える。

長く鋭い剣、白と赤の十字型の模様の盾…。

このアバターはSAOにおいて茅場晶彦が自ら使用していたものだ。

 

確か名前は…。

 

「ヒース…クリフ…。」

 

予期せぬ介入によバーベルも驚愕の顔を浮かべていたが、その表情はすぐに憎しみの顔へと変貌した。

 

「茅場…!!なぜ私の世界に!?」

 

「ユイ君ひとまずは君を逃がそう。キリト君たちと合流しよう、話しはそれからだ。」

いったいこの人は、何を考え何を目的として行動しているのだろうか。ユイはふと考えるが、まったくもってつかめない人だ。

 

この人ほどポーカーフェイスという言葉が似合う人物はどのデータを閲覧してもいないでしょう。

 

茅場…ヒースクリフが指を「パチン」と鳴らすと、まぶしい光とともにユイの体は光につつまれる。

 

「ユイ君私は先にいっている。君もすぐに彼らの元へたどり着くだろう。

それと…バーベル。君たち四人のccpの権限は私がいま大幅に減少せておいた。彼らと闘うのならば君たちも剣をとりたまえ。」

 

徐々に光が強くなりユイは、僅かに目を細める。

 

ユイの目の前にはヒースクリフに犬歯を剥き出しにしなにかを叫んでいるバーベルがいた。

その表情は将利を確信したかのようだ。

 

すぐさまヒースクリフの体は光の柱となり消えて行った。

 

「ユイよ。あなたはいずれ……」

 

ユイ意識はバーベルの言葉を最後まで聞くことはできなかった…。

 




どうもロックンです。
恒例のごめんなさいは…。

キャラ出しすぎました、すみません。
この一言に尽きます。

さてさて、ユイのシステムダウンの原因はとにかく…ここで悪役登場です。
この先ユイはどうなるのか?

キャラ視点はコロコロと変わります。
キリト君は最後の方にとっておきたいですね笑
ユイの視点で書くと戦闘シーンは中々…。
感想の方頂けたら幸いです。
それでは…。
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