「ここからは、わたしがお話します」
とはいったものの…、どこから話せばいいんでしょうか?
やはりわたしが創られたところからでしょうね。
ふと考えこんでしまう。
わたしのことを話すと嫌いになってしまうんじゃ…?
迷いを振り切り大きく呼吸する。
「みなさん。もうお気づきだとは思いますが、わたしのAI…人工知能は他のNPCやプログラムとは大きく異なり[感情模倣機能]を与えられています。だからこうしてみなさんの大方の言葉は理解できますし答えることもできるんです。」
キリトやアスナは、勿論この事実をとうの昔に知っているためあまり動揺することはないが、やはり俯いている。
やっぱり…わたしは…。
内心ヒースクリフから交代したことを後悔しつつもユイは口を止めず話し続ける。
「勿論!この[感情模倣機能]は他のメンタルヘルスプログラムにも与えられています。しかしそれとは別にわたしには他のプログラムよりも、より優秀なAI…普通のプログラムには与えられないようなAIを保持しています。それは先程のカーディナルプロテクトプログラムと同等のものです。どうしてわたしがこんな上級プログラムを持って創られたのかはわかりません…。ですが彼女たちは、わたしのAI求め、仲間にしようなどと考えたのでしょう。でなければわたしは……他のプログラムと同じように…。」
ここまでしか言葉はでなかった。
沈黙していたところをリーファがやぶった。
「ユイちゃん。そのカーディナルプロテクトプログラムっていうプログラムはユイちゃんを引き入れてどうするつもりなの?」
そんなのわたしが知りたいです。
正直なところユイにもさっぱりわからなかった。いまさら彼女たちはなにをするつもりなのか?
「それはわたしにもわかりません。ですがあのプログラムの3人はすでにラフィンコフィンがプレイヤーをキルした時に生じた負の感情で暴走しています…悪い方向に向かうのは確かでしょう。」
「それだ!」
キリトが思い出したように声を張り上げたのでついびっくりしてしまった。
「な、なにがですか…パパ?」
10秒位だろうか、下を向いたままキリトは答えなかったが漸く顔をもちあげる。
「カーディナルプロテクトプログラムは4人いるはずなのにさっきからユイとヒースクリフは3人の話しばかりだ、もう一人はいったい…。」
なるほど…。そういえばわたしもヒースクリフも最後の一人、イオの話しはしていませんでしたね。
「まずはカーディナルプロテクトプログラムの全員のコードネームをお伝えしましょう。一番権限が高くもっともエラーを蓄積させたのが[バーベル]、情報記憶にもっとも突出している[サイフォス]、戦闘において突出した[アックス]、そして唯一エラーを蓄積せずに無事にいた最後のプログラム[イオ]。
イオだけはなぜか影響を強く受けなかったのです。わたしにも理由はわかりませんが…。彼は暴走したプログラムを止めようとしましたが、バーベルによって破損または消去されました。いまはプログラムが残っているのかすら…。」
「そういうことか…。とりあえず今は[火龍の杖]をとりにいくしかないんだな。」
「はい。彼女たちを止めるにはそれしかありません…。」
彼女たちも自分と同じようにエラーを蓄積して壊れてしまっただけなのだ。消去するというのはあんまりだが、こうするしかないのだろうと自分に言い聞かせる。
「ユイ…。最後に一つ聞かせてくれ。」
「はい?」
「ユイはなにが恐いんだい?」
突然の質問にユイは驚いた。周りの者のアスナを除いて目を丸くした。
少し考えたところでユイは質問の意図をさとった。
ここでわたしが話しても…パパとママの不安を増やすだけ。ならしっかりしてないと。
「なにをいってるんですか、パパ?ユイには恐いことなんてないですよ!」
ユイは硬い表情を大きくかえ作り笑いした。しかしアスナが耐えかねたかのようにユイの目の前に詰め寄った。
「ユイちゃん。無理しないで…。そんな作り笑い私がわからないはずないじゃない!?」
アスナの声は震えていた。胸がちくりと痛む。自分が二人を悲しませているのだ…そう感じてしまう。
ダメ。いま泣いては駄目。ここで泣けば二人は…
どうにか涙は堪えたものの声を出すこと抑えることはできず、小さく呟いた。
「ごめんなさい、ママ。でも…!?いえるわけ…ないじゃ…ないですか…。」
ユイ声はとても小さかったがこの至近距離では一番遠くにいたリズベットですら聞きとるのは困難ではなかっただろう。
「ユイちゃん…。」
シリカのテイムしているピナがユイの肩にとまる。
「キュルル?」
言葉はユイ以外わからない。なぜならピナはユイと同じプログラムだからだ。
「そうですね…。さあ!みなさん行きましょう!」
ユイはピクシーの姿にもどり、一人先を進み始めた。
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やはりユイのあの様子はおかしい。一つだけわかるのはユイに脅威が音もなく近づいているということだけだ。いったいどうすれば…。
「はぁ〜〜」
大きなため息でキリトの思考は遮られた。少し前を歩いているアスナのため息だ。
「キリト、アスナのところいってきなさいよ。こういう時貴方がそばにいないとアスナまでおかしくなっちゃうわよ?」
三角の耳をピコピコ動かしながらアスナを小さく指さす。背中をドンと押され転びそうになるもギリギリのところで停止に成功する。
後ろを振り向くとシノンが早くいけとばかりに睨めつけてくる。
あの目はどう見ても猫じゃない。獲物を狙う獰猛な豹だ。
「キリト君…。」
アスナは今にも泣き出しそうな顔をしている。どうしたものかと考えながらキリトは慎重に言葉を探した。だがキリトは人とコミュニケーションをとるのが苦手なため言葉がうまくでてこない。
こんなことなら会話塾にでもいっておくんだった…。と真面目に考えてしまう。
「大丈夫だよアスナ。いずれユイも話してくれるさ!これが反抗期ってやつなんだよ…。たぶん。」
「も〜う。そんな馬鹿なこと言わないでよ〜。」
苦笑混じりの声だが目は確実に怒っている。
あ〜。言葉を間違えたな〜。こういう時なんて言えばいいんだろう?ご愁傷様?いや、これはさすがにおかしいよな〜…。
「リト君、キリト君?ね〜聞いてるの〜?」
ふと気づくとアスナの顔がぐいっと近づいていた。
「あ〜ごめん…。」
呆れたようにアスナがため息をつく。
「まったく…。どんな時でもキリト君はのんびり屋さんだね〜。」
「いやいや、そんなことはないぞ。」
俺はアスナの言葉を否定したが気づかない間に後ろにいたリーファが猫じゃらしを見つけた猫のごとく話しに割って入ってきた。
「あれ〜?確かキリト君…初めてALO入った時、ユイちゃんがプレイヤーが闘ってるって聞いたとたんに戦地に直行したんじゃなかったっけ?」
「すっ、スグ!?それは…!」
動揺してたキリトはうっかり現実の名前を口にしてしまう。
「戦闘マニアのキリトがやりそうなこった。」
「もーう、キリト君ったら」
これ以上話し続けても分が悪いだけだと思っていた矢先に隠し扉に到着したので俺は直ぐにはぐらかした。
「あっ!扉についたぞ、早く行こう!」
「気をつけてください!直ぐに戦闘ということも考えられます。」
ユイの注意に頷くと手早く鍵を取り出し鍵穴に差し込む。するとどうしたことだろうか。扉が開くと同時にキリト達の体はまばゆい光にのまれた。
転送された先の光景はこの世のものとは思えなかった。
肌が徐々に焼けていくような暑さ、地面はゴツゴツと固い岩で成り立ち、辺りには火柱がたちのぼっている。
いかにも悪魔様が住んでいそうなフィールドだ。
ぼんやりしていると、駆け寄ってきたシリカがなにか気づいたらしく辺りを見回す。
「キリトさん!シノンさんとリーファちゃん、クラインさんがいません!!」
「なに!?」
俺は周りを大きく見回すと同時に索敵スキル全開でプレイヤーを探した。やはりプレイヤーはここにいる俺、アスナ、シリカ、リズベットしかいない。
どういうことだ?いったいなぜ転送先が違うんだ?
「ユイちゃんもいないわ!?」
アスナはユイを懸命に探すがやはり見つからない。
俺は思考の渦に意識を巡らせ考えた。
考えられるのはシステムの不具合しかない…だが茅場がつくったクエストにそんなことがあるとは考えられない。いや…!まてよ!もしもこの世界に奴ら…CCPの誰かがいると推測したら権限を使って分散させるのはいくら権限を減少させられたからといって簡単なことでは?
探すのを諦めたようにリズベットは短く息を吐き口を開く。
「とりあえずは行動しましょ。ここにいても見つからないだろうし。」
リズベットの言葉に頷き、キリト一行は先に進んだ。
索敵スキルを使っていたにも関わらず、岩の影に潜んでいた人影にキリトたちは気づくことはなかった。
どうもロックンです。
ある程度、これからのストーリーを考えているのですが正直最後がバッドエンドになりそうですごく怖いです。(懸命に努力します)
次回からは戦闘シーンをいれていくので今よりもクエストの進行は遅くなると考えています。
最後になりますが感想のほうよろしければお願いいたします。
では…。