実はこんな感じだったってやつ。蛇足ともいう。
一部どころでなく前回と被る描写がありますがおにいさんゆるして
IS学園屋上。秋の夕焼けに照らされながら、俺は
「!?!??!??!??!?!?」
絶叫が辺りに響き、一瞬呆気に取られ、慌てて立ち上がって引き留めようと手を伸ばした時にはもう遅く。彼女は屋上の階段から駈け降りていた。
空を掴んだ手を伸ばしながら、後ろのベンチに座り込む。未だ耳に残る彼女の叫びを分析する。
(ごめんなさいって何?)
分析と言うには些か知能が後退していたが。
(まず俺はこ…告白を、した。それで、ごめんなさいされて、逃げられた。間違いない)
あの言葉に間違った表現があったとは思えない。あれを聞いて買い物だの夕日が好きだの言い出すのは一夏ぐらいのものだ。だとするとよく聞こえなかったとかか?いやそれはないだろう。いくらこの屋上が風通しのいい場所と言っても、発言が聞き取れなくなるほどの風は吹いていない。いくら緊張していたとはいえこの程度の風でかき消されるような声量でもなかったはず。
こちらの想いは伝わった。これは間違いない。うん。そうじゃなきゃ困る。
では何故「ごめんなさい」と返されたんだ?世間一般的にこう返されたらどんな意味を持つのか、少し考えよう。
…………
………………
………………………………
……………………………………………………………なるほど。
「俺、振られたわ……」
高校一年目の秋、俺の初恋は敢え無く散った(暫定)
「やっちまったぁー」
無情な現実に打ちのめされ、ベンチからずり落ちながら、今日の出来事を回想する。
修学旅行から帰った日には決めていた。今日までずっと何通りも告白の言葉を考え、この想いを伝えるに最もふさわしいものを選び、シチュエーション選びも入念に行ってきた。
些かキザな形になったような気もするが、これなら失敗することはないだろう。そんなことを考えながら普段通り日常を過ごしていた。
(さて、どう声をかけたものか)
見たところ今日の本音は絶好調のようだ。珍しくしゃっきりした顔つきで食堂に来ることに始まり、食事中はいつにも増してのほほんとしたオーラを放ち、さらに織斑先生に褒められた瞬間は教室がざわついた。他にも何やらよいことがあったらしく、帰り支度をしているこの瞬間まで笑顔が曇ることはなかった。ん? 帰り支度??
(やべぇもう放課後じゃねえか)
眩しい笑顔に気を取られて危うくタイミング逃すところだった。このまま先延ばしになるのはまずい。一日延びれば二日三日とだらだら引き延ばして卒業まで伝えずに終わる可能性もある。何としても今日中に告白せねば。急いでご機嫌で鼻歌を歌う本音に話しかけた。
「今、大丈夫か?」
「ほえ? いいよー」
「ちょっと話したいことがあってさ。ここじゃなんだし、屋上で」
「?おっけ~いこいこー」
ちょっと不自然だったろうか。幸い気づかれてはいないようだが、伝える前に知られてはここまでの覚悟がパァだ。
早鐘を打つ心臓を無視して平静を装う。問題ない。考えてきた言葉を何度も思い返しながら歩みを進める。そうこうしているうちに屋上に到着した。
「って…でー、今日は…いい調子…のだよ~」
「あ、ああ。それは何よりだな」
いきなり本題に入るのはハードルが高すぎるので一度雑談することにした。もう緊張でまともに会話できていないが、なんとか返事をする。
暗くなる前に、この想いを伝えるんだ。大丈夫、言葉はもう考えてあ…考えて…ん?
(わすれた)
そして、
「ところで~、今日はお話があるんでしょー?」
「っああ。今話すよ」
ついにきた。やばい何もかも忘れちまった。兎に角何か言わなければ、息を整えて、俺を見つめる彼女に向き直る。
(……あ)
夕日に照らされた、
「あのさ、俺──本音のことが好きだ」
想いは容易く口に出ていた。
(───んだけどなぁーーーー)
断られるのは最悪のパターンとして想定していたが、まさか逃げられるとは思っていなかった。明日からどんな顔で登校すればいいのだろう。すっかり辺りは暗くなっており、とっくに門限は過ぎていた。恐らく…いや確実に織斑先生にしばかれるだろう。どれだけこうしていたのだろうか。誰かに見られてたら一生引きこもろう。
憂鬱な気分のまま重い足取りで寮へと戻った。
「何してる!門限はとっくに………どうした?顔色が悪いぞ」
「いやちょっと…すみません」
織斑先生の説教は控えめだった。
夜。帰りとなった俺は食事も取らずに机に向かっていた。別に明日提出の課題があるわけでもないが、とにかく気を紛らわせたい一心で手を動かす。何かしていないと
そうこうしてるうちにある程度予習復習が終わり、本格的にすることがなくなる。時計は10時を回ったところ、普段の睡眠時間よりは大分早いが他にすることもなし。また気分が落ち込む前にシャワーを浴びてさっさと寝てしまうことにした。
(はあぁー)
頭から湯を浴びながら、再び彼女のことを考える。忘れられないならいっそ考え続けてしまえの理論だ。考えれば考えるほど心が折れそうになるが気合いで無視する。形を変えただけの現実逃避は
「────です。好きなもの、嫌いなもの、趣味は特にありません。ISの知識はほとんどないので色々教えてくださると助かります。…以上です」
入学初日、面白みのない自己紹介をすませた俺は席に着き、残りのクラスメイトの自己紹介を聞き流していた。はっきり言って、こんなものを聞いても意味はないと思っていた。政府に保護されるまで幾度の取材、勧誘、拉致未遂、色仕掛けその他諸々に曝された結果、当時の認識は完全に歪んでおり、周り全てが敵に見えていた。今となってはただの考えすぎだったが。
そんな時、彼女が現れた。
「布仏本音でーすぅ。すきなものはおかしでー、趣味は機械弄りでーす。みんなよろしくねー」
しばし呆然とした。間延びしまくりの、のんびりとした声、ふわふわとした雰囲気。何よりその可憐な容姿に目を奪われた。つまりは一目惚れである。
ほんの数秒前まで暗くつまらない景色だった教室が、まるで楽園の様に思えた。隣の席に座った彼女。直接見ずともそこにいることを感じ取るだけで心が温まる。それだけでこれからの高校生活もきっと素晴らしいものになるだろう。
そんな恋愛経験0特有の妄想で溢れていた。今思い出すと超気持ち悪いな。
このまま存在を感じるだけでいいのだろうか?折角一年間同じクラスになるんだ、挨拶がてら話をしたいそうしたい!!(童貞)
しかしどう話しかけたものか、必死に言葉を探す中不意に声がかけられる。
「ねーねー、せっかく隣になったんだしー、よかったらお話しなーい?」
彼女だった。一瞬で考えが吹き飛ぶ。しかしこの状況は願ったり叶ったり。早速返事を返す。
「喜んで、実はどう声をかけようか迷ってたんだ。」
それから──「おーい!何時まで入ってるんだー?ふやけるぞー」
翌朝。いつも通りの目覚めだ。一晩過ぎたら多少頭も冷えた。改めて昨日の出来事に思考を巡らせる。
(俺もしかして振られてないのでは??)
いや、まだちょっと混乱していたようだ。だが完全に間違いというわけではないだろう。確かに「ごめんなさい」と言われたし逃げられた。しかしイコール振られたとするのは早計であろう。本音からすれば唐突な告白だったんだ。すぐに返事を出せず謝罪をし、恥ずかしくなって逃げてしまった。そうに違いない。イコール振られていないとも言い切れないが無理矢理納得する。となれば待っていれば返事は来るだろう。きっと、たぶん。早速いつも通りに戻るために食堂に向かう。
そして、
「あ」
「あっ」
A wild Nohotoke Honne appeared!
What will ─── do?
▶︎FIGHT BAGピッ
ICHIKA RUN
とりあえずおはようだ。話はそれからとしよう。
「おっおは、ようっ!」
「あ、うんおはよう」
思いっきりテンパっている。原因は間違いなく昨日のことだ。俺も内心大慌てだが気取られないように努める。しかし続きはどうすれば…そうだ!
「えーーっと、昨日のことなんだけど」
「え゛っ!?ああっうん!昨日ね!」
いや駄目だろ。急かすような真似をすれば余計混乱させてしまう。そもそも
「俺、待ってるから、急がなくても大丈b「あ、あのっ!」え?」
まさかもう返事できるのか!?思わず身構える。
「ご、」
「あっ」
「」
Wild Nohotoke Honne run!
また、逃げられてしまった。
(これもうわかんねぇな)
数時間後。朝の動揺が抜けきらぬ中、なんとか授業を受ける。とはいえ完全には隠しきれないようでこれまで何度もクラスメイトに心配の声をかけられた。そして本音はと言うと、
「なにをボーッとしとるか馬鹿者!」
「あうっ!!」
本日二度目の出席簿アタックを食らっていた。彼女も動揺しているのだろうか。自分のせいであの折檻を二度も落とされるのは非常に申し訳ない。それにしても次はさよならと来た。昨日の俺ならまた悲観していたところだが今日の俺は多少冷静に分析できる。振るどころか別れ話のような絶叫だったがおそらくこれも昨日と同じ困惑と羞恥によるものだろう。そうであってくれ立ち直れなくなる。
しかしだ、そろそろ一人で悩むのも厳しいものがある。誰かに助言を乞いたいところだ。となると誰に相談すべきか。
(一夏? いや唐変木に聞いてもな……。
思いつく限りの知り合いを挙げていくが、どれもしっくりこない。この学園の奴ら恋愛に弱いな……。
(他……他にいないか……「おい」はい?」
「お前も
「え゛」
「授業に集中しろ馬鹿者がっ!!」
「ギャッ!?」
一体どうすりゃいいんだろう。
放課後、日課(昨日やり忘れたが)のランニング中。とにかく無心になりたくて走りだしたものの、結局無駄な抵抗だった。走るにつれ思考が澄んできて、告白のことしか考えられなくなる。本当に、あの時想いを伝えてよかったのか。もっと友人として学園生活を過ごしてからでも遅くはなかったのではないか。ただ彼女を困らせて俺たちの関係を壊しただけじゃないのか。
やっぱり告白なんて、するべきじゃなかったのか。
太陽が、走るペースが、気分と共に緩やかに落ちていく。
後悔ばかりが頭をよぎる。足が止まる。何が正しくて、何が間違っていたのか。もう何もわからない。
「……駄目だな今日は、帰ろう」
そして、来た道を引き返そうと決めた瞬間、不意に声がかかる。
「何かお悩みですか?」
植木の間から、柔和な笑みを湛えた初老の用務員が姿を現した。
「……轡木さん?」
「ええ。お久しぶり、ですかな?」
「は、はい。お久しぶりです」
「はっはっはっ。そう畏まらなくても構いませんよ。今の私はただの
「あー……でしたね、すみません」
そう言われてもさすがに自然に振る舞うのは無茶な話だ。なにせ彼は轡木十蔵。このIS学園の実質的な最高運営者だ。学生の身としては畏まらざるを得ない。
「そんなことより、何か悩みがお有りのようですな。」
「……まあ、そんなとこです」
「この老いぼれでよければ相談に乗りますよ。」
相談。願ってもないことだ。しかしずっと求めていたものではあるが、軽々しくお願いしていいものだろうか。
「いいんですか?ご迷惑じゃ……」
「若人に道を示すのも年長者の務めですよ。何、誰にも話しはしませんよ」
さすがは『学園内の良心』と称される人だ。この人になら頼っても大丈夫だという安心感がある。
「えーと、じゃあ、お願いできますか……?」
「勿論。何でも話してご覧なさい。」
「はい、実は……」
悩みを相談するなんていつ振りだろうか。少し不安になりながら、事情を説明する。
「最初は一目惚れで、それから……」
話を進めるにつれ、少しずつ心が落ち着いていくのを感じる。全てを語り終えるまで、轡木さんは柔らかや笑みを絶やさずに聴いていた。
「……というわけなんです。昨日からずっと悩みっぱなしで、俺はどうすればいいんでしょう?」
「なるほど、君と本音くんをねぇ……」
「やっぱり、迷惑だったんでしょうか。こういうの初めてで、よくわからなくて」
「そう考えてしまうのはよくあることです。私も、妻に想いを伝えた時はそうだった」
「へぇ……意外ですね」
轡木さんとその奥さんはあまり学園内で一緒にいるところは見ないが、楯無さん曰く仲の良い夫婦だと聞いた。そんな二人もこうなっていたのか。
「まあ、その話はいずれ。今は君の話ですね」
「はい、何か助言をいただきたいなと」
「助言……と呼べるようなものではありませんが、一つだけ、
君は本音くんのことが好きですか?」
「……まあ、そうですよ? 好きじゃなければ告白なんてしませんし」
「なら、悩むことはありませんよ。今すべきことは、『待つ』。これだけです」
待つとは。既に丸一日待っているのだが、永遠に待ち続けろと。
「待つって……これまでと変わらないんじゃ」
「変わらなくて良いんですよ。君は告白をして、本音くんはそれを聞いた。彼女はこんな大事なことを有耶無耶にするような生徒ではありません。待っていれば、必ず返事は来ますよ」
「はあ……」
「はっはっはっ。彼女のことは信じられませんか?」
「ッ!そんなことはっ」
「ありえない、でしょう?」
何もかも見透かされているような気分だ。これが年の功というやつか。
「そもそも君が告白したのは半端な気持ちではないでしょう。ずっと一緒に過ごしたいと思ったから、彼女を幸せにしたいと思ったから告白した。であれば、後から余計な心配をしても彼女と告白した自分に失礼というものです」
「……はい」
「ありがとうございました。どうにかなりそうです」
「ならよかった。それでは、良い知らせを期待していますよ」
轡木さんと別れ、帰路につく。もう悩むことはない。ただ待つのみ──さっさと飯食ってシャワー浴びて寝よう。
夢を見た。告白を決意した日、俺が本音に救われたあの日の夢を。
修学旅行本番。他生徒が好きに京都を回る中、俺は独り路地裏を彷徨いていた。
(俺、これからどうなるんだろう)
厳しい訓練に度重なる襲撃。休む暇もなく過ぎていく日々で、何度も傷つき死にかけた。加えて先日の下見で起きた三人の裏切り。浅い付き合いとはいえ仲間だと信じていた人の裏切りに、何を信じればいいのかわからなくなる。
専用機持ちも、一般生徒も、突然実は敵でしたーなんて言い出すかもしれない。入学前のように、周り全てが敵に見えてくる。自分を信じる仲間ですら疑い始めている自分にも嫌気が差す。現に今も、京都観光に誘ってくれたクラスメイトを気づかぬ振りをして意味もなく歩いている。
(なにやってんだか、ほんと)
このまま一人で、寂しい思い出を残すのか。仲間すら疑うような人間には
「まってぇ~~~~~!!!!!」
締まりのない叫びと共に、欠伸が出そうな速さで彼女が現れた。
「もぉー! なんで一人で行っちゃうのー!」
「いやその、何というか、一人になりたくて」
追いつくなりぽかぽかと俺を叩く本音。いつものほほんとした彼女がこれだけ怒るのは珍しい。でも怒った顔もかわいいしぜんぜん痛くねーや結婚してぇー
いかん顔が緩んでいた見られてないよな?
「? どおしたの?」
「なんでもない。それより本音こそどうしてこんなところに一人で」
「いっしょに回ろってやくそくしてたでしょー!! そしたらいつの間にかいなくなってるし!仕方ないからかなりんとさゆちんと歩いてたらふらふらしてるの見つけてー、声かけても気づいてくれないから別れて追いかけたの!!」
約束?いやそんなデートのチャンス忘れるはずないし覚えがな…「下見の前の日!!」あったわ。
「あー…してたな、ごめん。迷惑かけた」
「ん。いいよ~。これからいっしょに回ろーね!」
「いいのか?まだ時間はあるけど今からじゃあんまり見れないぞ」
「じゃあじゃあ~、───が行こうとしてたとこにしよ! ごーごー!」
となると景色のいいところになるな、本音の歩く速さを考慮しても歩いて十分弱、戻る時間含めて計算しても間に合うだろう。
「ああ、じゃ行こうか」
「ふぃー! 着いたぁー。おぉーいい眺めだ~」
どうやらお気に召したようだ。下見では来なかった場所だから心配だったが、来てみれば実にいい景色だ。何時も通りなら、もっと美しく見えたのだろうか。不意に先程の不安が蘇る。
「あのさー、───。」
「ん?」
「───はさ、いまとっても、とってもつらいんだよね、ずっと戦って、怪我もして、苦しいのに、それでも弱音は吐けなくて」
「本音?別に俺は…」
「
不意打ちの、優しい言葉。ただそれだけのはずなのに、熱い雫が溢れて止まらない。
「っ……。なんだ、これ」
「おいで、───」
本音がそっと、聖母のような笑顔で抱きしめる。こころごと、優しく、壊れないように。
その優しさに甘えるように、抱擁を返す。
「つらいとき、苦しいときは、みんなに頼ればいいんだよ。私も、みんなもいるからねー。
「……! ああっ…。あああああ……」
「うんうん、いっぱい、いーっぱい泣いちゃおうねー」
そのまま赤子のように泣き続けて、気が済むまで二人で抱きしめ合っていた。それは何よりも優しく、救われた時間だった。
「もーだいじょーぶ?」
「……ああ。もう平気だ。ありがとう」
「えへへー、どういたしまして。またいつでもどーぞ!」
「!?」
それは嬉しい申し出だが考えてみればなかなか恥ずかしいことなのでは?
「それは、えっt「あっ……」ん?………あ」
「「夕日」」
茜色に染まる空。ゆっくりと沈みゆく太陽を二人で眺める。数秒間が空いて、ふと隣の本音に目をやる。そこには、
「きれいだねぇー」
柔らかい夕日に照らされた、今まで見た何よりも美しい笑顔があって。
「うん、本当に……綺麗だ」
その笑顔を見つめたまま、静かに固く心を決める。
「じゃあ、そろそろ戻ろっかー。遅れたら織斑せんせーに怒られちゃう!」
「うん。そうしよう」
(帰ったら告白しよう。絶対に)
(……そうだった。確かに俺は、心に決めていたんだ)
目覚めて直ぐ、身支度を整えながら、あの日の決意を思い出す。あれほど固く誓った決意が、昨日まで揺らぎっぱなしだったとは情けない。
でも、もう揺れない。なぜなら俺は、布仏本音が好きだから。初めて出会ったあの日から、こころを救われたあの日から、何よりも、誰よりも、布仏本音のことを愛している。
だから堂々と、いつも通りの日常を過ごすんだ。
「あっ」
「あっ」
昨日と同じく鉢合わせ、違うのは、あちらも何かを決意した顔。つられてこちらも真剣な表情になる。
「今日はね、話したいことがあるの」
「ああ」
「だからね、放課後、屋上で待っててくれる?」
「わかった。絶対、いくらでも待つよ」
それだけ言葉を交わして、俺たちは分かれた。何のことなんて聞く必要もない。運命は放課後に託された。
──放課後、IS学園屋上。あの日のように二人でベンチに座る。
「えっとね、お話なんだけど。まずはお礼と、謝りたいことがあって」
「っいや、そんな感謝も謝罪もされるようなことなんてしてないさ。気にしなくていい」
本当に、感謝も謝罪も言いたいのはこっちの方だ。俺は出会った日から本音に助けられてる。
「───はそう思ってても、私は感謝してるから。だからね、ありがとう。あと、この前はごめんなさい」
「…そうか。ならこっちだっていつも本音に助けられてるよ。それに、いきなり
「いや私が!」「違う俺が!」「私!!」「俺!!」
何故か二人して向きになって、危うく口論だ。しかしそれが実に愉快で笑い声が溢れる。
「……ふふ、えへへへへ」「……はは。あっははは」
いつもの調子って感じだ。でも、俺にも本音にも笑ったまま話に入るつもりはない。
「…うん。それでね、もう一つ。あの日のお返事がしたくなって、聴いてくれる?」
「…ああ、勿論だ。聴かせてくれ」
あの日の話。告白の返事。ようやく聞ける。思わず彼女の顔をじっと見つめる。
「えっと、その、わたしっ」
言葉に詰まる本音。わかる。わかるよ。怖いよな。心配だよな。でも、決めたからには言わないといけないんだよな。
「……はあっ。はあっ……」
「大丈夫か?」
「だいっ、じょーぶっ」
息が上がっている。それだけこのことを考えてくれたのだろう。少し嬉しく、少し心配にもなる。
そして、彼女が意を決した表情で顔を上げる、また俺と向き合う。
「……あ」
何かに気づいた様子の顔。そうか、あの日の俺もこうだったのだろう。
「……うん、うん」
口が開かれる。こたえがきこえる。
「あのね、私──」
真っ赤な夕日が俺たちを照らしていて、世界は輝いていた。
なんだこれはインフィニット・ストラトスの意味がないじゃないかたまげたなぁ