これを初めて書いた時は、アーケードの頭文字Dがまだver2だったんですね……。
インテのいろは坂の速さに絶望しました。
……インテ乗りでしたが。
「……で、恭也どうしたのコレ……?」
赤星と別れた俺は、買った車に乗って家に帰って来た。
で、かーさんが俺の車を見て言った第一声が、今の言葉だ。
まあ、いきなり相談もせずに車に乗って帰って来たのだからその反応も至極当然だろう。
「たった今、買ってきたのだが……どうかしたか?」
「……いや、まさかいきなり車なんて買ってくるとは思わなかったから……」
……まあ、そうだろう。俺自身も不思議なぐらいだ。
ガラガラッ。
勢いよくドアが開かれる音。
「たっだいまー!」
これは……晶の声か。
「あれ? 師匠、その車師匠のですか?」
さすがに晶も面を食らってるようだ。
「ああ、インテ「インテじゃないですか!」アー……知っているのか?」
「はい! 忍さんとよく行くゲーセンにあるレースゲームにこの車が入ってるんですよ!」
「有名なのか?」
「ええ、そのゲームでは昔は凄く早い車で有名で……特にいろは坂ステージでは負け無しって言われるくらいだったんですよ!」
「……ああ、そうなのか?」
……よく解らんが、有名な車らしい。
「でも、最近はちょっと性能が良くなくて……」
むう、晶がこのモードに入るとしばらく話が続きそうだな……。
ここは一時退散するとしよう。
「あー……かーさん。ちょっと慣らし運転も兼ねて出かけてくる。晩までには帰るから、食事は用意しておいてくれ」
「あ……うん、了解♪ もー桃子さん今日は腕によりをかけて作っちゃうわ♪」
「む……今日はかーさんが作るのか、珍しいな。なら、余計に早く帰るようにしよう。では、行って来る」
俺は車に鍵を差込、ドアを開けた。
「うん、いってらっしゃい」
「いいなぁ~……今度乗せて下さいね」
「ああ」
そして俺は家を出て行った。
「こんな感じか……」
ここは国守山、赤星達がよく走りに使う所だ。
元々人通りが少ないのか、昼間だってゆうのに人っ子一人見ない。
俺がここに来て走り始めてから二時間は経っただろうか。空も少し薄暗くなってきたようだ。
「赤星がやっていた感じだと、こんな感じだったと思うが……意外に難しいな……」
俺は、もう一度自分の走りを見直すため車に乗り込んだ。
そして、目をつむり昨日の赤星の動きを思い出していく。
……ここはゆるいカーブだからブレーキは踏んでいなかったな……。
……あそこはたしか80キロぐらいでまがっていたな……。
……次々と昨日の動きを頭の中でトレースしていく。貫を使うには相手の細かい動きやクセを観察する必要がある。そのため、恭也は相手の動きを覚える事に長けていた。
次にここの道の大まかな地図を頭に思い出す。太刀筋でもそうだが、単発単発の繰り返しで行動していては意味がない。
おそらく赤星もその先の道の事まで考えた走り方をしているはずだ。
剣で、相手の次の動きをふまえて行動するように、おそらく車では次の道をふまえて行動したほうが良いはず……。
そこまでの考えを思いつき再び思考を巡らせるが……。
……駄目だ、剣と違ってイメージが湧かない……。
経験の少なさは練習でカバーするしかないか……。
そんな事を考えていると。
グオォォンッ!!
と、下からエンジンの排気音が聞こえる。
そのしばらく後、赤い車が恭也の前に止まった。
「あら、早いね高町君?もう来てたんだ」
その、赤い車から降りてきたのは藤代さんだった。
「……ええ、まずはコレに慣れないといけませんから……」
俺は、自分の車を指差しながら言った。
藤代さんは口に指をあてる仕草をしながら……。
「良い方法があるよ、高町君」
「なんですか?」
彼女はニッコリと笑っていた。
「バトルしましょう?私と」
「……で、なんで俺がスターターをやらないといけないのかな?」
あのすぐ後、たまたまさざなみ寮に帰る途中だった耕介さんを強引に引き止め、こうしてスタート役を頼んだのだった。
「しかし……恭也君がまさか走り屋とはねぇ……俺も昔の血が騒ぎそうだよ」
いや、昔の血ってなんですか!?
「……これは真雪さんにも言っておかないとな……」
今さりげなく不吉な事言ってませんでしたか!? 耕介さん!!
「じゃあ、カウント入るよ!」
ドクンッ
「3!」
……。
「2!」
クラッチ……アクセル……問題は無い……な。
「1!」
クッ……落ち着け! 何をそんなに緊張しているんだ!! こんなの仕事に比べれば……。
「GO!!」
ギィヤァァァァ!
キュルルル!
両車が一斉にスタ……いや、赤い車が先行し、恭也のインテRはその場でタイヤを暫く擦り付けてスタートする。
(くっ!? なんだ、強く踏み過ぎたのか!?)
先行する赤い車を追うように走り出す恭也。
しかし、スタートで付いた差が縮まる事なく、最初の高速コーナーに消えて行く。
「……ホイールスピンスタート……まあ、最初から上手くはいかないってね。」
耕介は二人が走り去ったコーナーを見つめていた。
「しかし、下りとは言え相手はマツダのアテンザだからなぁ……初バトルの恭也君じゃ荷が重いだろうなぁ……」
耕介はしばらく考えると、おもむろに自分の新しい愛車のZEPHYR1100に跨った。
「恭也君の初陣……特等席で見るしかないでしょ!」
そう呟いて、耕介はセルキーを回し始めた。
ドゥシャァァ!
二台の車が物凄い勢いでコーナーを下って行く。
(……確かあの時赤星が、曲がる時にやっていたのは……)
チカッ、チカッと、恭也のインテRが赤いブレーキランプを点灯させながらコーナーをクリアしていく。
(今までのやり方より、このやり方のほうが曲がった後のスピードが加速しやすいみたいだな……よし!)
じわり、じわりと差を縮めていく恭也。
対する藤代はあせっていた。
(な……なんで、差が縮められてるの!? こっちは限界とまでいかなくても、手は抜いてなんかいないのに!?)
その後ろで恭也は前に出るタイミングを窺っているところだった。
(……まだだ、今が相手の連撃の最中だとしたら、今は守るべきだ。)
次のコーナーが見えてきていた。その時!
「あ!?」
思わず藤代は叫んでいた。後ろにあるプレッシャーのためだろうか、普段ならなんなくクリアーできるコーナーで、突入する前に後輪が思わぬ方向に滑ってしまう。
「こ……こんな所でアンダーが!」
あわてて立て直そうとするが、このチャンスを逃す恭也ではなかった。
「!? いない」
ブロックしようとバックミラーを見る藤代。だが、その視界に恭也はいなかった。
一瞬でミラーや視界の影に隠れスピードを上げる恭也。
藤代から見れば、まるで恭也が突然消えたかと思ったら、こちらの防御をすり抜けてアウトから頭一つ飛び出して行くのを認識するのがやっとだった。
「!!」
そこから、ブレーキを軽く踏み、加重をさらに前に移すインテR。そこにアクセルを外し、ギアを二個下げてスピードを落としていく。
そのまま車をコーナー通りに曲げていき、コーナーの終わりが見えたと同時にアクセルを踏み、ギアを上げていく……。
……その後、藤代のアテンザが恭也のインテRの前に出る事はなかった。
「……こいつは、たまげたな……」
俺は素直に感心した。まさか、昨日車に興味をもったばっかの恭也君が、走り馴れてる相手に……しかも、パワー差のある相手に勝ってしまうなんて……。
「……戦えば勝つ……か、これからが本当にすえ恐ろしいな……」
ちなみに俺が、夕飯の支度をする時間をとうに過ぎている事に気がついたのは、ここから三十分後の話だった……。
「おい、耕介ぇ!! どこほっつき歩いてたんだ!! アタシ達を餓死させる気か!!」
「すいません! すいません!」
「だいじょ~ぶですよ、あんまり遅かったので、私が先に作っておきましたから」
ピシッ!
愛さんの一言に全員が固まる。
「……耕介……」
視線でなにかを訴えてくる真雪さん。……オレハナニモワルクナイデス。
「さあ、食べて下さい! おかわりもいっぱいありますから♪」
とても笑顔で語ってくれる愛さん。
……恭也君……今日の出来事は、おそらく一生忘れないよ……絶対ね……。
実際のアテンザとDC2のパワー差ってどれぐらいなんでしょうね?
単純な馬力ならアテンザの方が上でしょうが、何しろHONDAのタイプRシリーズですからねぇ……。
車の正確な知識が少ないまま書いておりますが、ここまで読んで頂きありがとうございました。