個人的にはバラードとかも結構好きなのですが……。
「しっかしおどろいたなぁ、まさか高町が藤代を倒すとは思わなかったぜ!」
ここは国守山、俺達、俺と赤星と藤代さんは展望台付近で休憩をしていた。
「……どうせ私は初心者に負けるヘタクソですよ~だ」
そう言って地面に「の」の字を書き始める藤代さん。
「え……その……すいません」
「いいよ、別に。高町君が悪いわけじゃないんだから」
笑顔で返してくれる藤代さん。
「そうそう、純粋に昨日始めたばっかの高町の方が速かったってだけなんだからさ」
「……ううう、酷いよ勇吾……」
赤星をジト目でにらむ藤代さん。
「そう睨むなって。……なあ、車の操縦で技術意外に重要な事ってなんだと思う?」
藤代さんの頭をなでつつ優しく言う赤星。
「え? ……えっと……反射神経かな?」
少し照れながら答える藤代さん。
「う~ん、間違ってはいないんだけどな。俺は集中力と精神力だと思うな」
「「?」」
「やっぱりここぞって時に確実に決めるための集中力は必須だし、精神的なタフさがなきゃあんな危険な事を正確に繰り返す事はできないと思うな」
「ああ……なるほどな」
「その点、高町はそのヘンの能力がずば抜けてるからな。ようは,技術の下地がしっかり過ぎるほど出来ているんだ」
なるほど……今までの修行が役に立たなくなるかと思っていたが、意外なところで使えるものなんだな……。
「だからこれからが楽しみだな。これで高町が技術も完全に身につけたら、あのプロジェクトDにだって勝てるかもな」
「プロジェクトD?」
聞きなれない言葉だが……。
「ああ、最近ネットで知ったんだけど、物凄い速い走り屋チームがあっちこっちの峠のチームと対戦してことごとく勝ってるらしいぜ。なんでもプロのレーサーにすら勝ってるらしいからな」
「……それは、凄いチームだな」
「どのみち、今の俺らには関係ないさ。なにしろチーム名すら決まってないんだから」
そこで今まで黙っていた藤代さんが、急に大声を出した。
「だったら今決めようよ!とりあえずこの三人でさ!」
チーム名か……なにか、いいな……こういうのも。
自然と顔が笑っているのが解る。
不思議な高揚感が体を包んでいるような感じだ。
ああ……そうか……これが、趣味を楽しむって事なんだな。
「……じゃあ、ラブ・アンド・ピースって言うのは?」
「……いや、なら兜割りはどうだい?」
「もう、勇吾! 真面目に考えてよ!」
……むう、どうやら考えに耽ってる間に議論が始まっていたらしい。
「ねえ? 高町君はなんか案ない?」
「そうだぞ高町。お前もなんか考えろよ」
そうだな……。
「海鳴剣風隊……はどうだ?」
「「……」」
俺が言ったとたんに、二人とも固まってしまった。
なにか悪い事でも言ったか、俺。
「……高町。一応聞くが、命名理由は……?」
なかばあきらめた顔で聞いてくる親友。
中々に失礼な親友だ。
「いや……俺も赤星も藤代さんも、剣の道に入っている人間だからな。そのへんも考慮して考えたんだが……」
「……すまない、後は俺達で考えるよ……高町は少し休んでてくれ……」
訂正。かなり失礼な親友だ。
そして、また二人で議論を始める。
……そこまで言うなら、俺にも考えがあるぞ……。
「なあ、赤星」
「ん?」
振り返る赤星。
「海鳴レッドスターって名前はどうだ?」
赤星達は驚いた顔をしていた。
「ま……まともな名前じゃないか。でも、いいなその名前」
「そうね、私はいいと思うわ。リーダーは勇吾に決定だしね」
おかしそうに笑う藤代さん。
どうやらネタに気が付いたようだ。
赤星は顔に? を浮かべたまま。
「? まあ、いいとして、名前の由来はなんなんだ?」
どうやら気が付いていないらしい。
俺も笑いをこらえながら。
「お前だ」
「は?」
「赤星。お前がリーダーだから、レッドスターだ」
「た……高町がダジャレを言った……!?」
まるで、初めて目の前で芸能人を見たぐらい驚く赤星。
……いや、驚きすぎだろ……。
「折角だから、それで決まりね。他に良い案なかったし」
「……俺は依存無いですが……」
「た……高町が……」
未だに放心状態の親友を、ちらりと見る。
そんなに……めずらしいものか?
「じゃ、そうしよっか! ……勇吾もあんな感じだから発言権無いし」
そう言ってカラカラ笑う藤代さん。
俺はこの時誓った。
彼女を怒らせるのはやめよう……と。
ブゥォォォォン!
ん……これは車の排気音みたいだが……。
どうやらここに一台の車が登って来るようだ。
白いボディに低い車高……ハッキリしているのは速そうであることだろうか……。
「お? NSXか、珍しいな」
さりげなく復活している親友。
やがて俺達の近くで止まり、助手席のドアが開かれる。
「は~い! 高町君」
「……つ、月村!?」
「こんばんは、高町様」
「ノエルさんまで!?」
その車から出てきたのは月村とノエルさんの二人だった。
「久しぶり、月村さん」
「赤星君も久しぶり。元気だった?」
そう言って月村はこっちに近づいて来る。
「高町君、晶に聞いたよ。走り屋になるんだって?」
「あ……ああ」
「なら私にも参加させてよ。こう見えても車の整備とか、結構得意だよ」
「そいつは助かるな、俺達は簡単な修理しかできないし」
相槌を打つように答える赤星。
「それに、その話を聞いて早速それ用の車を買ってノエルに覚えさせてるんだから」
そう言って、月村は運転席のノエルさんに声をかける。
「だから、私たち二人もよろしくね♪」
こうして、俺達五人のチームは結成されたのだ。
一ヶ月後
とある部屋の一室。
一人の男がパソコンをいじっていた。
男は、画面に流れている映像をずっと眺めていた。
コンコン
その静寂を破る音が部屋に響き渡る。
「アニキ、入るぜ」
入ってきた男は、20代前半だろうか。茶色く染めた髪を短く切り、全体的に上に上げていた。
パッと見、モデルでも通用しそうである。
対するパソコンの前に座っていた男もまた、モデルのような顔だちだった。
落ち着き、整った顔立ち。クールな男を表現するなら彼以上の男はいない。
まさに、ワイルドとクール。動と静。そんな言葉がピッタリな二人だった。
「来たか、啓介」
パソコンの男……高橋涼介は先ほど自分が呼び出した弟を見た。
「次の対戦相手が決まったのか?」
「ああ、次はここにするつもりだ」
そう言って、ディスプレイを啓介に見せる。
「ん……海鳴レッドスター……って、できて一ヶ月のチームだ!? 大丈夫なのか、アニキ?」
「ああ、まずはこれを見てくれ」
涼介がマウスを動かし、画面を変える。
そこには、一台のNSXが映っていた。
「NSXかよ……峠を走るには贅沢な車だな」
軽口は叩いているが、啓介の顔は真剣だった。
あの、兄貴が根拠の無い事は言わない……それが解っているからである。
やがて、NSXが走り始める。
そして、その車は寸分の狂いも無く確実なラインを走っていた。
そう、最後まで寸分の狂いも無くだった。
「……気が付いたか、啓介」
「……ああ」
「あそこまで完璧にコースを計算して、寸分の狂いも無くそこに滑らせるなんて、俺にでもできん」
啓介は絶句していた。
まるで、決められた動きを機械が動かす……。
まさに、そんな動きだった。
「次はこれだ」
画面が切り替わる。
次に映ったのは、真っ黒なインテRだった。
そのインテはどのコーナーも神業のようなブレーキングで駆け抜けていった。
運転は荒いところもあるが、こんなブレーキングやステア捌きが続けられる事自体が、まず凄い。
「……走りを始めて一ヶ月だそうだ」
「は?」
確かにツメが甘い所が多い。けして物凄く速いわけではない。
だが、これで始めて一ヶ月だと!?
「一ヶ月でこれだ……先が気になるとは思わないか?」
涼介は笑っていた。
「もしかしたら、俺の公道最速理論の近道がここにあるかもしれん……」
「ア……アニキ……」
「藤原には俺から伝えておく、史浩とケンタにコースの下見を頼んでおいてくれ」
「ああ、解った。この前のランエボ野郎達より楽しめそうだしな」
確かに……理屈じゃない。だが、不思議な高揚感が俺を支配していた。
海鳴レッドスターか……楽しませてくれよ!
時系列的にはガラの悪いランエボチームを倒した辺りになります。
なので、拓海がまだゴルファーと出会う前くらいですね。
ここまで読んで頂きありがとうございました。