頭文字T Toraha Stage   作:タカノ

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最近車をインテグラにしようかと悩み中のタカノです。
でも、走るために車を弄るとキリがなさそうですよね……。


第四話 海鳴レッドスター始動!

  「ねえねえ、なんか早速対戦の申し込みがきたよ!」

 

  いつもの集合場所に現れた月村は、開口一番にこう言った。

 

  「お? そうなんだ。流石HPを作ると違うね」

 

  自販機で買ったばかりの缶ジュースをカイロがわりに使いながら赤星が答える。

 

  「せっかくだから、もう返事は返しちゃったけど」

 

  えへへ……と舌をペロッと出して返す月村。

 

  「ふ~ん、で、どんな相手なの?」

 

  「えっとねぇ……あ、あった」

 

  なにやらポケットをゴソゴソとしてメモ帳のような物を取り出す。

 

  「う~んと……プロジェクトDだって。ヘンな名前だよね」

 

 

  カラーン

 

  一瞬静まり返った空気の中に、赤星の落とした缶の音だけが無情に響き渡る。

  

 

  「え……?」

 

  月村も赤星の行動に目を開いている。

 

 

 

  しばらく静寂の時が流れていた。

 

  「ほ……本当に?」

 

  おそるおそる藤代さんが声をかける。

 

  「え……うん、間違いないよ」

 

  

 

  再び静寂が場を支配する。詳細は分からくとも何となく空気を察したのか、月村もバツの悪そうな顔をしている。

  

 

 

 

  「……ここで、固まっていてもしょうがないか……」

 

  どうやら、我が親友も意識が戻ったようだ。

 

  「月村さん、彼等が来るのはどれぐらい先だい?」

 

  「あ……うん、えっとねぇ……二週間後だけど……」

 

  赤星は少し考えて。

 

  「二週間か……やれるとこまでやってみるしかないな……」

 

  そして、キーを取り出して。

 

  「だったら、のんびりしてるヒマは無いな。勝てないまでも善戦できるように練習しようぜ!」

 

  だが、その言葉は俺が遮った。

 

  「違うぞ、赤星。勝つためだろ?」

 

  「……高町、正気か? 相手はあのプロジェクトDだぞ?」

 

  「戦う前から負ける気では、いい勝負にすらならない。それを剣士であるお前が忘れてどうする?」

 

  「高町……そうだな」

 

  赤星も納得したようだ。

 

  俺は赤星を見つめながら。

 

  「大丈夫だ、戦えば勝つのが御神流だ。それは、勝負がなにに変わろうと同じ事だ」

 

  「解った……」

 

  赤星は一度大きく息を吸うと、大きく右手を上にかざした。

 

  「みんな!この勝負勝つぞ!」

 

  「「「おー!!」」」

  「……はい」

 

  フォォォォッン

 

  ……ん?

 

  「一台登ってきたな、誰だ?」

 

  やがて、俺達の前に一台の灰色の車が止まる。

 

  「S15……みたいね」

 

  藤代さんがポツリと漏らした。

 

  そして、中から二人の男が出てくる。

 

  一人は小太り気味で、軽薄そうな笑みを浮かべていた。

 

  もう一人も小太り気味で、角刈りに黒ぶちメガネをかけていた。

 

  「……うわ……ちょっとキライなタイプだ……アイツみたいで……」

 

  ボソッと、月村が俺にだけ聞こえるように呟いた。

 

  そして、最初に降りて来た男が声をかけてきた。

 

  「ねえ、それってキミタチの車?」

 

  「は、はあ……そうですけど」

 

  半ばあきれたように答える赤星。

 

  「キミタチ地元の人でしょ? 思ったより少ないんだねー走り屋の車って。あ、ボクタチ東京から来たんだ」

 

  「そうなんですか?」

 

  ひきつった笑みを浮かべて藤代さんが答える。

 

  「あ、アレ見てよ」

 

  メガネの男が相方に声をかける。

 

  彼が指を指した先には、赤星のAE111トレノがあった。

 

  「へぇ~AE111かぁ……確かFFだっけ?FRだったのにFFにしちゃうんだから、レビンやトレノも終わってるよね」

 

  「そうだよね」

 

  「しかも、テンロクエンジンに六速ミッションなんて宝の持ち腐れだよね、おまけにノンターボだし」

 

  「だよね、だよね」

 

  ……なんなんだコイツ等は……。

 

  「こっちはアテンザかぁ……FFは初心者でも簡単に乗れるからいいよね」

 

  「うんうん」

 

  「おまけに後ろも見にくいし……下手だと簡単にオカマほられちゃうよね~あ、女の人だからオカマは無いか。ぷぷぷ……」

 

  「そんな本当の事言っちゃ悪いよ……くすくす」

 

  「……勇吾……私の木刀取って……」

 

  「落ち着け藤代」

 

  そう言って藤代さんを赤星が押さえるが……赤星も相当きてるな……。

 

  「キミタチも走り屋なら行ったほうがいいんじゃない? サーキット。10回の峠より1回のサーキットのほうが……」

 

  「まてよ」

 

  赤星がついに声を出した。

 

  「そんなに言うならバトルしようじゃないか、なんなら上りでいいぜ。テンロク、ノンターボに上りで負けてもいいんならな」

 

  「な!? 勇吾はそれは無茶だよ、相手はS15よ!」

 

  「俺はバトルするか聞いてるんだ。どうするんだ?」

 

  ひそひそ……。

 

  二人は、赤星の剣幕に驚いて相談を始めた。

 

  「いいよ、やろうよ。条件はそっちの通りでいいよ。でも、負けた時の言い訳を用意しておくなんて結構ズルイんだね?」

 

  人を小馬鹿にした顔、そんな表現がピッタリだった。

 

  「……大丈夫か、赤星?」

 

  「……こんな奴等にこの条件で勝てないようじゃ、プロジェクトDには勝てないさ」

 

  「解った……気をつけろよ」

 

  「ああ、まかせろって高町」

 

  

 

 

  ギャアアアァ

 

  前方を走り抜けて行くS15。

 

  やや遅れてAE111も追いかけていく。

 

  「くっ! 思ってた以上にストレートで放される! ……もっと、コーナーで突っ込まないとダメか!」

 

  対する二人組みは……。

 

  「やっぱり口だけクンみたいだね。さっきから前をずっと走ってて、もう疲れちゃったよ」

 

  「大体テンロク、ノンターボで、ニーゼロ、ターボ車に上りでバトルをしようなんて間違ってるよ」

 

  「だよね? だよね?」

 

  この時二人は気付いていなかった。後ろのAE111が、抜けないまでも、一定の距離のまま後ろを追ってきている事を……。

 

 

 

 

  「でも、赤星くん大丈夫かな? ちょっと条件厳しくない?」

 

  「……ああ、確かに。おそらく前半は絶対勝てないだろうな」

 

  「な……高町君! それじゃあ、勇吾は勝てないって言うの!」

 

  「まあ、落ち着いて藤代さん。ここの道をよく思い出してみて下さい」

 

  思案顔の藤代さん。

 

  そこにノエルさんが口をはさむ。

 

  「……この峠の上りは、珍しく前半が急な勾配になっていて、直線的な道が多いようです。技術差が出るとしたら、後半の勾配が緩やかで、中速コーナーが続く所からと思われます」

 

  「あ……そう言えば……」

 

  どうやら藤代さんも納得したようだ。

 

  「でも、赤星君のトレノ、ギア比はダウンヒル用に合わせているから……大丈夫かなぁ?」

 

  ウチの専属メカニックも首を傾げる。

 

  「大丈夫だろう、赤星は勝つ」

 

  「……高町さま、その根拠はおありですか?」

 

  「ええ」

 

  俺は、ゆっくりとノエルさんを見た。

 

  「アイツは赤星勇吾ですから」

 

 

 

 

  ゴォアアアア

 

  緩やかな高速コーナー三連を二台の車が駆け抜けていく。

 

  前を走るはS15。

 

  その後ろを追従するかのようにAE111が追いかける。

 

  現在、中腹あたりだろうか、勾配も緩やかになってきた気がする。

 

  ゴアッ

 

  緩いコーナーの先にあるL字コーナーを、二台共クリアしていく。

 

  「後ろのAE111なかなかやるんじゃない? まだついて来てるよ?」

 

  助手席のメガネが男に問い掛ける。

 

  「そうだね、でも抜くのは無理みたいだね。あらためて自分のテクに自信もっちゃったよ」

 

  ししし……と笑う運転席の男。

 

  

  「……そろそろだな」

 

  俺は道の途中にある看板を見た。

 

  “さざなみ寮まで後3km”

 

  この看板が目印だった。

 

  「さあ、外の人間がここをどう突破するかな?」

 

  俺は、目の前の緩いコーナーに対して過剰なまでにブレーキを踏み込んだ。

 

 

  「なんか、後ろの車一気に減速したよ?」

 

  「ヤレヤレ、こんな緩いコーナーであそこまでスピードを落とすなんて……思ってたより初心者だったのかもね」

 

  ギャアアアアア

 

  緩いコーナーを、ノーブレーキで抜けるS15。

 

  しかし、その先すぐに狭いヘアピンコーナーが待ち構えていた。

 

  「どひゃーっ!」

 

  慌てて急ブレーキを踏んでパスしようとするが、もちろんそんな状態ではまともにスピードが乗るはずもなく……。

 

  「目の前のコーナー抜けたら終わり……じゃないんだぜ!」

 

  楽々とAE111がS15を抜き去って行く。

 

  

  「ここからが本番……だな」

 

  俺は1回車をアウト側に傾けると、サイドブレーキを引き、コーナーのイン側に車体を滑らせる。

 

  ドシャアアアアア

 

  後輪をロックさせつつ横滑りするAE111。

 

  サイドブレーキを戻しフロントが出口を向いた瞬間アクセルを踏み込み、戻していたギアを上げ直す。

 

  FF車とはとても思えない、芸術的なドリフトで駆け抜けて行くAE111。

 

  「さあ、ついてこれ……あれ?」

 

  その時、後ろのS15はコーナーの外側のガードレールとお友達になっていた。

 

 

  「お疲れ、勇吾♪」

 

  あれから、二人組みはまだ何とか走る車でそそくさと山を下りて行ったらしい。

 

  「なんとか勝てたよ、一時はマズイかと思ったけど……」

 

  そう答える赤星だが、顔は疲れた様子を見せていない。

 

  おそらく、全て予想通りだったのだろう。

 

  「さて……遅くなったけど、練習を始めようか?」

 

  その言葉に頷き、それぞれが自分の愛車に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

  国守山中腹

 

  このバトルをギャラリーしていた女性の二人組みがいた。

 

  一人はロングヘアーの清楚な女性。

 

  もう一人は少しウェーブのかかった、今風の女性。

 

  見た目は正反対な二人組みだが、共通している事は二人共とびっきりの美人な事だろう。

 

  「ふ~ん……あれが今度拓海君たちが戦う海鳴レッドスターか……どう思う、真子?」

 

  ウェーブのかかった女性が隣の相棒に声をかける。

 

  隣の女性……真子は真剣な顔で。

 

  「確かに速いと思うよ。……でも、拓海君たちが相手だとツライんじゃないかな?」

 

  真子は続けて。

 

  「沙雪はどう思う?」

 

  「……同意見ね。今のレベルのままならプロジェクトDの勝ちは確定だと思うわ」

 

  沙雪はそう言って、走りこみを始めた四台の車を見る。

 

  「おそらく、ダウンヒルはAE111、ヒルクライムはNSXだと思うけど……」

 

  その視界には、黒いインテRをとらえていた。

 

  「……気になる車もあるわね」

 

  「あのインテね」

 

  「そう……あのドライバーきっと、まだまだ上手くなるわ」

 

  「……私も……そう思う」

 

  そう言った真子には、黒いインテRからオーラが立ち上るのが見えていた。

 

  真子は後ろを振り返り、自分の車を見つめ直す。

 

  180SXのボディを持ち、S13のフェイスを持つ改造車……。

 

  通称“シルエィティ”と呼ばれる車である。

 

  「行こう、沙雪。私たちも戻って練習しないと」

 

  その瞳は、先ほどのバトルに触発されたのか闘志に燃えていた。

 

  「……そうね」

 

  沙雪もそれに答え、静かに助手席に座り込んだ。

 

  そして静かに走り去っていった……。

 




ちょっとした疑問なんですが、シルエイティって車検通るんですかね……。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
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