赤い世界を変えるなら 作:創大
いつまでもどこまでも続く地平線。周りの景色は変わらないし、何か新しい発見があるわけでもない。
あの日以来、アスカはどこかへ行ってしまった。当たり前だ。僕はまたアスカに酷いことをしてしまったのだから。
気持ち悪いとは言われたけれど、僕はそれ以上に、アスカが頬を撫でてくれたことがとても嬉しかった。
アスカはこんな僕を、受け入れてくれたのに……。
あの日のことを思い出すと、胸が締め付けられる。息が苦しくなる。涙が溢れ出しそうになる。
僕も、皆と溶けてひとつになればよかったんだ。
僕だけが死ねばよかったんだ。
僕は、これからどうしたら良いの?
「アスカ……」
「何よ」
後ろで声がした。僕が傷つけてしまった、あの子の声が。
僕がゆっくり振り返ると、アスカは目を細め、
「相変わらず辛気臭い顔してるわね、バカシンジ」
と言った。
こんなどうしようもない僕に、アスカはあの頃と同じように変わらない態度でいてくれた。
「うんっ……」
僕は溢れ出す涙を止めることができなかった。
「あたし、ちょっと周り見てきたのよね。誰かいないかとか、何かあるかなーって思って。それに、アンタといるの嫌だったし。話すのも無理だったから、何も言わないでここから離れたのよ」
アスカは腰に手をあてながらそう言う。
「アスカ……ごめん、本当にごめんね」
「謝って許されるなら警察は要らないわ。ま、ここにはもう警察なんていないんだけどね」
アスカは少しあきれた声でそう言い放つ。
「ごめん……」
僕は、ごめん以外のどんな言葉をかければ良いのか分からなかった。
「ねえ、バカシンジ」
アスカは僕の腕を軽く引っ張り、僕を呼んだ。
「何でアンタは、あたしを殺そうとしたのよ」
アスカはうつむきながら僕に問いかけてきた。声は小さく、少し震えている。
僕はー。
「それは……。もう一度、他人と触れあうことが怖かったから……。またアスカを傷つけたり僕が傷つけられるのは嫌だったんだ」
「僕は、本当はずっと他人を拒絶してきたんだ。昔から、ずっと。自分を取り繕って、自分がもし捨てられたら嫌だから、嫌われたら嫌だからっていう理由で、他人と接するとき、必ず距離を置いていたんだ」
僕は、なんだか急に自分が自分じゃ無いような感覚がした。なぜ僕は、こんなことをアスカに話しているのだろう。
それでも口は、止まらない。
「でも、そんな僕の自分勝手な考えは、ずっと続くようなものじゃなかった。誰かにばれないように、見られないようにってしているうちに、段々と他人が信用できなくなってくる。エヴァンゲリオンのパイロットになってから、それがもっと酷くなっていったんだ」
僕はアスカの目を見て話すのが苦痛になってきた。僕は、こんな自分の思いなんて、話す機会がなかったのだから。
アスカは僕の目をしっかり見ながら、何かを考えている様子だった。
「誰も信じられなかった。父さんもミサトさんもアスカも。まるで何を考えているのか分からなかった。綾波は突然記憶を失ってしまって、怖かった。今まで築き上げきたものが急になくなるんだ。父さんは僕に構ってくれない。僕が何をしようと、父さんは僕をエヴァンゲリオンのパイロットとしてしか接してくれなかった。」
まるで子供の駄々みたいだ。
アスカはこんな僕の勝手な気持ちにがっかりするのかな。あきれるのかな。
一旦切ります。