赤い世界を変えるなら   作:創大

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5 通いあう心

「誰かしらね……」

「確か、母さんが『人は自ら生きようとする力があるから』って言ってたけど、皆いつかこの海から戻ってくるのかな」

「さあね……」

アスカはそう言って再び立ち上がり、赤い海の方へ歩いていく。足取りはおぼつかなかった。

僕もゆっくりと立ち上がり、赤い海の方へ向かっていった。最近歩いていることがなくなったので、少し足がふらついている。

僕がアスカの方へ行くと、アスカは

「なんか、こっちに近付いてきてるわね」

と目を凝らしながら言った。

「アスカ、やっぱり人だよね」

「ええ、でも……」

アスカはそう言うと口ごもり、何かを考えるように腰に手を当てた。その姿はアスカにあまり似合わなかった。アスカが長く考え込むことって、そういえばあまりなかった気がする。

「どうしたんだよ、アスカ」

僕がアスカに話しかけると、アスカはハッとしたように僕の方を向き、

「あの人……浮いてるわよ。それに、あれ……」

「え?」

「……ファーストみたいね」

「え!?」

アスカは僕が驚いたことに反応せず、じっと遠く先の方を見ている。

綾波……。

僕の母の分身。クローン。それなのに、僕は彼女に惹かれていた。多分、綾波が母さんみたいで、無意識に母さんと綾波を重ねていたのだろう。

あのLCLに満たされた海の中で、僕は綾波と話した気がする。それももう曖昧で、よく思い出せないけれど、確かにそうだった。綾波は、僕のことを優しく包んでくれた。それはまるで、お母さんみたいだった。

懐かしい……気がする。

「…ンジ!シンジ!」

「ハッ」

僕が物思いにふけている時に、アスカは僕を呼んでいたのだろう。

「ねえ、ファーストが消えちゃったわよ!」

アスカが海の方を指で指しながら、僕にそう話す。アスカはとても慌てているようだ。 

アスカってこんなに綾波のことを気にかけていたっけ。どうしてだろう、上手く思い出せない。

「そっか……」

「何よ、意外と素っ気ないのね。アンタ、ファーストのこと好きだったんじゃあないの?」

アスカは目を丸くしながらそう言った。

「別に、そんなんじゃないよ……綾波とは」

「ふぅん……」

アスカは少し怪訝そうな顔で僕の方を向きながらそう言う。

僕は、綾波のことが好きだった。多分、今も好きなのだろう。でも、それは『母』と重ねていたからだと思う。綾波のことを意識すると、どうしても母さんのことを思い出してしまう。

それに、僕には他人を愛することができなかった。僕はただ、誰でもいいから人から愛されたかった。別に、男でも女でも、どちらでもよかった。自分を必要としてほしかった。

今の僕の願いは、そんなことではないけれど。

僕は……本当に嫌な奴だ。

「アスカ」 

「何」

「僕達で、この世界を変えよう」

「はぁ?」

アスカは、急になに言い出すのよとでも言いたげな顔で僕の目を見る。

「どういうことよ」

「僕は、こんな世界にしてしまったことを、とても後悔してる。僕がサードインパクトを食い止めることが出来たなら、こんなことにはならなかった。アスカはあんただけのせいじゃないって言ってくれたけど、あの場で僕が量産型を倒していれば、こんな世界にはならなかったんだ」 

僕は手を固く握る。

「だから!もし方法があるなら、もう一度あの世界を繰り返そう。そして、僕達の手で運命を変えたいんだ」

アスカは目を見開き、僕の方へ体を向ける。

「アンタ、変わったわね。前はもっとウジウジしてたけど」

「そんなことは、無いよ。僕は変わってない。でも、願いができたから」

僕は勝手な奴だ。最初からこんな世界を望まなければ良かっただけなのに。  

最低だ。

「僕はズルい奴だ。皆巻き込んでまで叶えた夢なのに……」

アスカは僕のその言葉を聞き、僕の腕を掴んだ。そして、

「……ホントアンタって勝手ね。……でも、良いわよ、やったろうじゃないの、バカシンジ」

と強く言った。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたたちの願い、届いたわ」

 

 




シンジって難しいキャラですね……。
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