リリカルな聖王少女の御話   作:ざる蕎麦

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念話

大変です。大問題です。

突然何を言い出すんだコイツ?見たいな反応になるかもしれませんが訊いてください。

 

いつも通り学校を終えて友達とも別れ、いつも通り夕飯も家族みんなで済ませ、いつも通り自分の部屋でまったりしていたら急に、

 

『――――誰か僕の声が聞こえる人。力を貸して』

 

と、何処からとも無くこんな頭の中にそんな声が聞こえてきました。

 

急に頭の中に声が聞こえてくるなんてちょっぴりホラーでミステリアスな感じがしますし、それに最初は幻聴かとも思いました。いえ、聞こえたのが幻聴ならまだ良かったかもしれません。

しかし、何度か聞こえてくるうちに、幻聴だと思っていたものは一つのある確信に、オリヴィエであった自分のよく知ったものであると思い知らされました。

それは、

 

「これは…念話?」

 

今聞こえてきた声が『念話』であるという事です。

『念話』は魔力を用いて口に出さないで、思考だけでの会話を可能にする『魔法』ということです。

 

ベルカのような魔法の使用が日常的な世界なら別段驚きはしませんでしたが、魔法が存在しないはずのこの世界で念話という魔法が使用されているという事は明らかに異常事態であるとしか思えません。

そして、念話に加え、

 

「これは結界ですかね」

 

結界まで張られているのです。結界も念話と同じ魔法の一つです。

ただ、ベルカの魔法とは雰囲気が違いますし、ベルカとは別に進歩した魔法でしょうか。経験による直感でしかありませんが、今使用されている結界は空間を一時的に切り取るタイプの結界でしょう。この手の結界を使用するときは基本的にトラブルや人に知られてはいけないような事が起きているときなのですよ。

そして、念話で聞こえた雰囲気の限りでは結界を張った主は切羽詰った状態、もしくは命の危険な状態にある可能性が非常に高いです。此処の世界が魔法のある世界なら大勢の人が声に気付き、それなりの人が助けに行くでしょうが、生憎この世界は念話を聞くどころか魔法すら存在しない世界です。

 

もしかしたら、日本のの何処かには1人や2人くらい魔法を使える人間はいるかもしれませんが、おそらく、この海鳴市には私以外に念話を訊けた人間は居ないでしょう。居たとしても、きっと禄に戦えないし、禄に魔法も使えないような人でしょうね。

 

そう、今の海鳴市に魔法を扱え、且つ戦える者は私以外は誰も居ない。

 

つまり――――――――、

 

「私の出番ですか」

 

魔法に関われば、きっと私はまた魔法が関係してくる事件に巻き込まれるでしょう。数回とかではなく、一生。魔法とは、世の中とは何時だってどんな時だってそう言う物なのです。

知ってしまった、程度なら状況次第では問題ないかもしれません。

 

しかし、私が今からしようとしているのは、恐らく戻れないであろう所まで、『足を踏み入れる』こと。踏み入ったが最後、今までの日常に戻る事はできないでしょう。

 

平和な日常が終わってしまうのは少し残念な気持ちですが、それも仕方ありません。

日常以上に人の命は大事なのです。

 

もし、私がここで行かず、踏みとどまった結果、念話の主が大怪我を負ったり死んでしまったら、きっと私は一生後悔したまま生きていくでしょう。

 

私は後悔だけはしたくないのです。

 

 

だから私は家族に気付かれないよう、慎重になりながらも、家を飛び出した。

 

 

 

『誰か、誰か――――………』

 

急に念話が途切れました。基本的に急に魔法が途絶える事はない。念話をしている余裕もなくなってきたか術者が瀕死または死亡しない限りは。つまり、いよいよ本気で念話の主に危ない状態が近づいているというころですね。

 

 

「急ぎましょう」

 

 

私は走る速度を上げた。

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ・・・、ふう。 どうやら間に合ったようですね。良かったです」

 

私のすぐ目の前でフェレットらしき生き物が、異形としか言い表せない存在からの攻撃から身を防ぎつつ逃げ回っていました。どちらが助けを求めたのは一目瞭然で、明らかにフェレットの方でしょう。化物の方が念話の小学生男子みたいな声で話してたら怖いです。ドン引きです。

 

ただフェレットの方はかなり消耗しているらしく、既に足元がふらふらで、本当に危険な状態です。私はフェレットを助けるべく、急いで駆け寄りました。

フェレットも私の存在に気が付いたのか、私の方に駆け寄ってきました。

 

異形の存在はフェレットの掛けた捕縛系の魔法で一時的に動けないでいます。ただ、術者の魔力の限界が近づいているためか、構成が所々甘い。そんなに長くは足止めすることは難しいでしょう。それでも、話す時間くらいは在ります。

 

「来て、くれたんですね……」

 

「はい。貴方を助けに来ました。それより、何が原因で『こう』なったのですか?」

 

 

「実は、僕の所為なんです……」

 

フェレットもといユーノ君が言うには、自分はこの世界から見て異世界人という存在で、自らが発掘した『ジュエルシード』というロストロギア(異世界に存在した高度な魔法技術の遺産)が輸送中の事故でこの地球、細かく言うならこの海鳴市周辺に全21個のジュエルシードが全て散らばってしまったらしいのです。ジュエルシードは一つ一つが強力な魔力の結晶体周囲の生物の願いを叶える性質を持つが、基本的に制御しきれずに暴走するらしいです。

 

そして、暴走した結果が目の前で今にも拘束を振り払わんとしている化物らしいです。

 

「幾つかは集める事ができたのですが、今の僕には最早どうしようもありません。 迷惑と分かっているのですが、お願いです、力を貸してください! 御礼はちゃんとしますから!」

 

「いや、御礼がどうとか言ってる場合とかじゃないんですけどね。見て下さい、直に拘束も破られます。 ですので、簡潔に、分かり易く私に何をして欲しいのか言って下さい」

 

私は貴方を『助けに』来たのですよ?と私がそう言うとユーノ君は酷く驚いたような顔をした。まあ、目の前には壁や道路を容易に破壊できる化物がいるのに只の子供が特に慌てた雰囲気を見せないで淡々と話を進めているんですし、仕方ないかもしれませんね。逆の立場だったのなら、私でも驚きます。

 

しかし、オリヴィエであった私にとってあの程度の存在は、戦乱時代においてうじゃうじゃ居たようなものですし、力も覇気もベルカの騎士やクラウスのような歴戦の王には及ぶ程のものではないです。今の私でも魔力を使えばある程度は対抗し切れます。まあ、今の体では反動が少し恐いですが。

 

「じゃ、じゃあ簡潔に言います。貴女には資質があります。魔法を扱う資質です。そして、身勝手な御願いかも知れませんが、貴女にはジュエルシード集めに協力して欲しいんです!」

 

 

「ふふっ、いいでしょう。貴方に協力して差し上げましょう」

 

「あ、有り難うございます! では、『コレ』を使ってください」

 

そう言ってユーノ君は宝石らしきものを私に渡してきました。ルビーのような赤く丸い玉です。

 

「使い方はですね…」

 

「あ、いえ。別に言わなくても分かるので、何なら離れた所で休んでて貰っても良いですよ?」

 

「え、でも……、そうですか。くれぐれも無茶はしないで下さい」

 

ユーノ君は私から必ず成功する、失敗はしないという雰囲気を感じ取ったのか、素直に引き下がりました。今は私のすぐ横で私のことを観察しているっぽいです。

 

ユーの君から渡されたこれは、一見只の宝石のように見えますが、これは機械で作られた『デバイス』と呼ばれるもので、魔導師としての力を最大限に引き出す為の代物です。

 

私はユーノ君から渡されたデバイスを見て驚きました。本物の宝石で出来ていたとか、伝説のデバイスだったとか、嘗て敵が使っていたデバイスだったとかではなく、

 

「久しぶりですね、レイジングハート。私のことが分かりますか?オリヴィエ・ゼーゲブレヒトです」

 

『!! 生きておられたのですね、マスター。あの時死んでしまったのかと思いました』

 

私、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトが最も慣れ親しんだ、相棒とも家族とも呼べるデバイスだったからです。また、会えるとは予想外でした。

 

「まあ、一度は死にましたけどね。今は高町なのはとして生きています」

 

『そう、ですか…。ですが、どうしてそのような姿に?』

 

「私も良く分かってないのですけど、色々あったのです。まあ、その事は後で話すとして、さっさと目の前の敵を倒してしまいましょうか。あ、時間が余りないので、起動呪文は省略しますね」

 

『……了解しました、マスター』

 

化物の方を見てみると、拘束魔法の殆どが破られてしまっている状態で、あと数秒で全て解けてしまうだろうと言う状況まで来ているっぽいです。そろそろこちらからも仕掛けないと、色々危ないですし、私はともかく、ユーノ君や周囲へ被害が出ないとも限らないです。ユーノ君に被害が行った場合に結界が解けてしまう恐れもあります。

私はベルカ時代では周りからは万能型と称されていたのですが、冗談抜きで結界系統の魔法だけはどうも苦手で、レイジングハートが在っても使えないのに等しいようなものでしたし、今の私でも無理だと思いますね。ああいうのは、補助系に長けた才能が必要ですから。

 

 

「では行きましょうレイジングハート、セットアップ」

 

 

『Stand by ready. set up』

 

 

 

 

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