あれからジュエルシード集めは割りと順調に進みました。一度町を飲み込みかねない範囲での暴走もありましたが、ユーノ君のサポートのお陰で、道路と建物が一部破損する程度の被害で済みました。負傷者こそではしましたけど、死人は出ていなかったのは幸いです。
集まったジュエルシードはユーノ君が回収していた分を含めて現在六個。あと十五個も集めるとなると大変ですが、やると決めたからには頑張っていきましょう。ただまあ、もう一人くらいは手助けが欲しいなあ、と思うのは仕方のないことです。
それと、最近体に過負荷がない程度の筋力トレーニングと魔法制御の最適化の訓練をしているのですが、分かった事があります。それは、この体の魔法の才能が『高すぎる』事です。それはもう凄まじいもので、このまま鍛え続ければ、ベルカ式に攻撃力で劣るミッド式の砲撃で聖王の鎧を貫くことが出来る可能性まであります。ただその代わりに、その高すぎる才能故にできちんと力を制御しきらなければ徐々に出力が落ちる可能性や下手をすれば魔法が殆ど使えなくなる可能性まで出てきました。
―――――ただまあ、それはちゃんと制御できなければ、の話でなんですけどね。
話は変わって、現在月村邸敷地内。
今日は久々にアリサちゃんとすずかちゃんと一緒に楽しく遊んでいたんですが、急に敷地内にジュエルシードの反応があって、泣く泣く途中で抜け出して、丁度今ジュエルシードの暴走体(今回は猫でした)を倒したところのなのですが、
「名前くらい訊かせて下さい」
ついに、おそらくジュエルシードを狙っているであろう人間が出てきました。
金髪ロングの何か際どい格好した女の子です。年は同じぐらいですけど、その格好は流石にアウトな気がします。というかアウトです、チェンジ(服装を)。
…いやまあ、見た目は個人の自由なので好きにしたら良いんですけど、腕とか丸出しなのは余り良い選択だとは思えませんね。何のためのバリアジャケットなのか分からないですよ。ついでに言うならマントとかも戦闘には不向きでしょうに。戦闘中に掴まれたりしたら、どうするつもりなんでしょうかね。
「バルディッシュ、フォトンランサー」
『Photon Lancer』
彼女の口から名前は出ることなく、代わりに黄色の魔力弾が飛んできました。
数は四つ。これなら避けるよりも防いだ方が楽でしょうかね。
「…はあ、レイジングハート、お願いします」
『Protection』
ガードはしましたが、それなりの威力の攻撃だったみたいで、怪我をする事はなかったのですが、少し押されるような衝撃が来ました。
私が言うのもなんですが、子供のわりにやりますね。
きちんと無理のない鍛錬が出来る子なのですね。オリヴィエの頃は、あの頃は仕方なかったとはいえ、鍛錬で何度も無茶をして片腕を使えなくしてしまった私とは大違いです。
「名前を訊いただけなんですけどねえ…、まあ良いでしょう。今は名前は教えて貰えそうにないので、別のことを訊きますが、貴女の目的はジュエルシードということで良いのですか?」
「…そうだ」
今度は攻撃が来る事はなく、ちゃんとした返事が来ました。良かったです。
確認のために一応訊きましたが、やはり案の定ジュエルシードが目的でしたか。
案外現れるのが遅かったですね。ジュエルシードが散ってから結構時間は過ぎたはずなんですけどね。
いえ、もしかして今まで出会わなかっただけかもしれないですね。
「貴女は知っていますか? ジュエルシードが何なのかを」
「知っている。だからこそロストロギアたる『ジュエルシード』集めている」
最初の一撃が簡単に止められたからか、殆ど攻撃してこなくなりました。きちんと警戒もしていますしね。まあ、今の所は此方からは攻撃する気はないのですけど。
そして、この子はちゃんとジュエルシードが何なのかを知っていて集めているみたいです。
とりあえず、阿呆ではないようです。
ただこの子、何処かおかしいです。馬鹿っぽいとかではないのですけど、初めて出会ったのではっきりとは言えませんが、ジュエルシード集めの過程で傷つく覚悟はあるのに、どうにも彼女自身の意思があまり感じられないのです。
私自身も自分のためではなく、ユーノ君の為に行っている様なものなのですが、それでも彼女から感じる雰囲気は、誰かのために動いているとは何か違う、とそんな気がするのです。
「では、私とあなたは敵という事ですね」
「そう、だ。私と貴女は敵同士だ」
まるで、誰かに『利用されている』かのような、『つけ込まれている』かのような、そんな感じなのです。何度も何度も戦場で感じた、策士や狂人に振り回され続けた人々と雰囲気が似ていると、そう感じるのです。
かつて生きたベルカの時代から何百年と経っているので、思い違いである可能性もなくはないですけど…。まあ私の思い違いであればそれで良いですが…。
「さて、そろそろ再開したいところですが、その前に一言言わしてもらいます」
「………」
彼女からは特に反論も攻撃もしてこなさそうなので、さっさと言ってしまいましょう。
「―――――友達になりませんか?」
他にも、好きな食べ物は?とか何処出身なの?とか色々言いたい事訊きたい事はまだまだ在るんですが、それでもやっぱりこれだけは言っておきたかったのです。
彼女の目はとても寂しそうな目をしています。今にも泣き出しそうな瞳です。
きっと、心を支えてくれる人が少ないのでしょう。
いえ、だからと言う訳ではないのですけどね。
単純にあの子ならきっと言い友達になれると思ったからです。
何年も何年も仲良く、大人になってからも仲良くできる友達―――――、いえ『親友』になれる、そんな気がしたからです。
「…それは出来ない相談だよ」
「そうですか」
それはとても残念です。
ですがまあ、この先最低でもジュエルシードがある限りは出会うでしょうから、ゆっくり雑談や名前を教えてもらう事からでも始めるとしましょう。早期解決は大切ですが、何事にも焦りは禁物なのです。
焦っていては何も成功する事はないのですから。
まあ、とりあえず今は、ジュエルシードを取られるわけにも行かないので、帰ってもらうとしましょうか。
『Scythe Form』
「やあああああああああッ!」
金髪少女は私が戦闘体制に入ろうとしたのを感じたのか、再び襲い掛かってきました。
砲撃の類は効かないと判断したのでしょうか、さっきとは違い完全に近距離向けの攻撃方法です。
形状は鎌、といったところなので『斬る』の類の攻撃できますね。個人的には『突く』よりも対処しやすいので、特に問題ないです。それに構えや持ち方が剣術の達人というわけでもないので、余計に対処しやすいです。
「……え?」
金髪少女は訳が分からないといった様子で、唖然としている。
彼女が驚くもの無理はないです。飛び掛ってきたところで急に自身の体が動かなくなったのですからね。
何故なら、いつの間にか彼女の体とデバイスにはチェーン状のバインドで雁字搦めにされていたのですから。普通のバインドと違って強度が術者に比例するタイプのため、彼女は抜け出せないでいます。
「ごめんなさい、名前も知らない魔導師さん」
そして、私は『気絶はする』程度の威力の魔力をレジングハートに込めた。
そして、
『Divine Buster』
レイジングハートからピンク七割虹色三割の砲撃が放たれた。
「―――――っ!?あああああああああああああーッ!」
金髪少女はバインドに雁字搦めにされていながらも咄嗟に三重にシールドを張りましたがその健闘も虚しく、砲撃はシールドを突き破り、彼女の意識をあっさりと刈り取りました。
…此処だけを誰かに見られたりすると、私が悪者として映るんでしょうねえ。いたいけな金髪少女に暴力を振るう鬼畜として。それは嫌ですねえ。
―――まあ、ユーノ君が結界を張っているので、そういう事にはならないのでしょうけどね。なったら困ります。
「受け止めてください、レイジングハート」
でないと、落下の衝撃であの子が大怪我を負ってしまいますからね。気絶している以上は魔法も使えないですから。
『……マスター、少女が消えました。恐らく転移です』
結界内にあの子と私達と暴走体以外の気配はなかったですし、他の誰かが結界内に入ってきた様子もないです。
つまり、それはあの金髪少女が気絶などしておらず、更に自力で、且つ一瞬でこの結界内から転移した、という事になりますね。
…私としたことが加減を間違えましたか…。不覚です。
しかし、それにしても、
「なかなか優秀ですね…」
上手くじっくり鍛えれば、もっともっと彼女の才能は伸びるでしょうね。
鍛え方次第では、今世紀最高峰の魔導師も夢じゃないですねえ。
まあ、ジュエルシードの方は解決してますし、さっさと封印してしまいましょうか。また暴走されても困りますからね。
「―――――って、あれっ!?」
さっきまではあったのに今はそのあるはずの物がないです。
『マスター……』
「…ええ、恐らくあの子でしょうね……」
はあ、本当に優秀な子ですね…。
「とりあえず、アリサちゃんたちの所に戻りましょうか…」
『はい、マスター』