蛇がダンジョンに潜入するのは何かの間違いである   作:Zero Stella

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なんだか、予想以上の反響にビビっております
とにかく続きを書いていく所存です


act 1-2

「俺の名は、スネークだ」

 

 スネーク。蛇を表す単語。それが彼の名乗った名前だった。スネークというのがまさか本名であるはずなどないのに、しかしアストレアは神の持つ力を使ってもそれが嘘だと見抜く事はできなかった。つまり、彼の名がスネークだというのは真実であるという事だ。

 隣にいたリューは、未だに男が嘘を使っているのだと思い、辟易した態度と表情で「まだ嘘を吐くのか」とイライラした声を出す。それを右手で遮り

 

「リオン、彼の名がスネークだというのは真実ではあるみたいです……"本当"かどうかは別ですが、一応の真実ではあるのでしょう」

 

 勿論ハッタリだった。だが、まさかこれが偽名でない方がどうかしているのも本当だ。このスネークというのは、彼の持つ所謂《二つ名》のようなモノで、そして長らくそれで呼ばれ続けた名実共にもう一つの名前なのだろう。

 とはいえ、この男が相当なワケアリだという事はアストレアも分かっていた。それも、闇派閥といは違う意味でのワケアリだ。彼が今ここにいる事自体、神ですら気が付かないような運命の悪戯の産物なのだろうから。

 アストレアはそれを聞き出すには他の者がいない方がいいと思い、リューを病室から無理を言って追い出し、看護師だろうが医者だろうがどこぞの神であろうが追い返すように伝えた。リューは終始良い顔をしなかったが、それでも最後には渋々ではあるものの従ってくれた。

 良い眷族に恵まれた事を感謝しつつ、アストレアは再び"スネーク"と向き合う。

 

「あなたの名前は分かりましたが、どうも腑に落ちない事が多いんですよね」

 

「それはこっちも同じなんだが……」

 

「そちらの質問には後で答えますから、まずはこっちの質問を聞いてくださいます?」

 

 これ以上おかしな事がおきないように予防線を張ると、ずいとスネークに顔を近づけ、片方しかない瞳を覗き込むようにしながら質問を投げつける。

 

「神がこの地に降り立ったことはご存知?」

 

「そもそもここはどこなんだ」

 

「……オラリオという都市は知っていますよね?」

 

「どこだそれは」

 

 頭が痛くなってきた。まさかの事態である。オラリオを知らない? 可能性は低いが、神の存在を知らないかもしれない辺境の村人でも、オラリオの存在は知っている。

 ともなれば、スネークは「この世界の人間ではない」のか。

 まさかである。そんな事は聞いたことがない。だが、この世には信じられない事ができる神々もいるのも事実で、中には時を戻す事が出来る神もいるし、気まぐれでこの地を無くすことだって簡単な神も多い。

 しかも、この地上にいる神が力を使うのは御法度であるが、もしこれが天界の神の仕業だとすれば自然とも言える。

 となれば、ある意味このスネークも被害者と言える。神の勝手に振り回され、どこか別の世界から引っ張り込まれたのだから。

 そんな者を排除するのは、果たして正義を司る神として良いものなのか。いや、良いはずがない。

 

「スネークさん、まずは先程までの対応を謝りたい。申し訳ない」

 

「突然どうした」

 

「さっきから話が噛み合わない理由が、なんとなく分かった気がするんです。そこで改めて、お互いの情報を確認したい」

 

「……分かった」

 

 そしてアストレアとスネークは互いの情報を交換し、理解し難い事実を受け止めなければいけないことを互いに理解した。

 ここが世界唯一の迷宮都市オラリオであること

 次に、ここにはアメリカを筆頭に、スネークが知る国家はないこと。ただ、ニッポンと極東のように似て非なるものや、該当する人種は存在すること。

 リオンと呼ばれていた女性のような、耳が長く魔法の扱いに長けるエルフ等、一般的な人間(ヒューマン)以外の種族が存在し、基本的には共存していること。

 そして神が実在し、アストレアもその1人であること。

 神から力を授けられた冒険者と呼ばれる存在と、彼らが探索する迷宮(ダンジョン)が、世界で唯一このオラリオにはあること。

 

「信じられん」

 

「スネーク。で良いんですよね」

 

「ああ……」

 

「あなた、この世界に来る直前の記憶とかありませんか? もしかしたら原因が分かるかも」

 

「そうだな……どこから説明したもんか」

 

「まぁ、できるだけ詳しく。できればあなたの事も交えて」

 

 分かったと短く返し、スネークは話し始める。自身の置いていた環境から、その最後までを。

 

 

 

 «»

 

 

 

 蛇は兵士だった。それもただの兵士じゃない。かつての伝説を倒した、新しい英雄。彼は己と意を異なるかつての仲間との縁を切り、国家というイデオロギーに関与されない、『戦いの中でしか生きられない者のための国家』を作るべく、傭兵として各地を転々とする。

 そしてとうとう生まれたのが国境なき軍隊(MSF)だった。

 とある戦場で出会った敵にして現在の戦友、カズヒラ・ミラーと共に作り上げた国境なき軍隊(MSF)は、ピースウォーカー事件という契機により、細々とした傭兵ビジネスで食いつなぐ弱小組織から、核兵器を保有するまでに一気にその規模と軍事力を伸ばした。

 ようやく軌道に乗るかに見えた経営は、しかしたった一夜で崩壊する。

 

 キューバ米軍基地からかつて仲間でありスパイでもあった少女と、小さな兵士の少年を助け出す為のミッション。スネークがそれを遂行するため、拠点であるマザーベースを離れていたその時、IAEAの核査察が来る。そのはずだった。

 異例の核査察という(フェイク)を被ってやって来たのは、所属不明の攻撃部隊。

 スネークがマザーベースへと帰還する時には、既にその殆どが破壊し尽くされており、残っていたのは司令塔のあったマザーベースの中枢プラントたった1つ。苦しみもそして喜びも共にしたその最初の1つ目のプラントですら、突然現れた敵に制圧されそうになっていた。

 副司令のカズヒラも負傷し、戦闘も最早一方的な展開。非常に心苦しかったが、流石にここで海の藻屑になるわけにもいかず、ほぼ全ての仲間を失いながらもモルフォ蝶に乗って離脱した。

 機内ではカズが怒りと無念の炎を燃やしていた。硬い鉄板に拳を叩き付け、仲間を失った悔しさ、そして未だに全貌が掴めぬ敵であるサイファーへの憎しみを吐き出した。彼はスネークほど心が強くなかったから、愛着のあった拠点と仲間達の喪失は相当堪えていた。

 

 だが、それで終わりだったらよかったのに、相手は蛇とその一行を確実に殺しにかかっていた。ヘリを追跡し、対空ロケットランチャーを手に猟犬となって追いかけてきたのだった。

 元々戦闘用でない、潜入任務用のヘリコプターであったモルフォには、赤外線誘導を阻止するフレアなどは搭載しておらず、その直撃を喰らってすぐさま燃える鋼鉄の棺桶と化した。咄嗟にだろうが、MSFで一番の能力を持つメディックが爆炎からスネークを守ってくれたが、それでもヘリが落下するのまでは防ぐ事ができないのは必然であった。

 結果、羽根を毟られたモルフォ蝶は、翼に乗っかった数名と共に海に沈んだ。

 

 

 

 «»

 

 

 

「そうだ、あの時ヘリが墜落して海に叩き付けられたんだ」

 

「それから?」

 

「いや、ここから先の記憶がない……失神していたか、はたまた突発的な記憶喪失か」

 

 そうは言ったもののスネークは、微かにその時の記憶は持っていた。誰かが自分を呼ぶ声を。それも、一人の声じゃない。何人もの声。

 ミラーの「死ぬな」という祈りの怒声、ソローからの朧気な激励、ゼロからの死を望まぬ言葉、オセロットの願いの叫び、そして、どこからか聞こえてくるわが師ザ・ボスの声。

 誰もが自分に何故だか叫んでいる。

 だが、肝心なその訳が、その理由と意味が分からない。もしかしたらこれは性質の悪い悪夢なんじゃないかとすら、未だに思えてくる。たった脇に畳まれたスニーキングスーツの横に置いてある、サバイバルナイフを手に血を求めて歩くドラキュラの悪夢をまた見てるんじゃないかと。しかしそんな現実逃避すらこの世界は許さず、唇を噛めば血が出るし、手を握り込めば自分の握力で自分の手が痛かった。

 

 ――――何があったんだ? 教えてくれ 俺はどうなってしまったんだ

 

「なぁ、帰れると思うか?」

 

 そんな心が表に出たのか、はたまた無神論者というのが目の前の存在によって崩れ去ったためか、スネークは珍しく弱音を吐いた。

 しかも、いつもならカズヒラが冗談交じりに平気だろうと楽観的な言動をしたり、ゼロ達が無線越しに励ましたり助言をしてくれるが、ここでは、いやもう二度とそんな事は起こってはくれないのだから。

 アストレアはスネークの心を察したらしく、大丈夫さと励ますべきか、現実を突きつけるべきかで数瞬迷い、そして後者を選んだ。この男がそんな事で諦める男ではないと睨んだから。

 

「私は原因は分かったとしても、現段階ではどうする事も……」

 

「そうか」

 

「ごめんなさい」

 

 少し諦めたような声が出て、自分がなんだかんだ言ってあの世界を愛していたんだなと実感する。

 半ば呪いのような日々、そして周りから際限なく上がる評価、世界中が自分が最愛の人を殺した事を褒め称える。お前は『BOSSを超えた、BIG BOSS』だと。もう散々だとすら思った。国の為に戦い、そして国の都合で消され合うなど。

 けれど結局、スネークはあの世界が憎めなかったんだろう。

 それと同時に、ピースウォーカー事件の後に宣言した、自らBIG BOSSであるという名乗り。あれもここではナシにしようと決意した。

 ここにあの人がいないなら。自分を兵士にしておきながら、最期は武器を捨て願い祈るなどという、自身を否定するような選択を取った彼女がいないなら、そもそも自分はBIG BOSSである必要性すらないのだと。

 消沈していく気持ちを無理やり変えようとするスネークの両頬っぺたを掴みながら、アストレアはその顔を上げさせて提案した。

 

「ねぇ、スネーク」

 

「なんだ」

 

「一つ提案があるの。私のファミリアに入らない?」

 

 彼女は、自分の眷属(アストレア・ファミリア)に入れば、闇派閥との闘争の激しいこのファミリアに入れば、もしかしたら今回の件に関わっている者達の事が見えてくるかもしれないと言った。それに、ここにいる限りは金も必要になるだろう、と。

 スネークからしてみれば、確かにそれはアストレアのいう通りだったので、断る必要性は殆どなかった。

 

「ふむ、そうと決まれば……リオン! こっちに来て!」

 

 アストレアが病室だというのに大声で呼ぶと、さっきまで人払いに精を出していたリオンという名のエルフが部屋へと入ってくる。話が微妙に聞こえていたのであろうか、肩はプルプルと小刻みに震え、そしてスネークをにらみつけた。その様は人、いや高貴なエルフというよりも猪突猛進するミノタウロスのようだ。

 それは蛇に対しての拒絶反応だろうか。

 

「アストレア様、本当にこんな得体の知れない者をこのファミリアに入れるつもりなのですか!?」

 

「でも、助けたのはあなたでしょう? あ、そういえばあなた、男の事が触れるようになったのですね。これは皆に報告をした方が……」

 

「待ってください! それは救助活動だからだと言ったはずでしょう!」

 

 リオンの反論に対し、鋭い一撃をアストレアが突き刺すと、リオンは顔を真っ赤にして怒りながらそれを否定した。スネークは気づいていないが、エルフの中でも人一倍他人、特に男に触られるのを嫌うリオンが初めてオラリオで自分から触れた男は、スネークなのであった。勿論、救助の為に必要ではあっただろうが。それにしたって、あの疾風が自分で男を担いでギルドまで来たものだから、ちょっとした噂位にはなっていた。

 ともかく、最も反対するであろう人物を黙らせたという事もあり、アストレアは再びスネークに挨拶を行う。

 

「それでは改めまして、ようこそ正義と秩序のアストレア・ファミリアへ」

 




スネークのバンダナは?→もちろんない

所持品はMGS:GZでの装備品の一部のみ
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