最強スペックで俺TUEEEEE してくる。

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第1話

 暗闇の中にいた。

 ぼんやりとした、形の無い意識だけが暗闇の中にある。その意識は、少しずつ明確なものになり、それに合わせて光も感じるようになる。

 

 『ここは何処だろう』と考える。

 

(……そうだ。俺はたしか。……? それで……)

 

 どれくらいの間、そこに居たのか。最初は思考も出来なかったが、それは微睡むよな状態へと変化し、最近では考察をすることも出来るようになっていた。

 ピクピク、としか動かせなかった身体も、今ではある程度頻繁に動かせるように成ってきた。

 偶に、動く度に何かにぶつかる感覚もある。

 

 生暖かい、それでいて安心を感じるその場所は何処か。その答えに朧気ながら思い至ったとき、それは訪れた。

 

 変化の無かった、凪ぎのような『原初の海』に変化が起きた。突然流れが発生し、そして平穏が打ち破られ、明確な刺激を感じた。

 外から聞こえる音が大きくなり、そしてその空間が狭くなっていく。

 そして、やがて。

『ヌルリ』とした感触の後に来た『ひんやり』とした感覚。外に出た、と分かった。

 ごぼっ、と口の中から何かを吐き出した後、彼は思い切り空気を吸い込んだ。

 

§

 

「……なるほど、つまり私は死んでしまって、転生するに当たって要望をいえばいいんですね?」

 目の前にいるヒトガタ──彼曰く、我々が神と呼ぶ者──に向かって、俺は自分の置かれた状況を確認するために、そう問いかけた。

 それに対する返答は、肯定だった。

 

 目の前の神を名乗る者が本当なのか、分かりはしないが、自分には昨日夕飯を食べた後の記憶がなく、死因──寝ている間に隕石が部屋毎押し潰した──が正しいのか判断が出来ない。

 ただ、自分の今いる場所、そこが天地の概念すらなく、ただひたすらに“白“のみが続く摩訶不思議な場所であることを考えると、なるほど自分は死んだのだな、とストンと納得できた。

 自分が死んだことをこうも簡単に納得するのも変ではあると思うが、重量すらなく(無重力という意味ではなく、そもそも概念がない)、この世のものではない光景が目の前にあるのだから、それは万の言葉よりも雄弁に現状を説明することになるのだろう。

 

「……それで、どうするのだ」

 此方が現状を把握したのが分かったのか、脳内の思考がキリがよくなったところで、神が口を開いた。

 

「……そうですね、では」

 そして、俺は転生に関しての希望を告げた。

 小説家になろうなどを読んでいた影響か、普段からそういう妄想はしていたのだ。現実として転生が目の前の現実となったとき、自分の頭脳(そもそも今肉体が存在しているのか不明だが)は、超高速でフル回転し、必要な条件を導きだした。

 

 ① 転生先は現代の地球、或いはそれに出来るだけ近い世界。平行世界でも可。場所は日本に生まれたい。インターネットがないと不便だから、これは必須だ。

 ② 金持ちの家に生まれたい。親は100億くらい稼ぐような有能で、金銭面で不自由したくない。

 ③ 頑強で、怪我や病気にならない優秀な肉体が欲しい。頭も人類最高レベルで良く、運動神経はオリンピックで金メダルが余裕で取れるくらいは必要だ。

 ④ 才能も欲しい。万能で、何事でも頑張れば、必ず上達する。そしてその道を極めることができるという水準の才能が欲しい。

 ⑤ 優れた容姿が欲しい。万人が万人、イケメンと評する容姿が欲しい。

 ⑥ そして最後に幸運。これには厄介事や、事故を遠ざけるような要素も含む。来世でも、今世と同じように来世も死ぬとかご免被る。

 

 さて、これくらいあればいいだろうか。

 魔法の才能や、戦闘用のチートも貰いたかったが、神の説明では、世界の法則を乱すことは出来ないらしい。

 つまり、魔法がない世界では俺は魔法を使うことは出来ないということで、使いたければそれが存在する世界に転生することになる。

 しかし、その世界では他の人間も当たり前に使えるし、場合によってはその法則により、強力な力を持った現地生物──例えば魔物なんかがいる可能性も高い。

 そういうファンタジー世界に行くという憧れはあるが、チートを貰えば貰うほど死ぬ危険も同様に高まったのでは意味がない。

 その点、上記の要望は、現代の日本──魔法などが存在しない普通の世界──であるので、一安心だ。ついでに自分の出した希望は、俺が生きていた世界の法則の適用範囲内であることも確認しているので、突然とんでも格闘技が蔓延る世界に転生させられることもないと確認済みだ。

 

「……以上の条件を満たした世界に転生させよう。では良き来世を送るが良い」

 

 神がその言葉を発した次の瞬間、俺は神々しい光に包まれ……そして意識を失った。

 

§

 

 やはりこの馬はとてつもない大器だと、牧野はそう思った。

 いや、今更ではないだろう。思えばはじめからそうだったのだ。

 目の前の子馬──牧場で産まれたその仔馬は、生まれからして特別だった。

 

 破水の連絡を受けて、繁殖牝馬のいる厩舎に向かう途中のことだ。

 夜空にやけに綺麗な一等星が瞬いているなと気付いた。北海道の夜空は美しく、その光景は何度見ても飽きないが、それでも牧場に勤めて長い期間を北の大地で過ごした牧野にとっては、見慣れた光景のはずだった。

 しかし、その日は何時にも増して夜空が気になったのだ。ふと、夜空を見上げた次の瞬間、一筋の流れ星がキラリと流れた。大きな流れ星で、牧野はその光景に思わず心を奪われた。

 意識を引き戻したのは、厩舎から聞こえる大きな声だった。

 

 慌てて厩舎へと走った。中には牧夫や牧場を手伝う娘がいて、遅いと怒られてしまった。

 破水の連絡を受けた母馬がいる馬房の中では、既にお産は終了しており、見たところ母子共に健康な様子だった。

 無事に生まれてくれたかと、牧野は安堵の気持ちで一杯になった。それもそのはずである。

 お産はどんな生き物も命懸けだ。難産になれば、母子共に命を失うことなど珍しくもない。牧場での経験が長い牧野は、かつてお産で命を喪った母仔を何度も見た。その度に忸怩たる思いを抱いたものだった。

 

 出産には間に合わなかったが、無事に生まれてくれてなりよりだ。懸命に立ち上がろうとする産まれたばかりの仔馬と、それを促す母馬の姿を見て牧野が抱いたその感情は、やがて不安に変わった。

 仔馬がなかなか立ち上がれないのである。

 ひょっとしたら、生まれつきの障害を持っているのではないか……。

 時間が、たっても中々立てない様子に、他の皆も気がつき始める。ハラハラとしながら、何度も立ち上がろうとする姿に誰もが心の中で声援を送っていた。

 そして……

 

「……わぁ!」

 思わず、といった風に誰かの声が漏れ聞こえた。

 いや、ひょっとしたらそれは自分の声だったかも知れない。

 仔馬は時間をかけて、ようやくのことで立ち上がった。その時、牧野も含めたその場に居合わせた面子には、何故仔馬が立ち上がるのに難儀していたかが分かった。

 目の前には、窓から差し込む暁に照らされながら、四本の脚で立ち上がる仔馬の姿があった。その脚は産まれたばかりだというのに、すらりと長かったのだ。

 

§

 

 それからも、その馬はとにかく目立った。

 同世代の馬の中でも一際大きな身体は、母親の乳を飲みながらスクスクと育った。均整のとれた馬体は、秀麗な容姿と相まって、牧場の皆に直ぐに人気になった。

 いや、どうやら彼は馬の中でも人気らしく、既に同世代のリーダーとなってやんちゃに放牧地を駆け回った。

 身体能力も素晴らしく、同世代はおろか、当歳で既にひとつ上の馬と駆けっこをして、勝つほどだった。その時は雨上がり日に、ふと放牧地の方を見ると、虹がかかっていたのを牧野は覚えていた。

 

 そして今目の前で起きた光景だ。牧場の主《オーナー》の知り合いの馬主──庭先取引で来年デビューする一歳馬を購入に来ていた──の前で、その馬は、悠々と柵を飛び越えたのだ。

 放牧地に設けられ柵というのは、馬を外に出さないためのものだ。当然ながら、その役割を果たすために、飛び越えられないよう高さも確保してあるのだ。決してピョンピョン飛び越えられるような、低いハードルなどではない。

 今まさに、脱柵を果たしたその仔馬は。牧野たちを、そのくりくりとした大きな目で見つめ、首を傾げるようにしたあと、何を思ったか、再び跳躍。

 自分の背丈よりも高い柵を、また悠々と飛び越えて放牧地に戻っていった。

 

 はぁ、と牧野は思わずため息をついてしまう。

──あのやんちゃさえなければな。

 実は既に、脱走の常習犯になっているその仔馬に複雑な感情を抱いた。

 馬が逃げ出さないために設置している柵を飛び越えるなど、普通は起こり得ない。それだけに、その仔馬が目の前で起こした悪行《だっさく》は、常識外の身体能力を秘めているということを端的に示していた。

 しかし、速さを求めた人間の配合により、サラブレッドの脚はただでさえ脆い。あんな無茶なことをすれば、大怪我をする可能性もある。

 初めてあの光景を見たときは、肝を冷やして大慌てで専属獣医の診断を受けさせたものだ。

(他にも、馬房の下を潜って抜け出したりしたこともあったなあ。人間の言葉を理解しているんじゃと思うくらい素直に言うことを聞くんだから、もっと悪戯は控えてくれればいいのに……)

 

 ガシッ。

 

 既に馴れてしまった光景を見て、愚痴が入り始めた牧野の思考を現実に引き戻したのは、肩への衝撃だった。

 

 何事かと思いそちらに顔を向ければ、

 

(あ……)

 

 笑みを湛えた馬主さん──だが目はギラギラしている──がいて、「あの馬買いたいんだけど」なんて聞いてくるのであった。

 

 その後、牧野は「幾ら出せばあの馬を売ってくれるんだ!」と詰め寄るその馬主を説得して、購入を諦めてもらうのに苦労した。

 その仔馬は、産まれた直後から、牧場の主であるオーナーに『絶対に売らない』と宣言されていたのだ。

 

(続かない)




牧場のオーナー(プレイヤー)「最強の馬出来たわ」
イベント的には芝馬かダート馬です。でもバグってる(チート)ので万能○として何処でも走ります。

以下スペック
スピードS+(カンスト)
瞬発力S +
勝負根性S+
パワーS+
柔軟性S+
賢さS+
健康S+

適性距離 1000~4000㍍
脚質 自在
走法 大跳び(芝良馬場)ピッチ走法(ダートや悪馬場)

特殊能力
大舞台 超長距離 連勝街道 鉄砲 高速逃げ 二の脚 直一気 タフネス その他色々

多分馬名はナロウチート号かな。
父 アルカディア
母 ハーメルン 
母父 ニジファン

寿命は早熟(覚醒)とかいう意味不明な記述になってるでしょう。
勝ち鞍は読者の想像にお任せします。

四歳、五歳あたりでBCと凱旋門同一年制覇、国内王道完全制覇はしてるでしょう。
三歳ローテは悩みますね。普通に三冠ローテ+欧州三冠か、米国三冠+その他にするか。
下手したら検疫の壁を越えて、一頭で同一年七大ダービー制覇とかしそう。


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