マジカル・ジョーカー   作:まみむ衛門

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 作戦会議は生徒会役員共――ではなく一同――とその中の一人である深雪が参加を強く希望した達也、部活連会頭である克人、首脳扱いの摩利、ゲーム研究部代表の博と文也、そして参考人として呼び出されたコンバット・シューティング部の部長と、呼び出す道中でトイレに行ってるところを文也に見つかってついでに連れてこられた哀れな森崎駿が参加した。

 

 コンバット・シューティング部の部長はあらかじめなんとなく自身が呼び出されることを察していた――彼もサバイバルゲーム的な性質に勘づいていた――ので動揺は少ないが、拉致られた駿は哀れだ。部活中、トイレに向かっていたらいきなり文也につかまり、連れてこられたと思ったら首脳陣が勢ぞろいしていて、しかも会議の内容が九校戦の新競技についてという重大なものだ。しかも内心で天敵扱いの達也まで首脳面して参加している。緊張と同様に尿意も加速するが、彼にトイレのためにこの会議を中座する勇気はなかった。

 

 会議は主に、『モノリス・コード』で集団で戦うタイプの競技に慣れている克人と半蔵、サバイバルゲームに詳しい博、戦略眼に一日の長がある摩利、コンバット・シューティング部部長らの提案や質問によって進んだ。達也もこういったものの戦略眼はあるが面倒なのでだんまりを決め込んでいる。文也も、博が話しているので自分が話す必要はないので聞いているだけだ。

 

「競技の性質上、リアルタイムで動いて対戦する競技、または状況に慣れていて、かつサイオン量が多い生徒をこの競技の選手にするべきだな」

 

 元からわかり切っていたが、会議を通して意思疎通することで今後の方針を全員で共有する。その方向性を決定づけたのは克人だ。

 

「一年生だったら司波深雪さんと森崎駿君がまず適任だろうね。司波さんはサイオン量は規格外だし、この前の突入作戦でも活躍したらしいから実戦経験がある。森崎君はあの森崎家だし、部活動の内容から見てもこうした荒事っぽい競技は慣れてるでしょ」

 

 博はまず真っ先に新人戦のメンバーとして深雪と駿に白羽の矢を立てる。真由美たちがテロリストの本拠地への突入作戦の内容が漏れていることに肝を冷やしたのは余談だ。うっかり話を漏らしたのはあずさで、それを聞いた口の軽い文也が博に話した、という展開を容易に予測できるし、それは正解である。

 

「でも私は『アイス・ピラーズ・ブレイク』と『ミラージ・バット』で枠が埋まっています」

 

「僕も『モノリス・コード』と『スピード・シューティング』で枠がいっぱいです」

 

 しかし元から優秀な二人は、すでに出場できる競技の枠が埋まっているのだ。一人につき二競技まで、という制限がここにきて響いてくる。そもそも二人は一年生の男女それぞれのエース格だ。『フィールド・ゲット・バトル』のような先が読めない競技より、情報がある競技に出てポイントゲッターになるべきである。

 

「なんだよ駿、水臭いこと言わないで一緒に出ようぜ」

 

 その至極当たり前の返答に横やりを入れたのが文也だ。誰もまだ何も言ってないのに勝手にもう自分が出るのが確定と言わんばかりの横暴な発言だ。

 

「別に井瀬君が出るのは構いません。『氷柱倒し』ならあまり体を動かさないし、先日の司波君との決闘で対戦慣れしているのもわかります。しかし、体力に自信が無いようですし、エンジニアとの兼ね合いも難しいのではないですか?」

 

「まあなんとかなるっしょ」

 

 鈴音の確認にも文也は軽くうなずく。実際文也は(こう見えて)魔法実技の成績も優秀だし、出場枠も余っている。コントロールが効かないやつなので先行き不安だし、よくわからない競技の穴埋めには適任だ。

 

「森崎。『早撃ち』のほうはいいから、お前はこっちに出ろ」

 

「委員長!?」

 

 摩利はすかさず駿に指示――を通り越して命令を下す。駿が誇りある活動として一生懸命参加している風紀委員の委員長にして実力もカリスマも抜群の三巨頭である摩利の命令には、上下関係を重んじる駿は逆らえない。克人とその腰ぎんちゃくとして文也と博がコンバット・シューティング部部長を呼び出しに行っている裏で、生徒会役員たちと摩利はこっそりある決め事をしていたのだ。

 

『本人が乗り気なら文也を出す。そしてそのコントロール役として駿も出す』

 

 文也は先述の通り適任だ。しかし集団競技なのに協調性がミジンコ程度もないような文也を出すのは心配なので、あの『ゲーム研究部担当風紀委員』であり文也と親しく、また実力もあり競技と相性もよさそうな駿もまた適任である。良心たるあずさも、文也が活躍するという話なので乗り気だった。厄介を押し付けて首脳陣は内心せいせいしている。駿本人の気持ちはガン無視だ。哀れなり。

 

 駿が何か反論しようとするが、摩利に両肩に手を置かれ、お前に心の底からみんな期待している云々と説得にかかる。しかし駿もうすうす自分がゲーム研究部担当させられたことを察していたこともあり、普段ならあっさりほだされそうなものだが、まだ口ごもりながらも抵抗しようとする。

 

 しかし、真正面にいる摩利の肩越しに見えた景色が、駿を敗北へと叩き込む。

 

 肩越しに、真由美と克人、鈴音が、内心が見えない表情で、じっと駿を見つめているのだ。摩利の説得で駿が動揺している隙に真由美が克人にハンドサインで作戦を伝え、この位置に三人が陣取ったのである。

 

「…………はい、一生懸命、頑張らせていただきます」

 

 駿がしゅんとして(ギャグではない)折れる。首脳陣一同ガッツポーズだ。

 

 摩利は成功の喜びを隠そうともせず、駿の肩をばしばしと叩いて上機嫌に「よく受け入れてくれた。期待してるぞ」などと言っているが、全く駿の心には響かない。誘った本人である文也は顛末を見守ると、満足げにそのまま勝手にトイレに向かった。駿が我慢しているのに勝手なやつである。

 

(((哀れ)))

 

 その様子を蚊帳の外と言わんばかりに他人事の達也、深雪、コンバット・シューティング部部長は見ていたが、他人事でなくなってしまう者がこの中に一人いる。

 

 

 

「それと司波。お前も出ろ」

 

 

 

 

「「え」」

 

 

 

 第二の矢が放たれた。

 

 へなへなと力の抜けた駿をイスに誘導してから間を置かず、摩利が深雪――でなく、達也のほうへ向いてそういった。

 

 生徒会役員と摩利が裏で立てていた作戦がもう一つあった。

 

 克人たちがコンバット・シューティング部に向かっている間、駿を誘う作戦を確認したのち、真由美は自然と、そう、実に自然と、深雪と達也に資料を図書館からとってくるように指示した。一年生だからこき使われるのは当然なのでなんの疑いもなく兄妹は図書館に向かったが、実はその資料は全くのでたらめであった。

 

 深雪を省いた生徒会役員と摩利は、『達也も出す』という作戦を立てていた。

 

 達也は当然抵抗する。愛しのお兄様が不遇な境遇に置かれてご立腹の深雪は本来なら達也の出場に大賛成するところだが、そのチームメイトが文也ともなると、兄にのしかかる数多の苦労を考えると反対する。

 

 そのことを予測して、深雪と達也を使いぱしって省いて裏で第二の密談をしていたのだ。

 

 文也との決闘で『術式解体(グラム・デモリッション)』の連発を披露させられたことでサイオン量も抜群、決闘やテロリスト本拠地強襲の件で実戦経験の豊富さも見せてしまっている。高精度の魔法が飛び交う九校戦において達也は(表向きの情報的に)不適任であるが、『フィールド・ゲット・バトル』に限っては使う魔法は二種類だけでかつ魔法力はあまり関係ないのでほぼ問題ない。また最悪文也がなんか暴れようものなら――生徒会役員(あずさを除く)の中での文也の悪評はとどまるところを知らない――達也と駿に止めさせる。

 

 完璧な作戦であった。

 

「で、ですが、俺は二科生なので同意が得られるとは思えませんし、言いにくいですが、俺と森崎はあまり仲が良くありません。この関係は、競技に無視できない悪影響を及ぼすのでは?」

 

「「くっ」」

 

 さしもの達也も動揺しているが、それでも効果的な反論をする。 駿と違って達也は先輩から何を言われようと(愛しの妹が関わらなければ)断れる分厚い面の皮を持っている。あまりにも効果的な反論に、真由美と摩利は悔しそうな声を漏らした。こら、せめて抑えなさい。

 

「た、確かに……そうですが……」

 

 なんとか復帰した駿もそれを肯定する。仲が良くないからチームを組めない、というのは駿にとって偉大な先輩たちに対してとても体面が悪いので歯切れは悪いが、はっきりとした肯定だ。

 

(勝ったな)

 

((ここまでか……))

 

 内心ほくそ笑む達也と、悔しがる真由美と摩利。

 

 勝負ありか。

 

 その時――

 

 

 

 

 

「ああ、そういえば――」

 

 

 

 

 

 ――空気を読めない集団のボスが、またも空気を読まなかった。

 

 激しい逆風の気配を即座に感じた達也は、今までに感じたことのない動揺に、人生で初めての精神的作用によるめまいを覚えた。

 

 

 

 

 

「――うちの部の一年生で、サバゲーがすごい得意で、それにサイオン量もかなりあるのがいるんだけど」

 

 

 

 

 

「それでそれでそれで!!!???」

 

 真由美は気色満面に飛びついた。話した本人の博もドン引きである。

 

「う、うん。C組で、成績はまあ一科の中では普通ぐらいなんだけど、サイオン量がすごくて、あとサバゲーがうちの部でも随一のがいるんだ。競技の内容を聞いてから推薦しようとずっと思ってて――」

 

「ああ、なんとすばらしい!!! 適任じゃないか!!!」

 

 摩利も真由美に追随して食いつく。

 

 聡い達也は、この後の展開を即座に予測した。まずい、このままでは、すぐに何か反論をっ! 森崎がしゃべる前にっ――

 

「はっくしゅん」

 

 その思考を、遮るものが現れた。

 

「きゃっ」

 

 聞いただけですべての男性を魅了しそうな悲鳴を深雪が上げ、愛しの妹の異変にいち早く本能で反応してしまう達也は思考を中断させられて深雪のほうを見る。

 

 深雪の制服は薄い緑に染まって濡れていた。

 

「すみません。くしゃみの拍子にお茶をこぼしてかけてしまいました。すぐに着替えを用意してお洗濯いたしますのでこちらに」

 

 そう言ったのはいつの間にか深雪のそばに陣取っていた鈴音だった。先ほどのくしゃみは鈴音がしたもの――あまりにわざとらしく感じるのは気のせいではない――で、その時にお茶をこぼして深雪にかけてしまったのだ。

 

 有無を言わさず鈴音は深雪を連れ出す。達也はあまりに意外な展開に固まったままだ。

 

 博の話を聞いてからの真由美と摩利の思惑を察した鈴音は、くしゃみがでてしまったふりをして深雪にお茶をひっかける。達也は反論を中断させられ、達也と一緒に反論するであろう深雪をこの場から連れ出す。とんでもなく機転がきいた行動だが、達也にとってはいい迷惑である。

 

「だそうだ森崎! どうだ、こいつが言うゲーム研究部の後輩なら問題ないだろう!」

 

「…………」

 

 その隙に進めようとする摩利の問いかけに駿は応えない。本来の彼なら絶対に返事をするところだが……応えないのでなく、応えられないのだ。駿はこれまでの話の流れを聞いて、あまりのことに白目をむいて気絶してしまったのだ。おもらししてないのは幸いである。

 

 自分と、文也と、ゲーム研究部員の三人チーム。チーム競技で、この三人。

 

 入学してから三か月。ゲーム研究部によって襲い掛かってきた面倒の数々が脳裏をよぎり――そこで駿の脳みそはシャットダウンしたのだ。

 

「はっ!」

 

 ここで駿の意識は覚醒した。鉄火場で仕事をする一族の将来を背負うべく、精神的負荷にも強くなるよう幼いころから教育され、また自ら鍛えてきた賜物であった。

 

 駿は即座に脳内で天秤にかける。

 

 ゲーム研究部員か。司波達也か。

 

 司波達也は心の底からいけ好かない。しかし、ゲーム研究部員は自分に間違いなくえげつない負担をかけてくる。

 

 ゲーム研究部員……司波達也……ゲーム研究部員……司波達也……司波達也……

 

「司波」

 

「なんだ」

 

 駿が口を開いて達也に声をかける。足に力が入らないようでふらふらとしているが、それでも力を振り絞って達也のところに歩み寄ってきた。達也を腹をくくる。こうなったら、駿が自分を選ばないことを祈るほかない。

 

 そのまま駿は達也の両肩に手を置き――

 

 

 

 

「イッショニガンバロウナ」

 

 

 

 

 

 

 ――死んだ魚のような目で達也にそう言った。

 

 

 第一の矢、駿を巻き込む。第二の矢、達也を巻き込む。そしてそこで終わるはずだったが、思わぬところから助けとして入った第三の矢、駿への脅し(?)。

 

 この三段階を、真由美はのちに『トライデント』と名付けた。

 

 真由美は知らないことだが、達也の必殺魔法と皮肉にも同じ名前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 達也は激怒した。必ず、かの邪智暴虐なる上級生どもを『雲散霧消』せねばならぬと決意した。達也には妹以外はいらぬ。達也はシスコンである。妹とイチャイチャして暮らしてきた。ゆえに、妹にお茶をひっかけたことには、人一倍に敏感であった。

 

 割とマジで『雲散霧消』で全員消し飛ばしそう(比喩でなくマジである)になったが、妹の将来のことを考え、なんとか踏みとどまった。駿がトイレに駆け込んだ後(道中で文也とすれ違った時に辻斬りのごとく走りながら顔面を殴り飛ばした)、なんかやっぱ悪いなあと思ったあずさが心配して達也の顔を覗き込んだ時、怒りに満ちた冷え切った表情にちびりそうになったぐらいである。駿もあずさもちびらなくて本当に良かった。

 

「ええ、ふみくんどうしたの!?」

 

「前が見えねえ」

 

 ちょっとしたあと顔面がへこんだ文也が戻ってきたりもしたが、達也は気にしない。駿は結局戻ってこなくて、コンバット・シューティング部部長の携帯端末に『隊長がすぬればうなでそうたういます』とメールが送られてきて何かを察した部長が「ああ、早退か」と憐みの目を端末の向こう側にいるであろう駿に向けていたがそれも気にしない。

 

 深雪が帰ってきたときは大変気にした。めったに見ないニコニコ笑顔(氷点下50度ほど)で兄の隣に座った時、達也は気温が5度ほど下がった気がした。鈴音は戻ってこなかったが、真由美の端末に『体長がすぐれないので相対します』と鈴音からメールが来て、真由美は何があったかを察した。駿のとちがって文字を打ち間違えない程度には冷静だが、変換までは気を回せなかったらしい。

 

 そんな荒れに荒れた会議は、途中退出者が二人出て、なおかつ新人戦の男子三人がすんなり(?)決まったことでお開きムードになり、そのまま解散になった。

 

 いつも通り文也とあずさは二人で帰り道を歩く。

 

「ふみくん、司波君と一緒のチームで大丈夫なの?」

 

「思うところはないでもないけど、俺は寛大だから許す」

 

 あずさはどの口が言うのか、と思ったが、かわいそうなので言うのはやめておいた。

 

 文也がトイレに行っている間にチームメイトが達也と決まった時、文也は顔をしかめた。その場に博がいたこともあって同じ部活の同級生が選ばれるものだと思っていたが、まさかの(勝手に)恨んでいる相手だった。

 

 先日の試験で、筆記試験では達也に負けて、実技試験では深雪に負けて、それぞれ二位だったのだ。しかも総合成績でも深雪が一位で文也は二位。司波兄妹のせいで見事にシルバー三冠を成し遂げてしまったのだ。この兄妹はまさしく『取らす・シルバー』である。

 

 入学試験の結果を見た時と同じぐらい悔しがり、荒れて結果を日の夜は自棄ジュースを決め込み、そのせいで夜中何度もトイレに起きて寝不足になり、翌日の授業に寝坊して遅刻した。一年生の中の無断遅刻・欠席回数は圧倒的ゴールドである。おバカを見せた子一等賞だ。

 

 実際文也は達也のことがあまり好きではないが、エンジニアとしての親近感はないことはないし、なんやかんや妹が関わらなければ変なことはしないというのも認めているため、大きな不満は試験の恨み以外はない。『フィールド・ゲット・バトル』にこれ以上なく適した選手といえる能力なので、勝負事はやるからには真剣と決めた文也からすればむしろ好都合だ。達也本人はそこまでやる気もないため、よっぽど変なものでもない限りこっちの作戦にも従ってくれるだろう。

 

「まあとりあえず一年の男どもは上手くやるけどさ、問題は他だよ他。あーちゃんはどう考えてる?」

 

「んー、本選男子は多分百谷先輩と芦田先輩は確定だと思う。どっちも『スピード・シューティング』でシューティングゲームは慣れてると思うし」

 

「芦田って誰?」

 

「ふみくん聞いてなかったの……? コンバット・シューティング部の部長さんだよ」

 

「ああ、さっきの」

 

 会議の初めに自己紹介をしたし、何度も名前を呼ばれたはずなのに聞いてない。どこまでも薄情なやつである。

 

「あと女子はどうかなあ……『クラウド・ボール』で枠が浮いた会長は入るんじゃないかなあ。でも会長ならどの競技出ても勝てるから、よくわからないのにでて不確定要素になるよりはポイントゲッターになって欲しいなあ」

 

「司波妹みたいな運用の仕方だな」

 

「うん。でも会長以上に対応できそうな人はいないし、ほかの競技はあらかた決まってるからここは会長が出ると思うよ。あとは、うーん」

 

「サイオン量なんて今更引っ張り出されても、だれがいいかなんて思い出せないよなあ。女子はシューティング慣れしてなさそうだし」

 

「うん。そういう対戦慣れしてる数少ない人材は『バトル・ボード』とかにもうエントリーしてるもんねえ」

 

「一年生もなあ。光井と北山と明智は枠埋まってるしなあ」

 

「滝川さんは?」

 

「誰だそれ」

 

「ええ……同級生でしょ……」

 

「別のクラスなんじゃねえか? 同じクラスでも顔と名前があんまり一致してないのに、別クラスなんか無理だ」

 

「まあそれもそうか。『スピード・シューティング』に出ることが決まってる子だよ。C組だったかな?」

 

「なんだ。結局『早撃ち』と被るのか」

 

「もう、そんなに文句言うならふみくんはどうなのっ?」

 

 あずさは生徒会役員でかつエンジニアであり、また作戦スタッフの手伝いもしているため、代表に選ばれるような生徒についてはそこそこ詳しい。しかしあくまでもそこそこであり、ここ数日の『フィールド・ゲット・バトル』の騒動もあって、思ったより把握できてないのが現状だ。

 

「んー。使う魔法が『ショット』とスペシャルだけだろ? だったら魔法力はあまり関係ないな。スペシャルさえ速く使えれば、あとは体力とサイオン量と対戦感覚、特にシューティング慣れがキモだな。そう考えると……」

 

 あずさの仕返しに対して、文也は珍しくまじめに考える。そして導き出された答えは――

 

「同じ部活の女子で、実技も勉強もひどいもんだけどFPSゲーがすげえ得意なやつが――」

 

「もうゲーム研究部はいいから。これ以上会長たちの胃痛の種を増やさないで……」

 

 ――案の定、ろくでもないものだった。


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