魔法の決闘にCADは不可欠だ。今は放課後だから達也はCADを持っているが、文也はどうやら預けっぱなしだったようで職員室に取りに行った。
ちなみに文也が取りに行く前、決闘場ではそれぞれ怖い先輩二人から文也と達也は脅されている。
「君の妹とはぜひとも仲良くしていきたい。どうやら妹から君は大分信頼されているようだし、彼女が言うからには君は実力があるそうじゃないか」
「井瀬君、あーちゃんと幼馴染だったのね。男の子なんだからあーちゃんにかっこいいとこ見せてあげなさい!」
前者は『君の妹から実力者と聞いている。ここで手加減して無様を晒そうものなら妹はこのしばらく所属する生徒会の中で嘘つき扱いのまま過ごすことになるぞ』、後者は『あーちゃん、井瀬君が二科生に負けたらどう思うかしらねえ』と翻訳することが出来る。
達也は諦めてやる気を出すことにしたが、文也は往生際が悪い。『あーちゃん、俺がこういう面倒くさいのが嫌いなのわかってるよね!? 手加減してもいいよね!?』という視線をあずさに送る。
「ふみくん、昔から魔法がすごく上手だったんですよ! あれからどれくらい上手くなったのかなあ」
「そうですか、それは楽しみですね」
そのあずさは隣の鈴音に頬を赤らめて楽しそうにそう言っていた。年月が隔てた二人の溝は思いのほか大きかったのである。
そんなやりとりからしばらくして、文也が戻ってきた。
「うーす、お待たせ様ー」
その手に持っているのは、手提げ袋だった。しかしその中には、なにやら多くのものがじゃらじゃら入っている。
「え、それなに?」
「見てわかんない? CADだよ」
真由美の質問に、文也は手提げを掲げて見せる。真由美は即座に得意の魔法を用いてその中身を見る。
「……軽いものがじゃらじゃらと…………」
真由美は呆れた。その中には大量の『玩具』が入っていた。
色とりどりのプラスチック製の小物。それらはまさしく玩具だ。
「まあまあ見てろって。あ、でも今からしばらくは見ないで。見たら未来永劫ドスケベ扱いするからな」
そう言って奥の着替え部屋に消えていく。
摩利は真由美から耳打ちでその中身を伝えた。
「真由美、お前の脅しが弱かったんじゃないか?」
「あの子、薄情ねえ」
真由美は溜息を吐く。どう考えてもあれは手加減だ。あんな子供のおもちゃで決闘しようなど。相手が二科生だからと舐めているのか、負けようとしているのかのどちらかだ。
幼馴染で、しかも何やらただの幼馴染という枠に収まらない仲だと踏んでいたのだが、それは勘違いだったか。
そんなことを考えていたら、ドアを乱暴に開ける音が響いた。
「ただいまー」
そう言って文也が戻ってくる。手提げは部屋においてきたようで、その右手首には赤いブレスレット、左手首には白いブレスレットを嵌めている。
「「「「……」」」」
摩利、真由美、範蔵、鈴音の四人はもう呆れてなにも言えなかった。子供のおもちゃで、しかも『二つ』つけているのだから。
「……よし、では決闘を始めよう」
摩利は溜息をつきながら二人を所定の位置に誘導する。もうこの試合は決まりだ。
勝つ気がない、または達也を舐め腐っている文也の負けだ。摩利は自身の勘で、そんなので勝てるほど達也は生半可でないと知っている。
しかしふと、摩利は気付いた。
それは達也の目だ。
「……」
達也は真剣な目つきで文也を睨んでいた。とても今の相手に対しては似つかわしくないほどその目線は厳しい。
後ろで『あ、トーラス・シルバー!』と叫んでいるあずさの声にも耳を貸していない。
その目線は文也の両手首だけで『なく』、制服のポケットや服の内側、さらには太ももやふくらはぎのほうにまで向いている。
(そういうことか)
達也は常人でない。達也の『眼』はそれを捉えていた。
☆
達也の作戦は変わらない。すぐにサイオン波を浴びせて文也をノックダウンさせるだけだ。相手に何もさせる気はなく、一瞬で勝負の決着をつける。
『フラッシュ・キャスト』によって常人では不可能な速さで開始宣言と同時にサイオン波を放つ。
本来ならこれで勝負あり――だが、そうならなかった。
「っ!」
達也は自分の足元に『眼』を通して魔法の前兆を感じ取り、すぐにバックステップした。
「ちっ!」
睨んだ先の文也は、倒れていないどころか、サイオン波が効いた様子もない。
悔しそうに舌打ちをしながら、右手首の赤いブレスレットを自身の腰にたたきつけた。
☆
「なに、あれ?」
横で観戦していた生徒会役員は愕然としていた。その視線は、激しく動き回る二人に固定されている。ただ一人を除いて。
「あれがふみくんの戦い方なんですよ」
あずさだけは平然と決闘を見ていた。
その言葉に真由美たちは説明を求める。
「ふみくん、昔から玩具が大好きだったんです」
文也が付けているものは、ただの玩具ではない。玩具として開発された立派な『CAD』だ。
「そ、それは確かに俺も昔よく遊んだが、それがなんであんな――」
「発売されたものを改造してる、って、ふみくんは言ってました」
文也がたくさん持っていたもの――それは玩具としての『CAD』だった。
魔法がまだ軍事的価値・科学発展的価値しか持っていない中、10数年前に突如として『子供向けCAD』と銘打ったCADがある会社から世に発表された。
それはCADとしては破格の値段で、代わりにそのCADで使える魔法は一種類のみ、しかも効果は弱い。しかし使うサイオンは少なく、小さな子供でも安心して魔法が使える――そんな玩具だ。
最初の商品――ただ暗闇の中で辛うじてわかる程度の薄い明かりを放つ球を10秒ほどだけ浮かべることしかできないものだったが――が発売されると同時に全国で即座に売り切れた。
それを手に入れた子供は、物語の中でしかありえないような現象を自分が起こしたことに歓喜し、たったこれだけの玩具に夢中になった。
そこからその会社からは様々な玩具CADや便利グッズCADが発売され、そのほとんどが瞬く間に大ヒットし、いまやそれで遊んだことがない若い魔法師がいないとまで言われるほどになった。
「『マジカル・トイ・コーポレーション』ね」
真由美はその玩具を発売し続けている会社名を呟く。
「はい、ふみくんはとても玩具やゲームが大好きで、CADも普通のものはあまり使わないで、そこから発売された商品を魔工師らしいお父さんに改造してもらって、それをたくさん持ち歩いているんです」
二人の決闘は膠着していた。文也はポケットや制服――改造して隠れポケットが増やしているようだ――の中からCADを、はては豆粒サイズのCADを髪の毛の中から取り出して様々な魔法を達也に浴びせている。
その達也もついに両手にCADを持ち、その片方から『術式解体(グラム・デモリッション)』を放ってそれを無効化しつつ、もう片方のCADでサイオン波を文也に浴びせている。文也はそのサイオン波を、左手首の白いブレスレットを起動させて防ぐ。
この白いブレスレットは、『マジカル・トイ・コーポレーション』が発売した子供向け防犯用CADだ。
自分の周りに弱い衝撃――基準は一般成人男性のパンチ――なら防ぐ透明な『対物障壁』を展開することが出来る特化型CADだ。しかしこれはあくまで物理的衝撃しか防ぐことができない。
しかし、文也のは改造を施し、魔法的干渉にも効力を発揮するようになっていた。文也の周りに展開されたサイオンを圧縮した壁が、達也の放つサイオン波をしっかりと防いでいる。
達也が踏み出す直前、文也が赤いブレスレットに触れる。
それに対し、達也は即座に自分の踏み出す先の『足元』に『術式解体』を放って魔法を無効化する。
この赤いブレスレットは悪戯グッズだ。
一見達也の足元に変化はないが、達也の『眼』は感じ取っている。
このブレスレットは、相手の足を滑らせる魔法が使えるCAD。安全のために対象年齢は十二歳以上であり、かつ高度なカメラがついていて、相手の周りに何か危ないものがあった場合は自動で発動を停止する。それに転ぶわけでなく、ほんの少しバランスを崩す程度にしかならない。
(……厄介だな)
しかしこれは違う。脚が滑る仮想領域の展開時間が発売されているものよりも格段に大きいだろうことを達也は『魔法式』から感じ取った。これに嵌められたら、どんなにバランスをとっても、達也ですら派手に転ぶだろう。
そうなれば達也のキャラ崩壊――でなく敗北は確定的だ。
しかし、文也が使っているのは高度な改造が施されているとしても所詮玩具だ。
それがなぜ達也を追い詰めているのか。
「『パラレル・キャスト』の精度がすさまじいな……」
その答えを、決闘を横で見ていた摩利が呟いた。
CADによる魔法は、本来一人で複数扱えない。CAD同士の魔法式が干渉しあって互いに式を乱してしまうからだ。
しかしそれを行える者もいる。例えば今戦っている達也も高度な『パラレル・キャスト』の使い手だ。二つのCADを巧みに用いて戦っている。
そんな性質が魔法にはあるにも関わらず、文也は今、実に『二十五』ものCADを同時に使用していた。
汎用型どころか、特化型の同一系統のみにもみたない、『一つ』しか魔法を使えないCADとはいえ、それでもやはりCADだ。同時に使おうものなら魔法は普通使えない。
「ふみくん、すごくなってるなあ。昔は10個までだったのに」
あずさが動き回る文也を目で追いながら嬉しそうにつぶやく。尋常でない『パラレル・キャスト』同士の戦いが行われているにも関わらず、その感動は薄い。
むしろ、あずさから見れば、『あの』文也と互角に戦う、見たことないトーラス・シルバーモデルCADを用いた達也のほうが驚きの対象だ。
「……」
「……」
今この瞬間、生徒会メンバーの突っ込み枠からあずさの名前が消えたことを鈴音と範蔵は感じ取った。どうやらあずさも『まともじゃない』部類のようだ。
☆
戦いに動きがあったのは、そのほんの数分後だった。
「っ! っ……!」
文也の動きが鈍くなってきている。その表情は険しく、顔面には珠のような汗がいくつも浮かんでいた。
対する達也は表情に変化はなく、動きも一切衰えていない。むしろ魔法の精度と動きに精彩を欠く文也を追い詰め始めていた。
そんな中、文也の体が一瞬バランスを崩す。激しい動きを続けて、ついに集中が切れたのだ。
これを好機とみた達也はそのまま急接近し、『術式解体』を放って『予め』展開されるであろう障壁魔法の式を打ち砕こうとし、それにほんの少し遅れてサイオン波を出す。
「舐めるな!」
文也はそう叫びながら左手の白いブレスレットで自身の『右肩』を叩いた。
瞬間、障壁の魔法式が『二つ』展開された。
一つは『術式解体』で解体され、一つはサイオン波を受けてその効力を終える。
文也は今まで隠していた二つ目の障壁CADで達也のラッシュを防ぎ切った――わけではなかった。
達也の『眼』は、戦いが始まる前から、右肩のCADもとらえていた。知られた秘策は、ただの作戦にすらならない。
すぐ近くまで来ていた達也の、初めての『殴打』による攻撃をかわすべく――CADは間に合わない――下がろうとする。
しかし、
「終わりだ」
達也の平坦な声が文也の耳に妙に響く。
達也はおよそ常人とは思えない身のこなしで、『スピードを下げないまま』体を勢いよく落として――力の抜けた文也の足を思いきり払った。
「ぐわらばっ!」
本日四回目の悲鳴を響かせた文也は床に背中から激突、肺の空気が一気に抜けるよう感覚と激痛を味わう。
そして達也は、動けなくなった文也の上に馬乗りになってその両腕を床に押さえつけた。
「――勝負あり!」
しばし呆けていた摩利だったが、文也の様子から勝負の終わりが近いことを感じ取り、事前準備のとおり、その勝負の幕を下ろす声を上げた。
☆
「オロロロロロロロロロロロロロロロロ」
文也は緑色の蛇の鳴き声のような声をあげながら、部屋の隅に置いておいた袋の中にぶちまけた。何とは言わないが、ヒントはリバースだ。
「ああ、もう、ふみくん、無理し過ぎだよ」
あずさは慣れた様子でその背中をさする。緊張感のある戦いの後のこの無様な姿でも、あずさは平然と受け入れていた。
「ふみくん運動は苦手なんだから。これでもう無理して戻しちゃうの何回目?」
「……あーちゃんが卒業してから14か……オロロロロロロロロ」
文也の返事は尻切れトンボだ。
文也の趣味はゲームや玩具で遊ぶことであり、家の外に出るようなアグレッシブなタイプではない。むしろ運動は比較的苦手な部類で、激しい運動を休憩もなしに続ければこうなるのは無理もない。
そんな気の抜けたやり取りの横では、他の生徒会役員や摩利が達也と話していた。
「……驚いたな。二人ともまさかここまでとは」
「……全くです。なんでこんなのが二科生(ウィード)に……」
摩利の呟きに、範蔵は額を手で押さえつつ頭を振りながら答える。思わず口から差別用語が出ているが、それを咎める者も、咎める元気がある者もいない。
「驚いちゃったわ。二人ともすごいのね。私が戦っても互角ぐらいかしら」
「真由美さんが司波君とやった場合、持久戦に持ち込まれたらああなりそうですが」
「りんちゃん酷い!」
鈴音がようやく落ち着いた文也を指さしながらそう言った。伊達に生徒会で半年鍛えられていないようで、思いのほか図太い性格だ。
真由美に茶々を入れたものの、鈴音も真由美と同じことを考えていた。
『パラレル・キャスト』という『異常』に目をつぶるにしても、二人は、ただ魔法を使うだけでなく、場面に応じて巧みに『使いこなして』いた。まだまだこれから魔法の基礎を学んでいく、という段階の新入生としては破格の実力だ。
しかも二人とも、魔法を行使したときに光がほとんど漏れていなかった。
魔法師が魔法を行使すると、その魔法に使った余剰サイオンが光となって漏れるのが普通だ。一般人には見えないが、魔法師にはそれが当たり前に見える。
しかし二人が魔法を行使するとき、光はほぼ全く見えなかった。巧い魔法師ほど余剰なサイオンを使わずに魔法を行使するため、漏れる光は小さくなるのだが、この二人はすでにその領域を跳び越えていた。真由美ですら、このレベルには全く達していない。
そんな規格外の戦いを見せた二人に、観戦していたメンバー全員はとても驚かされた。
「はあ、はあ、くっそ、お前やべえよ、人間じゃねえよ」
そんな会話の横で、息も絶え絶えに文也が達也を睨みながら悪態をつく。
達也はその程度ならなれっこなので暖簾に腕押しだ。
「俺に言わせればお前もだ」
達也も文也に対してそう言いかえす。あんな数の『パラレル・キャスト』など、とてもでないが考えられない。
闘う前から『眼』で体中に仕組まれたCADを『全て』知っていた。当然『パラレル・キャスト』であろうことは予測できる。本来『パラレル・キャスト』は予測の範囲に入れるべきものではないが、自身がそうであるため、予測していたのだ。
だが、その精度は予想をはるかに上回った。CADを絶え間なくいくつも連続でしようするどころか、『同時に』発動していたのだ。事実上の多対一の状況に、達也も最初は攻めあぐねた。
自身のレベルを客観的に理解している達也は、その異常を、ある意味この場にいる中で一番鋭敏に知覚した。
なにせ、自身ですら二つが限度なのに、文也はそれをはるかに超えた数を使用しているのだ。今まで修羅場を乗り越え、裏社会を過ごし、数多くの一流魔法師に出会ってきたが、『パラレル・キャスト』を実際に目にしたのは自分以外ではいない。そんな達也にとって、高校生がいくつものCAD同時に使用できるというのはまさしく『異常』だった。
また、『パラレル・キャスト』や魔法力は置いておくとしても、それ以外の部分も気になる。
なにせ達也の不意打ちを余裕でしのぎ、そのあともしばらく接戦を繰り広げてきたのだ。入学したてのレベルで自身と張り合えるなど、それこそ達也からすれば十分『尋常じゃない』。
「あ、ねえ井瀬君。もしかして朝に大きなリュック担いでたの、あれ全部CADなの?」
「そう、全部。何回か分けて持ってくるのも怠いし、ある程度一気に持ってきて預けようと思って」
職員室でひと悶着あったのは秘密だ。教師曰く『保管庫は物置でない』である。正論。
『この小さな体にまたこれを持って帰らせるんですか、鬼畜!』と駄々をこねることで了承していただいた(させた)のだが、その場にいた教師はA組の担任にならなくてよかったと裏で胸を撫で下ろされてたりもする。
――結局、この後の話し合いで、勝者である達也が正式に風紀委員になることが決まった。
☆
決闘場を離れ、生徒会室での仕事も終わり、あずさは夕陽が差す校門をくぐろうとする。するとそこには、
「……よう」
「あ、ふみくん……」
文也が寄りかかっていた。どうやら、あずさのことを待っていたようだ。
そのまま無言で二人は並んで、学校最寄りの駅まで歩いていく。あずさは別として、文也は普段より明らかに遅いペースだ。
「……すまん、負けた」
「ううん、大丈夫だよ」
あずさは生徒会室で脅しのダシに使われたことを聞いていた。どうやら文也は脅しを本気にしたらしく、負けたことを申し訳なく思っているようだ。
「先輩たちもあれで悪いことを思うような人たちでもないし」
そう言いながら、あずさはひょいと文也の前に出て、文也に向き直る。
「それに……」
そして
「久しぶりに会ったふみくんが私のために頑張ってくれたんだもん。とっても、嬉しかったよ」
バッグを持つ両手を腰の後ろに回し、満面の笑みを浮かべてそう言った。
「そうか……うん、ありがと、あーちゃん」
「ま、まあ、これを機に、あまり変なことしないで、少しはおとなしくしたらどうかな?」
ようやく笑った文也を見て、なにか照れくさくなったあずさは声を上ずらせてそう言ってごまかす。
「ははっ、それもいいかもな」
文也がそう笑って返す。
もう時間が隔てた溝は埋まった。
二人はそのまま他愛のない話をして、笑いながら帰った。
☆
「ゲーム研究部! 危険な部活動勧誘の現行犯だ!」
風紀委員になった森崎駿が、自慢のクイック・ドロウで逃げ出そうとするゲーム研究部の部員を牽制する。
フルダイブのVRゲームで、剣で戦うMMORPGがあり、それが熱狂的な人気を得た。当初の心配に反してデスゲームなどにはなってない。むしろなぜデスゲームを心配したのか。
そんなゲームの真似をして、ゲーム研究部のブースの前では、プラスチックの剣でデモンストレーションがてらチャンバラを行っていた。そのゲームに入り浸っているプレイヤー同士のものなのでチャンバラと言ってもかなりの迫力で、多くのギャラリーの注目を集めていた。
だがあまりにも熱くなり過ぎたせいか、チャンバラの戦場は拡大、激しく動き回りながらの戦いになってしまった。
その結果周りのものや他部活のブースの備品などが壊れ始める。幸いけが人は出ていないが、通報があって駆け付けた森崎駿はその二人を連行する。当然、生徒会室へだ。
その連行されてきた二人を見て、荒事が苦手であるため事務方の仕事をするべく生徒会室にこもっていたあずさは眼を丸める。一人はあずさのクラスメイトであるゲーム研究部部員、そしてもう一人は……
「よっ、元気か?」
……文也であった。
「なんで一年生のお前が危険勧誘で捕まるんだよ!?」
「あだっ! だって元からそこにしか入るつもりないし、せっかくだし同級生たくさんほしいじゃん! あ、そうだ! 駿、一緒にゲームやらない?」
「うるせえ!」
「あだっ! 暴力反対! 権力乱用だああああああごめんごめん調子乗った謝るからその俺作成自慢のエクスカリバーを折ってただのエックス型を描けるバーにしようとしないでえええええええええええ!」
駿が目の前でプラスチックの剣を折って投げ捨てる。真っ二つになった剣はただの棒となり、また偶然重なった姿は綺麗なエックス型だった。
「あれ? あの会話、何日前でしたっけ?」
あずさは顔を引きつらせ、誰にともなく、宙に疑問を投げかけた。
『ははっ、それもいいかもな』なんて言葉、とっくに文也の脳みそにはない。
2章の途中までは一気に投稿して、そこから先は週2回の投稿にする予定です