マジカル・ジョーカー   作:まみむ衛門

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 最後の投稿から半年以上が経ちましたが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

 今回は、『魔法科高校の劣等生』原作が完結し、またアニメも二期をやるということで、それを記念して何かやろうと思って、ちょうどオリジナル魔法の設定資料が残っていたので、オリジナル魔法の解説をお見せしようと思います。ただし、普通に解説するのもつまらないので、登場人物たちに説明してもらうことにしました。

 当然のことながら、本作全てを読んだ前提となっておりますので、全て読了またはもう一度読み返すのをお勧めします(露骨なPV稼ぎ)

ちなみに、魔法の仕組み、作中の設定、人物の心情、そしてなんなら科学的法則すらも、wikiと自己解釈による部分が多いので、そのあたりは生暖かく見守ってください。


オリジナル魔法解説

『スリップ』

 

初出:1-4

 

解説:十文字克人

 

 一番最初が俺で良いのか? まあいい……これは主に魔法師の子供たちが使う悪戯魔法の一種と言えるな。主な用途としては、その呼び名の通り、相手が踏み出す場所に滑りやすくなるような領域を展開することでスリップさせることだろう。効果はシンプルながら強力で、練習・競技レベルのみならず、実際の魔法戦闘でも使用されることがある程だな。滑る、というと摩擦係数が少ないことをイメージして、『伸地迷路(ロード・エクステンション)』を思い浮かべがちだが、実はこれは別種の魔法で、『伸地迷路』は摩擦力を近似的にゼロにする放出系に分類されるものだ。一方この転ばせる魔法は、対象物と地面との間に、「触れたものが高速で水平方向に移動する」平面領域を作り出す、加速・移動系魔法だ。摩擦云々は関係なく、「まるで滑ってしまったかのように移動させてる」わけだな。相手の足は超高速で動くベルトコンベアの上に踏み出したかのように移動させられ、それでバランスを崩して転んでしまう。ここから分かる通り、飛んできたものの移動速度をゼロにする基本形ではなく、飛んできたものを下に落とすタイプの障壁魔法と、実は同種だ。我々十文字家の先祖がまだ「十文字」でなかったころ、第十研究所で『対物障壁』を研究していたころの初期に戯れで開発された、というシンプルで単純ゆえに、歴史の古い魔法だ。それが今では、七草や風紀委員、さらには子孫たる俺を苦しめる魔法になっているのは……皮肉な話だな。

 

 

 

 

 

 

 

『ショット』

 

初出:2-4

 

解説:百谷博

 

 これは2095年魔法科高校親善魔法競技会、通称九校戦のオリジナル競技、『フィールド・ゲット・バトル』で使用する魔法だね。専用CAD「インクガン」を用いて使う魔法だ。相手を倒す、フィールドを塗る、というこのクソg……競技の最も基本となる魔法だね。仕組みとしては、『術式解体(グラム・デモリッション)』や『サイオン粒子塊射出』とほぼ変わらない。魔法を使う意思を持って引き金を押したら、使用者のサイオンを競技用に変質させたうえで塊にして打ち出すんだ。で、それを検知した特別加工されたフィールドや装備が、対応した色に変わるわけだ。これの厄介なところは、サイオン効率が異常に悪いことだよねえ。使うサイオンの量は、こんな魔法なのに、実はちょっとした本格的な規模の大きい魔法に匹敵するほどでさ。仮に「弾切れ」状態で無理やり使わなかったとしても、普通に連射していればかなりの保有サイオンが持っていかれる。使用者から強制的に吸い取るサイオンのほとんどは、無駄にそこら中に捨てられてるんだ。こんな仕様をわざわざ競技に採用する必要があると思うかい? スフ〇ラトゥーンをパクって無理やり現実の競技に落とし込んでクソゲーにした運営幹部の一人もそうだけど、「保有サイオン量」なんていう時代遅れの尺度を測ろうとわざわざこんな仕様を入れた別の運営幹部も大馬鹿の一言だね。

 

 

 

 

 

 

 

『スペシャル』

 

初出:2-2

 

解説:七草真由美

 

 これも『ショット』と同じく、『フィールド・ゲット・バトル』専用の魔法ね。『スーパーショット』、『バリア』、『メガホン』の総称よ。仕組みも『ショット』と同じで、CADを起動してフィールドがサイオンを検知したら特別な立体ホログラムが表示されたうえで、それぞれに応じた効果処理がなされるわ。この『スペシャル』の変わった点といえば、『ショット』と違ってCADが基本自由なのと、基幹部分さえ弄らなければ多少起動式を変えても大丈夫という点ね。『スペシャル』は『ショット』と違って連発するものではないから保有サイオン量を測れない、だから制限がどうでもいいっていうのが透けてるわよねえ。これは予測なんだけど、当初は『ショット』だけのシンプルなゲームで、後から「原作再現」とかなんとかいうののためにこれが追加されたんじゃないのかしら。つくづく頭のおかしい運営よねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異なる向き・強さの振動を起こして破壊する魔法

 

初出:2-8

 

解説:五十里啓

 

 九校戦の時に井瀬君から渡された魔法だね。花音の『地雷原』の対策をした『強制制止』のバリエーションをさらに対策した魔法だ。対象物質を強く振動させて壊す魔法は振動系魔法の基本中の基本で、この魔法はそれの亜種だね。単に強く振動させるだけでなく、対象内部で向き・強さが違う振動を起こして壊す、ちょっと応用編っていう感じの魔法かな。単なる振動破壊と違うのは、あちらは魔法式が単純だけれども強い振動が必要なせいで相応の干渉力が必要なのに対して、こちらは効率よく比較的弱い力で破壊できるけど振動の種類が多いから魔法式や演算が複雑になるっていう点だね。どちらにせよ振動系が得意な花音にとっては問題にならない魔法だから、井瀬君のアドバイス自体は正しいものだったね。ただ、これはやっぱりいわゆる「フェイク」だったみたいで、実際の彼の思惑は、その……えっと……(何かを思い出したのか顔が真っ赤と真っ青を反復横跳びし始めてたのでここで中断した)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ツボ押し』

 

初出:2-9(名前や正体が明かされたのは、「4-7」)

 

解説:井瀬文雄

 

 我らが井瀬家が『一ノ瀬』だったころ、第一研究所で開発した魔法だな。系統としては、メインが加重系、サブが振動系となっている。加重系で体表に刺激を加え、時にはそのサポートとして振動系で体温を変化させて、身体を刺激することによりさまざまな効果を生み出す魔法だ。刺激の範囲は広くて、指で押すほどのほどの範囲と強さにすれば基本の「指圧」になるし、範囲を広げたり刺激の間隔を変えたりすれば「圧迫」「揉み」になるし、範囲を小さな点にして刺激を強めにすれば「鍼」になる。これらをひっくるめて雑に『ツボ押し』と息子は呼んでいるわけだな。あいつにしてはやたらとシンプルな名前だが、実は色々呼び名を考えては変えてを繰り返して、面倒くさくなったから『ツボ押し』に固定したって経緯があるんだ。そう考えるとあいつらしいだろ? 俺ら井瀬家ではそれぞれが好き勝手に呼んでいて、俺なんかは『北斗神拳』と呼んでいる。カッコイイだろ?

 

 その性質上、使い方はいろいろだな。実際のマッサージや鍼よろしく治療に使えるし、痛点をピンポイントで刺激すればごく小規模で効率よく「痛み」を与える攻撃にもなる。もっと難しくて深いところだと、麻酔には遠く及ばないが痛みを軽減したり、「経絡秘孔」みたいなところを突けば保有サイオンの回復を早めることもできる。そして全身の「快楽点」を徹底的に刺激すれば、あの深雪ちゃんのように、スケベをさらすことになる。いやあ、あれはすごい映像だったなあ。何度も見てることを知られたら四葉と貴代に殺されるからやらないが、一回見てから脳みそにこびりついて仕方ないぜ。

 

 ……それはさておき。この魔法はやっぱり「人体に直接干渉する魔法」をテーマとしていた第一研究所らしい魔法だな。神経を研究していた一色家や一花家、体温を研究していた一ノ倉家の研究成果を「参考」にしている。ただこれらの家が成果として生み出した魔法に比べると、どうしても間接的な分、効果ははるかに劣るよなあ。人体やツボに関する膨大な知識を必要とするという欠点もある。まあ、それらさえクリアすれば魔法としてはかなり小規模だから、使うのは簡単だし感知されにくいという大きな利点もある。色々と「使いよう」がある魔法だし、一応「家」のアドバンテージが重視されるのが魔法師社会だから、井瀬家としては秘術扱いにしている。バカ息子は割と信用した相手にはオープンにしすぎている気がするが……それはそれであいつの良さでもあるんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

『幻影』

 

初出:2-12

 

解説:光井ほのか

 

 うう……なんか絶対意地悪してません……? 確かに「光」なら私ですけどぉ……。……この魔法は、光を操作して意図した景色を見せる、光波振動系魔法です。光波振動系魔法の基本の基本と言えば振動を減らして暗くしたり、増やして明るくしたり、光の色を操作したり、という感じですが、これはそれらを複合した完成形の魔法と言えるかと思います。幻覚で惑わす以外にも、紙もペンも端末もない状態でも相手に思い浮かべた映像を見せたりすることができたりして、とても便利な魔法です。ただ、実用レベルとなると、操作内容が複雑なのでとても難しいですね。それに人間の演算で機械が作り出すホログラムを超えることはほぼ不可能なのでどうしてもリアリティが無く、基本的に時間がかかるか相手が冷静だったりすれば、簡単に見破られちゃいます。そして、そうした『幻影』を見破るのは「光」に敏感な私の得意技なんですけど……あの時は、色々条件が重なって、その……ううう……。

 

補足:司波達也

 

 ほのかがいじけてしまったから補足しよう。これは実に便利な魔法で、ハイレベルになると、俺や井瀬、もしかしたらほのかすらも見破るのが不可能になる。その最たる例が、リーナの『仮装行列(パレード)』だな。戦闘面では直接干渉する魔法が座標ずれによりエラーになる、という効果が目立ちがちだが、あの魔法の真骨頂はやはり『幻影』だろう。姿を完全に変えて、魔法師すらだますことができるんだ。当然、演算はさらに複雑になるし、常駐ともなれば使用サイオン量もバカにならない。普通の魔法師ならあの精度で作り出すことすら無理だし、特化した専門の魔法師でも維持するにはかなりの練習と集中力を要する。そんな魔法を維持しながら先頭にほぼ支障をきたさないリーナは、世界最強の名に恥じない魔法師と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『深淵(アビス)』のダウングレード版

 

初出:2-12

 

解説:吉祥寺真紅郎

 

 本来の『深淵』は、水面を半球状に陥没させる魔法だ。陥没した水面上、それとその近くにいる船はそのまま沈んでひっくり返り、再起不能になる。それと戻すときも厄介で、大質量の水が激しく動くわけだから大波も発生して、とても広い範囲に激しい攻撃が可能になる。戦略級にふさわしい魔法だね。当然起動式は最大級の機密なんだけど、文也はどこからか盗んだか仕組みを再現するかして、『バトル・ボード』で使えるように大幅にダウングレードして採用してきた。やっぱり移動した先が少しでも陥没するとボードの操作は乱されるし、戻した時の波も厄介だね。元の『深淵』はその規模から演算の負担が大きくて、しかもその反動か使用者の体にも大きな負担がかかるんだけど、このダウングレード版はそのあたりの欠点を徹底的にそぎ落として、使いやすくて負担も少なくマルチ・キャストもしやすいように作られているよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『爆裂』の改造版

 

初出:2-12

 

解説:一条将輝

 

 本来の『爆裂』は対象内の液体を一瞬で気化させて膨張させ内部から破裂させる発散系魔法だ。一方この改造版は、相転移を直接操る発散系ではないし、なんなら『爆裂』と並べるのもどうかと思う程度には別種で、別の仕組みだ。ただそこに俺たちが『爆裂』を重ねたのは、対象物を次々と破壊するために起動式に施した工夫が再現されていたことだ。表層的な気化爆発の真似事ならシンプルな仕組みだけにヨソでいくらでも再現されてきたしその程度なら無視できるが、こういう深い部分を見破られて実用レベルの精度で再現されるとなると、一条家としては見過ごせない部分はあるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『バウンド』

 

初出:2-13

 

解説:井瀬文也

 

 俺の出番がここまで遅いっておかしくねえか!? しかも解説すんのがこんなチョイ役魔法かよ! ……これは移動系と加速系を組み合わせた魔法だ。領域に触れた物体は、その移動ベクトルを真逆にさせられる。ちょうど跳ね返される形だな。実体としてある壁に当たって跳ね返されるのと違うとすれば、衝突の反作用はないし、運動エネルギーのロスもない。これも『障壁魔法』の一種だな。元かいちょーさん(筆者注・七草真由美のこと)が『クラウド・ボール』で使おうとしていた『ダブル・バウンド』はこれの進化版だ。あっちは跳ね返るときに速度を2倍にする効果がある。相手陣地に落ちる前にまた拾われたらポイントにならないから、すぐ接地させるためにこうしてるんだろうな。よく考えるぜ。……え、これで終わり?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『叫喚地獄』の亜種

 

初出:2-14

 

解説:一条将輝

 

 本来の『叫喚地獄』は、領域内にいる対象内部の液体分子を振動させて温度を上げ、時間をかけて蒸発させる魔法だ。『爆裂』の領域版、と一条家内でも認識されている。ここで使ったのはその亜種で、領域内にある対象の「固体分子」を振動させて温度を上げ、溶解させる魔法だ。一条家が得意とするのはあくまでも「液体」であって、同じ仕組みだろうと「固体」に干渉するこの魔法は、別に苦手ではないが、特別得意と言うわけでもない。実用レベルの時間範囲で対象を溶かすほどの温度に上げるのはほぼ無理で、それこそ融点の低い氷ぐらいだろうな。『アイス・ピラーズ・ブレイク』以外での使いどころはないだろう。文也と戦うためだけに頭ひねって必死こいて考えたんだぜ。いや、まあ、結果として刺さったとはいえ、『氷炎地獄(インフェルノ)』は想定外だったけどな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『斬り裂君』

 

初出:2-14(名前や正体が明かされたのは「2-15」)

 

解説:司波達也

 

 ふざけた名前だが、効果は十分実用的だな。CADの延長上に板状の仮想領域を作り出して、その領域に触れた物体の分子間結合力を反転させることで一瞬だけ気化させる放出系の「斬る」段階と、その気化させた分子間の相対距離をさらに広げる収束系の「離す」段階を一瞬で行う、言ってしまえば「斬り離す」魔法だ。前半部分はまさしく『分子ディバイダー』で、難しい魔法な故に不完全な効果しか出ないから、後半の「離す」段階を付け加えて実用レベルにしてある。これがのちのち色々なトラブルの種になるわけだ。言ってしまえば、「たかが」親善競技会のせいで、あいつは自分と周囲を命の危険にさらし、大きな迷惑をかけたことになる。トラブルメイカーもいいところだ。四葉の情報によるとあの試合の場にはUSNAのスパイも来ていたらしいな。心中お察しするよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

空気の刃で物体を切る魔法

 

初出:2-15

 

解説:西城レオンハルト

 

 お、俺も解説するのか? ……これは俺の得意な分野だな。これは空気をすげえ薄っぺらく硬化魔法で固めて、それを移動魔法でぶつけて斬り裂く魔法だ。『薄羽蜻蛉』の空気版、みたいな感じだな。精密に操作すれば接触の瞬間に「引く」動きをしてさらに効率よく斬ることができるぜ! 硬化魔法は防御が主だけど、こうして攻撃にも転用できるんだ! 便利だろ? でもこれは見えない流体である空気を大雑把な操作でも対象物を切断できる程度には「薄く」「硬く」硬化させなきゃいけないから、地味に難しい魔法だな。実戦では使いにくいだろうなあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『感覚同調』の逆探知魔法

 

初出:2-20

 

解説:吉田幹比古

 

 まずは『感覚同調』の説明が必要だね。これは契約中の精霊から、イデアを経由した繋がりを利用して情報を得る魔法だよ。精霊とつながっているということは、そのリンクを辿って行けば、術者の居場所がわかるってわけだ。『感覚同調』自体がそれなりに難しい精霊魔法だけど、実戦レベルのSB魔法師は全員使えるから、それに対するカウンターとして、古式魔法の世界では習得必須の魔法だよ。……これを井瀬に見せちゃったのが、2年目の醜態の原因かな。仕方ないこととはいえ、転校ってズルくない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土で拘束する魔法、音波で酔わせる魔法

 

初出:2-20

 

解説:中条あずさ

 

 あ、私にも出番あるんですね。このまま全部みんなに任せても良かったんですけど……。これらはふみくんが一年目の『モノリス・コード』で使った魔法ですね。片方は、土を移動させて相手に覆いかぶせさらに硬化魔法で固めて拘束する魔法です。シンプルな魔法で、ふみくんの悪戯でもたまに使われます。もう片方は、特別な周波数の音波を浴びせて酔わせて、頭痛を起こしたり気持ち悪くしたりする魔法です。音波振動系攻撃魔法の基本ですね。どちらも効果はそこまでではないのですが、一気に使ってさらに大量に浴びせれば、抜け出すのはとっても難しいと思います。ふみくんの得意技と言えば何十個もの専用CADを同時に使う『パラレル・キャスト』での連続同時攻撃なんですけど、本気の時以外は疲れるのであまり使わないんですよね。司波君と風紀委員入りを巡って決闘した時も、ハイペースな同時連続攻撃は手加減していました。だから、これを『モノリス・コード』で使った時はびくりしちゃいました。森崎君のことを、本当に大事に思ってるんですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

『膝カックン』

 

初出:2-21(名前や正体が明かされたのは「2-22」)

 

解説:井瀬文也

 

 またチョイ役魔法かよ……。これは『マジカル・トイ・コーポレーション』が開発し、専用CADを発売したオリジナル魔法だ。膝裏にちょっと押す程度の衝撃を加えて、古典的な悪戯「膝カックン」と同じことをする魔法だな。衝撃が強すぎると、骨が表に出ていてしかも薄い部分だから骨折するかもしれねえ、ってことで、基本的に出力制限を加えてあるぜ。これがまた結構子ども相手にバカ売れしてよー、俺も昔はこれでよく遊んだわけだ。当時は俺もまだガキもガキだったから、開発者は当然親父だぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『多色点滅』、およびその古式版『狐火』

 

初出:2-21(名前や正体が明かされたのは「2-22」)

 

解説:司波達也

 

 光波振動系の妨害魔法だ。赤、青、などの刺激が強い光を目の前で高速点滅させて、相手を光過敏性発作によるショック状態にする魔法だな。幹比古が使ったのはその古式版で、仕組みは違うが起こる結果は同じになっている。ゲーム研究部の連中が何やら馬鹿なことを言っていたから暇なときに少し調べていたら、まだ規制が無かった時代、有名な子供向けアニメでこれを演出の一環として流して、全国の一部の子供が失神などの症状を起こしてしまったらしいな。井瀬達が御ふざけで『ポリゴンショック』と呼んでいたのもそれが由来らしい。普通に使うにも危険だが、後遺症のないショック症状がほとんどなので、殺傷性ランクはC未満になっている。ただ、使うシチュエーションによってはたやすく犯罪に使えるから、場合によっては殺傷性ランクAにも匹敵するだろう。例えば、高速運転中のドライバーに使えば簡単に交通事故が作り出せる。これはどんな魔法にも言えることで、良くも悪くも、「使いよう」というわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音波陽動魔法

 

初出:3―サド・サド・サード―3

 

解説:吉祥寺真紅郎

 

 音波振動によって激しい音を鳴らし、陽動する魔法だね。音波振動系魔法の基本中の基本だ。音を大きくすれば音響攻撃にもなる、使い勝手の良い魔法だよ。文也の場合は、いくつもの爆竹が鳴ったみたいな音で陽動していたね。魔法式の規模が小さいから隠密性が高く、ベテランのプロ魔法師でも引っかかりやすい厄介な魔法で、それをあの文也が使ったわけだから、相手が引っかかるのは当然というわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔改造魔法ライフル

 

初出:4-1

 

解説:井瀬文雄

 

 バカ息子が作った魔法ライフルだな。佐渡の戦いのときに敵スナイパーが使っていたライフルを回収し、改造したものだ。銃弾は炭化チタン製で貫通力に特化した形状をしている。銃身は普通のライフルと比べてもさらに長めだが、その理由は銃型CAD特有の照準補助のスペース確保のみならず、内部を通った銃弾が加速する刻印魔法をこれでもかと施すためだ。銃弾の射出そのものも魔法で、そのあとの急加速も魔法によってなされる。その弾速は音速の7倍ほどだ。そして銃口を通った瞬間に銃弾には『情報強化』が施され、ハイパワーライフル対策として使われる『減速領域』なども通じにくい仕組みだ。さらにさらに、弾速が速いということは空気抵抗が欠点になるわけだが、それも『疑似瞬間移動』技術の一種である真空のチューブを銃口から伸ばすことで防ぐことができるんだ。

 

 まとめると、滅茶苦茶硬いうえに貫通力に特化した銃弾が、文也が使ったならば余剰サイオン光が漏れず、魔法なので音も出ず、音速の7倍で射出され、しかも空気抵抗による減速は無く、さらに魔法で防ぎにくい仕組みになっている、というわけだ。頭おかしいだろ。これを人間に、それもたかだか校内訓練で撃とうとしたなんて、我が息子ながら信じられない奴だな。確かに貫通特化だから怪我の範囲は狭くなるし体内に銃弾は残らず、腕の良い養護教諭が待機しているとなれば、実際問題はないのだろうが……。よほど九校戦の練習で『ファランクス』に完封されたのが悔しかったんだろうな。

 

 このライフルは結果として横浜において多くの人々を窮地から救ったわけだが、一発で終わる前提だから装弾数が一発だけ、しかもかさばるし目立つという欠点もあった。それを改善したのが、USNA軍・スターズとの戦いで活躍した魔法ピストルだな。ただ小型化したうえに弾倉も設けたせいで性能が全体的に下がり、弾速は音速の3倍程度、真空チューブによる減速防止もできないから空気抵抗をモロに受けたりと、新たな弱点も産まれた。ただ、音もなく音速の3倍で魔法に防がれにくい銃弾がピストルから出るというのは、やはり破格の性能と言えるだろう。

 

 ちなみにこれらは、他の魔法師にはまず使えないぞ。いろいろな魔法を同時に使用するために、銃そのものが複数のCADのキメラだからな。横浜の事件において独立魔装大隊が貫通力強化魔法ライフルを実験的に戦場で初使用した記録があるが、あちらの方が生産能力も汎用性もはるかに上だ。うちのバカ息子は商品開発においてはそれこそ小さな子供にも使えるほどに使いやすさを気遣ってくれるが、それ以外となると自分以外への発展性がないのが欠点だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『流れ星』

 

初出:4-4

 

解説:司波深雪

 

 よりによって私にこれを解説させるのですか……。叔母様……「極東の魔女」「夜の女王」と畏れられる四葉真夜の専売特許にして戦術級魔法としては『爆裂』『コキュートス』を超え『ファランクス』並みの効果を誇る『流星群(ミーティア・ライン)』、その完全劣化版です。これは使用者の練度の差ではなく、魔法式・起動式レベルの差です。『流星群』はいくつ穴を空けるかを起動の段階で演算によって選べますが、この魔法はそのレベルには達しておらず、一つしか穴を空けられません。だからこそ、「群」を付けられず、『流れ星』と名乗るのでしょう。

 

 誰一人として幸せにならなかったあの戦いの、諸悪の根源です。タチの悪いことに、井瀬君はこれが『ミーティア・ライン』の同種だと認識したうえで開発し、使ったのです。本来の意味とは違いますが、いわゆる「確信犯」ですね。しかも、その動機は、校内訓練で勝ちたいから、というものでした。お兄様のデータ曰く、3つほど対策を考えて来たみたいですが、そのうちの最も弱い対策がこれだったそうです。結局使わなかったし、井瀬君の干渉力では『爆裂』のほうがほぼ全ての場面で効率が良いので、つくづくリスクと苦労に見合わないと言わざるを得ません。彼は頭が良いはずなのに、どうしてこうも……いえ、それは私も同類ですね。私が精神的に未熟でふがいないばかりに、お兄様にはご迷惑をおかけすることばかりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カーム』

 

初出:4-4

 

解説:中条あずさ

 

 精神干渉系魔法の一種で、その基本形です。楽しい、嬉しい、苛立つ、悲しい、悔しい、怖いなど、ポジティブもネガティブも関係なく、心の動きを抑えて一般的な平常に戻す魔法ですね。戦闘状態にある相手にこれが成功すれば、戦意の喪失とまではいかずとも削ぐことができて、心の差で有利になるという使い方もありますね。不便なところとしては、魔法の効果が切れたら基本的に感情が元に戻るということです。例えば、怒って暴れている人にこれをかけて一瞬落ち着かせても、効果が切れたらまたもとの感情に戻って暴れ始めてしまいます。ただ、魔法効果がある間にそうした感情や感情の原因が収まれば、効果が切れても完全に元通りと言うわけではなく、収まった状態になります。だから、化成体に斬られた直後にこれを使用して少し持続させていれば、斬られてないと冷静に認識し始めて、幻の攻撃でできた催眠効果はなくなります。ドローン越しに一目でどのような攻撃か偶然判断できて、それがたまたま私の得意な魔法で防げるので、多くの人を救うことができました。……でも、無理なのはわかっていますけど、やっぱり、最初の人を助けられなかったのは、悔しいし、悲しいし、申し訳ないと思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『流星』『メテオ』

 

初出:4-5(名前だけ4-4で登場)

 

解説:司波達也

 

 どちらも似たような名前の魔法だな。『流星』は落下速度を増幅する加速系魔法で、『メテオ』は位置エネルギーを落下中のある瞬間に集中させて爆発的な落下攻撃にする加重系魔法だ。どちらも隕石に似た落下攻撃だから、こんな名前になった。ちなみに、ほぼ同時に全くお互いに感知していない状態で開発され、ほぼ同時に『メテオ』として登録申請がされて、数秒の差で加速系魔法の方が遅かったから『流星』に改名された、という歴史がある。普通は落下による質量爆弾を強化するために使うもので、井瀬文雄のように自身や自身の武器に使うものでは、当然ない。強化した衝撃を自分の体にかかる分だけ中和する術式の併用をすれば問題ないが、そんなことをするだけのメリットはないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲のサイオンを中心に集める投射型魔法陣

 

初出:4-5

 

解説:井瀬文也

 

 そもそも刻印魔法や魔法陣はなんだって話だけど、あれは、事前に魔法式を幾何学文様化したうえで物理的に物体に設置しておいて、そこにサイオンを流し込むと魔法が発動するって仕組みだ。で、投影型魔法陣ってのは、その魔法陣を掘るのではなく、直接サイオンで作って投影しちまおうって技術だな。別に普通の魔法式でいいじゃんかって思うかもしれないけど、場所・場面に特化した単一の効果を出すならこっちのほうが何かと便利なんだ。

 

 あの横浜で親父が使ったのは、中心に周囲の自然サイオンを集中させる魔法陣だな。大昔に自然サイオンを人間に取り込んで回復しようとして作られた魔法陣なんだけど、なんでか知らないがサイオンってのはそうやって回復するもんでもなくてな。全く用途のないゴミ魔法陣として放置されていたんだ。けどこの時親父は、「自然サイオンが莫大にある場所に造られた魔法施設の防衛に使えるかも」とかなんとか考えついて、この技術を九島のじーさん経由で魔法協会に提出したらしいぜ。頭おかしいだろ。

 

 で、今回は、それが刺さるドンピシャの相手が現れたってわけだ。最初から陣が刻んであると敏感な魔法師には察知されるから、敵が現れてから足りない部分を少しずつ物理的に刻んで、最後の最後でさらに足りない部分をサイオンで作って投影し、一つの魔法陣にするって寸法だな。親父は戦闘の中で隙を見て刻んで、その後に呂剛虎を中心に誘導して残りをサイオンで投射するつもりだったらしい。ま、それが上手くいかなかったんだけどな。それでも、特に連携を取っているわけでもなければ魔法陣の存在にも気づかない周囲の協力でたまたま中心に足止めできたから使えたってわけだ。運が良すぎるだろ。運だけの春日だな。筋肉もりもりだし。

 

 サイオンが莫大にあるから、それを中心に急激に集めれば、それがどんな魔法も大体ぶっこわす『術式解体』になる。あとはただのニンゲンになった無防備な魔法師をピストルで一発、これでお終いだ。

 

 正直言って、実用性は欠片もない、まだまだ研究中の技術だ。それでも採用されたのは、はっきり言えば、魔法協会が襲撃を想定していなくて、防衛技術に実験的な遊びを取り入れた、ってところだな。この国大丈夫か? いや、大丈夫じゃねえのはあの冬でさんざん分かったことだったな! クソッタレ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷の針で刺す魔法

 

初出:4-5

 

解説:吉祥寺真紅郎

 

 水を細い形に凍らせてそれで刺す。いたってシンプルだけど、これはとても難しいことなんだ。移動・加速系で水を細い形に整える精密操作だけでもできない魔法師の方が圧倒的だろうね。さらにそれを折れずに対象に刺さるレベルまで硬く凍らせて、そして大量の細い氷が刺さるように精確に放つ。こんな芸当ができるのは、僕の知る限りでは将輝と剛毅さん、それにもしかしたら司波さん、といったところかな。それにしても大量の氷の針で集団をさすなんて、いかにも「魔法」らしいファンタジックな魔法だよね。どうやら一条家が第一研究所時代に戯れで基礎理論だけ作って、そのあと代々暇なときになんとなく改善していたらしいよ。真面目な一族ではあるけど、将輝を見れば分かる通り、ロマンを追い求めるタイプでもあるのかもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『存在確立(ツンザイチュエリー)』『魔式空間(ムォシーコンジィエン)』

 

初出:4-6

 

解説:吉田幹比古

 

 それぞれ中国系古式魔法バージョンの『情報強化』と『領域干渉』だね。井瀬が戦った『蓋』なる兵器に使用されていた魔法で、達也の話によると、ソーサリー・ブースターを直列繋ぎして強化していたらしい。今でこそなんとか話せるけど、こんな悍ましい話、初めて聞いた時はゾッとしたよ。中条先輩から市原先輩が聞いた話によると、井瀬は何やら『情報強化』の専門家でもあるらしくて、それだけなら、九校戦で見せた通り、達也みたいに魔法式を直接分解できるらしい。でもそれはあくまでも現代魔法の『情報強化』のみで、結果は同じだけど仕組みは違うし魔法式も当然違う古式魔法版の色々な『情報強化』には何もできないみたいだ。『トライウィザード・バイアスロン』の時に達也から聞いたんだけど、井瀬は古式魔法を相手にするのが苦手のようだね。それは本人も自覚しているみたいで、色々と厄介なことを考えてるみたいだから、生半可な古式魔法師だと一瞬で叩きのめされるだろうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『精霊の瞬き』『精霊の涙』『水飲み』『魂守り』『身守り』

 

初出:5-7

 

解説:アンジェリーナ・クドウ・シールズ

 

 カストル少尉が使った古式魔法群ね。彼はアメリカ大陸が「アメリカ大陸」でなかったころから住んでいた先住民族の末裔よ。学術用語でいうところのシャーマンを中心とした民族の小集団で生活していて、民族・集落間の争いではシャーマンが大きな役割を持っていたみたいね。原始的な宗教らしいアミニズム(自然崇拝)を崇拝する民族で、科学というものが無かった当時は、万物に住む「精霊」が様々な現象を起こしていると信仰していたらしいわ。ちなみにここでいう「精霊」は、現代で説明される「プシオンを核とした独立情報体」とは違う、もっと抽象的でかつ宗教的なものよ。ちなみに、これらの魔法に本来は名前が無いのだけど、大統領に忠誠を誓うという「近代」に組み込まれるにあたって、その覚悟として少尉が自ら名前をつけたみたいね。……彼の覚悟を、私たちUSNAは無駄にしてしまったわね。

 

『精霊の瞬き』は、簡単に言えば電撃魔法ね。自然界で発生する電気や雷を、精霊が放つ不思議な力を持った光と捉えていたみたい。精霊に「お願い」して、その光で敵を攻撃してもらっている観念らしいわ。『精霊の涙』と『水飲み』は、それぞれ結露と蒸発を、精霊が涙を流した、精霊が水を飲んだと解釈していたらしわね。『魂守り』は現代で言うところの『情報強化』と同じ効果があって、直接干渉する魔法を「魂への攻撃」と捉えていて、それを防ぐ魔法よ。

 

 そして一番強力なのが『身守り』ね。現代魔法では現象区分ごとに系統・種類分けがなされていて、各現象に応じた障壁魔法を使うのが一般的で、『ファランクス』のようにそれらを同時に使って複数の減少から身を守るのが強力な戦術になっているのは常識ね? だけどこれは、単一の魔法で、「外部から自分に害をなす現象」という曖昧な概念をすべて退けることができる魔法よ。こういう曖昧なことをできるのも古式魔法の強みね。でもさすがにこれはかなり難しいみたいで、少尉の一族でも特に優れたシャーマンしか使えなかったみたい。

 

 え? 私がなんでこんなに詳しいのかって? 確かに、私は隊長と言えど、秘密主義者気質な古式魔法師たちの部下からここまで詳しくは聞けないわね。少尉もかつてはそうだったんだけど……「入院中」に苦しみが分かる話し相手がお互いしかいなかったから、ついつい深い身の上話までするようになったのよ。お互いに「魔法」ばっかりの人生だったから、話すことが自然とそれしかないのよね。私も少尉も、もう少し生まれが違えば……「普通の人生」とやらを送れたのかしら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『風起こし』

 

初出:5-10

 

解説:森崎駿

 

 名前の通り、空気を移動させて風を起こす魔法だ。初心者魔法師は移動系・加速系魔法を練習するにあたって、まずは目に見える固体、次に液体、と順々にコントロールやイメージしやすい順番に移動系を練習していって、その最終段階として目に見えないし流動的でコントロールしにくい気体操作の練習をする。この『風起こし』は、そんな気体操作魔法の中で最初に習うものだ。簡単な魔法と言ってもとても便利で、そよ風を起こして涼しくしたり、出力を上げれば突風を起こして攻撃に転用出来たりする。実戦では複雑な演算をしている暇がないから、こういう単純な魔法は下手な魔法よりも効果を発揮する場合も多々あり得るぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『プシオンスタン』『強制催眠』

 

初出:5-11

 

解説:中条あずさ

 

 どちらも精神干渉系魔法に分類されます。『プシオンスタン』は、相手のプシオンの振動を一瞬だけ止めることで意識を失わせる魔法です。『強制催眠』は深く眠っている時と同じ波長を浴びせて対象プシオンの振動を共鳴させて寝ている状態に近い状態にすることで眠らせる魔法です。普通は個を対象とした魔法なのですが……あの夜は、シールズさんの『仮装行列』があまりにも強力だったので、領域版を使わなきゃいけませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『洗脳剣(ハック・ブレード)』

 

初出:5-11

 

解説:井瀬文雄

 

 精神干渉系魔法だが、一応魔法剣に分類される魔法だ。剣・板状の仮想領域を指先や武器の延長線上に展開するという点では『分子ディバイダー』に似ているな。その仮想領域では任意の周波数でプシオンが振動していて、それを相手エイドスのプシオンに突き刺すんだ。すると、相手プシオンの内部でその振動が起きていることになるから、「内部から」相手プシオンを任意周波と共鳴させて、「洗脳」することができるって寸法だ。外部からプシオン波を浴びせるのに比べて効果は強力だが、近接戦闘にしか使えないというのが欠点だな。あずさちゃんは精神干渉系魔法に関しては達人だが、運動神経はからっきしだから、実はあまり向いていない。開発した俺が言うのもなんだが、使うことはないだろうな、と思っていたよ。これを使う場面となると、あずさちゃんが近接戦闘を強いられているということだから、そもそも不利な盤面と言うことだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『スウィート・ドリームス』

 

初出:5-11

 

解説:吉祥寺真紅郎

 

 え、この魔法、僕が解説するの? 普通は開発者の中条さんか文也じゃない? ……まあ、いいか。

 

 直訳すると「良い夢を」。その名前の通り、催眠魔法だね。ただ一般的な催眠魔法である『強制催眠』とは、同じ精神干渉系魔法ではあるけど、仕組みは違うよ。これは細かい分類としては情動干渉系魔法に当たるもので、中条先輩の『梓弓』と似た魔法だ。いわゆる「癒し」状態を作り出す波長のプシオンの波動を浴びせて、極度のリラックス状態にさせるものだね。極度のリラックス状態になった相手は、白昼夢に似た多幸感に満ちたトランス状態になって、意識もぼんやりとしてきて、究極のリラックスである睡眠状態になるよ。精神干渉系魔法は属人的な要素が大きいんだけど、その中でも特に情動干渉系魔法はさらに精度や強度、さらには使えるかどうかすら、より属人的な要素が強い。恐らく使えるのは中条先輩だけだろうね。

 

 これは今一つ仕組みが分からないんだけど、どうにもこの魔法を浴びた相手は、それぞれの記憶にある「癒し」の音が幻聴として蘇ってくるみたいなんだ。駿は好きなクラシック、将輝は小さいころに聞いた剛毅さんの子守歌、僕は……恥ずかしながら、お父さんとお母さんが小さいころに絵本を読み聞かせてくれた時の声だね。そういえば、文也は顔を真っ赤にして話そうとしなかったね。相当恥ずかしいんだろうなあ。まあ、僕らが話した以上、あいつだけ話さないのはずるいから、タイミングを見て聞き出してみようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『覚醒』

 

初出:5-12

 

解説:井瀬文也

 

 精神干渉系魔法の中でも、『強制催眠』『カーム』あたりと並んで、珍しく一般的でメジャーな魔法だ。プシオン波による共鳴を利用した魔法が比較的多いが、これは対象プシオンを直接改変する魔法だな。こんな名前の通り、一般的な「目覚めている」状態に改変できるぞ。イメージ通りだと思うが、俺は夜遅くまで起きてるから朝起きるのが苦手でな。ガキの頃からよくあーちゃんに起こしてもらってたんだ。で、一回だけ、俺があんまりにも起きないからこれを使われて無理やり起こされたこともあった。外からの刺激に気づいて起きる、っていう段階を踏んだ目覚ましじゃなくて、いきなり「起きた」状態にポーンと改変されるから、身体にも精神にも全く良くない、以外と乱暴な魔法だぜ。……あーちゃん、あの夜に自分に使った時はもっとつらかっただろうな。

 

 ちなみに、親父と母ちゃんの起こし方はもっとやばいぞ。下手したら死ぬな。

 

補足:中条あずさ

 

 今は寝てる時は一緒だから別として、小学生のころと、高校で再会してからは、私の方から積極的にふみくんのことを起こしに行っていました。私も朝起こしに行くのは、正直ちょっと手間なんですけど……文雄さんと貴代さんの起こし方は、本当に命に関わるので……珍しく、ふみくんの大げさではありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『抱擁』

 

初出:5-12

 

解説:中条あずさ

 

 平常時のプシオンパターンをあらかじめ記憶しておいて、相手のプシオンをそのパターンへと直接改変することで、「平常心」に戻す魔法です。普通の感情や外部刺激によるプシオン変化を戻す以外にも、他の精神干渉系魔法を受けた時に元の状態に戻す「回復」に近い使い方もあります。欠点としては、プシオンパターンを機械でも無理なほどに精密に記憶しなきゃいけないので、使える「対象」すら限られることです。私の場合だったら……ふみくん、私自身、お父さん、お母さん、ぐらいしかできないですね。自覚は無かったのですが、私の精神干渉系における適正は、「平常に戻す」ことみたいです。言われてみれば、『梓弓』はそういう性質がありますよね。

 

 ……司波さんの「あの」魔法(筆者注『コキュートス』)は、カメラ越しに一回だけしか見ていないのに、すごく怖かったです。気づいたら、こういう魔法を考えていました。まさか司波さんたちと戦うことになるなんて思っていなかったのですが……。

 

 

 …………え? 魔法名の由来ですか? え、と……説明しなきゃいけないですか? あ、他の魔法も説明しているから、これもぜひ欲しい、と……。………………ご、ごめんなさい!!!

 

(筆者注:顔を真っ赤にして逃走されてしまったので、ここで終わってしまった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『保温』

 

初出:5-13

 

解説:真壁菜々

 

 えー、ナナが解説ですかぁ? キャー、緊張しちゃう! ……は? そういうのいいって? あーそうなのね、はいはい。

 

 といっても、こんなの特に解説することないわよ。現在の振動を一定に保って保温する、ただそれだけの簡単な魔法よ。それにしたって不思議よねえ、魔法って。生まれつきいろいろな適性があるんだけど、液体に強い、なんたら系が得意、みたいなのはまだなんとか「ありそう」感あるけど、「状態維持」が得意って、どういう理屈でそんな才能が出るのよ。まだまだ分からないことだらけよねえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

収束系射撃魔法

 

初出:6-9

 

解説:司波達也

 

 射撃魔法は、一般的には自分の手元にあるものを相手に飛ばして攻撃する魔法のことで、大抵が移動系・加速系の併用だ。「もの」とは何でも良くて、空気を固める『エア・ブリット』や『空気砲』、さらには情報次元のものであるサイオンを放つ『サイオン粒子塊射出』だって、射撃魔法の一種だ。一定以上の質量や破壊力を持っていて「射撃」という言葉が当てはまらなさそうな場合は「砲撃魔法」と呼ばれる。そのどちらにも当てはまらない、例えば井瀬がネイサン・カストルに使った、ゴミ捨て場のハンガーを針金にして飛ばす魔法みたいなのは、これといって分類が無い。使いやすさは射撃魔法、威力は砲撃魔法、どんな時でも使える便利さはそれ以外、だな。移動・加速系は単純な速度・質量の攻撃だから、銃がいまだ戦場で現役なように、実践において非常に役に立つ。

 

 そんな一応の魔法分類があるが、この滝川が九校戦で使った魔法は例外だ。見た目で射撃魔法と判断されているが、仕組み的には射撃魔法に分類してはいけないだろうな。収束系魔法は密度・相対距離を操作する魔法系統なわけだが、これを利用して、「弾丸と的の相対距離をゼロにする」改変をすれば、弾丸が勢いよく向かっていき的を破壊することができる。普通の射撃魔法と違って、実は、的撃ち系の魔法競技特有の「射撃を元とした競技なのに直接改変して破壊する魔法がメジャー」という皮肉に当てはまる魔法だ。相対距離をゼロにする改変なわけだから、一度魔法が発動してしまえば、間に魔法強度を超えるほどの障害物でもない限り、確実に着弾するのが魅力だな。これを利用して、速度だけを重視した暴れるボートの上でも、パーフェクトを出すことができた。この九校戦を通じて一番成長したのは、一高では多分滝川だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フェーズ固定』『ウェーブ・カット』

 

初出:6-10

 

解説:井瀬文也

 

 どちらも状態変化を拒む魔法だ。『フェーズ固定』は相転移を改変する発散系で、圧力・温度の外的要因や他の発散系での直接改変を退けて、現在のフェーズ――固体・液体・気体・プラズマっていうあれだな――に固定する効果がある。『ウェーブ・カット』は、対象物が外部からの振動で震えないようにする魔法だ。『共振破壊』みたいな振動で破壊する魔法以外にも、『フォノン・メーザー』みたいな外から振るわせて温度をあれこれする魔法にも効果があるぞ。一方で、直接振動を改変する『振動破壊』みたいなのには効果は無い。あくまで外部の振動による振動変化をカットしてるだけだからな。ちなみに、マサテルの『爆裂』は、『情報強化』以外にもいろいろあるこの『フェーズ固定』みたいな対策をされてもなおぶち破るだけの工夫が起動式に施されてるぜ。あいつがいう「『爆裂』以外の魔法は魔法師のエイドス・スキンに阻まれやすい」っていうのはそれが理由だ。ま、あいつの干渉力だったら、生半可な魔法師のエイドス・スキン程度、他の魔法でも超えられるんだけどな。あくまでも「強いやつらの中の話」ってわけだ。贅沢だねえ。

 

補足:一条将輝

 

 マサキだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『影法師』

 

初出:6-11

 

解説:吉田幹比古

 

 霧に人影を浮かべる幻覚魔法の一種で、古式魔法だ。霧に映像を投影して立体映像にする技術は、ホログラムが本格化する前はそれなりに使われていたんだけど、それを魔法でははるか昔から使っていたわけだね。霧に身を隠して色々やるのは「忍び」の手段としては一般的だね。まさしく五里霧中な相手は不安に駆られているから、ちょっと人影が見えるだけでもかなり揺さぶることができるよ。同士討ちを起こすこともできるね。……さすがにあそこまでの怪我は予想外だったけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヴォミット』

 

初出:6-12

 

解説:司波達也

 

 魔法による吐き気を催させる方法は2つある。1つは、感覚を乱す方法だ。これは音波や幻覚で三半規管を狂わせたり、身体を直接操作して直接吐き気が起こるような状態にしたり、酷い臭いを浴びせたりと様々な方法がある。また、『共鳴』のようにサイオン波を浴びせて魔法的感覚から吐き気を起こすことも可能だ。

 

 この魔法はもう一つの、「プシオンを吐き気状態にする」方法だな。吐き気状態に直接改変する恐ろしい魔法だ。実際に嘔吐してしまうほどになると相当規模の改変が必要だが、吐き気で本調子が出なかったり運動が出来なかったりと言う程度ならば、慣れている魔法師なら割と簡単にできる。一度かかれば魔法の効果が切れても吐き気が尾を引くのも厄介だな。一方で、これを魔法師にかけるとなるとそうはいかない。なにせエイドス・スキンで守られているし、それを貫いたとしても、意識的に『情報強化』をかけられたらまず突破は不可能だ。使うとしたら、別のことで気を引いているうちに気づかれずに使うか、『情報強化』をかける暇もない状況にするか、だな。

 

『トライウィザード・バイアスロン』においては、その両方を重ねられて酷く苦戦させられた。近距離戦闘が一高の三人は特別得意というわけではないのに対し、相手二人は近接戦闘で言えばもはやプロの領域だ。しかも木々が密集した森林という条件も重なっている。狭いところであの二人が不意打ちをしかけて、見晴らしの悪い場所で隠れた中条先輩がこの魔法をかける……実戦でも通用しそうな作戦だな。大越紛争の折、山岳・森林戦のスペシャリストとして「山天狗」と恐れられた風間中佐が、あの後あれを手放しで褒めていたよ。中条先輩はメンタルと運動神経、健康状態さえ一般兵士程度あれば、中佐も警戒するほどの森林戦のスペシャリストになっていたかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鬼轟咆』

 

初出:6-12

 

解説:井瀬文也(なぜかこの時だけやたらと顔が濃い)

 

 うむ、基本的には、民明書房出版『古式魔法大全・日本編』を読めば詳しいことまで理解できるだろう。え、話し方が変だと? 気のせいだぁ!

 

 アニキは自分の身体から離れた対象に魔法を行使するのが極端に苦手だ。そんなアニキが持つ遠距離攻撃手段は、基本的に圧倒的筋肉から繰り出される投擲か、広義で「身体の延長」と認識されるらしい「声」しかない。一族代々そうだとおっしゃっていた。そんなアニキの一族が生み出したのが、声を武器とするこの魔法である。あれでも本気ではないらしく、全力を出したら爆弾の爆発に相当するほどの瞬間衝撃が出るらしく、内臓を破壊することができるらしい。アニキらしい、実に豪快な魔法だな。ちなみに俺もあの後真似してみたんだけど、自分の鼓膜が破れて治癒魔法のお世話になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『強制酸素結合』『振動貫通』『熱風』『サイオンレーダー』『固定拘束』『泥波』『質量偏倚』

 

初出:6-14

 

解説:五十里啓

 

 どれも定番の魔法だね。『強制酸素結合』は空気中の酸素を他の物質と無理やり結合させることで酸素濃度を薄くする魔法だ。消火に使ったり、相手の呼吸器周辺で起こして酸欠にしたりと、それなりに使いどころはあるね。吸収系魔法はあまり戦闘には向かないんだけど、燃焼や酸素結合を駆使して酸欠状態にするという形で使われることはあるね。

 

『振動貫通』は、相手の耳に強い振動を束ねた音波を浴びせて、まるで針で刺したように鼓膜を破る魔法だ。実はかなり危険な魔法で、ほんの少し出力を間違えるとその奥の粘膜、さらには脳組織まで傷つけて死亡、軽くても重い後遺症が残る危険があるよ。ただ、鼓膜を破る程度に出力を抑えたものなら耳を手で塞ぐ程度で簡単に防げてしまうから、殺傷性ランクC扱いなんだ。ちょっと危険すぎると思うんだけど、それなら目とかにも悪影響が出るスタングレードみたいな音波攻撃も同じかな。

 

『熱風』は振動系・移動系・加速系の複合魔法で、振動させて温度を上げた空気を相手に浴びせる魔法だね。大きなドライヤーを浴びせる魔法って感じで、主に炎天下での戦闘で有効に働くよ。とはいえ効果が出るのに時間がかかるから、実戦ではあまり使われなくて、つくづく真夏の九校戦向けだね。

 

『サイオンレーダー』は無系統感知魔法の一種で、特定空間の中にある一定以上の密度のサイオンを探査する魔法だよ。密度があるサイオン、っていうのは要は、魔法式と魔法師だね。基本的な探知魔法ではあるんだけど、情報量が多くなりがちだから、実はそれなりの処理能力がないと頭がパンクして効果が出ない、ということもあるよ。

 

『固定拘束』は相手の衣服を収束系魔法で固定して拘束する、名前の通りの魔法だね。相手をケガさせずに拘束する上ではかなり役に立つよ。ある程度経験を積んだ魔法師が単体で非魔法師小隊に匹敵するって言われるのは、CAD以外の道具を使わないでも兵器以上の殺傷力や破壊力を得られる、ということもあるけど、これといって苦労なく相手を生け捕りできる、ていう部分も大きく評価されているからだね。

 

『泥波』は、泥の波を相手にぶつける移動系魔法だね。都市・市街戦ではまず使わないけど、雨とむき出しの地面が多い山中における戦闘ではよく使われるね。特に大越戦争においては多くの使用例が確認されているよ。これを筆頭として泥や雪を相手にまとわりつかせる攻撃魔法は比較的多いから、悪所での戦闘を想定している軍属魔法師は、衣服から付着物だけを離す収束系魔法がほぼ必須になっているよ。

 

『質量偏倚』は、対象物の見かけ上の質量を一瞬だけ軽くして、その直後に軽くした分だけ重くする魔法だよ。重さの分布をごく短い時間だけ時間的に偏らせる、って感じだね。投擲と併用して使われることが多くて、自分が投げるときは軽くて、相手にぶつかるときは重い、という都合のいい状況が作れるよ。井瀬君と吉田君がやったみたいに組み合いでの投げ技でももちろん使えるし、一瞬だけ重くしてそのあと軽くするみたいな逆もできるから、色々と応用できる魔法だね。

 

 いやあ、それにしても、服部君や井瀬君が戦うと、使う魔法の種類がどっちも多くなるよね。二人ともハイレベルなゼネラリストで、かつ手数も多い。オぺレーターの仕事を忘れて少しだけ魅入っちゃったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『間欠泉』

 

初出:6-14

 

解説:吉祥寺真紅郎

 

 まるで間欠泉が噴き出すみたいに、水を円柱状に上方へと一瞬だけ隆起させる魔法だね。水上戦では定番の魔法で、ボートどころかちょっとした大型漁船レベルでも転覆させることができるよ。まあこれ自体は割と普通の魔法なんだけど、液体のエキスパートの将輝、僕、それに文也が加わると……湖の外周をぐるっと回れるほど『間欠泉』を一気に出せるんだ。今思うと、魔法式末尾に座標をずらして魔法式複製をする式を入れておく技術は、その……司波さんの「アレ」の時に出来上がっていたみたいだね。『トライウィザード・バイアスロン』でやって見せた通り、この技術を使えば小・中規模の魔法を同時に大量に使うことで大規模魔法にすることができる。最初に考えた人は天才だね。これがのちの『海爆(オーシャン・ブラスト)』とか「あれ」に繋がるんだけど……いや、でも「あれ」は、ねえ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『虚ろ影』『くさくちなは』『肺搾り』『壁抜け』『壁埋まり』

 

初出;6-14

 

解説:吉田幹比古

 

『虚ろ影』は、簡単に言えば、本物そっくりの幻影をズレたところにおいて代わりに本物を隠す魔法だね。対象物そっくりの幻影を作る幻影魔法、本物の認識阻害をする精神干渉、本物をそれとなく陰で隠して認識しにくくする隠蔽魔法、これらをセットで使うことで効果を発揮するよ。そうそう騙されるものではないんだけど、油断している相手、他のことに気を取られている相手は、面白いぐらいにハマってくれるね。散々あの三人には苦しめられたから、見事に引っ掛かったのは痛快だったよ。

 

『くさくちなは』は、草をまとわりつかせる『乱れ髪』の強化版だね。より強く拘束できるようにしたうえで草自体を強化して、しっかり拘束する魔法だ。『乱れ髪』のアレンジをしてくれたのは達也だよ。彼は本当にすごいよね。ついでに元の『乱れ髪』もかなりダメ出しされたのはちょっと悲しかったけど。

 

『肺搾り』は二酸化炭素の塊で口や鼻に蓋をして呼吸困難にする魔法だよ。古式魔法は現代魔法に比べて出力が大きいのが強みではあるんだけど、性質上、隠密性も求められるから、こういう地味に嫌な魔法も結構あるんだよね。……井瀬が本格的に古式魔法を覚えたら、いよいよ手が付けられない悪戯っ子になりそうだね。

 

 そうそう、井瀬と言えば『壁抜け』の解説もしようか。魔法戦闘において障壁魔法対策は必須で、これはその中でも比較的メジャーだった魔法だね。伝統的な刻印魔法で、これが刻まれた武器は、相手の障壁魔法に触れた時、その魔法式に使われたサイオンの一部を吸い取って、刻印魔法が起動するんだ。自分のサイオンを使わないとても珍しい魔法で、その性質上、殴る本体にサイオン感応金属を使わなきゃいけないから地味に出費が激しいのが痛いところだね。その効果は、「移動速度がゼロになった瞬間、元のベクトルと速度に戻る」というものだ。これで、まるで壁をすり抜けたかのように相手の障壁魔法を突破して攻撃を加えられるよ。こんな具合で強力な効果を持ってはいるんだけど、まあ、とにかく弱点が多いから、吉田家の記録によると江戸時代末期以降に実戦で使われることはほぼなくなったみたいだね。

 

 そしてこれを改造したのが、『壁埋まり』だ。仕組みはおおむね同じなんだけど、改変内容は「方向ベクトルが変わった時、一瞬だけ元のベクトル・元の速度で移動する」というものだよ。『壁抜け』みたいに障壁魔法を抜けた後さらに大きく移動できるまではいかなくて、イメージとしてはほんの少しのめり込む程度なんだけど、代わりに、地面に落としたり反射したり明後日の方向に逸らすような防御魔法を貫通してダメージを与えられるよ。体から離して発動する通常の障壁魔法には無力だけど、それが間に合わないときに緊急で発動する体表にかけた障壁魔法なら攻撃が通るね。そういえばゲーム研究部の連中が、キハラシンケン? がどーのこーのと言ってたけど、よく分からなかったなあ。多分似ているだけで、仕組みは全然違うけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『決壊』『コンカッション』

 

初出:6-14

 

解説:司波達也

 

 幹比古が切り札として使った古式魔法だな。『決壊』は、堰が決壊するように相手の保有サイオンを強制的に放出させる魔法だ。そのまま放出し続ければ短時間で枯渇状態になり戦闘不能になるし、そもそも無理やり放出されているせいでサイオンがコントロールできず魔法の行使もままならなくなる、対魔法師としては究極の魔法だ。ただ欠点も多くて、魔法師本体と言う一番魔法的防御が強いもののコントロールを相手自身から奪うというのは、とても複雑かつ大規模な改変が必要になる。遠距離で不意打ちできたら理想だが、実際は、サイオン情報に関する精霊を手元に置いたうえで複雑極まる魔法的コードを打ち込んで使えるようにし、さらにそれを維持するためにも手元に置いておく必要がある。そしてこの精霊を相手の体に気づかれずに直接触ってくっつくけて、そして放出されるサイオンに巻き込まれないように離れて、ここでようやく魔法の効果を発動できる。正直言うと実用性はカケラもないが、井瀬が奪った『パレード』を破る切り札としてはこれが一番効果があっただろう。幹比古、美月、それとオマケだが俺の三人が揃って、ようやくこの程度の完成度で新開発できた。もっと使いやすく磨いていけば、幹比古の頼りになる切り札になる事だろう。

 

『コンカッション』は、逆に古くからある定番の西洋古式魔法だな。震盪ショックを与える魔法で、頭を狙って脳震盪を起こさせる目的で使う。顎を殴るだとか衝撃を加えるだとか、そういう原理で起こしているわけではなくて、「震盪している」状態に直接改変するタイプだ。

 

補足:吉田幹比古

 

 達也は自己評価が低いから「オマケ」なんて言っているけど、実際は彼が一番活躍していたよ。式の開発はほぼ全部達也、サイオン情報に関する精霊を見つけて実験タイミングを多く用意してくれたのが柴田さん、そして僕が本番の使用者としての実験役だね。実験相手として多くの人が協力してくれたけど、自分で収めることができた達也と服部先輩と五十里先輩以外は、全員口をそろえて「二度と受けたくない」て恨みの籠った顔で言ってたよ。一番印象的だったのは司波さんだね。普段の様子からしてサイオンコントロールがもともと苦手みたいだからこの魔法は当然よく効いたんだけど、サイオン量が膨大だから実験室の気温が一気に氷点下まで下がったよ。達也が中断してくれなかったら、全員凍死していたかもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いとおかし』

 

初出:6-14

 

解説:中条あずさ

 

 古式魔法師との戦いがあまりにも苦手なふみくんが、長い時間をかけて少しずつ研究していた魔法ですね。自分に魔法効果を出している精霊からリンクを辿って魔法道具やCADに破壊情報を送り込んで、リンクを破壊して魔法を無効化して、さらに相手のCADも破壊する魔法です。精霊以外にも、化成体や傀儡にも使えるみたいですね。元の発想は、ふみくんにとっては一年目の九校戦で、吉田君から見せてもらった、相手の精霊を奪う魔法と『感覚同調』の逆探知魔法です。転校したうえでそれの改造版をなんのためらいもなく提供者の吉田君に向けられるのは、ふみくんだからこそだと思います。

 

 名前の由来は、「リンクの糸を侵食する」というのと、古式と言うことでふみくんがかろうじて知っている古語「いとをかし」をもじったそうです。自慢げに話していました。え? 私はどう思うか、ですか? …………その、こ、個性的だと思います……。

 

補足:吉祥寺真紅郎

 

 あの中条さんがこういうってことは、「センスがない」って思ってるってことだね。文也の魔法はどれも発想はいいんだけど、本人が大体なんでもできちゃうせいか、普通の人にとってはピーキーなものが多いかなあ。『MTC』で出してる製品魔法は使いやすさの極限みたいな感じなのに。そしてどっちにも共通しているのが、ネーミングセンスがイマイチってところだね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『TSUNAMI』

 

初出:6-14

 

解説:井瀬文也

 

 なんか俺らが三年生になったあたりから、世界情勢が日本を中心にやたらとやばいことになってな。その時に、なんやかんやで露助(筆者注:ロシアに対する侮蔑語。ここでは新ソ連を差す)と大亜連合がそれぞれ日本に侵略する気満々だったってことで、日本海側の防衛の中心にいる一条家としては見過ごせないから、緊急対策することになったんだ。で、その一環として、『トゥマーン・ボンバ』で使われる自動魔法式複製技術を駆使すればすっげぇ魔法ができるんじゃないかってことで、ジョージと俺がそれぞれ開発に手を出したんだ。

 

 そんで、あんまりにもマサテルの水に対する干渉力がやばかったから、結局二つの戦略級魔法が出来上がったってわけだ。その一つがジョージの開発した『海爆(オーシャン・ブラスト)』だな。海面に『爆裂』の魔法式を大量に展開したうえで同時起動して、大量の海水でドデカい水蒸気爆発を起こして、さらに水分子の振動を加速させることで破壊力を増すっていうやつだ。内部から爆発してるわけじゃないからなんか違う気もするけど、言っちゃえば超巨大な『爆裂』だな。

 

 そして、そして! この俺様が開発したのが、もう一つの戦略級魔法『TSUNAMI』だ! 『間欠泉』みたいな円柱状ではなく、巨大な壁状に海面を隆起させる魔法を、『トライウィザード・バイアスロン』の『間欠泉』みたいに並べて連続発動させるんだ。大量の海水が壁状に連続で持ち上がる様は、まさしく世界を飲み込むビッグ・ウェーブ! 世界共通語となった、日本特有の大災害、『TSUNAMI』が、敵に襲い掛かるって寸法だ!

 

 この魔法の最大の利点は、「大量の魔法式が同時発動するようタイミングをずらす」という手間がないことだ! なにせズレて連続的に発動するほうが、相手を押し流して飲み込む力が強いからな! このタイミング調整の演算はそれはもう死ぬほど大変で、一回やるだけでもマサテルの脳みそはショートしそうだし、本家本元のオニゴーリアンドビッチベゾベゾベゾみたいな噛みそうな名前(筆者注:イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフのこと。十三使徒に数えられる戦略級魔法師で、『トゥマーン・ボンバ』の使用者)のやつはスパコンの補助を受けてるって噂だ。使用者の演算負荷を少なくしたうえでより良い効果を出すっていうのは『マジカル・トイ・コーポレーション』の『マジュニア』として積み重ねてきた技術と発想力が為せる業だな! でもなーんでか、マサテルは嫌いらしいんだよなあ。

 

補足:一条将輝

 

 マサキだ!

 

 もう一度言うぞ、マサキだ!!!!!

 

 ……それはさておき。色々と誤解を招きそうなのでツッコミを入れておくか。

 

 まず、『TSUNAMI』は確かに日本語の津波をベースとして世界的な学術用語として使われているが、別に日本特有の現象ってわけでもないし、外国でも多くの事例が確認されている。

 

 それと、負担が少ないって言う点だが……これは半分はあっているが、もう半分が大間違いだ!!! そりゃタイミング調整の演算がないのはかなり楽だけども!!! 魔法の改変規模が大きすぎる!!!

 

 考えてみてくれ! 艦隊を飲み込む程の高さ・厚さ・幅がある水の壁を何個も何個も作るんだぞ!!! どれだけの質量の水を動かすと思ってるんだ!!! 艦隊まるごと押し流すレベルで使おうとしたら、最大出力の『深淵』の何十倍もの海水を操作することになるんだ!!! 一回使うだけで死にそうなぐらい反動負荷がかかるし、演算量が膨れ上がろうとも『オーシャン・ブラスト』の方がはるかにマシだよ!!! 『深淵』の五輪澪さんの体がボロボロなのは知っての通りだと思うけど、体感、『TSUNAMI』をあと1,2回使っただけで俺もああなるだろうなあ!!! もう、絶対、二度と使ってなるものかよ!!!!!!!

 

 …………まあそもそも、戦略級魔法自体が、大量の資源と人を「殺す」魔法だ。どんなものだろうと、本当なら、世界中で二度と使うような場面が起きてほしくないし、当然俺も、使いたくはない。……それでも、いざとなったら使う責任が、俺にもある。そしてその責任は、開発者のジョージと文也にも及ぶ。「使わないため」にも、俺が世界中に睨みを利かせる必要があるんだろうな……。




最後まで読んでいただきありがとうございました。質問、感想等お気軽にどうぞ。また、見逃していて抜けてる魔法があった場合も、教えていただければと思います。
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