※あくまでこのお話は、本当に書きたいシリーズのための伏線的な役目を担うものです。そのため、途中で更新がストップする可能性も考えられますのであしからず。
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ
「………どういうことなの?」
いやホントにどういうことなのよ!?
何で私、こんな世界に来ちゃってるわけ!?
私はマァム……物の試しにと、覚えたての移動魔法「ルーラ」を使ってみたら、着いた先は何故か別世界っていうね。
冗談抜きで、何をどうしたらこんなことが起こるわけ!?
…って言っても始まらないわね。
取り敢えず、ここがどんな世界なのかを把握しなきゃ。
「…アクセル……駆け出し冒険者の街…ねぇ」
街の人はそう言ってたけど…個人的にはそんな感じがしないのよね。
一目で熟練者だと分かるような人もいるくらいだし…案外いい加減なのかしら、この街の人は。
とは言え、この世界のことはある程度把握できたから、よしとしましょうか。
どうやらこの世界では、モンスターを倒すことが職業の一種として認識されてるみたい。
でもって、その職業…冒険者ってのになるためには、「冒険者ギルド」とかいう場所で登録しないとダメだとか…。
街に1つは必ずあるものらしいから、元居た世界に比べたらお手軽ね。
しばらく歩いていると、私と似た感じの服装をした人達のたまり場みたいな建物を見つけた。
もしかしなくても、あそこで合ってるわね。
確認も兼ねて、私は受付らしきところへ向かった。
何故か1列だけ混んでるから何事かと思ったけど……納得したわ。
異性に興味を惹かれるのはお互い様……別品さんとあれば尚更ね。
同性同士なら話がスムーズになるんじゃないかと思って、私はその受付嬢にコンタクトを取った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あの~、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」
「はい、どういったご用件でしょう?」
「『冒険者ギルド』ってのは、ここでいいの?」
「そうです。あ、もしかして、冒険者希望の方ですか?」
「それも確認したいんだけど、冒険者ってのはモンスターと戦う人達のことで合ってるのかしら?悪いんだけど私、ここらに来たのは初めてで、勝手がよく分からないのよ」
「そ、そうなんですか……」
まぁこの世界の人達からすれば常識なんだろうけど、私にとっては何もかもが初めてのこと。
“日夜モンスターと戦ってる”って意味では同じだし、まぁ大丈夫でしょう……なんて考えは甘かったわ。
取り敢えず現時点で把握できた共通点としては、“スキルポイントを消費してスキルを獲得する”“経験値でレベルが上がる”というものがある。
でも相違点は多く、“魔法とスキルが混同している”“レベルに関係なくスキルを獲得できる”“どの街にもギルドはあり、そこに行けば何時でも転職できる”等々。
取り敢えず難しいことは後回しにして、書類への記入に専念することにした。
…ていうか今更だけど、この世界の文字って私の所と全然違うじゃない。
なのにどうして普通に読めてるわけ?
……まさかとは思うけど、これも全部“アイツ”の仕業!?
もしそうなら何が何でも1発ぶん殴ってやる…!
「…なるほど、マァムさんですね。それでは、こちらの『冒険者カード』に手を触れてください」
またしても聞き慣れない単語が出てきた。
なるほど、モンスター討伐を職業とする人はこのカードを持っている必要があるらしい。
私が言われるままに手を置くと……
「な、何ですかこれは!?」
何だか分からないけど、物凄くビックリされた。
「腕力と敏捷性、それに防御力が桁違いに高く、幸運もそれらに次いで高い!知力と魔力はそこそこ…ってそれよりも、一体何ですかこの大量のスキルは!?それも見たことないものばかり!」
「あら、見たことないの?1つも?」
「はい!1つもありません!」
…もうここまで来ると“ガワだけ同じで中身は大違い”ってところね。
逆に何処が共通しているのやら……もうやめちゃおう、こんなあら捜しは時間の無駄だわ。
「ところで、私はどんな職業が適任なのかしら?」
「え…あ、はい!こちらが職業の一覧となっておりまして…そうですね、このステータスですと、こちらの『ソードマスター』がオススメです」
「ソードマスター?確認だけどそれ、剣をメインに扱う職業なのよね?」
「はい、そうですが…」
「なら却下ね。私、基本的に拳でモンスターと渡り合ってきたから、剣なんて触ったことすら無いのよ」
「こ、拳でですか!?」
「そうよ。強いて扱ったことがあるとすれば槍くらいのもの。それにしても…こう言ったら失礼かもしれないけど、何というかパッとしない職業ばかりね…」
「……因みになんですけど…マァムさんって、以前はどんな職業を?」
「以前?それなら『武闘家』と『僧侶』よ」
「…初めて聞く職業ですが、どういったものなのでしょう?」
そう言いながらこの受付嬢は、ロクに下も見ず器用に紙とペンを取り出して、メモを取る態勢に。
…重度のメモ魔なのかしら?
「え~と、まず『武闘家』は格闘技でモンスターと戦う職業よ。前衛職の一種ね。『クルセイダー』とかいう鎧と盾でガッチガチに固めるタイプじゃなくて、攻撃力と素早さで先制攻撃を担う…所謂“攻撃的前衛職”って感じかしら」
「ふむふむ…」
「そして『僧侶』だけど、一言で言えば攻撃もできるアークプリーストよ」
「攻撃もできる?」
「そう。ホラ、アークプリーストって悪魔かアンデッド系にしかマトモに攻撃できないでしょ?でも僧侶は武器を手にして、普通のモンスターとも戦えるわけ」
「なるほど…それで、最後に就いていた職業はどちらなのでしょうか?」
「最後に?別にどっちか一方だけってわけじゃ…強いて言えば両方ともよ」
「りょ、両方ともって………ちょっと待ってください。ということはあの~、マァムさんのところでは職業が兼任できるということでしょうか?」
「そうだけど……もしかして兼任できない感じ?」
「はい…」
「あらら、となると結構ヤバいわねこりゃ…」
複数選べるならば、幾らか妥協点を見つけられたんだけど…1つしか選べないとなるとねぇ…。
槍を扱う「ランサー」は大したスキルが無いし、アークプリーストは魔力が心もとないから除外。
魔法を多用するアークウィザードも当然除外ね。
形式的に兼任してるっぽい感じの「ルーンナイト」も、ソードマスターとアークウィザードの相の子だから、剣がマトモに扱えず魔力の少ない私には向かない。
さて…どうしたものかしら。
「あ、あの……どうしても兼任されたいというのであれば、もうこちらしか残っていませんが…」
そう言って受付嬢が指さしたのは、職業欄の一番下にあった職業…「冒険者」だった。
基本職ないし最弱職と称される職業で、固有のスキルが存在せず、スキルを習得するには必ず他の人から教わらないといけない。
しかも習得に必要なスキルポイントが他の職より多いんだとか。
「何これ…いいとこなしじゃないの」
「い、いえ、そんなことはありません!基本職にも強みはちゃんとありますから!」
「ま、そりゃ1つぐらいは有ってもらわなくっちゃね。じゃなきゃ無意識のうちに誰かしら殴ってるかも……それは置いといて、強みは何なの?」
「……!え、え~とまず、スキルの習得に多くのスキルポイントと、スキルを教えてくれる人が必要になることはご理解いただけたと思いますが」
「えぇ、その辺は一応ね」
「ですが『冒険者』にとってはそれが強みでもあります。要するに、スキルポイントと教え手さえ確保できれば、あらゆる魔法・スキルを習得可能…もっと言えばどの職業よりも手数が多いのです。…まぁ本職と違って職業補正が得られませんから、結果的に器用貧乏になってしまうのですけどね…」
「なるほど………ってちょっと待った。あなたさっき、スキルポイントが他の職業より多く消費するとか言ってたじゃない?ってことはさ…『手数が多い』って状態にするのはほぼ無理なんじゃなくって?」
「へ?」
「あなたまさか…私をいいように唆して適当に誤魔化そうとしたんじゃ…?」
まぁ悪い意味で成り手が少ないから十分に把握してない的な感じなんだろうとは思うけど、確認を兼ねて軽く一睨みしてみた。
すると受付嬢は…泡拭きそうなほど慌て出した。
まるで借金取りに脅されて後が無くなったみたいに。
そこまで本腰入れて圧力掛けたつもりはないんだけど…。
「い、い、い、いえいえとんでもございません!個人差とかはあれど、他の職業に比べたらレベルの上がりやすい職業ですから、その辺は大丈夫だと思います。それに最悪『スキルアップポーション』もありますし…」
「スキルアップ……ポーション?」
「はい。1本飲めばスキルポイントが1、必ず増える優れものです。ただ作るのが非常に難しいようで、滅多に出回っていませんし、それなりにお値段も張るものではあります」
「……この世界はとことん私にやさしくないのね」
「あはは……あ!そうそう、忘れてました。えっとですね、冒険者登録にあたって登録料が必要になるんですが、大丈夫ですか?因みに、支払いはこちらとなっております」
彼女はそう言うと、丸い金属片を1枚見せてきた。
銀でできているように見える。
「……何これ?」
「やはり知りませんでしたか…。エリス銀貨といいまして、これ1枚で1エリスです」
「ふ~ん。というかあなた、さっきより対応が柔軟になったわね」
「ええ、マァムさんとお話する際には、こちらの常識を全て除外して対応すべきだと判断しましたので」
「…賢明な判断ね。ところでこの銀貨、女の顔が彫られてるけど…誰?」
「ただの女性ではありませんよ。彼女は女神エリス、幸運を司る女神様なのです!ご存じないですか?」
「全くの初耳だわ。私はド田舎の生まれだからね…一般庶民が王様の顔を知らないのと同じようなものよ」
「は、はあ……」
「でもって、私のとこでのお金はっと……これよ!」
私は背負っているリュックから金貨を1枚指で弾き、受付の少し飛び出た台の上に置いた。
受付嬢はそれを物珍しそうに見つめている。
「……これが?」
「ゴールド硬貨よ。これが私のとこの通貨なの。1枚1ゴールドね」
「そう…ですか…………弱りましたね。この様な通貨は見たことがありませんから、換金のしようが…」
「…要するに、ここじゃ文無しってわけか」
「……分かりました、ではこうしましょう。まずマァムさんには登録を先に済ませて、そちらの掲示板にある討伐依頼を請けて頂き、その報酬から差し引く形で登録料を支払ってもらいます」
「討伐依頼?勝手に倒しちゃダメなの?」
「ダメですよ!ここではそういうルールなんです。他の冒険者が請けた依頼の対象モンスターかもしれないんですから!」
「分かった分かった。それじゃ冒険者で登録をお願いするわ」
というわけで、冒険者登録を済ませた私は受付嬢(名前はルナというらしい)の勧めで「ジャイアントトード」なるモンスターを討伐することに。
名前の通り巨大なカエルで、アクセル周辺にいっぱいいるらしい。
食欲旺盛で動くものは何でも飲み込もうとするため、住民への被害が絶えないんだとか。
ついでに皮膚が柔軟で、打撃によりダメージは見込めないらしい。
とは言え、私も元居た世界でだてに鍛え上げたわけじゃないから、多少は効果があると思う。
確かめる意味も兼ねて、私は早速討伐に出かけた。
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「…思ったよりデカいのね」
それが感想。
見上げるほど大きいのに、雑魚モンスターに属してると思うと…まさに見掛け倒しね。
取り敢えず近くをうろついていた1匹に狙いを定めて、1発かましてみた。
「『猛虎破砕拳』!」
両腕の「魔甲拳」と左肩の「メタルフィスト」、この2つの装備の力を借りての全力パンチ……といっても、今は両方とも“誰の目にも”見えてない状態なんだけどね。
それもこれも全部“アイツ”のせいなのよ。
何だか知らないけど勝手に改造して、私の身体と同化している状態なわけ。
勿論、私の意思で実体化させることもできるけど…ハッキリ言って実体化させる意味ってあんまり無い。
ていうかむしろ、脱着しなくて済むから便利なんだけど………それをやってのけたのが“アイツ”だからね……。
まぁそれは置いといて、肝心の結果はというと……圧勝した。
拳が当たった瞬間、ジャイアントトードの身体が木っ端微塵………一瞬自爆したのかと思っちゃったわ。
てかこれってジャイアントトードが思ったより脆かったの?それとも私のバカ力のせい?
どっちにしろ惜しいことしちゃった…何しろルナが言うには、ジャイアントトードは食材になるらしい。
こんなに粉々じゃ、引き取ってはもらえないわよね。
取り敢えず、次からはもう少し加減してみようっと。
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『ドブチュウウウゥゥゥゥゥゥ……………!』
取り敢えずノルマの5匹は討伐出来た。
それにしても、手加減って結構難しいわ。
モンスターが食材になるなんて今まで無かったし……仕方ないか。
私は残った4匹を引きずりながら冒険者ギルドに戻った。
「す、凄いですね。この短時間で…いや、このステータスならば或いは……それよりも、ジャイアントトードの腹に開いている謎の穴は一体?」
「ああ、これ?私の拳の跡よ」
「こっ!!??」
「ホラ、あなたさっき言ってたじゃない『ジャイアントトードは食材になる』って。だから必要最小限のダメージで倒さなきゃいけないでしょ?ところが私、今までそういう加減ってやったことなかったから、これが難しくてね~。最初の1匹は粉々にしちゃったし」
「粉々!?」
「いやあれは私の方がビックリよ。殴った瞬間自爆したのかと思っちゃった」
「は、はあ………」
「それはそうと、報酬はいくらなの?」
「あ、少々お待ちを…………ではこちら、討伐報酬にジャイアントトード4匹の引き取り料、そこから登録料1000エリスを差し引いて、12万4千エリスになります」
「ありがとね。ジャイアントトードは沢山いるみたいだし、取り敢えずこれで食費と宿代は大丈夫っと。あとはレベルアップをどうするか……」
「……ではこれなどいかがでしょう?本来は低レベル冒険者には向かないものですが、マァムさんの実力なら或いは…」
そう言ってルナが見せてきたのは…「初心者殺し」というモンスターの討伐依頼だった。
名前の通り駆け出し冒険者の天敵のようなモンスターで、主に森に棲む雑魚モンスターの近くを徘徊するらしい。
とはいえ、特殊な能力等は持っていないようなので、もしかしたらやれるかも。
というわけで請けてみたんだけど……ルナは半分冗談のつもりだったらしく、結構動揺してたわね。
ま、請けると言ったからには行かせてもらうけど。
その道中でゴブリンの群れを見つけた。
ゴブリンは下級モンスターの仲間だけど知能はそれなりにあって、弓が扱える者もいるらしい。
本来は10匹程度の群れだと聞いたんだけど…軽く30匹はいるんじゃないかしら。
それに、何となく危険な香りがするのよね……これはひょっとして?
『ヴルルルルルルルルル……………』
私の勘は大当たり。
それらしき唸り声が響いたかと思えば、直後に茂みの中から黒い毛に覆われた獣が姿を現した。
パッと見は狼に似てるけど、熊よりも大きくて見るからに狂暴そう。
だけど……不足はない。
私は初心者殺しを仁王立ちで睨みつけ、そしてゆっくりと歩み寄る。
自分を見て逃げるどころか、むしろ近づいてくる…初心者殺しにとっては予想外のことのようで、明らかに動揺してる。
『………ガアアアアアアアァァァァァァァァァ!!』
そして明らかに破れかぶれな突進。
自分で言うのも何だけど、明らかに体格の違う相手に初見でビビるってどうなの?
ま、倒すことに変わりないんだけどね。
私は初心者殺しの攻撃を躱して懐へ潜り込み、全力のアッパーを食らわせた。
『ベキャアア!!』
骨が折れる生々しい音と共に、初心者殺しは天高く舞い上がり、そのまま地面に激突。
息絶えてはいるようだけど、念のためにカードを見て討伐できたことを確認。
そういえば、この獣が食材になるかどうか聞いてなかったわね………まぁ大した手間でもないし、問題無いか。
初心者殺しを引きずりながら街へ戻る途中、ジャイアントトードがいる平原に出た直後……不意に謎の爆発音が響いてきた。
音の発生源はかなり遠かったが、聞こえた瞬間には全身に緊張が走り、私は思わず初心者殺しを手放して身構えてしまった。
何故こんな事になったのかと聞かれれば…間違いなく例の“爆裂呪文”のせい…。
自信過剰だった当時の私は………今の旦那の助けがなかったら、今の私は生きてなどいなかった。
以来、私は爆発音に過敏に反応するようになったというわけ……流石に小規模な爆発は問題ないけどね。
兎に角、この世界にも似たような魔法ないしスキルが存在すると分かった以上、注意しとかなきゃ。
その後は何事もなくギルドに戻ってこれた。
「またあっさりと……というか、持って来ちゃったんですか!?」
「えぇ、これが食用に使えるかどうか聞くの忘れてて…」
「あ、なるほど……残念ですが、初心者殺しは食用になりませんので」
「あら残念」
「あ、でも毛皮は利用できるかもしれません。衣類販売店に相談してみては?」
「う~ん、じゃあそうしようかしら。折角運んできたんだし」
「それとこちら、討伐報酬の200万エリスです」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
結論から言うと、初心者殺しの毛皮は結構な値段で売れた。
何でもそこらの毛皮より遥かに丈夫で防寒性が高いので、冬服にもってこいなんだとか。
それはともかく、これで当分の生活費は確保できたから……おっとそうだ、レベルはどうなったかしら?
と思ってカードを見た…………けど、現実は厳しい。
レベルは未だに1のまま。
「…地道に頑張るしかないわね」
今日はもう遅いし、そろそろ宿屋に………そう言えば、ここに来てから何も食べてなかったわ。
というわけで、冒険者ギルドに併設されている小料理屋に立ち寄ることに。
私が到着した時、ギルドの受付で魔法使いらしき服装の少女が何やら言い争いをしていた。
聞き流すつもりではいたんだけど、「爆裂魔法」というワードが聞こえてきたので、何となく耳を傾けてみる。
どうやら大爆発による損害賠償で報酬が天引きされたらしい。
…もしかして、あの時の大爆発は彼女の「爆裂魔法」とやらのせいだったのかしら?
取り敢えず私はテーブルに座り、ジャイアントトードのステーキを注文。
もめていた少女は諦めがついたのか、一番奥の薄暗い席に向かっていった。
よく見ると、女の子がもう1人座ってる。
パッと見は騒いでた子より年上に見えるけど、もしかしたら幼馴染同士で組んで行動しているとか?
そんな感じであれこれ考えを巡らせていると、注文したステーキが運ばれてきた。
取り敢えず今は明日に向けて腹ごしらえ。
これが蛙から作られたとは思えないほど美味しいことよ。
柔らかいし脂っこくないし、それでいてしっかりと味がする。
未だにこれが、あのジャイアントトードの肉だとは信じられないくらい美味しいの。
そんなこんなで、初日は割と充実していた。
翌日も強力なモンスターの討伐依頼を請けてみたんだけど、やっぱりレベルアップには至らない。
それにしてもあの「一撃熊」とかいうモンスター…あんなデカい図体で見るからに狂暴そうなのに、何だって畑荒らしなんかしてたのかしら?
パッと見純肉食かと思いきや実は雑食って感じかしらね。
あれだけデカけりゃ小回り利かなそうだし…。
それはともかく、そろそろ効率よくレベルを上げる方法を考えなくちゃ。
序に初期ポイントが結構あるから、誰かにスキルを教えてもらいましょうか。
故あってアーチャーのスキル「狙撃」を習得してみたいのよね。
そんなことを考えながら歩いていると、何やら見慣れない女の子を見かけた。
水色の長髪をおかしな結い方でまとめ、服は全体的に青を基調としてる。
そして何故か知らないけど、紫色の羽衣を纏っている。
何より、何らかの不思議な力を纏ってるような…そんな感じがした。
何をしているのかと思って様子を見ていると、どうやらお年寄りから寄付を募ってるらしい。
その時「アクシズ教」というワードが耳に入ってきたんだけど………あまり良い噂を聞かない宗教なのよね。
にわかには信じられないけど、他の宗教を平気で侮辱し、教会に石を投げ込んだり、貧しい人への配給を当たり前のように盗んだりと、悪行の限りを尽くす………とかなんとか。
どこまで本当なのか分からないけど、警戒はしとくべきかも。
残念ながら声をかけられたお年寄りはエリス教徒だったが……エリス教とアクシズ教の女神は先輩後輩(?)の関係にあるらしく、同情の意味を込めて快く寄付に応じていた。
これが精神的にキタのか、青髪の子は体を引きずるように力なくギルドへ向かう。
そういえば、アクシズ教の信者達はエリス教徒を敵視してるって聞いたけど……敵に情けをかけられるって、時と場合によっては敵に精神的ダメージを与えることになる…のよね。
そう考えると……敵対してるってのは本当かも。
ギルドに戻った青髪の子は、受付にて茶髪の青年と合流した。
でもその青年…ちょっと異様な雰囲気を醸し出してる。
原因は、彼が身につけている緑を基調とした服装なんだけど………何というかこう…完全に浮いてるのよ。
周りの人とは全く違う……そう、まるで全く別の次元の世界から迷い込んだみたいな感じの格好。
一体何者かしら…?
取り敢えず冒険者登録が済んだようで、2人は今後について話しだした。
耳を澄ましてみると、“転生”というワードが時折出てくる……ということはあの茶髪の男、私と同じように別の世界から来たってことかしら?
もしそうだとしたら…何となく気が合うかもしれない。
私は事実確認をするために、それとなく彼らの隣の席につく。
位置的には彼らの真後ろになるわね。
「ハァ……どーするかねこれから…」
「それはこっちのセリフよ!何で私がこんなとこに」
「『転生』…ねぇ」
印象に残ったワードで会話に割って入ると、テーブルに突っ伏していた青年と青髪の子は凄い勢いで振り返った。
青年の方は「転生」というワードを口にしていた自覚があったらしく、額に一筋の冷や汗が流れる。
「ひょっとしてあなた、こことは別の世界の住人なの?」
「い、いや、そういうことは…」
「無理に誤魔化さなくていいわよ、その服装は絶対この世界の住人のソレじゃないもの。それに私も、あなたとは違う方法でこの世界にやってきた存在だし…」
「ええ!?」
驚いた様子を見せたのは、意外にも青髪の子の方だった。
それも掴みかかりそうな勢いで…。
「ちょっと待ちなさいよ!それどういう意味なの!?私達の力を使わずにどうやって…」
「実は私にもサッパリ。覚えたての移動魔法『ルーラ』を使ったら何故かここに来ちゃったのよね。困ったもんだわ」
「へ!?る、ルーラ!?」
今度は青年の方が食いついてくる。
なんか変なこと言ったかしら?
「あ、あの~すいません。ちょっと確認したいんですけど……『ホイミ』…って魔法、知ってます?」
「ん?知ってるわよ勿論。初級の回復魔法よ」
「通貨は……ゴールド?」
「そうだけど……何でそこまで知ってるの?その服装を見る限り、私の世界とも違うっぽいのに…」
詳しく話を聞いてみると、彼が元居た世界には偶然にも、私がいた世界と非常によく似た世界を題材とした空想物語があるんだとか。
しかもまるっきり同じ魔法やスキルが登場するあたり、偶然って恐ろしいとつくづく思った。
「んでもって確か、俺の記憶が正しければ……1ゴールドは大体100エリスくらいだったと思います」
「ふ~ん、もしそうだとすると…この街の宿って相当割高ね」
「でしょうね。そちらじゃ、高くとも1泊1000エリス前後が相場だから…」
「え゛、そうなの!?いやいや逆に元取れんのそんな値段で!?」
「取れなきゃもっと高く設定してるでしょうに。おっと、自己紹介がまだだったわね。私はマァム、ネイル村出身よ」
「俺、佐藤和真っす。ついさっきこの世界に来ました。出身は東京ってとこです」
「そして私は女神アクア。この男に第二の人生をあげた偉大なる女神様よ!称え崇めなさい!」
…青髪の子の自己紹介が変だったけど…気にしたら負けよね。
「…なるほど、カズマとアクアね。これからよろしく!」
「ん?これからよろしくって…もしかして、仲間になってくれるんで?」
「ええ、そのつもりよ」
「おおお、そりゃメッチャ有り難いっす!」
「うふふ、あなたもようやく私の偉大さに気」
「まぁ出身は違うけど異世界から来た者同士だし、そういう意味じゃ親近感が湧くと思って」
「あ~納得。それじゃどうせですし、マァムさんのステータスとか教えてくれません?」
「いいわよ」
こうして私は、異世界からの転生者にして“同じ冒険者”のカズマ君と、お互いの世界その他について語り合った。
私の方は冒険談やスキルのことを中心に話し、カズマ君は私に合わせて空想物語のもろもろを中心に話を進める。
ただ…レベル1で一撃熊や初心者殺しを討伐した話を終えたあたりから、カズマ君が私のことを無意識に「姉さん」と呼ぶようになったのが…何となく気になってはいるのよね。
それはともかく、この世界に来て2日目にして、行動を共にする仲間ができたのは大きいわ。
いくら私が実力者だからといって、1人でやれることには限りがあるからね。
「さてと、今日はもう微妙な時間帯だし、明日に備えるとしましょうか。まずは装備関係ね」
「ま~そうでしょうけど、俺らまだ金なんてないし…」
「大丈夫よ。ある程度なら手持ちで何とかなるわ」
「え、姉さんが出してくれるんですか!?」
「私は強いモンスターとか倒してて、予算は幾らかあるのよ。大体その服、これからモンスターを討伐しに行く格好じゃないしね。それに見たところ武器も無いようだし」
「…何から何まですみません、いやマジで。いやそれより、マァムさんのは」
「私?私の武器は基本的にコレだから!」
私は自分の腕を叩きながら言った。
実際のところ、アクセル周辺のモンスターなら武器要らずで十分に戦える。
それに武器も幾らか揃ってる………いや、勝手に揃えられたと言った方が良いわねこれは。
昨日の夜リュックの中身を確認してみたら、手に入れた覚えのない装備がいくつか入ってたからね。
うち1つには“アイツ”の直筆と思しきメモがくっ付いていた。
「おっと、そういえば武器屋が何処か知らないわ。取り敢えず探しましょうか」
「そうっすね」
「ちょっと!さっきからずっとこっち無視してるでしょ!?私抜きで話進めるのはどうなのよぉ!!」
その後も何やかんやあったけど…一応さまにはなったかしら?
取り敢えず他の冒険者と遜色ない格好だとは思う。
けど問題は武器よね。
今の彼が扱えるのは、武器屋曰くショートソードぐらいのものだとか。
それでも一番強力なのが手に入ったし、ジャイアントトードくらいなら問題ないと思う。
この日は夕食後に別れ、私は宿に、2人は馬小屋へ向かった。
ベッドに寝転がりながら、私は今日のことについて考え込む。
何故そんなことをするかといえば……例の青髪の子のことだ。
のっけから自分のことを女神だと自称してたけど……半信半疑だわ。
とはいえ、出会った時から彼女の周りに何か………よく分からないけど、見えない何か…オーラのようなものを纏っている感じがしたのよね。
もしかしたら本当に…いやでも、そうだとして自分でそのことをひけらかしたりするかしら?
そんな考えが頭の中で駆けまわり、私はいつの間にか夢の世界へ旅立っていた。
次回予告
新たな仲間を募集することにしたカズマ一行
マトモな人が来てくれることを願うものの、
やってきたのは…何とも言えない凸凹魔法使いコンビ
果たして彼らの明日はどう転ぶ?
次回「三バカトリオ 悪い子良い子 普通の子(じゃない)」