兎に角いそがねば。
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ
翌朝、私は早起きして身支度を整える。
今日はパーティを組んでのモンスター討伐の日だから、遅れないようにしないと。
それに…何だか嫌な予感がするのよね。
カズマ君はいいとして、問題は例の青髪の子。
そういえばカズマ君から彼女のことを聞くの忘れてたわ。
取り敢えずウォーミングアップを兼ねて軽くランニングしながら、2人が泊まっている馬小屋へ向かう。
私が到着するのとほぼ同時に、2人が馬小屋から出てきた。
……青髪の子を引っ張りながら。
「ホラ、急げアクア!遅れるぞ!」
「う~ん、あと5分だけ~…」
「いつまで寝ぼけてんだよ全くぅ!」
彼女は朝に弱いのかしら?それとも
「だるい~面倒い~」
………ただの怠け者らしいわね。
「なら、元気が出る方法教えてあげましょうか?」
「ん?あ、マァム姉さん、おはようございます!」
「誰が姉さんよ、ったく」
「そんなことより~、あなた元気が出る方法知ってるんだってね。この偉大なるアクア様に働いてほしいなら、その方法とやらを教えなさい、今すぐにね!」
「それが人にモノを頼む態度かよ!!」
カズマ君の言う通り…何だってこの子は、こんな露骨に上から目線で喋れるのかしら。
後でカズマ君から詳しく聞いてみましょうか。
「……教えてあげるからこっちに来なさい。そう、そのまま動かないでね」
そう言って私はアクアの顔面を両手で掴み、思い切り頭突きを食らわせた。
『ガァァァァンン!!』
「いっだああああぁぁぁぁぁぁい!!」
青髪の子は頭を押さえて転げまわる。
けどすぐに起き上がって私に迫って来た。
「ちょっと!いきなり何すんのよ!!」
「ほらね、バッチリ目が覚めたでしょ?」
そう言って私は青髪の子、もといアクアを肩に担いだ。
「ちょ、今度は何!?」
「今日はパーティでのモンスター討伐する日でしょ。ほら急いだ急いだ!」
「待ちなさいよ!まさかこの私をこの状態でギルドまで連れて行くつもり!?」
「時間が勿体ないもの。さてとカズマ君、ギルドまで軽く走りましょうか」
「へ?走っていくんですか?」
「これからモンスター討伐でしょ?体を温めとかないと思うように動けないわ。それにあなた、見るからにあんまり運動していないようだしね」
「返す言葉も無いですはい……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
というわけで、今回請けた討伐依頼はジャイアントトードを10匹倒すこと。
平原に向かう途中、カズマ君から質問が。
「ジャイアントトードって、具体的にどんなモンスターなんですかね?」
「見上げるほど大きな蛙よ」
「っ、み、見上げるほど!?」
「そうよ。それに柔軟な体のせいで打撃でのダメージは期待できない。だから剣とかが必須なわけ」
「何か足が重くなったような気が…」
「今更何言ってるの。もう着いたんだから、男なら覚悟決めなさい。というか、今回の討伐依頼はカズマ君のためのものなんだからね?」
「俺のため?」
「そう。私は前の世界で色々と極めすぎてるから、よっぽど強い敵でない限りレベルアップは期待できないのよ。むしろレベルアップが必要なのはカズマ君の方。この世界では、自分の身ぐらいは自分である程度守れるだけの腕がなきゃ生き残れないわよ?大丈夫、もしもの時は私がカバーするから。ほらアクアちゃん……でよかったっけ?アークプリーストらしくキチンと役目を果たしなさいね!」
「…ういっす」
「ちょっとあんた、人の名前ぐらいちゃんと覚えなさいよ!!」
とにもかくにも、ジャイアントトード討伐が始まったんだけど…………思った通り、カズマ君は苦戦を強いられてる。
「うおおおお!!わっちょぉ!ちょっちょい、ちょっとすいません!これ、さっきから何度も攻撃してるんスけど、全然効いてなさそうなんですが!?」
「いや、若干だけど最初より動きが鈍いわ。ダメージは入ってるはずよ!」
「それ聞いてチョットだけ安心した!てかダメージナシじゃ困る!」
「とにかく落ち着いて、相手の出方を見るの!なるべくなら背後に回った方が良いけど、それがダメなら長い舌の軌道を読んで、躱しながら確実に攻撃すること。結果を急いじゃダメよ!」
「そうは言っても、こちとらそんなこと考える余裕無いです!!」
「それとアクアちゃん、まさかどさくさに紛れてサボってないでしょうね!?」
「やってるわよちゃんと!!そう言うあんたこそ、さっきからサボってばかりじゃない!!」
「…あなた、話聞いてなかったの?今回のモンスター討伐は、あくまでカズマ君のためのもの。彼がある程度戦えるようになるには、何より実戦経験が欠かせないから……っと、早速邪魔者が来たわね」
カズマ君が戦っているすぐ横で、チャンスをうかがう1匹のジャイアントトード。
私は一目散に駆け出し、どてっぱらに一撃を食らわせた。
『ドブチュウウウゥゥゥゥゥゥ……………!』
素手スキル『正拳突き』
力をこめて、敵1体を殴りつける
こんなスキルが数多くあったというのに、何で1つも習得しなかったのかしら?
あの頃の私に説教してやりたい…もし習得していれば…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…………………………………………無益な情け…………仲間を危………………………………仲間を売る………………………………………………………………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……………………っ!」
全く…何だってこのタイミングで“アイツ”の言葉が脳裏をよぎるのかしら?
確かにあの頃の私だったら……ひょっとしたらそうかもしれないけど……。
ってそんなこと言ってる場合じゃなかった!
今度は2匹同時に迫ってきてる。
…でもまぁ、最初の1匹は討伐できたようだし、初戦にしては上出来ね。
もしかしたら、カズマ君って意外と才能アリ…だったりするのかしら?
『ドゴッ!!』
「ああ、マァム姉さん!」
「マァムでいいってば。左の蛙は私が引き受けるから、カズマ君は右の…」
ここまで言った時、私の目の前を左から右へ走り抜ける青い影。
……そう、青髪の子が何故か私達より前に出たの。
「ちょ、ちょっと何してるの!?後方支援のアークプリーストが前に出ちゃダメじゃない!」
「冗談じゃないわ!さっきからあんた達ばかり目立って、こっちは商売あがったりよ!!どーせあんた、私のことを無能だと思ってるんでしょ!?」
…いや待って、何をどう考えたらそういう結論に至るの?
アークプリーストはアンデッドと悪魔にしか攻撃できないから、仲間の補助に回るのは普通のこと。
ダメージを負って倒れたりしないように、パーティの後方で構えるのも当然のこと。
ごくごく当たり前のことしかやっていないはずなんだけど……どういうこと?
「いいわ!いくらアークプリーストだといっても、この女神アクア様には関係ない!さあそこのバカガエル、今こそ審判の時よ!『ゴッドブロー』!!」
そう言うと、私が殴った方のジャイアントトード目掛けて突進する。
…技名は神々しい感じだけど、まかせて大丈夫かしら?
いやでも、両手から何かオレンジ色のオーラみたいなものを纏ってるし、あるいは………。
意識を戻してジャイアントトードの方を見ると……ジャイアントトードしかいない?
ってよく見たら…ジャイアントトードの口から何か出てる?
あれは…足かしら?
「…………って食べられてるんじゃないの!!」
私は大急ぎで、ジャイアントトードと戦っているカズマ君を引き剥がしにかかった。
「カズマ君、作戦変更よ。アクアが食べられたの。私があっちの相手をするから、救出頼むわね!」
「へぇ!?ちょっと待った!急すぎて付いて行けないんですが!?てか何でそのまま倒さないんですか?」
「何言ってるの、あなたも男なんだから女一人くらい助けられるようになりなさいな。パーティ組んでる以上、出来の悪い子を引っ張っていくのもデキる人の勤めよ。それにホラ見て。ジャイアントトードは食事する時、全く動かず無防備な状態なの。だから…」
「…あ、何となく分かりました!要するに~、今のカエルは動かないし、姉さんが一撃入れてるから倒しやすいと!」
「まぁ、そんなとこよ」
カズマ君って、私が思った以上に適応力が高いみたいね。
これならパーティーのリーダーも務まるんじゃないかしら。
取り敢えずアクアちゃんは救出できたみたいけど、さっきからずっと泣きじゃくってる。
それを見た私は……何を思ったのか、リュックからとある装備を取り出して、両腕に装着した。
ベアークロー
何故かリュックの中に入っていたツヤのある黒いツメ装備。
いや、入れたのは間違いなく“アイツ”だわ。
だって、この装備にだけメモが張り付けてあったんだもの。
『ツメ装備は武闘家の基本だってのに、いつまで経っても入手しねぇから勝手に入れとくぜ。コイツは魔甲拳実体化時、そのオプションとして機能するように形状が変化する優れもんだ。当然ながらオメーの魔甲拳メタルフィストその他諸々より遥かに丈夫で長持ち。ザマァm9(^Д^)』
“アイツ”………実力は確かだけど、それ以上に人をイライラさせる才能が抜きん出てるわ間違いなく。
それはともかく、装着を終えた私はアクアに向けて一言。
「……女神を名乗りたいなら、これくらいやりなさい」
私はそう言って、残る1匹に向けてスキルを発動した。
「『ゴッドスマッシュ』!」
爪スキル『ゴッドスマッシュ』
敵単体の全てを切り裂く神の雷
見るからに超強力な雷属性の斬撃を食らったジャイアントトードは、スライスどころか粉々になって燃え尽きた。
いくら一時的にテンションがおかしくなったとしても、流石にこれはやりすぎたわ。
ふと後ろを見れば、2人は抱き合ったまま固まっていた……カエルの粘液のことをすっかり忘れて。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私達がギルドに戻ったのは昼頃のこと。
当然ながら“働かざる者食うべからず”のもと、皆でジャイアントトードを運んだわ。
でもって私はカズマ君達が銭湯に行ってる間に報酬を受け取り、小料理屋の席でくつろいでいる。
特に何をするわけでもない。
暫くすると、2人が銭湯から戻ってきた。
「お待たせしました」
「そんなに待ってないって。むしろお昼ピッタリじゃない」
そんな訳で、昼食を取り始めたんだけど……途中でアクアが急に口を開いた。
「仲間を募集しましょう!」
「「は?」」
「パーティー3人じゃ少なすぎるわ!強いモンスターと対峙するかもしれないってのに!そうよ、直ぐに行動に移しましょう!それがいい!!」
「おいちょっと待て!勝手に1人で話を進めるな!!」
カズマ君の話も聞かずにギルドへ向かう青髪の子…何をする気かしら?
暫くすると、掲示板に1枚の張り紙を張り出した。
内容は一緒に戦ってくれる仲間を募集するものだったんだけど………内容が…ね。
特にカズマ君への誹謗中傷が半端なかったのよ。
当然、即書き直させたわ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……来ねぇな」
「何でよぉ!!」
翌朝にそんな会話が聞こえてくる。
そりゃそうでしょうね…一応私達は駆け出しなんだから、そう都合よく強い人が仲間に加わるわけもない。
と思いきや、私達の目の前に2人の人影が。
「仲間募集の張り紙を出した方ですね?」
そう言ってマントを翻すのは……以前受付で言い争いをしていた眼帯の子。
その隣には、何故か恥ずかしそうにもじもじしている女の子。
「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操りし者!」
「わ、我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、中級魔法を操りし者!」
「…あぁ、やっぱりあなただったのね。噂に聞く“最強の魔法と引き換えに本能以外の全てをなくしたお騒がせ者”ってのは」
そして眼帯じゃない方の子…ゆんゆんが恥ずかしそうにしてたのは、この名乗りを強制的にやらされると知ってたからだったのね。
「ちょ、何ですかいきなり!?それが初対面の人にかける言葉ですか!?」
「仕方ないでしょ、そういう噂が立つようなことをした結果じゃない。私3、4日前にギルドの受付で、あなたが爆裂魔法の影響で報酬が差し引かれた件で、受付の人と言い争ってたのを見たのよ」
私がそう言うと、眼帯の子もといめぐみんは言葉に詰まり、ゆんゆんは右手で顔を覆った。
序にと、私はゆんゆんに質問を投げかける。
「ねえ、因みになんだけど…彼女はどんな依頼を請けたの?」
「え~と、確かゴブリン討伐だったと思います。それで爆裂魔法でまとめて倒せたものの、近くの採掘場で落盤が発生してケガ人が出たらしいんです。それで討伐報酬から治療代が差し引かれて」
「ゆんゆん!余計なことは言わないでください!!」
「めぐみん、無駄なことは止めなさいよもう。彼女が言わなくたって、遅かれ早かれ他の人が噂で流すでしょう。“本能以外の全てをなくした”なんて噂が出るってことは、事情はどうあれ、それだけあなたは悪い意味で注目されてるわけ。となれば、今回のことが噂で流れるのも時間の問題…そう思わない?」
「誰ですか!そんな噂流したのは誰なんですか!今から我が爆裂魔法でぶっ飛ばしに行きますから教えてくださいよ!!」
「何をサラッと物騒なことを言ってるの?それに、伝え聞いただけなんだから誰が最初に噂したのかなんて知らないわよ。大体ねぇ、注目すべきところはそこじゃないでしょう!…要するに、そういう噂が広まるような口実を周りに与えないように努めなさいってことが言いたいの私は!」
「おい、それじゃあまるで私が迷惑ばかりかけているみたいじゃないか!」
「そのことに関してはさっきも言ったじゃない!四六時中ではないにしろ、周りの人がそう考えるくらいに迷惑をかけてるって感じでもない限り、そんな噂が立つわけはないのよ。ワザと相手の評価を下げるのが目的なら、ここまで具体的な内容の噂を流す必要は無いしね!」
「………黙って聞いていれば、好き放題言ってくれましたね!よろしい、そっちがその気なら、あなたにも我が爆裂魔法の力をたっぷり味わってもらおうじゃないか!!」
…いつ“黙って聞いてた”の?
そして何故か目が紅く光っている。
後で知ったことだけど、彼女達「紅魔族」は生まれつき魔法に長けた種族で、感情が高ぶると目が紅く光るらしい。
「私は本気ですよ?」
本気かどうかはさておき、ゆんゆんの制止も聞かないし、他の冒険者達もざわつきだしたし……仕方ないわね、取り敢えず彼女には大人しくして貰わないと…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…………………正義の…………冷酷さ…………………………………………………………値しない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
………またか。
私は再度、めぐみんを見る。
魔法発動のためなのか、長々と呪文の詠唱をしている。
……何というか、今まさにとどめを刺そうとする悪役みたい。
“冷たくするのも優しさ”…当時は血迷っただけだと正当化してたけど……今考えてみると、これも時と場合によってはアリのような気がする。
そして、今がまさにその時のように思えてくる。
な~んて考えた直後、私の体は動き始めた。
ゆっくりと席を立ち、ゆっくりとめぐみんに近づく。
そして……………………
「さあ、気は満ちた!我が中で眠りし最強の力よ、今ここに目覚めよ!!『エクスプロ」
『ビシッ!』
「おお゛あだああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
あ、いけない…チョップの角度を間違えた!
おでこにだけ当てるはずが、鼻にも当たっちゃった…。
ま、取り敢えず魔法発動は中止できたし、よしとしましょうか。
しかしながら、めぐみんは尚も魔法を放とうとする。
「うぐううぅぅぅぅぅ……や、やってくれましたね!今度こそっ『エクスプ」
『ゴスッ』
今度は左の頬に右フック。
個人的には結構加減したつもりだったんだけど、思ったより重い感じの音がしたわね。
それよりも…………気のせいかしら?
ほぼ同時に、私の中で何かが割れるような音がした気がしたんだけど………。
「お、おのれ…1度ならず2度までも!!もう勘弁なりません!!『エクス」
『ゴスッ』
右の頬に左フック。
……何というか、ある意味感心するわ。
だって普通なら、遅くともこの時点で実力差を悟って自ら手を引くものなのに………この子は未だに諦めていない。
自分の力に絶対の自信を持っているのか、それとも実力差を図るのが下手なのか…。
「ぐ………このォ」
「め、めぐみん…そろそろやめにしようよ」
「何を言うのですかゆんゆん!ここまで来て逃げるなんて正気ですか!?」
「だってほら……見てよ」
「はあ!?何ですか!?何を見ろという……の………で………」
流石にこのまま長く続けられると面倒くさいので、私はめぐみんを「軽く」睨んだ。
……いや、彼女達にとっては軽くなかったみたい。
既に冷や汗ダラダラな上に、腰が抜けていないのが不思議というほど足が震えている。
「ば、な、ななな舐められてはここ困りますよ!こ、こ、紅魔族はこんなことでおおお怖気づいたりしませんからね!!」
「………………………………」
「お願いだからもうやめて、めぐみん!!このままじゃ殴り殺されちゃうよ!!」
いや別にそこまでするつもりはないんだけど………そんなに迫力あるのかしら、今の私の顔。
後でカズマ君にでも聞いてみようかしら?
そんなことを考えていたら、ゆんゆんが私の前に立ちはだかる。
「あ、あの………わ、私の連れが、め、迷惑をかけてしまってすみません…。わ、私の方から言っておきますので、どうかこの件はなかったことに…」
「ゆんゆん、あなたここにきて裏切るつもりですか!?よろしい、これは益々ただで済ませるわけにはいきませんね!!!『エク」
ここまでの流れをどう解釈したら、裏切ったことになるのよ!
というかこの子……ゆんゆんも巻き込むつもり!?
そう考えた瞬間………ほんの一瞬だけ、私は怒りで我を忘れた。
でもそれは、めぐみんの背後に回るには十分すぎる時間だった。
気がついた時には、私は既にめぐみんに一撃食らわせる態勢に!
何とかギリギリ踏みとどまって、どうしようかと少しだけ考える。
そして……こめかみを拳でぐりぐりした。
「あ゛あああああだだだだだだだだだだだだあだだだだだ!!!」
私はそのまま、めぐみんを持ち上げる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!わ、分かりました分かりました!私の負けで、負けでいいですからもうやめてくださあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「…分かればいいのよ」
私が拳を離すと、めぐみんは盛大に尻もちをついた。
「あうっ!」
「ったく。こんな人が大勢いる中で大爆発起こそうとか、何を考えてるの!私だけが狙いなら、せめてもっと効果範囲の狭い魔法を使えばいいじゃないの!!」
「あ、あの~、それなんですが…」
ゆんゆんが、如何にも申し訳なさそうな様子で口を開いた。
「何?」
「その…実はめぐみん、爆裂魔法しか使えないんです」
「…………へ?」
「何か『爆裂魔法を極める』とかいう約束を誰かと交わしたらしくて、以来他の魔法には目もくれず……」
「…なるほどね」
とここで、カズマ君が声をかけてきた。
青髪の子が口を開けたままボーっとしているところを見る限り、彼もさっきまで同じ状態だったのかしら?
「…で、結局どうするんスか?結構危ない感じの連中みたいですけど……」
「そうね…私としてはお試しで入れるって感じでいいと思うわ。どっちにしても、後方からの支援攻撃ってやつは必要になってくるからね。カズマ君はどう思う?」
「お、俺?ま、まぁいいと思います。というか、まだその辺の勝手がよく分かんないので…」
『ぐうううぅぅぅぅぅ………』
お試し加入が決定した瞬間、紅魔族2人のお腹が鳴った。
聞けば報酬の天引き等の影響で、3日間まともな食事ができていなかったんだとか。
そんなわけで、彼女達に奢るついでに私達も早めの昼食をとることに。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「『エクスプロージョン』!!」
めぐみんの爆裂魔法が発動し、爆心地から半径20m以内のジャイアントトードがいっぺんに消滅。
と同時にめぐみんはその場に倒れこんだ。
爆裂魔法は純粋な破壊力だけでいえば確かに最強だけど、その分魔力消費も激しいから1日1発だけ…。
2人とも仲間にして正解だったわね。
弱いモンスターは集団行動することが多いから小技を連続で繰り出せるタイプが、強いモンスターは大抵単独行動するから一撃で大ダメージを与えられるタイプが向いている。
少なくともジャイアントトード討伐なら、ゆんゆんの方が役に立つわ。
食材になる以上、中級魔法で倒した方が実入りが多くなるからね。
な~んて考えていたら、めぐみんのすぐ近くまでジャイアントトードが迫ってきてる!
「だから後方支援役が前に出るなってのおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
カズマ君の叫ぶ方を見れば、またしてもアクアがジャイアントトードに食べられていた。
そして結局、めぐみんも……。
でもって、その結末に動揺を隠せないゆんゆん。
「…ゆんゆん、取り敢えずめぐみんを助けてあげて。私は他の蛙を相手するから!」
「は、はい!」
ふと見れば、カズマ君が自主的にアクアの救出に取り掛かってる。
…カズマ君ってやっぱりリーダーとしての才能があるんじゃないかしら?
もしそうなら私的にありがたいわ。
前衛職である私がリーダーなんかしていたら、パーティー崩壊のリスクが高いからね。
そもそも私自身、まともにリーダーシップが取れるとも思えない。
まぁそれは置いといて、2人とも無事だったわけで、あとは残ったジャイアントトードをギルドで換金してもらうだけね。
「…てかマァムさん、俺達ってまだこの2人に自己紹介してないような…」
「「あ!」」
というわけで、紅魔族2人に自己紹介することに。
「俺は佐藤和真。カズマって呼んでくれ。どこにでもいる平凡な冒険者だ」
「私はマァム。切り込み役兼カズマ君の用心棒…みたいな?」
「へあっ!?」
「よ、用心棒!?………それってつまりその……彼女?」
「ゆんゆん、何をどう考えたらそんな風に飛躍するのよ。そんなことがあるわけないでしょ?私、既婚者なんだから」
『既婚者!!??』
「そうよ。私これでも23歳だし…」
「23だったんスか!?どう見ても15、6にしか…」
「いろいろ事情があるの!あ、因みに私のステータスはこんな感じよ」
冒険者カードを見せたら、2人は目が今にも飛び出そうなほどに凝視し始めた。
「…れ、レベル1で一撃熊に初心者殺しまで討伐してる…!しかも何ですか、この見たこともないスキルは!?」
「元いた世界で習得したものよ」
「元いた世界って…………まさか、張り紙にあった『異次元世界から来た冒険者』って…」
「私のことよ。とは言ったものの、就いてた職業が特殊なものだったせいで、こっちの世界の職業とはすこぶる相性が悪くて……それで基本職しか当てが無かったのよ」
「「は、はあ………」」
微妙な空気になっちゃったけど、今はそんなことどうでもいいわ。
明日からは、本格的にカズマ君のスキル習得をどうにかしないとね。
因みにアクアの自己紹介は………もはや語るまい。
次回予告
カズマにリーダーとしての才能を垣間見て、スキル習得のために動き出すマァム
スキルポイントを稼げるイベントが発生するが、
その一方で、新たな問題児の影が忍び寄る!!
次回「キャベツとクルセイダーっぽい何か」