ただ当初の予告通り、あくまで本当に書きたかったシリーズのための伏線的な役目を担うものであり、今回の話がそれに該当します……。
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ
私達の目の前には黒い鍔付きの三角帽に黒装束、多数の怪しげなアクセサリーを身に付け右目に片眼鏡をしている男。
“アイツ”が突然やってきた。
「おう、久しぶりだなオイ」
それも、まるで親友であるかのような軽いノリで。
「ええ、久しぶりね『ネクサス』………出来れば一生会わずに過ごしたかったんだけど」
「グェッヒャハハハハハハ!未だ“箱庭”から抜け出せねぇお前に、んなことができると思ってたのかよ?ついでに、俺がお前のために色々と手引きしてやったってこと忘れたわけじゃあるまい」
「相手の許可なく手荷物に詰め込むことは、手引きとは言わないと思うけど?」
私が「例のメモ」を突き出しながら言うと
「“俺流の” 手引きだ。“俺流の”な!」
「ハァ…ホントに疲れるわこのやりとり」
「ちょっと待ってちょっと待って!このままだと置いて行かれそうだから一旦ストップ!!」
というカズマ君のストップが入り、その後は他の皆が加わる形で、改めて話が進んでいく。
「それでマァム、彼は一体何者ですか?」
「彼はネクサス。本人は『異世界を股に掛ける遊び人』を自称してるけど」
「何ですかその情報量が多すぎる通り名は!?」
「んな多くねぇっつ~の。この世界とは異なる次元の世界なんて探しゃいくらでもあんだよ」
「まずあなたの言う“異世界”というものが既にピンとこないんですが…」
「主にパラレルワールドと呼ばれるものだな。早く言えば『もしもこうなっていたら』って世界だ。例えば、もしもマァムがこの世界に紛れ込まなかったら、そこにいるカズマって野郎は今以上に苦労してただろうな。あとは」
「ちょ、ちょっと待った!何で名乗ってもいないはずなのに俺の名前がすんなり出てくるんだよ!?」
「あ?俺はな、知りたいと思ったことは何時でも何でも知ることが出来るからさ。だから一々名乗んなくたって、そいつの素性や半生くらい分かんだよ」
「へえ、それは初耳だわ。てことは、私がこの世界に紛れ込んだ原因も分かるの?」
「当然だ。てゆーか俺はそれをオメーに伝えるために来たんだからな。どうせ自力じゃ答えに辿り着けねぇだろうし」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
‐悪が冷酷なら、正義の執行にも冷酷さは必要 それができないうちは、冒険者を語るに値しない
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「最後が若干ムカつくけどいいわ。それで、原因は何だったの?」
「ズバリ、魔王の消失が原因さ」
『魔王の消失??』
「そう。マァム元居た世界における魔王は、討伐されると同時に異空間へと吸い込まれたのさ。ここまでは覚えてるだろう?」
「ええ、まぁ…」
「それにより、人間の社会には一定の平和が訪れたわけだが、同時に大きな代償も発生した」
「代償ですって!?」
「魔王が吸い込まれた異空間、それの影響でお前がいた世界の空間そのものが大きく歪んじまって、今尚その歪みは直ってない状態でよぉ、んなわけで『ルーラ』や『リレミト』といった移動系の魔法を使用すると全く違う場所に移動しちまう、な~んてトラブルがそれなりの頻度で発生してるのさ」
「し、知らなかった……そんなことが起きていたなんて。じ、じゃあ、私みたいに異世界へ移動しちゃったって人は…」
「それは無いな。オメーが移動魔法使った時、たまたま近くでとびっきり大きな歪みが発生してただけのことよ。要するにとことんツイてねぇ状況だったってわけな」
「……それで、私は元に世界に戻れるの?」
「…ブッヒャハハハハハハヒャハヒャハヒャハヒヒヒヒヒ……何言ってやがる!自力で答えにすら辿り着けねぇってのに、自力で帰れるわけねぇだろうがよ。まぁ後でオメーの元パーティメンバーにも同じことは伝えるからよ、運が良ければそいつらがコッチに来るんじゃねーか?」
「そう………」
そして話は終わったとばかりに、ネクサスが席を立とうとした時
「ちょっと待ってください」
今度はめぐみんがストップをかけた。
「せっかくの機会です。あなたのことをもう少し教えてくれませんか?」
「んん?」
「できれば、あなたがどんな経緯で今のような“人を超越した力”……とでも言うべき力を手に入れたのか、個人的にはそこが無性に気になってるんですが……」
「…ハッ。妙に改まったかと思えば、んなことか。別にいいぜ、隠してるわけでもねーしな。但し、詳しく言っても理解できねぇだろうから、掻い摘んで話させてもらうぞ」
ネクサスはそう言うと、席に戻って自分語りを始めた。
「まず俺自身、カズマが元居た世界と割とよく似た感じのパラレルワールドで生まれたんだ。要するに『元』人間ってわけよ」
「割とよく似た感じ…じゃあ街並みとかも同じ感じなのか?」
「勿の論だ。でもって俺にはもともと、ちょっとだけ不思議な才能があったのさ。『ネクロマンサー』って知ってるか?悪霊を使役したりできる黒魔術師に似た存在でな、6歳の頃に気付いたんだ。そんでそこの『眼帯』が聞いてきたことだが…まぁ細かい部分は省かせてもらうが、事の発端は女性関係のもつれだな」
「女性関係?いやそれよりも名前で呼んでくださいよ!何ですか『眼帯』って!!」
「めぐみん、彼にそんなこと言っても無駄よ。世界一の気分屋だから、本名で呼ぶかあだ名で呼ぶかも気分次第なのよ」
「そーゆーこと。んで話を戻すとだな、要するに“良識ある女”ってやつに出会う機会が全くなかったんだ。当時10歳の俺にとっちゃ、『女は裏切りが十八番』ってのが常識だったぜ。ヒデェ人生だと思わないか、カズマぁ?」
「っ………確かに、良い出会いは無かったけど、悪い出会いも無かったって意味じゃ…俺の方がマシだったかも」
「だろう?そんなことがあって、俺はある時1つの結論を見出した。『そうだ、力を手に入れればいいじゃないか。今ある才能をもっともっと強くして、力の差を見せつければ誰も自分を裏切らない。いや裏切れなくなる!他の男に頼ってきても、それらを全て一方的に蹴散らせる力、軍隊さえ自分1人で圧倒できる力!それさえ手に入れば、嫌なこと全部チャラにできる!それどころか大儲けってかぁ!』とまぁこんなことを考え、それからはひたすらに貪欲に『力』を求めて突っ走った」
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‐真意から逃げることが罪なら、敵に無益な情けをかけて仲間を危機に陥らせることは、敵に仲間を売ることと同義 お前の罪は、アイツの罪より遥かに重い
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皆が彼の語りに注目する。
「手始めに『ネクロマンサー』としての力を磨くために、手当たり次第に数多の悪霊共を薙ぎ払いつつ、力に磨きをかけた。そのうち、『相手が持つ力を利用すれば、もっと簡単に倒せるようになるんじゃないか?』という結論に至って、倒した相手の能力を取り込み始めた。そして15歳の時に“不老の呪い”と出会い、それ以来15歳の自分を半永久的に保存した後、時を越えて古今東西の怪物達の能力にも手をつけていった。ついでに陰湿な心のエネルギーが自身を強化する基となることを知り、自分の心を丁寧に汚しあげたり…そんな生活を続けて暫くした後、更なる転機が訪れた」
皆が更に注目する。
「前々からパラレルワールドに興味を持っていた俺は、別の時間軸に突入できないかと試行錯誤を繰り返してな、結果として予想外の場所…つまりは今の俺が身を置いている世界の存在を『自力で』知っちまったわけ。『自力で』な」
「何か妙に『自力で』を強調したけど、それってそんなに凄いことなの?」
「そうさ。大抵の場合、というかほぼ全部だな。ともかくその世界に行く方法は、“その世界の住人から『片道切符』を貰う”のほぼ1択なわけ」
『片道切符?』
「要は気まぐれにお誘いが来て、それに乗った相手をこっちの世界に引き込むわけ。俺の場合はお誘いナシで辿り着いちまった『特例』のケースなんだな。そんで俺はその世界のルール『生きるために最低限必要なもの以外は全て捨てる』ってのがあることを知り、それに則って文字通り、生存本能以外の全てを捨て去った。ガチで最低限“生きる”ってことをするのにゃぁ、善悪だの、過去だの、心だのと言ったものは一切不要なのさ」
この時点で、皆は一転して顔が恐怖に染まり、冷や汗が噴き出る。
「こ、心が要らないって…それじゃあただの野獣みたいじゃない!」
「いやいや、それ以上だ。お前の言う野獣が1日生き残れたらマシな方、ってレベルの弱肉強食ぶりだぜ?ま、言ったところでお前らには想像できないだろうが、だからといって怖いもの見たさに見ようなんて考えない方が良いぜ?んな軽い気持ちで見た暁にゃ精神崩壊確定だからな。ウヒェヒャヒャハハハヒャハハハ!」
「ちょっと待って、あなたさっき『心を捨てる』とか言ったわよね?それって…精神崩壊と変わらないんじゃ?」
「勿論そうだぜ。但し違いが1つ、“外的ショックで壊れる”か“自分で壊す”かって違いがあるぜ」
「自分で?」
「ああ、完全に本能のまま動くためにはそれが1番だからな。そうやって過ごすうちに『周りに敵と呼べる存在がいない若しくはあまり見かけない』状態になるほどの力を身につけるとな、自分の中に余裕ができて、それが“穴”という形で本能的に認識するんだ」
「穴?」
「でな、それがあると非常にあ~、とにかく気持ち悪いわけだ。そっから生存本能は『敵を倒す』ことから『“穴”を埋める方法を探る』ことにチェンジすんのさ。そんでもって結局『新たな心の構築』という答えに行きつく。しかもそれが結果的に、必要とあれば元居た世界とを自由に行き来できる『往復切符』代わりになるわけな」
「新たな…心」
「そう、逆に言やぁ俺が身を置く世界じゃ、不動の地位を築けるだけの力を得た者だけが心を持てるってこった。因みに心ってのはな、破壊したとしても身が滅びない限り体内に残り続けるんだよな、丁度ゴミ山みたいな感じで。で相手を倒すと、そいつが持ってる心の“パーツ”…的なものが手に入るんだ。後はまぁ、本能に従い或いは気の向くままにパーツを組み合わせて『仮初の心』を作れば、晴れて新たな自我を得るって感じ。だがあくまで元居た世界にある程度適応するための見せかけ…屑鉄の塊にすぎないからな、例え精神攻撃かなんかで破壊されたって何の問題も無い。俺達に言わせりゃ『いつもの自分に戻る』ってだけだからな。てかむしろ相手からすれば逆効果だろう。何せ“心が壊れる=手加減という概念が消える”って感じだし」
「確かに…」
「それに所詮は屑鉄の寄せ集めだからな、何時でも作り直せる。それに作り上げたもんが必ずしも気に入るとは限らないわけだからな、場合によっちゃ自ら壊して作り直すことだってある。現に俺だって、指折り数えて5回ほど作り直してるぜ。今ある力を可能な限り完璧に制御できるようにな」
「…何かさっきから軽い感じで言いますけど、そんなに心を何度も作り変えて、何か反作用…というか、何かしら弊害の様なものってないんですか?」
「あるっちゃあるぜ。まぁこれは心を壊した時点で必ず生じることだが、過去の記憶ってのがどうしても薄れちまうわけよ。かくいう俺も、以前の記憶は今まで話した通り、かなり断片的にしか残ってねぇんだ。つっても俺達ゃ過去なんざ生き抜くために放り捨てるの前提だから、特に気にも留めねぇがな。あとはそうだな…ごくごく稀に生じるのが、倒した相手の記憶が混ざっちまうってことだな。記憶の中で特に印象に残ってたものが、心を壊した時にバラけずそのまま残ってることがあるわけよ。で知らずにそのまま組み込んじまうと、その他のパーツと衝突を起こして精神的に不安定な状態になるわけだ。まぁその場合はすぐに作り直せば問題ないけど」
「はあ…」
「話が脱線したから俺の話に戻すがなぁ、さっき不動の地位を築けるだけの力を得た者だけが心を持てるっつったろ?でもなぁ、心を持ったからっつって元居た世界に戻ろうなんざそうそう考えないわけだ。何故かっつったら、俺達の世界で不動の地位を得るってのは言い換えれば『力を付け過ぎた』状態である場合がほとんどなのさ。要するに“元居た世界には収まりきらないほどの力を持ってる”状態なわけな。だから元居た世界は今の自分にとって窮屈なだけだし、世界を何時でもどうにでもできる状態ってわけ。だが考えてみてくれよ。今言ったような状態で、何時でも何でもできるってなったら、具体的にどうしたいと思う?」
皆は頭をひねるが、誰一人として口を開けなかった。
なにせ………
「何となく分かっただろうが、基本的に皆同じように考える『特にすることが見つからない』ってなぁ。そうさ、今や“小さな箱庭”としか認識できなくなった世界で、何時でも何でもできるったって、ちっとも嬉しくないわけだ。だから余程心残りがある、若しくは何かしらの原因で『偶然紛れ込む』な~んてことがない限り、こういった世界に関わろうとは思わないわけ。つまり、そのことを理解したうえで世界に干渉している俺は、仲間内からすりゃ異例中の異例ってわけ」
「だったら、どうしてわざわざ?」
「ん?それが俺の“趣味”と化してるからさ」
「趣味?」
「そ。いくら不動の地位を得てるっつっても、同類との付き合いがなくなるわけじゃあない。そういう類の付き合いってのは、なかなかに疲れるもんでよ。だから俺は、自分より力のない輩と戯れて息抜きしたいわけ。ただその“息抜き”がまぁ、持ちうる力に比例して規模がデカくなるもんでよぉ、結果的にある世界では世界を包む幸福として、またある世界では大いなる災いとして認識されちまうってこった」
「ダメもとで聞いときたいんだけど、幸福だけもたらそうって気は…」
「は?何言ってやがんだお前は?俺の目的はあくまで息抜き。その場で思いついた、やりたいことをただやってるだけだ。幸福も災いも、あくまでその副産物にすぎない。それで悪名が広がる?結構。皆から歓迎されない?結構。出会った瞬間攻撃される?大いに結構。それら全てが『俺』という存在を定義するってだけなんだからな。ウヒャハハハヒャハヒャハヒヒヒヒィィィ…!」
とここまで聞いて、大きく溜息を吐いてから周りを見れば、何故かダクネスが安堵したような顔をしていたのが目に留まる。
「…どうかしたの、ダクネス?」
「ん?あぁいや、ちょっとな…」
「ちょっとって何よ、余計に気になるじゃない…」
「いやその…彼のことをだな…魔王じゃないかと疑っていたんだ」
「え?」
「も、勿論おかしいとは思ったぞ。人間と敵対している存在が、自分の手の内やら半生やらを軽々しく語るわけはないだろうから……ただ、その身から感じ取る威圧感が尋常じゃなくてな、確認せずにはいられなかったのだ」
「…まぁ、分からなくはないけど」
「ダ~~ッヒャッヒャヒャハハハハハッハハハハ!!俺が魔王だって!?冗談キツイぜ!な~んで俺が今更、こんなちっぽけな世界を支配しなきゃなんねーんだよ。つーかそれ以前に、ここの魔王って碌な支配も何もしてねーじゃん。仮に俺が魔王だったとして、んな甘っちょろいことするわけねぇっつ~の」
「……参考までに聞かせてくれませんか?」
「いいぜ勿論。例えばそうだな~…まず前提条件として、俺自身が魔王であることは隠すな。でもって“一介の悪魔”でも名乗っとこうかね。肝心の作戦はだなぁ、第1段階として『自分にしか解けない呪い』を主要都市に蔓延させる」
「い、いきなりムゴい」
「そうなるとやっぱり大取に控えている王族連中が腰を上げざるを得ないわけだ。王女様辺りがこの役を担っているなら大歓迎さ。でもってそいつが登場したら呪いについて言及した上で『俺を殺せば呪いは永久に解けない。但し一定期間、俺の言う通りに動いてくれたら呪いを解いてやる』とでも持ち掛けて、一時的にでも手中に収めるわけよ。ベタなのはやっぱり、『1週間とか10日とかで平和が訪れる』的なことを国民の前で大々的に宣言させるやつだな」
「で、仮に王女様が来たらどうするわけ?」
「んなもん“快楽責め”一択さ!但し、ここで重要になるのが『住民を巻き込む』ことだ。例えば、売春宿かなんかに“そっくりさん”として送り込んで、それで釣れたチョロインな連中に犯らせるとかな」
「い、一気に耳に聞き入れるのが辛い内容に…」
「何言ってやがんだMs.眼帯、まだ作戦半ばだぜ?兎にも角にも、こういうことを1週間とか10日とか続けて、いよいよ仕上げにかかる。さっきの期間をかけて淫らに堕とした王女をお披露目し、国民の目が裏切り者を見る目になった時、例の『住民を巻き込む』ってのが花開くのさ。具体的には“そっくりさん”などと言われてまんまと騙されて王女にあんなことやこんなことをした奴らをいちいち名指ししたうえで真実を告げ、最後はこう締めくくる『王女を我が手中に収めることが出来たのは、今話した通り我輩だけの力ではない。ひとえに、今名を述べた者達の助力があってこそ、成し遂げられたのである!諸君…我輩の作戦への献身的な協力、心より感謝する(敬礼)』となぁ、ヴァヒャハハハヒャハヒャハヒヒヒヒィィィ…!!んで後は簡単、最初に言った呪いで自分の邪魔にやる奴ら全員殺して首都を制圧。そして周りの町や村も制圧してTheENDって感じだぜぇ!」
一通り話し終えて満足するネクサス……の周りでは、私を含めた全員の顔に絶望が浮かんでいる。
いや、正確に言うなら……絶望レベルでドン引きしてると言った方が正しいかしら?
何故なら、その顔からはわずかな安堵が見て取れる……“コイツが魔王じゃなくてよかった”ってね。
「あん?どうしたいオメーら、揃いも揃って変顔なんかしてよ」
「変顔じゃないことぐらい分かってるでしょ?皆多分同じことを考えてるのよ…あなたが魔王じゃなくてよかったってね」
「ケッ、甘ちょろいことを…俺に言わせりゃ『利用してから殺す』のが魔王の基本だろうよ」
「魔王の…基本?利用してから殺す?」
「そうだよ。ただ殺すだけなら誰にだってできる。魔王じゃなくたっていいんだ。何も考えずにただ殺すなら単なる殺人鬼であって、魔王ではない。人間は、利用してから殺す…それでこその『魔王』だ…!」
そう言うネクサスの顔は、次第に邪悪な笑みを纏い、その邪悪さはどんどん増していく。
最初は気のせいかと思ったけど、気のせいじゃない…………彼の顔、どんどん黒くなっていってる。
※マァムはネクサスの十八番「極悪光線」のことを知りません
「人間を殺すなら…まず利用することから始まる。利用して、利用して、利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して利用して……………………とことんまで利用して、利用し終わってから殺す。それが魔王……」
ネクサスが一拍おくと
「それが………悪魔…!」
その顔は一気に真っ黒となり、目と口だけが不気味に黄色く光っている。
その表情はまさに“嫌味のこもった笑み”を、世界一シンプルに表現したと言えよう。
「とまぁそういうこった」
彼はその一言と重苦しい場の雰囲気を残して去っていった。
翌日もギルドの空気は良いものじゃなかったけど、キャベツ狩りの報酬が出るとのことで多少は皆浮かれていた。
そんな中………
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はぁぁああ!?ちょっとどういうことなのよ!私、結構な数のキャベツ捕まえたじゃない!!」
「そ、それがですね…アクアさんが捕獲したのは殆どがレタスでして…」
「何でレタスが混じってるのよぉ!!」
「私に言われましても…」
ひと際大きな声で喚き散らしてる青髪の子。
話を聞く限り、レタスはキャベツと違って買い取り額が安いらしい。
そして、アクアちゃんが捕獲したのはほとんどレタスだったみたい。
そのせいでアクアちゃんの今回の稼ぎは…たったの5万エリス。
報酬を山分けにしなかったのが、完全に裏目に出たわね。
と突然、彼女は満面の笑みで私とカズマ君のテーブルまで駆けよってきた。
「カ~ズマさん♪今回の報酬おいくら万円?」
…これはどう見ても何か企んでそうね。
地味に私をスルーしたのにも悪意しか感じられない。
「俺はマァムさんと一緒に換金したからな……2人合わせて300万ちょっとだったか」
「さんっ!?」
そう、私とカズマ君は捕まえたキャベツをまとめて換金したせいで、どっちが何匹捕まえたか分からなくなっちゃったのよね。
面倒だから山分けで済ませたけど…。
「ねぇカズマさん、その~……あれよね、カズマさんって………超凄いわよね」
「あなたさ…今のが明らかに失礼に値する発言なの分かってる?…まさかとは思うけど、そんなことでお金巻き上げようなんて、考えてないわよね?」
分かりやすく冷や汗ダラダラで青ざめる青髪の子。
カズマ君も察していたようで、明らかに“そうだと思った”的な顔をしてる。
やがて観念したかのようにカズマ君に縋り付く。
「お願いしますカズマ様ぁ!この迷える子羊にお恵みをぉぉ!!」
「迷える子羊……って?」
「何だよカズマ様って!?というか言い出したのはお前だろう。もう使い道は決めてあるんだから」
「そんなこと言わないでよお!私、後でたっぷりお金が入るから大丈夫と思って酒代ツケちゃったのよ!!しかもちょっとした事故でお酒を水に浄化しちゃって弁償しろとか言われてるし」
「…呆れた。お金が手に入るかも分からないうちから借金するなんて」
当然、こんなことでカズマ君の説得などできるわけもない。
ましてや説得しようとしてる人が売却額の配当方法を(半ば勝手に)決めた張本人となれば尚更ね…。
にもかかわらず、この子は遂に“許されざる禁じ手”を行使した。
「お願ぁい!せめてツケの分だけでもいいからぁ!カズマが時々“夜の営み”やってることにも言及しないからぁ!!」
「な!?ちょっおま」
その瞬間、私は青髪の子の後頭部を鷲掴みした。
「……あなた今、何しようとしたの?聞く限りじゃ、『思春期によくある行動をネタにお金を巻き上げる』…的なことをしようとしてるように思えたのだけど…気のせいかしら?」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃ!!何よ、ちょっとぐらい助けてくれたっていいじゃない!!そのための仲間でしょ!!」
「仲間と言ったって限度ってものがあるでしょうが。それ以前にね…カズマ君だって思春期なんだから、夜の営みの1つや2つ、誰にだってあることよ。そんなものは黙認するのが当然のこと。なのに、よりにもよってそれをお金欲しさに利用するなんて…………どれだけ腐ってるのあなたは!!!」
「いぎゃああああああああああああああ!!!!誰が腐ってるってのよおおおお!!女神である私が腐ってるわけないでしょうがああああアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!」
「まだ言ってるの!?女神らしいことを何一つしてないあなたを、一体何処の誰が女神だと思うわけ?あなたが今までやったことと言えば、サボろうとしたり酒場でお金の無駄遣いしたりワガママ放題好き放題してただけじゃない!!そんなの女神でも何でもない、『人間の底辺』の言動よ!いえ、あなたの場合はそれ以下だわ!!!」
「ぎぃやあああああああアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!」
「ちょ、ちょっと姉さん、ストップストップ!もうその辺にしといた方が良い気がする!俺の耳がおかしくないなら、アクアの頭から聞こえちゃいけない音がしてるから!!」
確かにミシミシ聞こえてくるけど、見た感じ外傷的なものは見受けられないのよね…以前会話した時に言ってた羽衣の効力かしら?
とはいえ、カズマ君に続き、ゆんゆんも止めに入ってきたので鷲掴みしていた手を離すと、アクアちゃんは頭を抱えて転げまわっていた。
そこへ現れたダクネス。
「ん……これは一体?」
「カクカクシカジカで、無駄遣いへのお仕置きよ」
「な、なるほどな……も、もし足りないというなら私で」
「誰がすきでマゾヒストを殴らなきゃいけないわけ?」
「んんっ……あいや、それよりもちょっと聞きたいことがあるのだが」
「聞きたいこと?」
「ああ、報酬で鎧を修理してみたんだが、どう思う?」
……どうって言われても、元々小綺麗だった鎧が光沢を増したって印象が強いわね。
後1つあるとしたらそう……小声でカズマ君の意見を聞いてみたんだけど、私と同じだったみたい。
「…ねぇダクネス、ひょっとしてあなた…お金持ちのとこのお嬢様とかだったりする?」
「っ……な、何故そう思うんだ?」
この反応、間違いなさそうね。
「だってその鎧、普通の冒険者が身につけるには綺麗すぎるもの。成金のボンボンでもない限り、ここまではしないわ。そもそも修理前から十分小綺麗だったし」
「……………………そうか」
「あ、あの~…それはそうとマァムさん。そ、その…」
「ん?どうしたの、ゆんゆん?」
「う…うちのめぐみんも、止めてください…」
ゆんゆんが指さす先では……
「はぁ、はぁ……た、たまらないのです!魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色つや……ふっ、ふっふふ」
めぐみんが変なことを呟きながら、一心不乱に杖を体に擦りつけていた。
「…何やってんだ、アイツ?」
「あ、新しい杖を買ってからずっとあの調子で…しまいには私にまで強制しようとするんですぅ!」
「……取り敢えず、(ピ―――――)の件だけは注意した方が良いかしら?」
「たっ、(ピ―――――)!!??」
「…何ですか?何か物凄く受け入れ難いことを言われた気がするのですが」
急に我に返っためぐみんが寄ってきた。
「受け入れ難いも何も、実際に(ピ―――――)してたのはあなたじゃないの」
「(ピ―――――)って何ですか(ピ―――――)って!?」
「文字通り、立ったまま(ピ―――)することよ」
「いや分かりますよ!ワード自体は初めて聞きましたけど、何となく意味は分かりますよ!そうじゃなくて、私はただ念願の杖を手に入れた喜びを噛みしめていただけであって」
「喜びを噛みしめるのはいいけど、流石に杖を股間に擦り付けてたのは見逃せないわよ。それとも何?あなた本当に気付いてなかったの?」
気付いていなかったのか、複雑な表情のめぐみん。
カズマ君とゆんゆんは仲間(友人)の痴態に顔を赤らめ、ダクネスはおろおろしながらも何とか場をまとめようと知恵を絞ってる様子。
意外にも、この沈黙を破ったのはめぐみんだった。
「そ、それよりもモンスター討伐です!早くこの新しい杖で爆裂魔法を撃ちたいんです!」
何か今すぐにでもこの場で爆裂魔法を撃ちそうな雰囲気を感じ取ったので、仕方なく討伐依頼を見に行くことに。
その中から“ゾンビメーカー”なるモンスターの討伐依頼を請けることに。
爆裂魔法を撃つのに不適当だとめぐみんが不満を漏らしていたけど、これには一応理由がある。
「仕方ないじゃない、今ある依頼の中には爆裂魔法に合うものが無かったんだから。それに、この世界では回復魔法がアンデッドに対しての攻撃手段になるらしいから、その辺を試してみたいのよ」
「あ~、そういえばマァムさんとこはアンデッドモンスターも普通に回復魔法使ってますからね」
「えぇ!?ちょっとそれ本当なの!?あんな腐れタマゴみたいな体をどうやって回復させるのよ!?」
「それは分からないわ。使えるから使ってる…ただそれだけよ。それ以上のことは知らないわ」
確かによく考えてみれば……おかしいと言えばおかしいかもしれない。
とはいえ、今は依頼達成に尽力しないと。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その日の夜、私達はゾンビメーカーが現れるという墓地の近くでキャンプを張っていた。
テントなんていう仮説住居的なものは私が元居た世界にはなかったわね…。
それは置いといて、私がテントの前に陣取っていると、テントの中からダクネスが出てきた。
「マァム、そろそろ交代の時間だぞ」
「…悪いわねダクネス、今夜は眠れそうにないの」
「?何か気になることでもあるのか?」
「…感じるのよ。何かが近づいてる感じが」
「ん……それは、掛け持ちしているという例の『職業』の影響か?」
「そうかもね………」
ダクネスにはこう言ったけど………こんな事は初めてだわ。
今まで感じたことのある“敵意”とは全く違う、例えるならそう…“亡者の念”みたいな。
兎に角そういう…明らかに『アンデッドの存在』を感じ取っているのが分かる。
でもどうして急に?
今まで、こんな感覚は味わった試しがない。
いや、それよりも………
「…ねぇダクネス、今回討伐するのって『ゾンビメーカー』だったわよね?」
「ああ、そうだが?」
「だとしたら…おかしい」
「??」
「アンデッドの気配を感じるのが初めてなことを差し引いても、おかしいわ…………明らかに弱いモンスターの気配じゃない。もっと強力な…そう、強い闇の魔法の使い手だわ」
「『ゾンビメーカー』じゃない……のか?」
「ダクネス、強力な魔法が使えるアンデッドモンスターに心当たりはあるかしら?」
「む……真っ先に思いつくのは、やはり『リッチー』だな」
「リッチー?」
「そう、リッチー…『アンデッドの王』とも称され、大抵の魔法は一切効かん。その上、触れるだけで相手を狂わせることが出来るとも聞く」
「なるほど、かなり骨のある奴なのね…っと、ゾンビがいるわ」
目視でゾンビを確認した私は、予定通りに行動を開始した。
「…『ホイミ』」
『ホイミ』
初級回復呪文
対象1体のHPが30~40程度回復
私の回復魔法を食らったゾンビは、悲鳴を上げる間もなく消滅。
「……思った以上の効果だわ。この世界で言う『ヒール』と同じ様なものなのに」
「いや、元の世界での功績じゃないのか?相当鍛え上げていたそうじゃないか」
「あ、それもそうね」
こんな事を話しつつ、私は1人黙々とゾンビに『ホイミ』をかけてまわる。
……そういえば、カズマ君達を起こし忘れてたわ。
まぁ今は様子見だし、少人数の方が良いかもね…。
そんなことを考えていた矢先、緊張が走った。
「…っ、いたわ」
視線の先にいたのは、黒いローブを身に纏った人物。
フードを目深にかぶっているせいで、男か女かすら分からない。
いや、そもそも“人”じゃないわね。
何か魔法陣が展開してるし、周りからゾンビが湧いてるし…。
兎にも角にも様子見を兼ねて、回復魔法を放つ。
「『ベホイミ』!」
『ベホイミ』
【ホイミ】系中級クラスの回復呪文
対象のHPを約80程度回復する
「きゃああああああ!?」
黒ローブの人物が甲高い悲鳴を上げる。
よく見ると…ほんの少しだけど体が透けているように見える。
ダメージが入ったのかしら?
「なっ何ですか今のは!?ただの回復魔法で…こんな…!」
透けている自身の身体を見て戦慄する人物。
未だに顔が見えないけど、どうやら女性みたいね。
しかも、特に明確な敵意があるようには見えない。
そんなわけで私は、思い切って彼女(?)と話してみることにした。
「私の魔法よ」
「あ、あなたが!?どう見てもアークプリーストじゃないのに……というか誰ですか!?」
「ちょっと落ち着いて。私達は『ゾンビメーカー』討伐のために来てるの。現にあなたの周りからゾンビが湧いてるし」
「こ、これは私の魔力にあてられた死体が勝手にゾンビ化してるだけですよ!」
「十分『ゾンビメーカー』っぽいけどね……」
「というかちょっと待ってください。今あなた『ゾンビメーカー』って言いました?」
「ええ、言ったわよ」
「いや私、『ゾンビメーカー』じゃないんですけど…」
「でしょうね、雑魚モンスターにしては魔力が多すぎるし。となると何者かしら?」
「わ、私はアンデッドの王『リッチー』です!」
なるほど、ダクネスの予想は大当たりだったみたいね。
私は動揺しているダクネスを落ち着かせて話を進める。
「それで、そのアンデッドの王がこんなところで何を?」
「迷える魂の浄化をしてるんです」
「…随分とアンデッドらしからぬ答えね。何だってリッチーがアークプリーストまがいのことを?」
詳しく話を聞いてみれば、私達が今いる墓地はまともに除霊が行われていないらしい。
何でも担当のプリーストが相当な守銭奴で、十分な報酬が出ないという理由で半ば放置されているらしい。
にわかには信じられない話だけど、この世界の女神のことを考えると………ありえなくもないのかも。
「…なるほどね、よく分かった。あなたのことは不問としましょう」
「!い、いいんですか?」
「少なくともあなたから悪意の類は感じられないし、嘘も言ってないようだしね。それでいいでしょ、ダクネス?」
「ん………別に構わないが、討伐依頼はどうするんだ?」
「どうもこうもないでしょ。今回は依頼内容が間違ってたんだから、そのことを伝えればいいわ」
その後は『アンデッドだから』って理由で討伐しようとした青髪の子をいなしたり、リッチー(名前は『ウィズ』というらしい)がアクセルで店を出してることに驚いたりと色々あったわ(汗)。
兎にも角にも、翌日にはアクセルのギルドにことの次第を報告して、正式に討伐失敗を伝えた。
勿論、ウィズについての詳細は言わずにね!
次回予告
最近になって急激に減るモンスター討伐の依頼
原因はアクセル近くの古城に住み着いた魔王軍幹部のせいだった!
正体がアンデッドだと知ったマァムは
遂にあの技を決行する!
次回「アンデッド特効」
ネクサスの行方が気になる人→やっと判明しました
(https://syosetu.org/novel/233692/1.html)