――従者を振り回す、魔王と救世主の物語
砂塵が飛ぶ荒野に二人の同い年くらいの男女が立っていた。
周囲には彼ら以外に生き物は存在せず、二人だけの世界と化しており、空には獅子座の星レグルスが光り輝やいている。
「じゃあ……やろうか」
【グランドジオウ!】
「ああ、そうだな」
【ゲイツリバイブ 疾風!】
二人の男女たちは腰に白と黒を基調とした物――ジクウドライバーを身に着け、時計のような形の道具――ライドウォッチを起動しベルトへと差し込んだ。
男の背には、男と同じ方向を向いている20の戦士の像が立ち並び黄金の宮殿。
女の背には、青とオレンジを基調とした砂時計のが浮かび上がっていた。
互いのベルトから騒がしい待機音が響く中、二人の男女たちはジクウドライバーに手を駆け勢いよく回転させた。
「「変身!」」
勇ましい掛け声と、360度の回転により発生したエネルギーとライドウォッチのエネルギーがベルトを駆けまわり、その力を発現させる。
【グランドタイム!】
【リバイブ! リバイブ! リバイブ! リバイブ! リバイブ! リバイブ!】
【クウガ アギト 龍騎 ファイズ ブレイド 響 カブト 電王 キバ ディケイド ダブル オーズ フォーゼ ウィザード 鎧武 ドライブ ゴースト エグゼイド ビルド 祝え! グランドジオウ!】
【リバイブ疾風!】
現れるは20の戦士の像が全身に刻まれた黄金の戦士。
現れるは速さと力を併せ持つ救世主と呼ばれる戦士。
二人の戦士は己が武器を構え、前方へと走り出す。
目的は互いに同じ、己が前に存在するものを必ず倒すということ。
「ソウゴおおおおおおおおお!」 「ゲイツうううううううううう!」
二人の互いの武器が激突し周囲へと凄まじい衝撃波が発生する。
武器が激突するたびに発生する衝撃波によって、空間が軋んでいきまるで悲鳴のような音が響いていき、そして……。
突如としてピタリと動きを止めた。
「どうした」
「ゲイツ……
「……」
「……」
二人の間に沈黙が流れ、そして。
「戻ろうか!」「そうだな」
そう言って二人は変身を解き、自分たちの住む家へと戻っていったのであった……。
「え?」
荒野の世界の外から覗いていた、一人の男を置いて。
クジゴジ堂、そこは先ほどまで戦っていた男女ソウゴとゲイツが住んでいる時計屋だ。
店主はソウゴの大叔父である常磐順一郎である。
二人は先ほどまでの戦闘などまるでなかったかのように、仲良く家の奥でテレビを見ていた。
「ゲイツーお菓子とって……ありがと。 いやぁ戦った後に食べるお菓子はおいしいねぇ!」
「あまり食べすぎるんじゃないぞ、晩御飯が食べられなくなるぞ」
「だいじょうぶだいじょうぶ」
「……はぁ、そう言って笑うお前の顔を見ていると咎める気が消えるのが不思議だ」
ソウゴがお菓子を食べる光景をゲイツは微笑ましいものを見るような顔で眺めている。
二人の穏やかな時間が過ぎていこのまま永遠に続いていくのかと錯覚するほどだったが、そこに来訪者が現れた。
来訪者は一冊の本を持った怪しげな男だった。
「それで、君たちの運動不足を解消するためだけにあの空間を用意し、さらには跡片づけまでしてきた私に何か労いの言葉はないのかな? 我が魔王」
「あ、ウォズお疲れ様ー冷蔵庫にアイスあるから食べていいよー」
「……うがああああああああ!」
ウォズはしばらく黙った後、大きく声を上げた。
そしてよく見ると腰には二人が使っていた物とはまた違う緑色のベルト――ビヨンドライバーが巻かれており、手には二人が使っていたライドウォッチとはまた違う物――ギンガミライドウォッチが握られていた。
「え、何!?」
「敵襲か!?」
驚く二人を差し置いてウォズはギンガミライドウォッチを回転さながら言葉を続ける。
「毎度毎度君たちバカップルの突然の申し出にまじめに答える私の身にもなってもらいたい! 転生した君たちの世話係を請け負う私ではあるが、もう堪忍袋の緒が切れた!」
【タイヨウ、アクション!】
ウォズは回転させたギンガミライドウォッチをミライドライバーに取り付ける。
そして、ウォズは怒りの表情のままミライドライバーを閉じギンガミライドウォッチの力を開放する。
【投影! ファイナリータイム! 灼熱バーニング! 激熱ファイティング! ヘイヨー! タイヨウ! ギンガタイヨウ!】
現れた戦士は顔に赤い字で太陽と描かれた緑と白と黒を基調とした存在だった。
そしてウォズは一度閉じたベルトを開く、流れる待機音は先ほどの変身音とは違う必殺技を告げる音。
【ファイナリービヨンドザタイム!】
「それを……」
「にっ逃げるよゲイツ!」「ああ!」
【アーマータイム! フルスロットルドライブ!】【リバイブ疾風!】
二人は即座に速さに特化した状態へと変身し、グジゴジ堂を脱出する。
「君たちが言うかあああああああ!!」
【バーニングサンエクスプロージョン !】
ベルトを閉じウォズは必殺技を発動する。
ウォズを中心とした太陽がごとき火炎が、グジゴジ堂を完全に燃やし尽くし、大きな爆発を引き起こした。
逃げ延びた二人は燃えるグジゴジ堂を見ながら
「……しばらくツクヨミの家に匿ってもらおうか」
「……そうだな」
と言って、二人はウォズに見つかる前にグジゴジ堂から離れていった。
グジゴジ堂があった場所は大きく黒き焦げた大地になっており、後に帰ってきた常盤順一郎が見れば、何もなくなった仕事場に膝をつくのは確実だろう。
「どこにいったあああああ!」
そして、しばらくウォズの怒りは収まる様子はなさそうであった……。
――これは、生まれ変わったどこかの誰かの物語。