お前のハーレムをぶっ壊す   作:バリ茶

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これは高月ロイゼールこと金髪ロールおっぱいの立絵

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おっぱい


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コードリアス 反逆のアイリール

 

 

 日が落ち始めた頃の夕方。オレンジ色に輝く夕日に照らされながら、俺は小春と並んで住宅街を歩いていた。

 今は二人で夕飯の買い物に行った帰り道で、一緒に歌を歌いながらのんびり海夜家を目指している。

 

「~~♪」

 

「ーっ♪」

 

 買い物袋を軽くプラプラさせながら、小春ちゃんに続いて歌ってみた。どうやらこのリアの体は会話こそたどたどしいものの、曲は普通に歌えるみたいだ。いつもの喉や舌が引っかかる感覚がまるでない。そこら辺のラインが謎だけど、もしかしたらリアは昔からよく歌を歌っていたとかそういう裏設定でもあるのかも。

 

 

 ……にしても、この世界の女の子たちはメンタルが凄まじいな。まさか小春まで俺の秘密を軽く受け止めるとは思っていなかった。

 

 流石に今の状態で小春を騙し続けられる自信が無かったので白状したのだが、本人がものの数分で納得してしまって逆に驚かされてしまった。適応力の早さはさすが主人公の妹と言ったところだろうか。

 困惑するどころかこうやって買い物に付き合わせてしまうくらいなので、どうやら小春ちゃんには敵わないようだ。

 

「ふんふーん♪」

 

「……小春、ご機嫌だね」

 

 俺の隣で若干ステップを刻みながら鼻歌をしている小春は随分ご機嫌な様子だ。因みに俺の目は彼女の顔ではなく、ステップするたびにポヨンポヨン揺れてるお胸に向けられている。スゴクオオキイネ、オレトチガッテネ。

 

「すき焼きなんて久しぶりだから! それに最近はなんだかトラブルが多かったから、こうやってのんびり帰れるだけでも楽しいなって!」

 

「そう、だね」

 

 彼女の言うことはごもっともである。小春ちゃんからすればここ最近は学園の先輩が誘拐されたり学園自体がバイオハザードしたりと、ショックで寝込んでもおかしくない程度には濃い数週間だったからな。

 

「帰ったらリアちゃんにもいろいろお手伝いしてもらうからね~」

 

「うん。料理お風呂掃除、その他何でもござれ」

 

 もはや最近は家政婦になりそうな勢いで海夜家の炊事家事洗濯を担当しているので、夕飯の手伝いなどちょちょいのちょいである。マカセテ。

 

「頼もしいな~、お兄ちゃんのお嫁さんに欲しいくらいだよ」

 

「……む、むり」

 

「ケチ!」

 

 小春ちゃんの旦那さんなら大歓迎なんだけどね。毎晩抜いてあげないと眠れない人のお嫁さんはちょっと……。

 

 淫紋差し引いても多分素で甘えてきてる部分もあるぞあの男。キャラプロフィールにも確か──

 

【幼い頃から両親が海外を飛び回ってる影響で兄妹二人だけで過ごす時間が長いため、小春には愛情を注いでいるものの自分自身が若干愛情不足。それゆえ無意識に母性を求めている節が見受けられる】

 

 ──とかいう恐ろしいこと書いてあったからな。お嫁さんどころかママに仕立て上げられそうで怖いわ。とりあえず抜き終わったあと無言で胸の間に顔埋めてくるのはやめろ。くすぐったいからグリグリすんな。あと匂いも嗅ぐな。鼻息荒いんだよお前。

 

 

「……り、リアちゃん」

 

「ん?」

 

 海夜に向かって心の中で呪詛を吐いていると、隣を歩いていた小春が足を止めて声を掛けてきた。同じく俺も立ち止ると、小春は自分の目の前の方向へゆっくりと指を差す。

 

「あ、あれ……」

 

 震える手で小春が指差した方向に首を向けてみると──

 

 

「ぐはは! 貴様が海夜蓮斗の妹か! 強そうな仲間もいないとは僥倖だァ!」

 

 

 ──なんというか、一般的な怪人がそこにいた。頭から角が二本生えてて、成人男性サイズの体で、両手で鎖鎌をブンブン振り回している。

 服は着ているので多分体は普通の人間で、そこそこ身体強化が施されている程度の怪人とみた。

 

 悪の組織は既に潰したので、多分ちょこちょこ残ってる残党の一人だろう。

 

「ボスのお達しだからな、お前ら二人とも捕まえてやる!」

 

「ど、どうしよう……っ」

 

「ちょっと、待ってね」

 

 今にも鎖鎌をこっちにぶん投げてきそうなテンションの相手だが、捕まえるのが目的らしいので無闇に傷つけてきたりはしない筈だ。怪人が痺れを切らして攻撃してくる前に、焦らず冷静に考えよう。

 

 とりあえずこれがクロノの差し金だということは分かった。こいつらがボスと呼んでいる人物はクロノが使っている肉体のことで、実際まだ死んではいないので残党を集めて使うことも容易なのかもしれない。

 

 目的は怪人の迎撃に俺のポイントを使わせる為か、もしくは海夜を抑制するために小春を人質にする為か。どちらにせよ、こっちにとっては痛手になりうる事態だ。

 

 ……はてさて、どうしたもんかね。クロノの思惑通りポイントを使ってやるとしても今は2Pしかない。そもそもポイントなんて使いたくないし、どうやってこの状況を打開しようか。

 

「……ん?」

 

 スマホが震えた。

 

 

 

【か弱いヒロインなので『怪人に襲われてるの♡ こわーい♡ 助けてぇ~♡♡』と蓮斗に電話で連絡する(P+1)】

 

【お前が小春ちゃんを守るんだよ!(P+1)】

 

 

 

 いや運営本当に俺が上の選択肢の方選ぶと思ってんの? てかなんかセリフおかしくない? ほんとにリアに言わせるつもりある? 言ったとしてもたぶん棒読みになって語尾にハート付かないからね?

 

 ……くっそ、舐めやがってクソ運営め。たしかにハイパームテキ以降は守られてばっかりだったけど、決して非力なお姫様系ヒロインになったつもりはねぇからな。俺だって本気出せば戦えるんだぞこの野郎。 

 

「妙な真似すんじゃねぇぞ! 抵抗したら痛めつけてやるからな!」

 

 どこまでも三下のチンピラみたいなセリフしか出てこねぇなお前な。その分かりやすい悪役っぽさはテンプレ通り越して希少価値高いまであるぞ。

 

 

 ……だー! もう! 上等じゃい! 蓮斗なんか頼らなくたってこんな怪人やっつけられるって証明してやらぁ!

 

「おいコラ! スマホ弄ってんじゃねぇ!」

 

「うるさい」

 

「あぁ!?」

 

 キレ散らかす怪人を無視して、スマホに表示されていた下の選択肢をタップした。

 

 うむ、これでいい。何もかも蓮斗に頼るのはごめんだし、そもそもこびっ媚びのセリフとか死んでも言いたくないからな。

 舐めんなよ! 小春は俺が守る!

 

 

 ──といっても、考えなしに勝てる相手ではないことは分かってる。ポイントを使わず、尚且つ完全に相手をやっつける為には俺だけの知恵では足りない。

 ということでゲストにリアさんをお呼びしました、ではどうぞ。

 

(……私も手伝うの?)

 

(お願いしますぅ! 俺だけじゃ勝てません!)

 

(まあ、しょうがないか)

 

 心の中で土下座した結果、リアの助力を得ることが出来た。俺はお前でお前は俺なので一緒に頑張ろうね。一心同体! 二人で一人!

 

(具体的には、相手をどうしたいの?)

 

(気絶レベルで戦闘不能にするか……もしくは尻尾を巻いて退散してくれたらいいかな)

 

(……なるほど)

 

 怪人といえどもできれば命は奪いたくないので、殺さずに勝てる方法があるならそうしたい。この世界の常識で考えれば、怪人は警察に突き出すのが一番いいみたいだし。

 

(私の能力、覚えてる?)

 

(えっと……精神体になれる。あとは憑依、だっけ)

 

(うん。でも十秒しか体を操れないし、痛覚も共有しちゃうから、舌を噛み切るとかはやりたくない)

 

 仮に相手に憑依できたとしても、自傷行為はリアも痛みを感じてしまうから厳しい、と。

 

(あと、自分が憑依されたって気づいた人は、頑張れば私のことを追い出せる)

 

 姿が相手に見えないとはいえ、体が操られている事に気がつかれたらアウトってわけか。

 うーむ、憑依といっても万能ってわけじゃないのな。制限時間は十秒だし、存在を認識されたらほぼ無力ってのも辛いところだ。

 

 どうすればいい。彼女の憑依を駆使して、尚且つ相手をしっかり倒す為に俺は何をしたらいいんだ。

 

 

(……うーん、よし、これで行こう)

 

(早いね、もう決まったの)

 

(おう、これで多分イケるはずだ!)

 

 脳内をフル回転させて導き出した答えをリアに伝え、俺たちは心の中の会話を一旦中止した。この間なんと5秒の出来事である。心の中って凄い。

 

 よーし、じゃあ作戦開始だ。

 

 

「おい銀髪女! なにニヤついてやがるんだ!」

 

「……ふっ」

 

「リア、ちゃん?」

 

 怪人男の怒号を軽く一蹴して鼻で笑ってやると、隣にいる小春が不思議そうな顔をした。

 当然だ、何故なら俺は今は彼女に向かって買い物袋を突きだしているのだから。

 

「小春、これ持ってて」

 

「……う、うん、わかった」

 

 俺に何かしらの作戦があることを察した小春が買い物袋を受け取ってくれたので、これで俺の体は身軽になった。準備完了だ。

 

 

 作戦その一、まずは俺の妙な態度で怪人を引き付けつつ、肉体からリアを離脱させる。相手が精神体を視認できる可能性も考慮して、近くの家の間をコソコソすり抜けながら見つからないように相手の背後に回ってもらう。

 

 そうすることで俺は今体の中にリアがいなくなったので、流暢に喋れるようになった。

 ここからは俺のハッタリ劇場の始まりだ。

 

「おい、怪人野郎」

 

「……っ?」

 

 急に好戦的な目つきで声を掛けられたことで、若干動揺する怪人。とりあえず俺に注目させることは成功だ。

 そしてここからは、リアが憑依しても彼女を認識できないような嘘を入れ込んでやる。

 

「お前は知らないだろうがな、俺にはめちゃくちゃヤベェ能力があるんだぜ」

 

「な、なに……っ!」

 

 食い付いた食いついた。単純な奴だなお前!

 

 

「俺にはな……どんな命令でも相手に絶対遵守させる能力があるんだよ!」

 

 

「なっ……!?」

 

 わざとらしく声を張り上げて言ってみれば、予想以上に驚いてくれる怪人男。こいつかわいいな。

 とにかく、ここから追い上げていくぞ。

 

「どうだ! 怖いだろう!」

 

「ばっ、バカにすんじゃねー! そんなハッタリに引っかかるわけねーだろ!」

 

「ハッタリだと思うのか? ……ふっ、おめでたい奴だ」

 

「なんだとコラ!?」

 

 リアがいないことで自在に動くようになった表情筋を駆使して、なんとも悪役の様な悪いしたり顔を浮かべる俺に、少なからず危機感を抱く怪人男。

 いいぞ作戦通り。リアも怪人男の背後にスタンバイできたみたいだし、フェイズ2に移行だ。

 

「そんな物騒な武器を持っておいて、自分がやられるのが怖いか?」

 

「なに言ってやがる! そ、そんなわけ……」

 

「いいか、お前は知らないようだから教えてやる」

 

 冷や汗を流す怪人男に、大袈裟なポーズを交えて指を差した。いかにも厨二病くさいポージングなのだが、これはふざけているわけではなくリアに合図を知らせるための格好である。

 

「撃っていいのは、撃たれる覚悟がある奴だけだ」

 

 真面目に言ったら顔から火が出る程恥ずかしい発言をした瞬間、俺は突きだしていた右手を大きく真上に振り上げた。

 

 

 その瞬間、リアが怪人男の体に憑依した。そこから怪人男にリアの存在を知覚させないため、意識を逸らさせる最後のセリフを俺は言い放つ。

 

 

「アイリール・ダグストリアが命じる──お前はその場から一歩も動くなっ!」

 

 

 大袈裟に両手を横にブワサァッと広げながら叫ぶと同時に、まるで俺の瞳に特別な力でも宿っているかのように力強い目力で怪人男の目を凝視した。

 

 それと同時にリアが怪人男の肉体のコントロール権を奪い、ピタリと体を止めた。

 

「ふざけたことを──あっ、あれ?」

 

 俺の奇怪な行動に呆れたような怪人男だったが、すぐさま実際に体が一歩も動けなくなったことに気がついた。

 

「そ、そんな馬鹿な……!?」

 

「言っただろう、お前をビビらせてやるとな」

 

「あぁっ、まさか本当にィ……!」

 

 予想以上に狼狽してくれる怪人男の様子を見て、思わずニヤついた。まさかここまで計画通りに事が進むとは思っていなかった。

 

 

 そう、実は俺が『体が動かせなくなる』というハッタリを掛け、実際にリアが肉体の主導権を奪って体を硬直させることで、怪人男に俺の能力を勘違いさせてリアから意識を遠ざけつつ無力化するという作戦だったのだ! で、ちゃんと成功した! 凄いでしょ! 最高でしょ! 天っっ才でしょ! えっへん!

 

「それじゃあトドメぇ!」

 

「なっ! く、来るな!」

 

 そして動けない隙に一気に距離を詰めて、リアが肉体を離れたその瞬間に、俺が思いっきり力を込めて怪人男の睾丸を蹴り上げる。どんな人間だろうと怪人だろうと急所を鍛えることは不可能なので、確実にこの部分が一番の弱点の筈だ。

 

 くらえ金的!

 

「おらぁ!」

 

 

 

 

「や、やめ───ォ゛ん゛っ゛っ゛」

 

 

 

 深くめり込んだけどもう一発!

 

「ちねぇ!」

 

 

 

 

「───ン゛ギ゛ッ゛っ゛ッ゛ッ゛っ゛」

 

 

 

 二発目は「メギョッ」て変な音が鳴った。そんで白目を剥いて、怪人男は泡を吹いてそのままコンクリートの地面にぶっ倒れた。

 

 ……よーし、ちんだな(確信)

 

『あ、危なかった』

 

「サンキューなリア、間に合ってよかった」

 

『……もう、絶対やらない』

 

 いつの間にか背後にいたリアに労いの言葉を掛けつつ、体の中に戻ってもらった。正直言うとかなり遠慮なしに蹴り上げたので、本当にリアの離脱が間に合ってくれてよかったと思う。女の子に金的の激痛を味わわせるのはめちゃ気が引けるので。

 

「ふははは、勝った勝った」

 

 とりあえず、後はコイツを縛り上げて近所の交番に押し付けるだけだ。

 どうだ見たかこの野郎! はい俺の勝ち! 何で負けたか明日までに考えといてね!

 

 

 




サブタイに深い意味はない

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