お前のハーレムをぶっ壊す   作:バリ茶

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季節外れなコスプレ部10枚目

【挿絵表示】


★でレン → 夜 

やはりこの世の全てはTSラブコメに収束する
ちなみに蓮斗(レン)の主人公の呼び方は一貫してリアです




くそっ…じれってーな! 僕ちょっとやらしい雰囲気にしてきます!

 

 

 

 我武者羅に色々なことを頑張っていたら、好きな女の子が告白してくれた。

 

 

 声がかなり小さかったりセリフを噛んでたりもしていたものの、逆にそれがとても可愛かった。すぐにでも彼女を抱きしめたくなったが、笑って誤魔化すことで理性を保ったことは今でも覚えている。

 

 白髪とはまた違う透き通るように綺麗な銀色の髪の毛をした、無表情で背が低い女の子だった。

 

 出会った頃は何を考えているのかも解らなかったし、とんでもない事をやらかしてしまった俺をあっさり許してくれたことには、感謝以上に疑問があった。

 でも、そんな疑問も直ぐに消え去ることなる。

 

 彼女の精神が男だったことを知った日のことだ。

 幽霊のように体が透けているもう一人の彼女に手招きされて訪れたビルの中で、彼女の秘密を喋った悪い奴と戦って。

 

 奴がいなくなった後に彼女と改めて話したとき、ようやく彼女は素の自分を俺に見せてくれた。

 

 

『は、はぁ? 別に、照れてないし……! 自惚れんな、バカ』

 

 

 少し気が強くて、言葉遣いもしっかり男らしい──それが本当の彼女だった。

 

 嬉しかったのだと思う。自分を偽らない彼女と、一番最初に会話をしたのが自分だったから。

 

 その頃にはもう好きだったのだろう。

 精神が男だとか、もう一人の魂を持ってるとか、この世界の人間じゃないだとか、そういう事情がさして気にならない程に彼女を好きになっていた。

 

 だから本当に嬉しかった。

 彼女に告白されたことが。

 そして彼女と結ばれたことが。

 

 彼女が現実に帰ることで直ぐに消えてしまうような繋がりだったとしても、永遠に忘れずこの心に刻みつけて生きていこうと、そう決心した。

 

 していた───のだが。

 

 

『おぉ、成功した。こんなにも高性能なアンドロイドに人物データを問題なくインストールできるなんて、やっぱり僕は天才だなぁ』

 

 

 気がついた時には、俺は顔が彼女に似た見知らぬ小柄な女性の前で()()()()()()目を覚ましていた。

 

 かなり動揺したけど……正直に言うと、彼女と同じ気分が味わえると思って少し喜んでいたと思う。状況を説明された後はそんな気持ちも直ぐに吹っ飛んだけど。

 

 

 曰く、ここは現実世界と呼ばれる場所。

 

 曰く、仮想も現実も大変なことになっている。

 

 曰く、面倒見れないからあの子の家に行け。

 

 最後に、淫紋の後遺症には気をつけろ。

 

 

 他にもいろんな説明を事細かにされたものの、内容の半分も理解できなかったような気がする。

 俺を目覚めさせた黒野博士が言うには「知能と精神が若干肉体に引っ張られている」とのこと。

 

 この体のアンドロイドは初期設定精神年齢が11歳、肉体年齢が14歳らしいので、俺は中学生体型の中身が少々幼い女の子になってしまったというわけだ。

 

 博士曰くこのアンドロイドは「死んでしまった親友がモデル」らしいのだが、こっちだって遊びで男子をやっていたワケではないので、そう易々と精神を引っ張られはしない。

 

 ついつい少女の様な振る舞いをしてしまうことこそあるが、ちゃんと中身は海夜蓮斗だ。俺は男だ、負けないぞ。

 

 

 

 

『明日から美咲夜の家で生活しなさいな。……あっ、美咲夜はリアだった子のことよ』

 

 

 ……っ!?

 

 

『朝陽が寝てるから……なるべく静かに頼むよ、真岡さん』

 

 ──っ!! 

 あっ、分かる! 言葉の節々からリアの面影感じる!

 

『まっ、ちょっ、待って! 本当に待って!』

 

 うぅっ、ほっぺでいいのに何でキスさせてくれないの……? お花畑ではいっぱいしたのにぃ……!

 

『ほら、レン。真岡ももう行っちゃうから、早く靴履かないと』

 

 やだ! この家で生活していいって言われた! リアと一緒がいい!

 

『ぎゃあ! 勘弁してぇ!』

 

 なっ、なんで逃げるの……。

 えっちは明日でいいから、とにかく抱きしめさせて……! ずっと寂しかったんだよぉ……!

 

 

 

 

 ──ハッ!? お、俺は今まで一体何を……? いや覚えてるけど。何であんなことしてたんだ。

 

 

 だ、ダメだ、よくない。この体予想以上に手強いぞ。しっかり自意識を持たねば。

 

 男! 男男! 男男男男!!

 俺は露恵学園2年A組出席番号4番男子海夜蓮斗! 決してレンちゃんなんかじゃないぞ!

 

 リアの邪魔をすることだけは絶対にしたくないんだ。

 仮想世界で俺がどれだけリアに沢山の迷惑を掛けてきたか思い出してみろ。あの分を全部返すことはできないけど、せめて迷惑はかけないようにしなきゃダメなんだ。

 

 そうだ、我慢だ。リアは大変そうなことしてるから、せめて明日までは大人しくしてないと。

 

 淫紋の後遺症がなんぼのもんじゃい! かかってこいや!

 

 

 

『心の中でペラペラ喋ってますよ。小春さんって案外お喋りなんですね』

 

 

 小春! よかった、無事だったんだな……。

 

 はぁぁぁ、泣きそう。よかった、本当に良かった。

 何が何でも今日は一緒に寝ような。絶対だぞ。

 

 ……なんだ、結構耐えられるみたいだ。後遺症なんて大したことないんじゃないか。

 

 

 ───うっ、なんか頭が痛い……?

 

 

『夜にい、一緒に寝よ』

 

 

 弟くんが甘えるのを邪魔しちゃダメだよな。うんうん、兄弟の時間大事。

 

 ……で、でもこの体の熱さは身に覚えがあるぞ。

 

 これは多分発情の初期段階だ。このままじゃヤバいかも。

 

 明日、空いた時間でリアに……お、お願いしようかな? 

 

 だ、だって告白しあった仲だし。もう色々した仲ですし。

 どうしようもない時にリアに頼るのは何も間違いじゃないはず……!

 

 

『はぁぁ……つっかれたぁ。まさか高校がゲームフィールドになるなんて……あぁ、もう寝よ』

 

 

 ゲームフィールド……そっか、リアはまた戦ってきたんだ。

 疲れてるもんね、こんな時にお願いなんてできないよね。

 

 そ、それなら、明日お願いしようかな。

 

 ……なんだろう、ボーっとする時間が長くなってきた……。

 

 

『レンか? 悪いんだけど、ショッピングモールがゲームフィールドになっちゃってな。今は時間がないから後で話を聞くよ』

 

 

 ぐ、ぐぬぬ……、なんでこう、巻き込まれ体質なのかなぁ?

 

 あぁー、うぅーっ……頭がクラクラするし、お腹の下が熱い……。

 

 

『ほら、剛烈さん上がって。父さんが晩ご飯作ってくれてますから』

 

 

 な、なっ、なんなの……誰ぇ……? 

 

 こんな、人がいっぱいいたら……お願いなんて出来ないよ……!

 

 はぁ、はあ……喉が渇く……ぅっ、がまん、がまんん……っ!

 

 

『仮想世界で見た建物が現実に……!? ちょっと外の様子見てくる!』

 

 

 ううぅっ、うううううーっ……! あつい、あついぃぃ……! 

 

 ウズウズして、クラクラして……ああぁぅ……もう、ちょっとがまん、もうちょっとだけ、だから……っ。

 

 

 

『もしもし、実は真岡さんに寿司を奢ってもらうから帰り遅くなるっぽい。お土産もあるから安心していいぞ』

 

 

 

 あああああああぁぁぁぁぁぁぁアアアぁぁァァッッ!!! うわあぁぁぁっぁぁあああっぁぁあ!! 

 

 リアのばかあああアァァぁぁぁ──ッッ!!!

 

 

 

 ……

 

 

 

 …………

 

 

 

 ………………

 

 

 

【博士、淫紋なんとかして】

 

 

「そうは言われてもなぁ……」

 

 後日、希望を求めてデム隊の本拠地にある地下研究室に訪れた。黒野博士はここでいろいろデム隊に手を貸しつつ罪を償っている……らしいけど、今の俺にはどうでもいい。

 

 とにかく今は椅子に座って腕を組んでいる博士に直談判してる。

 このアンドロイドの体を改造して淫紋を消し去れ、と。

 

「その淫紋の後遺症は君の人物データ……つまり魂に刻まれた情報だ。アンドロイドの体をいじくり回しても除去することはできないよ」

 

「……っ!」(必死に首を横に振る)

 

「無理なものは無理なんだって」

 

 はぁ、と溜め息を吐く博士。溜め息吐きたいのはこっちだぞこの野郎。

 

 

【というか現実と仮想が融合してるなら、俺の体はどこ? もうこの体じゃなくていい】

 

 

「……これを受け取ってくれ」

 

「っ?」

 

 博士に腕時計を手渡された。それを腕に巻きつけると、博士が紙の資料を見ながら説明を始めた。

 

「それはリバイブアクセスウォッチ。Revive(リバイブ)の名前の通り()()()()ためのアイテムだよ」

 

「……?」(首を傾げる)

 

「そのアイテムの事もあるけど、まず状況を一から説明しようか」

 

 

 そう言って博士は俺に分かるように、簡潔かつゆっくり説明をしてくれた。

 

 

 俺たちがいるこの都市部は今、ワールドクラッシャーを核とした超大規模なゲームフィールドと化している。

 

 つまり完全に仮想と現実が融合したわけではなく、小春やフィリスたちは実体化こそできるものの、ゲームフィールドの中にいた時と同様に『能力』が使えない。

 

 その為能力を行使するには、今まで通りこの世界のパートナーとアクセスしなければならない。

 

 しかし俺は能力どころか肉体すらも存在しないままこの世界に来ている。

 それなら復活(リバイブ)する為にはどうすればいいのか。

 

 

「仮想世界が観測不能になって、しかも肉体をサルベージする前に仮想世界そのものが現実に出てきてしまったとなれば……もはや海夜蓮斗のデータは君自身の魂と、君や知人の『海夜蓮斗に関する』記憶、そして姿が映っている写真や動画程度しか存在しない」

 

「……??」

 

「そのリバイブアクセスウォッチはそういった『海夜蓮斗のデータ』を少しずつ蓄積していくことで、長期間かけてウォッチ内に海夜蓮斗の肉体を再構築していくアイテムなのさ」

 

 

【つまり、今すぐには戻れない?】

 

 

「まぁそういうことだから、肉体の復活は保障するから安心してくれていい。……君のデータをウォッチに蓄積しないといけないんだから、これからはなるべく海夜蓮斗のときにしていた生活をしなよ?」

 

 海夜蓮斗の記憶がある人間たちと交流を欠かさず、海夜蓮斗の存在を証明する写真や動画なども探し、海夜蓮斗のときに生活していた家で過ごせ──ということらしい。

 

「……さっ、手助けと諸々の説明は終わりだ。壊れた声帯機能のメンテもするから、それが終わったら帰りたまえ」

 

 

【残ってる後遺症のことは!】

 

 

「知らないよ。僕だって美咲夜との面会を許可してもらうために色々頑張ってるんだから、君も自分のことくらい自分でやってくれ」

 

「……っ」(文句を言いたそうな目をしている)

 

「……そんな目で見られてもだね」

 

 面倒くさそうな顔ばっかりしないでほしい。こっちだって仮想世界じゃ博士にはたくさん振り回されたんだから、もう少し親切にしてくれたっていいはずだ。

 

「~っ!」(頬を膨らませて怒っている)

 

「……あー、もう、わかったわかった。確かに大人げなかったよ、ごめん」

 

 平謝りした博士は俺の喉に虫眼鏡型の不思議な機械を当ててメンテナンスをしつつ、仕方なさそうに言葉を続けた。

 

「じゃあヒントだけあげるよ」

 

「……?」

 

「後遺症は正規の淫紋ではないから、誰かにそのまま移すことはできない。でも、半分だけなら任意の()()にのみ譲渡することができるんだ。半分移せばその分後遺症の負担も軽減される」

 

 

【つまりどういうこと?】

 

 

「ヒントだけって言っただろう。対処法の正解は君が見つけたまえ」

 

 そう言いながら俺の喉をいじくり回し、十五分ほど経過した後に博士は喉から手を離した。

 

「ほら、喋ってみて。試しにアイウエオでも」

 

「……あぃ、ぅっ……え、ぉっ」

 

「ずっと喋っていなかったせいで言葉が発しづらいだろう? 壊れてた部分は修復したから、あとは毎日しっかり発声練習をして慣らしていくといい」

 

 その言葉に俺が頷くと、博士が手を貸して俺を立ち上がらせてくれた。

 そして俺の手に一万円札を無理矢理握らせてから、研究室のドアを開けた。

 

「それはここまで来た手間賃だよ。なにか美味しいものでも食べるといい」

 

 まぁ後遺症でそれどころじゃなさそうだけど、と付け加えた博士に促されて、俺はそそくさと地下研究室を出て行った。

 

 そのあと博士が何か呟いた気がしたけど、後遺症で顔が熱くなっていた俺の耳には彼女の言葉は聞こえなかった。

 

 

 

 

「あー、たくさん()()()そのうち淫紋も消えるよ……ってのはヒント出しすぎか」

 

 

 

 ……

 

 

 

 …………

 

 

 

 ………………

 

 

 

 

 デム隊の基地をあとにして約一時間経った頃。時刻は夕方。

 

 自宅には居なかったリアを探して、街の中をフラフラと歩きまわっていたら、怪人が暴れている事件に出くわしてしまった。

 

 暴れている怪人は見たことのある……というか完全に、リアと初めて出会ったときに戦ったあのオカマ怪人だった。

 今度は淫紋なんて回りくどい能力は使わず、指先から発射できるビームだけを存分に使って街を荒らしていた。

 

 そして怪人が暴れているその現場には、男のリアと女の子のリア、それから真岡正太郎と……なんとロイゼがいた。

 

 能力が使えないことに焦っているロイゼを男のリアが落ち着かせようとしてたり、真岡が重火器を使ってオカマと戦ってたりもした。

 

 

 ──でも後遺症で頭が沸騰している俺には、そんなことはどうでもよくて。

 

 

 目の前の視界が歪んで頭がクラクラして、何を飲んでも喉がずっと乾いていて、お腹の下が熱くて疼く。

 とても自分以外のことを考えられるような状態じゃなくて、オカマとの戦いはただ傍観することしかできなかった。

 

 なんやかんやあって真岡がロイゼに変身して、なんやかんやあってリアたちと協力して立ち回って、なんやかんやあってオカマを撃破してた気がする。

 

 そのあとはリア二人と一緒に、こっちの世界に現れた俺の家に向かうことになった。

 

 

 ……で、今現在いる場所は俺の家のリビングだ。

 女の子のリアを真ん中にして、三人一緒でソファに座っている。

 

「よかったなレン、ちゃんと自分の家に帰れて。小春ももう少しで来るってさ」

 

「……う、ん」

 

 久しぶりにロイゼと会えたからなのか、無事に怪人を倒せたからなのか、彼は先ほどから上機嫌だ。

 その様子を複雑な気持ちで眺めていると、彼のスマホから着信音が鳴った。

 

「わり、ちょっと電話でてくる」

 

 ソファから腰を上げてキッチンの辺りに移動して応答するリア。

 程なくして彼の会話が聞こえてきた。

 

「もしもし朝陽? ……あぁ、もうちょっとしたら帰るよ」

 

 ……えっ、すぐに帰っちゃうの。

 

「そん、な……」

 

 ついつい焦ったような声を漏らすと、隣に座っている女の子のリアが俺の顔を覗いてきた。

 

 

「……レンちゃん、もしかして」

 

 

「えっ? な、なに……」

 

「……あぁ、なるほど。……はぁ、まったくあのバカ夜」

 

 察したような表情になった後に深い溜め息を吐いたリアはそう呟き、ソファから立ち上がった。

 

 そして電話を終えて戻ってきたリアの前に立ち塞がり、彼女は腰に手を当てながら眉を顰めた。彼女のその行動にリアは困惑している。

 

「ど、どうした?」

 

「呆れた。私もうウォッチの中に戻るから」

 

「はい……? 急に何言って──あっ! おいアイリール!」

 

 返事も聞かずにそのまま彼女はリアの腕時計の中に姿を消してしまった。

 突然呆れられて姿を消した彼女の行動に、リアは唖然としている。

 

 

「……は、はは。なんだったんだろうな」

 

 苦笑いをしながら俺の隣に座るリア。

 

「えっと……」

 

 

 ──沈黙が流れる。

 

 

 リアは今、どうしてもう一人のリアに呆れられたんだろう。彼女は俺を見てなにを察したんだろう。

 

 分からない。何も分からない……けど、自分でも理解できるくらい『限界』が近い。

 さっきから視界はずっとぼやけたままで、熱に浮かされたように頭がゆっくり揺れている。

 お腹の奥がじわじわと熱くなってきて、ピクピクと体の末端が痙攣をしている。

 

 心臓が強く脈打っている。呼吸が荒くなってくる。肉体の全てが火照ってきている。

 

「……ぁ」

 

 そうだ、リアに助けてもらおう。

 一緒に観覧車に乗ったときだって「我慢はダメ」って、「したくなったら、ちゃんと言って」って俺に言ってくれてた。

 

 いいよね、まちがってないよね。

 

 

「……りっ」

 

「じゃ、そろそろ帰るよ。朝陽も心配してるだろうし」

 

 

「……………っ?」

 

 

 なんで?

 

 どうして……?

 

 どうしてそんなにいじわるするの……?

 

 

 

 

 

 

 

「……ぇ、ぅっ」

 

 好きになってくれてうれしいって、言ってくれたのに……。

 

「……っ?」

 

 いっしょにいられて、しあわせだって言ってくれてたのにぃ……!

 

 

「ひぅ……っ、うぅぇぇっ、……ぐすっ、うぅぅっ……!」

 

「れっ、レン!?」

 

 なんで逃げるの……! お、おれっ、リアだから信じてたのに……信じてるからずっと我慢してたのにぃ……!

 

「ひっぐ……う、うぅ……うえぇん……!」

 

「レンっ、おい、大丈夫か!」

 

 どの口が言ってるんだ……! ずっとほったらかしにしてたクセにぃ……! 

 

「リアのばかぁ……えぅっ、ひ……ぇ……うぅぅっ、ひどいよぉ……!」

 

「……!? っ!? ぁ、あのっ、ごごごめん! ゴメン! ごめんなさい!! ゴメンナサイ!!」

 

「ひぐっ……ぉ、弟でもっ、しん……ゆうでもっ……ぅぅっ……す、すきなとこ行けよぉ……! もういいよばかぁ……!」

 

「行かない行かない! 一緒にいるって! 本当にごめんなさい!! 俺が悪い! マジで全部俺が悪いから! ほんとマジですいません!! ゴメンナサイ!!

 

 

 

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 

 

 

 

「美咲ー、掃き掃除終わったぞー」

 

「……あ、あぁ、うん、こっちも終わった」

 

 放課後の教室掃除があらかた終了し、当番の生徒たちで一旦集まってから挨拶。放課後のお掃除タイムは終了した。

 

 地東高ではなく恵地高校になってから妙に教室が広くなってて掃除も大変になったり、敷地内の建物の把握や授業内容の変化などもあったが──今の俺にはそんな苦労や変化など微塵も苦にならない『理由』が存在するので全くもって問題ない。

 

 

 現実世界に転送されてきた海夜家に行ったあの日から、既に三日が経過している。

 

 地東高校が恵地高校に変化したことで登校日が早まった為、こうして高校生活が再開されたわけなのだが──自分でも分かるくらい、俺はずっと上の空だ。

 

 先生や呉原にお小言を頂かないように気をつけてはいるのだが、どうしても俺の脳内を別の思考が支配してしまって集中できない。

 

 その理由は……ほんと、単純なんですけど。

 

 

「おいっ、美咲の家って道そっちじゃないだろ?」

 

 いつもの交差点で別の道を選んだ俺を、後ろから呉原が引き止めてきた。

 

「ええと、ちょっと寄る所があって……」

 

「……お前、大丈夫か?」

 

「な、なにが?」

 

「いや、そりゃ高校が急に別の学校になって混乱するのは分かるぞ? 俺だって状況一緒だからな」

 

 でも、と続ける呉原は苦笑いをしている。

 

「今日ずっとボーっとしてたぞ。……昨日と一昨日は連絡も取れなかったし、何かあるなら相談に……」

 

「いやいや、全然大丈夫っ。深夜までFPSしてから眠かったんだよ」

 

「はぁ? ……なんだよ、心配して損した。てかどうせ夜中にやるなら誘ってくれよな」

 

「おう、頼むぜ。……んじゃ、また明日」

 

「じゃあなー」

 

 手を振りながら呉原と別れ、交差点を進んでそのまましばらく真っ直ぐ進み、脇道を通って住宅街に出た。

 

 

 俺の家とは正反対の場所にある、仮想と現実が融合してから新しく生まれた住宅街だ。

 この周辺の地形はまだあまり把握していないものの、()()()()とコンビニの場所だけはしっかりと覚えている。

 

 そして俺が向かうのはその既に知っているとある家なので、迷うことなく真っ直ぐそこへ向けて駆け出した。

 

 

 数分して、見覚えのある一軒家が目に入ってきた。

 表札には『海夜』と書かれており、玄関の電気も点いているので留守ではないことも分かった。

 

 すぐさまポケットから取り出した合鍵をドアの鍵穴に差し込み、グイッと横に捻れば開錠の音。

 速攻で鍵を抜いてドアノブを引き、俺は海夜家の玄関へと入っていった。

 

「ただいまー」

 

 自分の家ではないにも拘わらず帰宅の挨拶をし、靴を脱ぎ捨ててリビングへと直行。

 

 居間に入って最初に俺の目に映ったのは、ソファに座りながら大きな卒業アルバムを捲っている黒髪の少女の姿だった。

 

 俺の姿に気がついた少女は一旦手を止め、こっちに首を向けてくれた。

 

「あっ、リア。おかえり」

 

「うん、ただいま、レン」

 

 ごく普通におかえりを言ってくれた彼女の言葉に笑顔で返し、俺は鞄をその場に置いてキッチンへと向かった。

 ささっと手洗いとうがいを済ませ、ソファに足を進める。

 

「今日は卒業アルバムか」

 

「家族との写真とかはあらかた見終わったから、とりあえず小学校のやつから見てる」

 

 アルバムを捲りながら『男だった頃』の自分の写真を念入りに探しているレンの隣に腰を下ろし、距離を詰めた。

 

「俺も手伝うよ」

 

「あ、うん。ありがと」

 

 レンに微笑まれて少し嬉しくなりつつ、まだ手を付けていないであろう中学時代のアルバムを手に取った。

 

 

 ──三日前のあの日、レンの背負っていた事情を全て聞いた。リバイブの件も、後遺症の事も、なにもかも。

 それら全てを知ったうえで、俺は彼女に全力で謝り倒したのだった。

 

 確かに俺は現実世界に帰ってから、ずっとレンとは別の方向に目を向けて生活をしていた。ゲームフィールドの事やデスゲーマーズの皆……それに朝陽のことばかりを考えて。

 

 あらゆる面で俺の落ち度だった。こっちの世界の事に集中しすぎて、忘れてはならない事すら忘れていたのだ。

 

 あのデスゲームの間ずっと俺を守り続けてくれていた、そして俺自身を受け入れてくれた大切な人のことを……俺は。

 

 故に贖罪の意味も込めて、俺から淫紋の半分の譲渡を申し出た。すぐにできる償いの方法はそれしかなかったが、これから時間を掛けて自身の罪を償っていくと約束もした。

 レンには「そこまで重く考えないでほしい」と言われてしまったが、俺の気持ちの問題だった。そうまでして自分を責め立てないと、罪悪感でとてもレンの隣にはいられないと思ってしまったのだ。

 

 

 ……なのだが、レンには「それ以上自分を責めるなら、また泣いちゃうぞ」と脅されてしまった。

 

 彼女は食い下がる俺を説き伏せ、ときどきで構わないからまた一緒の時間を過ごしてくれればそれでいい──と、そんなあまりにも謙虚な条件で俺を許してくれた。

 

 

 優しすぎる。聖母かなにか? 

 

 そんな簡単に人の事許しちゃダメだぞ。もっと俺の事責めてくれても……うぅ、好き、ごめんなさい、本当にごめんなさい。謝り足りないよぉ……本当にごめん……。

 

 ううぅ……好き、好きぃ……。ゴメン、好き、大好き、ごめん……。

 

 

 リアの頃の『蓮斗が好きな気持ち』を鮮明に思い出しつつ、そんな感じで感情がオーバーヒートした俺は、半ば無理矢理レンに淫紋の半分を渡させた。

 

 これ以上レンにだけ負担を強いると俺はもう死ぬしか道が残されてないので、せめてそれくらいはさせて欲しかったのだ。

 

 なんとしても今までのバカ夜の行動を挽回していこう。そう改めて心に誓ってレンと指切りをした。

 

 

 

 ──のだが。

 

 

「んっ。リア、どうした?」

 

「……あ、あの……レン」

 

「なに?」

 

 

 ……その、あの………だ、抱きしめても、いいかな?

 

 

 俺の口から出たのは、そんなわがままで弱々しい声だった。

 

「……う、うん」

 

「やった!」

 

「わっ」

 

 レンからの許可が出た瞬間、俺は両腕を広げて横から彼女を抱きしめた。

 その瞬間、ふわりとレンの長い黒髪から甘い香りが漂ってきて、鼻腔を通って脳を刺激してきた。

 

「すぅー……すぅー……」

 

「くすぐったいよリア……んっ」

 

 そのまま彼女の首元の匂いを嗅いでいると、レンの体がピクンと反応した。彼女が首元やうなじが敏感だということは知っているので、わざとらしく鼻息を当ててみれば、予想通りレンは甘い声を出した。

 

 それが俺の中にある感情を湧き立たせ、更に彼女を強く抱きしめるという行動へと移させた。

 

「はぁ……レンは柔らかいな……」

 

「……そのセリフ、昨日も聞いた」

 

 呆れたように、しかして優しさを感じる声音で「仕方ないなぁ」と呟くレンに頭を撫でられた。

 

「うぅ……やさしい、好き……あったかい……」

 

「リア、そんなに甘えてこなくても……俺、別にもう怒ってないよ?」

 

「い、いやっ、単純にレンと一緒に居たくて……ダメ、かな」

 

「……駄目じゃないよ。むしろ、嬉しい……っ」

 

 そんな彼女の心の暖かさと、小柄で柔らかいレンの体の温かさを感じていると、少し最近の事が脳裏によぎった。

 

 

 

 淫紋の半分を受け取ったあの日俺は海夜家に泊まり、既に発情が限界状態だったレンと……した。

 

 男としては初めての、まさに未知の体験の連続で余裕が無くなってしまったことは今でも覚えている。

 

 だけど、余裕を失ってかなり激しくしてしまった後も、レンは俺を優しく抱きしめて添い寝してくれた。

 

 その日からだ。

 

 淫紋のせいなのか、はたまた気持ちが昂ぶってしまっているだけのかは解らないが──妙に性欲が強くなってしまったのは。

 

 昨日も一昨日も、俺は海夜家に泊まってレンに甘えていた。

 しかし淫紋のレベルはお互いに一緒なので、俺がレンに甘えることもあれば、逆にレンが俺に甘えてくることもある。

 

 主に朝や夕方は俺の方が甘えて、夜中は全体的にレンのターンだ。

 

 

「ハァ……ハァっ、レンん……!」

 

「ね、ねぇ……リア。朝陽君のことは……大丈夫なの?」

 

「うぐっ」

 

 いつの間にか寝室のベッドに移動して制服のまま抱き合っていると、レンに痛いところを突かれてしまった。

 

 昨日と一昨日は小春が「私が親戚のお姉ちゃん役になるよ!」と言って朝陽の面倒を見てくれていたが、流石にそろそろ帰らないとマズイ。

 

 それに小春にも気を遣わせっぱなしなのも辛いところだ。彼女も自分の家に帰りたいだろうに、俺とレンのことを優先して美咲家に残ってくれている。さすがに俺はちょっといろんな人に甘え過ぎだ。

 

「……今日は帰るよ。朝陽も待ってるし、小春も帰りたいだろうし……」

 

「それなら早く帰ってあげた方がいいよ。朝陽君のこと、安心させてあげないと」

 

 そう言いつつも自ら強めに抱きしめてくるレン。言葉と行動があべこべですよ……。

 

 そのままベッドで横になりながら密着しあっていると、下半身の中心に血液の流れを感じた。

 

 ──ヤバい。

 いや割と結構前からヤバい状態だったけど。

 

「……リア」

 

「……は、はい」

 

「お腹に……硬いの当たってるけど」

 

 確かに言われてみれば下腹部の少し下あたりが、なにやら柔らかい感触に包まれている気がしなくもない。

 

「……リア、もしかして無意識って言うつもり?」

 

「……うぅっ、ご、ゴメン、抱きついた時からそのつもりだった……」

 

 いつの間にかズボンがテントを設営していて、その先端がレンの柔らかい太ももにグイグイとちょっかいを出していた。

 ここまでしておいて言い訳などできるはずもない。

 

「──レンっ!」

 

「うわわっ」

 

 我慢できずに俺は体勢を変え、ベッドの上でレンを優しく押し倒した。

 

 俺の下になったレンの頭がポテッと枕の上に置かれ、四つんばいで覆いかぶさっている俺とレンの顔の距離はとても近くなっている。少し前に動かせば、いとも容易く唇が触れ合ってしまいそうな距離だ。

 

 その距離で血走った目をしている俺を前にして、レンは仕方なさそうに微笑んでいる。

 

 

「い、一回だけ……! そしたら帰るから……!」

 

「……まぁ、好きに使えばいいよ」

 

 

 仮想世界で(リア)(ケダモノ)に言った言葉をそっくりそのまま返され、昂ぶった感情を発散するべく俺は彼女の下着に手をかけた。

 

 

 

 ……俺、このままじゃマズイぞ。

 

 

 




美咲夜:覚えたてなので盛りがち がっついてる自覚はあるがレンが受け入れてくれるので少々気が緩んでいる でもそのおかげで最近のストレスは全部ふっ飛んだ

 レン:こっちも夜中は絶好調 自分と比べても夜の方が圧倒的に甘えてくる頻度が高いが、仮想世界で毎日性欲処理をさせていたことに引け目を感じているため、なんとなく拒否できずに流されてしまう
    あと夜のおかげで発声練習はすぐに終わった


 小春:空気を呼んで家には帰らず美咲家に滞在してた 
    互いに兄(姉?)のことで共通点ができ、朝陽とはすっかり打ち解けた 

アイリール:こっちも空気呼んでウォッチの中で大人しくしてる

 黒野:今回のMVP 助言でやらしい雰囲気にした


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