お前のハーレムをぶっ壊す   作:バリ茶

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ママというよりおばあちゃんなコスプレ部14枚目

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ワールドクラッシャーのお泊り会【お風呂編】

 雷雨の中での対話を終えてから数十分後。

 償いの機会を与えてくれたクラッシャーと共にショッピングモールに戻った俺は迷子センターにいたアイリールと合流し、その近くにいた真岡にも事情を共有した。

 

 そして今は三人で真岡の車に乗って俺の家へと向かっている途中だ。後部座席にアイリールと隣同士で座っているが、やっぱり濡れたままというせいもあって結構寒い。

 

「夜……大丈夫?」

 

「あっ、あぁ、平気。そろそろ家着くだろうし」

 

「……手、震えてる」

 

 ガチガチと歯を鳴らして寒さに震えている俺の手をアイリールが握ってきた。豪雨に打たれていた俺と違って暖房の利いたモール内にいたアイリールの手はとても温かい。

 

 ──俺がモールに戻ってきた直後はいつも通り寂しそうにしていたアイリールだったが、事情を話すと意外にも直ぐに立ち直って俺の心配をしてくれた。

 

 どうやら彼女はこういった状況でも我が儘を言う程追い詰められてはいなかったらしい。俺が思っていたよりもアイリールが強い子だったようで安心した。

 

「……ありがとな」

 

「ううん、私って何もできないから、これくらいはさせて」

 

 より一層強く彼女に握られたことで、俺の右手からほんの少しだけ震えが抜けたような気がする。

 先日の膝枕といい、俺が疲弊している時に限ってこう……なんというか、暖かく受け止めてくれるんだよな。

 

 優しい。バブ。

 

「全くクラッシャー様ったら! 勝手に居なくなられては困りますよ!」

 

 俺とアイリールが後部座席で温め合っている最中、運転席にいる真岡が助手席に座っているクラッシャーにお叱りの言葉を発した。

 怒られた当の本人である紫髪の少女は少しビビっている。

 

「お、怒ってる……?」

 

「怒ってます! 日中は一人で行動しないって約束だったでしょう!」

 

「待て我が従者よっ、アレは風船で我を誘惑した職員のせいで……!」

 

「言い訳しないッ!」

 

「ぴっ!?」

 

 完全に真岡がペース握ってるぞ、どうなってんだこれ。確かこの二人って主従関係なんじゃなかったのか?

 真岡さんいつの間にクラッシャーの保護者になったんだよ……。強すぎるぞこのオカマッチョ。

 

「…………ごめんなさい」

 

「……いえ、解ってくれたならいいんです。私も強く言い過ぎましたね、ごめんなさい。クレープはまた今度にしましょ」

 

「う、うん」

 

 主従関係崩壊! めっちゃ歳相応の女の子と化したクラッシャー!

 餌付け以外にも普通に教育とかしてたんだな真岡さん。クラッシャーちゃんの物わかりがよすぎる。

 

 

「ハウスに着いたわよボウヤ」

 

 

 真岡が美咲家の前に車を停車してくれた。さっさとシートベルト外さなきゃ。

 

「クラッシャー様もここに泊まるんでしたよね?」

 

「うむ。我が従者よ、今日はお休みを与えてやろ──ぅ、ぅ、っくしゅん!」

 

「ありがたき幸せ。とりあえずしっかり温かくして風邪引かないようにしてくださいね」

 

 ポケットティッシュでクラッシャーの鼻を拭いた真岡に促されて車から降り、玄関のドアを開けた。

 すると入って直ぐの廊下にレンと小春が見えた。どうやら帰りを待ってくれていたらしい。

 

「お帰り! わっ、リアちゃんビショビショだ……」

 

「はい、タオル」

 

「さんきゅ」

 

 レンに渡されたタオルを広げてクラッシャーの頭に乗せた。

 

「タオルもう一枚持ってきてくれないか?」

 

「わかった」

 

 パタパタと足音を立てて洗面台へ向かうレンとは対照的に、小春が此方に近づいてきた。その視線の先にはぐしょ濡れになったワールドクラッシャーがいる。

 

「この子は……?」

 

「あぁ、悪い、連絡入れてなかったな」

 

 髪が紫色とはいえ、基本的にワールドクラッシャーはリアのそっくりさんだ。小春やレンからすれば驚くのも無理はない。

 

 ……ここでコイツがあのラスボスだって言っていいのかな。喧嘩になったりしないかしら。

 

「リア、タオル」

 

「ありがと」

 

 戻ってきたレンから受け取ったタオルで濡れた髪を拭くと、小春が何かを察したような顔になって「あっ」と呟いた。

 そして一瞬レンと目を合わせてから、俺たちと入れ替わるようにして靴を履いて玄関へ二人で移動した。

 

「え、どうしたんだ二人とも?」

 

「やっぱり私たち帰るね。いこ、お兄ちゃん」

 

「わかった。じゃあリア、また今度」

 

「……う、うん」

 

 もしかしてクラッシャーを見ただけで事情を察したのか。いや別にこの家に居てくれてもいいんだけど、せっかく気を遣ってくれたのなら引き止めるのも悪いような。

 

 でも外雨降ってるし──なんて逡巡していると、真岡が笑って声を掛けてきた。

 

「二人はアタシが車で送るから大丈夫よん♪」

 

「悪いな、ありがとう真岡さん」

 

「いいわよ、それより今夜はクラッシャー様のこと宜しくね。何かあったら連絡頂戴な」

 

 それだけ言うと真岡は海夜兄妹を連れて家の外へと出て行った。

 何から何までしてもらって申し訳ない気持ちもあるけど、彼が良いといってくれるならなるべく甘えておこう。数少ない頼れる大人だし。

 

 

「……さて、美咲夜」

 

「ん?」

 

「さっそくフロとやらをするぞ」

 

 何言ってんだこいつ。

 

「俺はストーブで温まってるから先に入ってきていいぞ?」

 

「何を言う! 償いなのだから我に奉仕するのが当たり前だろう! というかフロのやり方はお前が教えろ!」

 

「えぇ……。な、なぁアイリール……」

 

 こういうのって女の子同士で入るべきなのでは? クラッシャーの性別知らないけど。

 

「私にこの人と二人きりになれと……?」

 

 アイリールが怖い顔してる。すっごいオーラ出てる。

 ……まぁ、確かにクラッシャーと二人きりってのは酷だよな。何をやらかすか分かったもんじゃないし、そもそも償いを命じられているのは俺だからやっぱり自分でやらないとダメか。

 

「悪かったよ、ごめん。じゃあ俺クラッシャー洗ってくるから部屋の暖房つけておいてくれ」

 

「あいあいさ」

 

 俺の言葉を聞いてアイリールが二階に向かったところで、俺とクラッシャーは脱衣所へと向かった。

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 仮想世界でリアが着ていたものと全く同じなクラッシャーの服を洗濯機にぶち込み、彼女にバスタオルを無理やり巻かせてからバスルームに移動した。ちなみに俺も腰にタオルを巻いているので何も問題はない。

 

 帰りが遅い俺を心配して予め朝陽が浴槽にお湯を張って予備暖房もつけていてくれたので、バスルームはなかなかに温かい。冷えた身体が溶かされていく感覚を感じる。

 

「おぉ、なんか温かいぞ! 裸なのに!」

 

「いいから椅子に座ってくれ、髪洗うから」

 

「これか?」

 

 指示通り大人しくバスチェアにちょこんと座るクラッシャー。

 とりあえず身体が冷え切っているのでまずはお湯で体を温めなければ。

 

 シャワーを手に取ってハンドルを回し水から温かいお湯になったのを確認してから、クラッシャーの頭からシャワーを浴びせた。

 

「わぁっ! 何だ!? 雨かっ!?」

 

「ただのお湯だよ。目は閉じておいた方がいいぞ」

 

 お湯の勢いはゆっくり目で、なるべく優しく髪にシャワーを当てていく。少女に対してシャワーを浴びせる方法はアイリールで経験済みなので問題ないぜ。

 

「……温かい」

 

「まぁお湯だからな」

 

「ふむ、なかなか気持ちいいぞ。その調子で奉仕を続けるがいい」

 

 くっそ上から目線だけど立場的に弱いのは俺だから文句言えねぇ。

 

 ……にしても、綺麗な紫髪だな。こうして間近で見ると改めてよく分かる。髪質も若干アイリールの銀髪と似てるし、なんだかいつも通り彼女と風呂に入ってる気分だ。

 

 しっかし、まさか(アイリール限定で)女の子と風呂に入ることが当たり前になる日が来るとは想像もしてなかった。まぁそのおかげで今こうして失敗せずクラッシャーに奉仕出来てるからアレも無駄じゃなかったな。

 

 

「夜、お待たせ」

 

「わっ」

 

 噂をすれば来たよ! いや来るとは思ってたけど別に待ってなかったから!

 

「むっ? その声はアイリール・ダグストリアか?」

 

「夜いるところに私あり」

 

「ふむ、なるほどな」

 

 いやなるほどじゃないが。仮にも敵だった相手の家だってのに気を抜きすぎでは?

 

「私が洗うから代わって。髪洗うのは夜より上手」

 

「えっ、いいのか?」

 

「確かダグストリアも美咲夜に協力していたな! 自ら償おうとするとは良い心がけだぞ!」

 

「どうも」

 

 シャワーを俺から受け取ったアイリールは素早い手際でシャンプーを開始した。

 数分経過する頃にはクラッシャーの頭は既に泡まみれだ。

 

「ぎゃあっ! 目が痛い! なんだぁ!」

 

「ちゃんと目を閉じてて。泡入ると沁みるよ」

 

「うぐぐ……フロとは一筋縄ではいかないのだな……」

 

 外見の違いが髪の色程度しかない程そっくりな少女たちがキャッキャウフフしてる間に俺は髪と身体を洗い終え、一足先に浴槽に浸かった。

 肩まで浴槽に浸かると全身の内側から解されていくような感覚が広がってきて心地がいい。

 

 ふあぁぁ、あったけぇ……。雨の中で土下座してたときは凍え死ぬかと思った……。

 

「はい、流すよ」

 

「いつでもこ──わぷっ」

 

 まるで羊を彷彿とさせるほど泡まみれになったクラッシャーをシャワーで洗うアイリール。何をどうしたらそんなに泡立つんだ?

 

「はい、終わり」

 

「……もう目開けていい?」

 

「いいよ」

 

「ふむ……おぉ、なんだかスッキリしたぞ」

 

 髪と体を洗い終えたクラッシャーは満面の笑みで───って! ちょっ! バスタオル外れてる!

 

「アイリール……! クラッシャーのタオル外れてる……!」

 

 目を逸らして指摘すると、何故かアイリールから呆れたような声が発された。

 

「浴槽に浸かるんだからタオルは外すでしょ。私も外すね」

 

「は!?」

 

 いや俺絶賛腰にタオル巻いたまま風呂入ってますけど! ていうかこのまま浴槽に入る気か!?

 

「おい美咲夜、このまま椅子にしてやるからジッとしていろよ」

 

「ちょっ!」

 

 急いで浴槽から出ようとする俺を押さえたクラッシャーは、そのままお湯の中へと入って俺の腰の上に座ってきやがった。ぎええぇ! クラッシャーのお尻が! タオル越しだけど腰の上にぃ!

 

「お、おい、座りづらいから動くな」

 

「まず座るなよ!」

 

「私も入る」

 

 狭いって言ってんだろ!?(一度も言ってない)

 そこまで広くないのに何で三人で同じ浴槽に入るんだよチクショウ……!

 

「ふああぁ~……これがフロというものかぁ……」

 

「どう?」

 

「中々気持ちいいぞ。こんな事ならもっと早くフロを知りたかったな」

 

 心地よさげにクラッシャーが体を伸ばすせいでより深く俺の腰にコイツの臀部が食い込みやがる。

 しかも完全に彼女の白い背中が俺の胸に密着してるし、なにより至近距離過ぎて良い匂いが鼻腔を襲ってくる。ひぃぃ……!

 

 いや普段アイリールと風呂入るときだってこんなに密着しねぇんだよ! それどころかいつも先に上がってるわ!

 

「んっ……こ、こら、動くなと言っているだろうに」

 

「ゆっくり浸かりたいんだったら俺がいない方がいいと思うんですよ」

 

「うるさい。償いなのだから大人しく椅子になっているがいい」

 

 償いって言葉便利すぎィ! 

 おいアイリールも何か言ってやれYO!

 

「クラッシャー、お風呂は百秒数えてからじゃないと、出ちゃダメ」

 

「ほう。ではこれから数えるとするか」

 

 そうじゃねーだろ!? せめて「夜からどいて」くらいは言ってくれると思ってたんだけど!?

 

 くっそ……! ワールドクラッシャーは確かに姿形こそアイリールに似てるけど、それでもやっぱり別人なんだよ……! 比較的馴れたアイリールでさえ裸で密着したら心臓爆速だってのにこいつと密着してたら──!

 

 

「負けねぇ……俺は負けないぞ……」

 

 

 とにかく心を落ち着かせて平常心を保たなければ()が反応してしまう。

 落ち着け! まず冷静になることから始めるんだ! 煩悩退散煩悩退散煩悩たいさぁぁぁん! 

 よっしゃ余裕! はい勝ち~! クラッシャーごときに興奮するわけ無し! 圧勝!

 

 

「……んっ。おい、美咲夜。お前下半身に何か隠してないか?」

 

「は? 何の事だかさっぱり分かりませんね」

 

「嘘をつくな! さっきから変な感触がお尻に当たってるぞ! ……まっ、まさか武器を隠し持って!? き、貴様ァァッ!!」

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁ!? おいバカ触るなやめろ! 何もないから! マジで無いから! 本当に何も持って無いからァ!!」

 

「お風呂で暴れないで……」

 

 ちくしょう先が思いやられるゥ!!

 

 




アンケートの件ですが「ルクラ」という案も出ました 次回までに決めときましゅ

ワールドクラッシャーの略称あった方がいいです?

  • クラッシャーのままでいい
  • ワークラ
  • クラ
  • クラシャ

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