お前のハーレムをぶっ壊す   作:バリ茶

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TS! TS! TS! TS! TS!


キレる親友 反省するTS娘

 

 

 

「エロゲの主人公かテメェはぁぁぁぁぁッ!?」

 

「く、呉原! 待ってくれ!」

 

「くたばれっ!!」

 

「ぶべぇっ!?」

 

 

 ルクラ事件から数日後。

 

 色々と事態が丸く収まってきたことには安堵しつつも、最近は毎日が急がしくて大変だ──といった愚痴を我が親友に吐露したところ、見事に逆ギレされてぶん殴られた。グーで。

 

 時刻は放課後、場所は近所の公園。地に伏した俺の舌には土の味が広がっている。

 

「うぐぐぅ……落ち着け、呉原……!」

 

「うるせぇー! 自慢にしか聞こえない愚痴ばっか言いやがって!」

 

「自慢じゃないって! 本当に大変なんだよ!」

 

 怒り狂う少年と俺が激しく答弁している傍ら、相棒のアイリールは意にも介さずベンチに座って楽しそうにスマホゲームをしている。

 

 ちょっとあなた! 相棒が殴られてるんですよ! 庇ったりとかしないんですか!

 

「朝は我慢が切れた小春に絞られて大変だっただぁ……? 昼は“お礼”と称して学校に来たルクラと隠れてぇ……? 帰ったら朝までレンと───あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ァ゛ッ゛!!! ナメてんのかテメェェェッ!!」

 

「落ち着け! 髪が逆立ってる!」

 

「黙れっつってんだろうが!!」

 

 怒らないでぇ……! 最近の出来事を簡単に話しただけじゃん……! 愚痴なんていつも聞いてくれてたじゃんかぁ……!

 

「返せ! 教室の掃除中に『この学校でエロゲヒロインと青姦するとすればどこが良さげかなぁ~』とか一緒に話してたあの時の美咲を返せ! 色んな作品を語り合って最高のヒロインを吟味し合ってた親友を返しやがれ! お前は誰だ!」

 

「い、いや俺も美咲なんだけど……」

 

「俺の親友は朝昼晩毎日ところ構わず情事に耽る様なサルじゃねぇんだよぉぉぉぉ!!」

 

 めちゃくちゃに怒っていらっしゃる。どうやら俺の話は彼の堪忍袋の緒をズタズタにぶった切ってしまったらしい。

 

「大変とか言いつつヤレる事を本当は喜んでんだろ!」

 

「そんなことは……」

 

「ちょっとニヤけてんじゃねぇか! 嘘下手か!」

 

 ……だ、だって、そりゃあ俺だって男の子ですし。大変だけど気持ちいいのは事実なわけで──あ゛ぁ゛ッ!? 違う違う! クッソ、思考がケダモノ兄妹に浸食されてるゥ!

 

 

「お前は……お前はぁ……変わったぁ……!」

 

「うおぉぉぉい泣くなよ!」

 

 

 いや、わかるぞ? 呉原の言いたいことはな?

 

 確かにここ最近は多忙だったけど、思い返してみれば確かに今の俺は、エロゲというより抜きゲーの主人公みたいな生活を送ってた。それを多少なりとも喜んでいたのは間違いない。

 

 これでも年頃の男子高校生だし、自分の状況を冷静に分析できないほど子供でもない。

 

 ルクラの件も『しょうがない』だけで済ませるのは些か厳しい。彼女にも近いうちに()()という常識を教えなければいけないだろう。

 

 

「……悪かったって」

 

「う゛るぜぇ……!」

 

 それに何と言っても──今までの美咲夜としての生活、というものを疎かにしていた事実がある。

 

 仮想世界とこの世界が融合してからというもの、俺はあっちの世界の人間とばかり交流していたため、呉原の様な元々の知り合いとの関係が希薄になってしまっていた。

 

 まぁ呉原もそこは此方の事情を察してくれてはいたのだが、今回の話で我慢の限界を迎えてしまったのだろう。彼からすれば俺はヤリまくりを自慢する腐れ脳味噌ゲロカス糞野郎だ。

 

「リアの状態でされてた時は同情もしたさ……。俺の想像以上に大変だろうし、出来れば力になってやりたいって思ってた。でも今の美咲はなんか違うってぇ……」

 

「そうかもな。調子に乗ってたかもしれん」

 

 呉原は女から男に戻って体の感覚に戸惑っていた俺の気持ちを察して、親身になって支えてくれた。

 

 そんな彼を放っておいてずっと女の子たちを優先していたのは確実に俺の落ち度だ。FPSで寝不足だと嘘をついたり、心配してくれる彼を置いてさっさとレンに会いに行ったときなんか特にひどかった。

 

 ごめんよ親友……。俺は、俺は……!(ワナワナ)

 

 

「……そうだ。なぁ呉原、明日は休みだろ? ウチに来ないか?」

 

「へっ?」

 

 まぁぶっちゃけ俺の性事情で呉原が怒るのは逆ギレ以外の何物でもないのだが、もし立場が逆だったとしたら俺も確実に彼に向かってブチ切れていた。

 

 エロい事しまくってるのに『いや~大変だったわ~(笑)』とか言われてキレない方がおかしいからな。男子は特に。

 

「真岡さんに貰った謝礼金で新しいゲームとハード買ったんだ。一緒にやろうぜ」

 

「……え、いや。だってお前……ほら、レンたちとか……」

 

「あいつらが盛り過ぎなんだよ。俺だって友達とゲームしながらダラダラしたりとかしてぇ」

 

 普通に本音である。一昨日の深夜に我慢の限界を迎えた兄妹……いや姉妹に二人がかりで襲われたときは流石に“死”を悟った。

 

 加えてルクラも混じってくるとなると(アイリールが手伝ってくれるとはいえ)、このままでは確実に絞り殺されてしまう。比喩抜きに。

 

(俺の平穏の為にも、受け入れてばかりじゃ駄目だ……!)

 

 ここ最近はルクラも隔離空間に帰らず、こっちでずっと真岡と一緒に過ごしているようだし、心変わりでもしなければタイムリミットの事も気にする必要はない。

 

 ならば彼女ら三人には徹底的な我慢をさせるようにしよう。

 

 あれこれ条件付けて……先ずは二週間程度が妥当か。もしゴリ押しで襲ってきたら「それ以上すると嫌いになる」と言って行為が始まる前に止めさせればいい。始まったら手も足も出ないし。ルクラに関してはアイリールに任せよう。

 

 

「……そう、か」

 

「そうだよ」

 

 呉原の言葉に便乗する。

 すると、次第に彼の顔が晴れやかになっていく。

 

「じゃあ明日、泊まってもいい?」

 

「おう。お前も何かゲーム持って来いよな」

 

「あ、それなら移植版の全年齢の最良の選択を持ってくわ。まだ全然クリアできてねーんだ」

 

「よりにもよってそれかよ……。まぁいいけどさ」

 

 なんとかいつもの調子に戻ってきたようで安心した。その方が俺も嬉しい。

 こうして遊びの約束をすること自体が久しぶり……なんて感覚を覚えてしまう事が些か悔しい。今までの分いっぱい遊ぶぞこのやろう。

 

 

「おーい美咲。暗くなってきたし、そろそろ帰ろう」

 

「わかっ──……あっ」

 

 そうだ、いい事考えた。……へへっ。

 

「夜、悪い顔してる」

 

「バレたか。……なぁ、この前はそっちの要望で変身したんだし、今日は俺のわがままで変身してもいいよな?」

 

「確認なんて取らなくても。夜の好きにすればいいよ」

 

「ありがとな」

 

 相棒に許可を貰ったのでこれより変身を開始します。

 うおおおおォォォオオオ変身ッ!!!

 

「おわっ! おい美咲!? 急に体が光って──!」

 

 驚く呉原を尻目に数秒後。

 

 俺は再びリアとなったのだった。

 

 

「……な、なんだ急に変身なんかして?」

 

「ふふふ……」

 

 覚悟しろよ! ビックリさせてやるからな!

 

「呉原くーんっ!」

 

「っ!!?」

 

 リアになった俺はその場を駆け出し、いきなり呉原の腕に引っ付いてやった。両手で彼の右腕を掴み、わざとらしく腕に胸を当ててみる。

 

「おいおいおいおいおいおいおい何してんだお前は」

 

「呉原君は俺……私に『エロゲの主人公かよテメェ』って怒ってたから、キミもエロゲの主人公気分を味わいたいのかなって!」

 

「ばっ、馬鹿! んなわけねーだろ!?」

 

 え、違うの?

 まぁいいや、折角だからこのまま続けたろ。こいつの反応面白いし。

 

「喜べよ〜、人気エロゲに出てくるヒロインが現実でくっ付いてるんだぞ〜♪」

 

「いや中身お前じゃねぇか! えぇい気味悪い離れろ!」

 

「うるせー! このままくっついて家まで送ってやる! お前の家族に誤解させてやるー!」

 

「おいバカ冗談じゃねぇぞこの野郎!? 離れろ気色悪い!」

 

「なにをーっ!? リアのおっぱい押し付けられても冷静でいられんのか! どうだ! このこの!!」

 

「あっ❤︎ ちょ、マジでやめろおい! それはズルい! 中身お前でもそれは破壊力高いからマジでやめろぉぉォォうぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 


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