今回のあらすじ:前々回にレン・小春・ルクラに長期間のえっち我慢をさせようと思い立った夜。しかし彼女らは(特にルクラは)強く拒絶すると開き直られる可能性が無きにしも非ず。そして開き直られたら夜たちに勝ち目はない。
その為、夜はアイリールと協力し、今一度リアとして振る舞い相手の良心を利用する形で彼女らを誘導しようと画策したのだった──!
「んじゃな、美咲。また明日学校で」
「うん。帰り道気をつけて」
「また来てくださいねっ」
最良の選択の『海夜小春ルート』クリアから翌日の昼。
私はリアちゃんと一緒に、帰り支度を終えた呉原先輩を玄関まで見送りに来ていた。
先輩が靴を履いて玄関を出ると、私の隣にいる銀髪少女は少し名残惜しそうな顔をしつつ、彼に向かって小さく手を振る。
「冬休みも一緒に遊ぼうなー」
そんな彼女の言葉に微笑で答えた先輩はゆっくりと玄関のドアを閉じ、美咲家を後にしていった。
「……ふあぁ、部屋もどろっか」
呉原先輩の足音が遠ざかって聞こえなくなった辺りで、リアちゃんは欠伸をしながら踵を返して居間へ移動した。
彼女について行くようにしてリビングへ赴くと、そこには画面がついたままのテレビのみがあり、私とリアちゃん以外の人は誰もいなかった。
朝陽くんは友達と遊びに。リアちゃんのお父さんは久しぶりに国外から帰ってきた奥さんを迎えに行くため空港に。お兄ちゃんは黒野博士のところに何やら用事があるらしく。
つまり今日は夕方までリアちゃんと二人っきりということである。正確にはアイリちゃんを含めて三人だけど、リアちゃんが女の子に変身している間は彼女は絶対に出てこない。
「リーアちゃんっ♡」
「おっと」
ソファに座ってスマホを弄っているリアちゃんに横から抱きついてみた。身体の小さいリアちゃんはそのまま私の腕にすっぽりと収まってしまう。
はぁ~、リアちゃんはいつも甘くて良い匂いがするなぁ。
「スリスリ」
「んん……小春、どうかした?」
頬ずりしたり過剰に頭を撫でたりしていると、ようやく彼女の方から声が掛かってきた。
腕の中から見上げてきたリアちゃんと目が合い、一瞬ドキリと心臓が跳ねる。彼女の宝石のように美しく大きな瞳はいつ見ても綺麗だ。
「リアちゃんかわいい~♪ ぎゅうー」
「……なんなんだよぅ」
ただただ愛でるだけの私に困惑するリアちゃんだが、顔をよく見れば目を細めて気持ちよさそうにしていることが解った。まるで猫のようだ。
「小春……?」
───ンンッ。
いや、まてまて。
落ち着け海夜小春。まずは深呼吸だ。
「すぅぅーっ、ふぅぅ……」
はぁぁぁぁ良い匂いする全然落ち着けない深呼吸意味ない冷静にならない。
……ぐ、ぐぬぬ。またしても自分の弱さに負けてしまう。私は我慢しようと頑張ってるのに、その都度タイミング悪くリアちゃんが可愛く振る舞うのがいけない。かわいい……うぅ……リアちゃんちっちゃくてかわいい……(限界)
「大丈夫か? 顔、赤いぞ?」
「ふぇっ! だ、大丈夫大丈夫平気平気! 何でもないから!」
首をブンブン横に振って必死に取り繕おうとするが、意志に反してお腹の下が些か熱い。
健全にリアちゃんとくっついて過ごしていたいのに、身体の余計な部分が反応してしまって仕方がない。くやしい。本当にくやしい。
──私と、兄。
私たち兄妹二人は元居た自分の世界である仮想空間で『発情』という、普通の人間ならばあり得ない生理現象にこれでもかという程振り回された。
そもそも普通の人間ならば興奮こそするが発情なんて動物的な状態には陥らない。人間は理性の生き物なのだから。
しかし、私たち二人はそんな動物的な本能を能力の代償や状態異常として付与され、理性を破壊されて何度も発情を繰り返す結果となってしまった。
結果、どうなったのか。
「……ぅ、うへへ」
「小春。鼻息荒いよ」
「あっ、ご、ごめんね……!」
一言で表すとすれば──発情癖がついてしまった、としか言いようがない。
もはや私と兄は発情に近い生理現象が体に染みついてしまったのだ。ことある毎にリアちゃんを求めては劣情を発散するを繰り返すうちに、それが一種の生活習慣となってしまい、興奮を催す機会が格段に多くなってしまった。
「…………あ、あの、リアちゃん……」
「どうかした?」
そしてリアちゃんはなんだかんだ言いつつも、毎回私たちに流されてくれる。過剰に求める私たち二人、決して拒否しないリアちゃん、まさに負のスパイラル。頻度を考慮してリアちゃんの気持ちを考えればあっちには傍迷惑もいいところだが、彼女が受け入れてくれるため私たちも少々歯止めが利かなくなっている。よくない。とてもよくない。
「この前の事、怒ってる……?」
「このまえって?」
抱きつきながら恐る恐る質問をすると、リアちゃんは可愛らしく首を傾げた。かわいい。
「ほら、四日くらい前の。私とお兄ちゃんで……そ、その……」
「あぁ、あの時か」
ぽん、と両手を合わせて納得した様子の少女を見て、私は少し緊張した。もしかしたらまた怒られるかもしれないから。
四日前の深夜のことだ。私と兄は少し前にリアちゃんから五日ほどの
後半は刺激に耐えられなくなって虚ろな目のまま脱力した状態の彼女を
もちろん翌日、私たちは腰を痛めたリアちゃんに
普通ならそれで懲りるはずなのに、性懲りもなくまた発情しかけてる自分に嫌気が差す。
「……小春」
「っ!」
リアちゃんがこちらに手を伸ばしてきた。またデコピンを喰らうのでは、と危惧して咄嗟に目を閉じて身構える──
「怖がらないで。俺、もう怒ってないよ」
「ふぇっ」
しかし予想していた叱責やムチは飛んでこず、私は優しく頭を撫でられてしまった。思わず変な声を出すと、リアちゃんは柔らかく微笑んでくれた。
「ばかだな。いつまでも前の事を引きずったりはしないよ。それより、小春はあれでスッキリ出来た?」
「う、うん! それはもう! すーっごくスッキリした! モヤモヤが全部なくなったよ! ありがとうリアちゃん!」
「そう。よかった」
うぅ、リアちゃんはどうしてこんなに優しいの……。
元を辿れば私もお兄ちゃんもリアちゃんを襲った悪いヤツなのに、外部環境やその時の状況を踏まえて考慮したうえで私たちに直接的な悪意は無かったと判断してくれるばかりか、今もこうして一緒に居てくれるなんてぇ……! 天使……!
「それで、えーと……!」
なんだか劣情に脳を支配されてきてる気配がプンプンするけど、優しいリアちゃんなら受け止めてくれるはず。先輩が家に来てたから二日くらいご無沙汰だったし、このタイミングで求めてもきっといつも通りに……!
「じゃあ小春、また暫くえっちはお休みでいいよね?」
──んっ?
へ?
「えっ。……え?」
「あの日は20時から朝までしたんだし、小春も満足できたのなら安心して休めるね」
あれ。リアちゃんがいつの間にか離れた位置に座ってる。
ていうか、ちょっと待って。まってまって。
「あ、あの」
「ん?」
「お休みの期間は……どの程度でしょうか……?」
滝の様な汗を流しながら震えた声で答えを求める私。そりゃ焦る。なんせ煩悩に狂わされた脳は
ともかく大事なのは期間だ。二日三日なら何とかギリギリ耐えられる。この前の五日間はまるで断食をしたかのような苦しみに苛まれたので、あれほどの長さは覚悟をもって挑まなけれなならないが、リアちゃんの為なら頑張れるとも。
「うーん、二……いや三週間くらいかな」
「さ°っ゛」
三週間ッ!!?
「どっどどどっどどどういう」
「どうも何も、それくらいなら小春も平気でしょ? 能力も使ってないし、発情もしてないなら」
「えぇぇっとですね!?」
ま゛っ゛で゛! 発情云々を差し引いても三週間って、え!? なっ、なが、あっ(絶命)
「どうかした?」
「あの、ちょ、ちょぉぉーっと長いんじゃないかなぁ、なんて……」
途方もない。五日で悟りを開けそうだったのに、三週間もあったら宇宙の真理にすら余裕で到達出来てしまう。精神が人間を超越してしまう。
「…………やっぱり、嫌?」
「えっ」
焦ってリアちゃんの提案に物申すと、彼女は潤んだ瞳で私を見上げてきた。
その儚げで触れれば壊れてしまいそうな、そんな繊細な雰囲気のリアちゃんを前にして私は言葉を失ってしまう。
「小春ならきっとこの程度は何でもないって思ってたんだけど……ごめんね。俺、小春のこと全然分かってあげられてなかった」
「……ぃ、ぃゃ、ぁの……」
「ごっ、ごめん、ごめんなさい、勝手な事ばかり言って。小春は三週間も我慢できないのに、俺ったら早とちりして……身の程知らずで恥ずかしい。小春のこと、勝手に理解した気になってただけだった。……じゃあほら、小春、えっちしよう? 我慢できないならしょうがないよ。小春は何も悪くない。なんにも解ってなかった俺が──」
「我゛慢゛じ゛ま゛ず゛ 三゛週゛間゛と゛言゛わ゛ず゛何゛ヶ゛月゛で゛も゛我゛慢゛で゛き゛ま゛す゛」
土下座した。ソファに座ったリアちゃんの目の前で綺麗に足を畳んで額を床に密着させて我慢宣言を高らかに謳った。
(うううぅぅぅああああぁぁぁぁぁッ!! 私のバカぁぁぁァァッ!!)
ごめんなさぁぁぁぁい! ごめんなさいリアちゃん! まさかそこまで追いつめようとかそういう気がじゃなかったんです! 節操なくて本当にごめんな゛ざい!
できます我慢! 余裕です! なんなら一年くらい余裕で我慢できます! いつも私たちのクソデカ性欲に付き合わせちゃって誠に申し訳ありませんでしたぁッ!
「本当? 小春、無理してない? 辛いなら我慢なんてしなくても……」
「ほ、本当に大丈夫だから! こっちこそごめんなさい! 私の事なんて全然気にしなくていいから! いやほんと! ごめんなさい!」
こんなにも信じてくれているリアちゃんに無理をさせるわけにはいかないぞ。あそこまで気を遣わせてリアちゃんを抱いたら私は取り返しのつかないクズになってしまう。てかまず何よりもリアちゃんの負担でしかない存在にはなりたくない。なりたくないぃ!
「……なら、よかった。じゃあ小春、三週間お休みってことで」
「はい! なんならその間私のこと扱き使ってください! 何でもします!」
「じゃあスーパーに買い物行ってきてくれる? これお財布とメモね」
「了解です! 行ってきます!!」
立ち上がった私は光の速さで美咲家を飛び出して近所のスーパーへとダッシュしていく。おつかいなど何百、何千回だろうとこなして見せる。リアちゃんの為ならば。
っしゃおらぁ! 三週間がなんぼのもんじゃい! 発情癖なんざ秒で克服したるわボケがぁッ!!
小春:┗(`・ω・´)┛ウォォォ
リア:(計画通り……)