お前のハーレムをぶっ壊す   作:バリ茶

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今回は★で フィリス → リア に視点変更します あとポイントの表記をPだけにしたわよ



パーティ・勘違いフェスティバル

 

 

 昼時。学生の昼休みは往々にして学友と時間を共にするもので、例に漏れず私もその一人だ。

 最近学内に出店してきたカフェで流行りの黒い粒が入った飲み物を買い、同じ物を購入した友人と廊下を歩いている。

 

 高月ロイゼール。

 私の隣にいるのはこの学園で出来た初めての友達だ。

 

「ふんふ~んっ」

 

 鼻歌交じりで歩く友人はその様子からいつになく上機嫌だという事が窺える。基本的にいつでも明るい彼女だが今日は一段と元気が良く、朝からずっとこの調子だ。

 

「なにか良いことでも……あった?」

 

「えぇ! それはもうすごーく! 良い事がありましたわ!」

 

 笑顔で答えるロイゼに釣られて自然と私も顔がほころんでしまう。

 何があっても一ミリも表情が動かなかった今までの自分を顧みると、とても良い変化だ。

 

 私を導いてくれた蓮斗にも感謝はしているが、自分の変化の大きな要因は間違いなくロイゼだと思う。

 彼女が笑いかけてくれるおかげで私も笑顔になれた。この調子でいけばかつてのように表情豊かな人間に戻れるかもしれない。

 

 

 それはそれとして今彼女を笑顔にしている原因を知りたい。ロイゼがここまで喜んでいるのならきっと素敵なことに違いないだろう。

 

「先日の怪人、覚えているでしょう? 実は私、彼と戦った時に絶体絶命のピンチに追い込まれてしまいましたの」

 

「……ごめん。到着した時には、警察しかいなくて」

 

「あっ、その、怒ってるわけではなくて! 大事なのは私がピンチになった後なんです!」

 

 手に持ったミルクティーのストローに口をつけ、たぴおかとやらと一緒にそれを飲むロイゼ。それで少し落ち着いたのか間を置いてから彼女は話を続けた。

 

「もうダメ、おしまいだー……と思ったその時! 私の目の前に謎の少女が颯爽と現れましたの!」

 

「少女?」

 

「そうです! バストを差し引けば……小春さんと同じか、もう少し下くらいかしら」

 

 となると年齢的には成長期を迎え始めた頃合いだろうか。

 なんにせよ、その歳で怪人の前に立ち塞がるなんてかなり精神的に強い子だ。私が同じ立場だったらきっと尻尾を巻いて逃げていたに違いない。

 

「それで?」

 

「ここからですわよ。その子は巧みな話術を駆使してピンチで焦ってしまっていた私を一蹴! あっという間に私の下着を奪取してそれを強力な武器に変換! それから──」

 

 

 そこからは私が口を挟む余地もなくロイゼのマシンガントークが続いた。

 

 話の終着点としては『新しい仲間が出来たかもしれない』というものだった。

 怪人をものの数秒で消し去る武器をパンツから生成できる、小さな少女がそうだという。

 

 なんでも彼女は小春と仲が良い友人とのことだ。

 感情を表に出せず無愛想な私でも快く受け入れてくれたあの小春の友人だ、きっと信用に足る人物に違いない。

 

 

 もし行動を共にすることがあって万が一ピンチに陥った時は、私も彼女にパンツを渡そうか──なんて考えている内に自分のクラスの教室が見えてきた。

 

 

 それと同時に教室の前で棒立ちをしている少女が視界に入った。

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 困惑の声がするりと零れた。その少女の存在を理解した瞬間、思わず足を止めて手に力が入った。

 強く握られたプラスチックのコップからストローを逆流した中の飲み物が、少しだけ床に飛び散る。 

 

 しかしそれを気にする者は、自分を含めて誰一人いない。

 

「あらっ! リアさんじゃありませんか!」

 

「……? あっ、高月」

 

 その少女を目にした途端、ロイゼが彼女のもとへ駆け寄った。

 少女は何やら小さいバッグを持ったまま狼狽しており、視線を右往左往させている。

 

「今日はどうしたのですか? 制服じゃありませんし、学園の生徒ではないのでしょう?」

 

「ぇ、えと、これ……」

 

「あら、これは?」

 

「海夜の……お弁当。あいつ、家に忘れた、から……」

 

「まぁ! 届けに来てくれたのですか! 偉いですわね~、よしよし」

 

 ロイゼに撫でられている少女は動じることなく眉一つ動かさない無表情を貫いている。

 

 彼女に過剰なスキンシップを取られて少女は困っているのかもしれない。助けた方がいい。

 そう思っているのに、足が動かない。

 

 少女が()()()()()を理解してから、体が鉛のように重いのだ。

 

「蓮斗さんの教室はここであってますわよ」

 

「いや、えと、アレ」

 

「ん? ……あぁ、蓮斗さんお昼寝してらっしゃるのね。待っててくださいな、すぐに叩き起こしてきます!」

 

 ロイゼが教室の中へ入っていったことで、私の視界に映る人間はその少女だけとなった。 

 そうなったことで彼女の姿をより正確に捉えることができる。

 

 長い銀色の髪と、あの紫色の瞳。

 

 その外見的特徴を自らの記憶と照らし合わせれば、驚くほどすんなりと心当たりが浮かんできた。

 

 

 

 ──幼い頃、私は両親の目の前で悪の組織に拉致された。

 その後に幽閉された牢で一緒になったのがあの銀髪の少女だ。

 

 

 同じくらいの歳、同じくらいの身長、子供が束になろうと牢の中なら何もできない……そういう理由で一人だけでも窮屈な牢屋の中に二人目として無理矢理ねじ込まれた。

 

 ……だが、彼女は牢の鍵を開錠してみせた。

 

 毎日のように続くまるで拷問と大差ない人体実験の数々。看守から受けるストレス発散の暴力。まるで人権など存在しない家畜以下の扱いが当たり前な環境。

 

 その全てに耐えながら、彼女は折れることなく牢屋の開錠を看守の目を盗みながら続けた。

 そしてやり遂げた、踏み出したのだ。人体実験のモルモットから人間に戻る為の第一歩を。

 

 ただ怯えるだけで何もできなかった私と違って。

 

 

 まさかとは思うが……今までロイゼと一緒にいた彼女の姿など見たことはないし、彼女がロイゼの言っていた『新しい仲間』なのだろうか。

 

 緊急事態だったとはいえ彼女は敵と戦うためにロイゼのパンツを……。

 

「……くっ」

 

「……?」

 

 歯軋りをした瞬間、少女がこちらに気がついた。急に彼女がこちらを向いたことで目も逸らせず彼女の瞳を見つめてしまう。

 

 少女はその冷たい眼差しで私の目を射抜いている。

 同じモルモットだった筈の私を見ても、顔色一つ変えず、無表情のまま。

 

 

 ──何だその目は。

 

 お前はもっと感情豊かだったはずだ。毎日毎日飽きもせず私を笑顔で励ますくらいに。

 だというのに、なぜそんなに冷たい目をしている。

 

「フィリス……レイノーラ」

 

「──っ!?」

 

 私をジッと見つめたまま、少女はボソリと呟いた。

 程なくして彼女は此方に向かって歩き始めた。ゆっくりと、だが確実に私を狙って。

 

「……わっ」

 

 すると彼女は私が飲み物を零した床を踏み、滑って体勢を崩した。

 

「おっとっと……」

 

 

 パシン、と。

 

 

 彼女は転ばずに踏みとどまったものの、バランスを取ろうとしたその手で、私の飲み物を叩き落したのだ。

 

 床に落ちた飲み物は蓋が外れ、液体や黒い粒が廊下に散乱した。

 

 いつでも冷静沈着だった彼女が、この程度のことで転ぶはずがない。

 彼女は間違いなく、転んだフリをして()()()私の飲み物を床に叩きつけたのだろう。

 

「ぁ……ごめん、なさい」

 

「……っ」

 

 それでもなお、表情ひとつ変えることなく、表面上は謝罪する少女に戦慄した。

 

 

 彼女がどんな目的でこの学園に訪れたのか、そして今どんな立場にあるのか、それは分からない。

 

 ひとつだけ確かなことはかつて私が……彼女を置いて一人で逃げたこと、それだけだ。

 その事実だけがハッキリしている。

 

 

『自分を置いて逃げたお前に、普通の人間と同じように生きることが、許されると思うのか?』

 

 

 凍えるような鋭い眼差しが少女の言葉を代弁している。その冷たい瞳と飲み物を叩き落した行動で、彼女の言わんとしている事が理解できる。

 絶対にそうだ、間違いない。名前を呼んだくらいなのだし私の事も忘れているはずがない。

 

「大丈夫……?」

 

「……っ!」

 

 息を呑んだ。少女から発せられるプレッシャーで足が竦みそうになってしまう。

 

 

 どうして……どうして? 

 

 お前は私に逃げろと言ってくれたじゃないか。きみが助かればそれでいいと、笑顔で伝えてくれたじゃないか。

 

 あれから長い年月をかけてお前は悪の組織の一員になったのか? 私と違って最後までモルモットだったのか?

 

 

 ここに訪れたのは──私への復讐なのか。

 

 

「……いっ、一緒に、来て」

 

 そう言って私は少女の手を掴んだ。そのまま彼女を引っ張るようにして、足早にその場を去っていく。

 人気のない場所……校舎裏がちょうどいいか。とりあえず彼女に人質が取られない場所へ向かう必要がある。

 

 

 誰も巻き込んではいけない。この少女に関しては私だけで事を解決に導かなければいけない。

 きっとこれは罰なのだ。

 

 今握っている彼女の手は私よりも小さい。歳なんてそう変わらない筈なのに、組織から逃げた私と違って必要最低限の食事しか与えられなかったから体の成長も遅れているのだろう。

 

 普通の成長を享受できなかった彼女に手を差し伸べられず一人で逃げた──

 

 

 これは、そんな最低な私への罰だ。

 

 

 

 

 

★  ★  ★  ★  ★

 

 

 

 

 

 今日は快晴! 太陽さんさん! 青空万歳! 

 

 そんなめっちゃくちゃ天気が良い日に俺はヤンキーに絡まれてます!

 

 

「……ここで、いい」

 

 小さく呟きながら俺の手を離すレイノーラ。辺りを見渡すとそこが校舎裏だということが分かった。

 

 あぁ、連れてかれる場所がトイレじゃなくて安心だ。ヤンキーに強制連行される場合、広くて逃げ場がある校舎裏ならともかく狭くて何もできないトイレは一発アウトだからな。

 

「……ふぅ」

 

 安心して、一息つけた。

 

 

 ──その瞬間レイノーラがいつの間にか生成していた氷のナイフを俺の首元に突き立てた。

 

 

「ひっ」

 

「動かないで」

 

 もの凄い剣幕で脅してくる女の子、かなり怖い。しかもレイノーラは無表情キャラだからなんとなくサイコパス感も滲み出ていてさらに怖い。

 

 なんか目にハイライトが無いしナイフを持ってる手もプルプル震えてるし、とにかくヤバイ。

 しかもナイフを立てられた拍子にポケットからスマホが落ちてしまった。唯一の生命線が……!

 

「……ぁ、あの」

 

「必要以上に喋らないで」

 

 そう言って更にナイフを近づけてくるレイノーラ。

 こわい! やめてぇ!

 

 

 ……いや、あの、さっきのタピオカミルクティーの件はマジでごめんなさい!

 

 何か床が濡れてて転びそうになったの耐えようとしたら、間違ってタピオカミルクティー叩き落としちゃったのは確実に俺が悪いんだけども。

 

 で、でも、それだけでここまで怒ります? 弁償も掃除も一人でやるつもりです、ほんと勘弁してください。

 

「……」

 

「そう、大人しくしていて。……ひどいようには、しないから」

 

 息を止める勢いでジッとしているとレイノーラのナイフを持つ力が少しだけ緩んだ。

 

 まさかヒロインをここまで豹変させるとはな。タピオカよ、まったく恐ろしい奴だぜお前は……。伊達に流行ってるわけじゃねぇってか。

 

 タピオカの恨みって怖いのね、なんて考えているとレイノーラが喋り始めた。

 

「この学園に……何をしに来たの」

 

「お、お弁当を、海夜に」

 

「それはさっき聞いた。……本当の、目的を言って」

 

 

 そんなこと言われてもお兄さん困っちゃうわよ?

 

 強いて言えばP+1の選択肢で【今夜蓮斗と一緒にシャワーを浴びる】か【蓮斗くんにお弁当を届けに行こうぜ!】を選ばされただけだからね? 

 

 速攻で後者選んだけど俺は悪くない。あいつと一緒にお風呂なんてお断りだからな。

 いや、でも殺されそうになるくらいなら海夜とシャワー浴びた方がよかったのかなぁ……。

 

 

「……?」

 

 

 なにやら地面からピカピカと光が。

 ナイフを突き立てられている首は動かさず、目だけを下に向けて地面を確認してみる。

 

 そこにあったのは明るく画面が表示されている、先程俺が落としたスマホだ。

 画面が表示されているということは何かの通知だろうか。

 

「……いつから、リアなんて名前になったの?」

 

「そっ、それ、は……えっと」

 

 設定に書いてない事は何も知らないので、言葉を濁して誤魔化していく。

 その隙に落ちているスマホの画面を凝視した。

 

 

【このままじゃ死ぬかも!? 押し倒してキスをして反撃だ!(P+1)】

【このままじゃ死ぬかも!? 押し倒してパンツをまさぐって反撃だ!(P+1)】

 

 

 バ──ッカ!! アホ変態死ね!! 選択肢がいちいち頭悪いんだよバカお前ェ゛!?

 

 なに!? 大差ないじゃん! 上も下も殆ど同じだよ! 結局押し倒してんじゃねぇか!!

 

 ぐぬぬ……とりあえずどちらを選ぶにせよ、スマホの選択肢をタップしないと意味が無い。

 

 目の前でナイフを突き立てているレイノーラを押し倒せば、ちょうど彼女の頭の横くらいにスマホがくることになる。

 

 

 結局押し倒すしかないってことか……?

 

 その瞬間俺の首が跳ねることになりそうだけど、結局選択肢を実行しないと残機が減るんだし──あぁ、もう! なるようになれぇ!!(ヤケクソ)

 

 

「……っ!」(オラーッ!)

 

「わっ──」

 

 ほぼ自滅覚悟の特攻で彼女の両肩を両手で突き飛ばすと、意外にもレイノーラが怯んだ。どうやら人間、自分が優位に立っている時は少し油断するらしい。

 

 よーしこのまま押し倒してやるぜー! 犯罪者みたいで泣けてくるぜー!

 

「くぅっ……! りっ、リア……!?」

 

「静かにしてて……」(タップ! スマホをタップしないと残機がぁ!)

 

 無事レイノーラを押し倒して馬乗りになれたので瞬時にスマホへ右手を伸ばした。

 彼女は倒れた拍子に氷のナイフを落としたようだし、今がチャンスだ。

 

「……っし」(よし押せた! 流石にキスはアレだから下!)

 

 パンツをまさぐるの初めてじゃないしな!

 

「なんの、つもり……!」

 

「ぱっ、パンツをよこせ」

 

 震え声で告げた後左手で彼女の片手を押さえつつ、右手をレイノーラのスカートの中へと伸ばしていく。

 彼女がもう片方の手で下着をまさぐろうとする俺の右手首を掴んで止めようとしてきたが構わずパンツに向かって突き進む。

 

 いやまさぐるってどこまでやればいいか分からんのよ! でもちょっと触るだけとか逆に恥ずかしいし妙に変態チックだし!? もういっそのことパンツ奪った方が目的がハッキリしてて相手も納得できるのでは!?(混乱)

 

「だ、だめ……!」

 

「おとなしく、パンツを───」

 

 

 

 

 

「ふははは! ようやく見つけたぞ! フィリス・レイノーラ……いや、氷結の魔女ォ!!」

 

 

 

 

 

「……えっ?」

 

「か、怪人……!」

 

 呆然とする俺と焦るレイノーラの前に、突如として白衣を着た眼鏡の男性が姿を現した。

 白衣の下は全裸で、肌の色は全身青色。どっからどう見ても変態だ。

 

 ……なんだアイツ。

 

「へ、変態だ……」(変態だぁぁ!!)

 

「……リア?」(もしかして、あの怪人の存在を察知したから……迎撃のために私のパンツを? なんて鋭い判断力……!)

 

 なにやらレイノーラに怪訝な表情で見つめられているが、多分そろそろ退いて欲しいんだと思う。なんか怪人も出てきたし、ここは潔く上から退いた方がいいか。

 

 

 ──待って待って! ミッション完了のアナウンス流れてないよ!? まだまさぐらないと駄目なの!?

 

「リアっ、ここは私がやるから……!」

 

「む、むり……」

 

「リアってば……!」(あの時リアを助けずに逃げたから……私のことは信用できないってこと!? 強情な!!)

 

 もうちょっとパンツを触らないと残機が危ういのぉ! ごめんなさい許してすいませんタピオカミルクティー奢るから勘弁して!

 

「ヒャーッハッハ!! もう一匹いる女も攫っちゃうぜェーッ!」(あいつは魔女の妹か? 顔も似てるし……っしゃあ! もう一人強力な能力者ゲットォ!!)

 

 えっ、押し倒してるこの状況でも襲ってくんの!? 見境ねぇよ流石怪人だなふざけやがって──ってちょっと待て! ほんとに少しパンツ触るだけだから止まれってぇ!!

 

 




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