掛け持ちしている作品があるのですが、そっちが更新されてない時はこっちに集中しているとでも思ってください。
心拍数が一気に急上昇し、背中に冷たい汗が流れた。
何だろうこの感覚。厳格な先生に正論ぶつけられて怒られているような、親に日常生活で叱られているような、はたまた悪事を刑事にばらされ目の前で再現されたかのような、とにかく断崖絶壁の窮地に立たされている感覚。悪い事なんか何一つしていないのに、何故か地面に頭を擦り付けて誠心誠意ごめんなさいと謝りたくなるような気分だ。
某謎解き大好き英国紳士やスコットランドヤードの屈強な警部達に追い詰められた犯人って、こんな気分だったんだろうな。そんな事を目の前の光景を見つつ考えていると、私に気付いた店員らしき女性が慌てて声を掛けてきた。
「あ、や、やだお客さん!?ご、ごめんなさい気付かなくて……!いらっしゃいませ!」
悲鳴に近い女性の声で、女性と話し込んでいた他の人達の視線もこちらを向く。ひぃぃ、皆してこっち向かないでぇ。誰だお前という圧倒的部外者を見る視線に思わず、私はたじろぎ視線を彷徨わせた。この状況はとても入りにくい、日を改めるべきだったかも。
「あ、えと……忙しいならまた日を改めます、よ……?」
「いえ!忙しくなんか……!あ、安室さん!お客さん、お客さんだから!お冷用意して!」
茶髪にロングヘアーの女性は「あちゃー、印象悪くしちゃったー……」と呟きながら、私を席に案内する。案内された席に座り、渡されたメニュー表を見ていると目の前に冷水の入ったグラスが置かれた。氷が入ってないのは、きっと冷房が良く効いた店内での体調不良を防ぐ為だろう。気配りのある良い店員と店だ。メニュー表から顔を上げると、金髪に色黒という日本には珍しい配色の男性店員が柔和な笑みを浮かべていた。
「いらっしゃいませ。当店は初めてですよね?僕個人の意見ですが、ハムサンドとコーヒーのセットがお勧めですよ」
「んー……コーヒーを別の飲み物に変えられますか?コーヒーが苦手なので」
「それですとハムサンドとドリンク個別の注文となります。少々お高い金額となりますが……」
「大丈夫ですよ。ハムサンド単品と……飲み物はカフェオレをお願いします。もちろんホットで」
「畏まりました」
メニュー表を男性店員に返し、店内にある時計を見る。時刻は三時半を回っていた。時計から視線を外し、そっと視線を宙に彷徨わせる。頭に思い浮かぶのは最初に店に入ってみた光景もとい、今も店内にいる
(どう見たって、某名探偵の子達なんだよなぁ)
見た目は子供、頭脳は大人!のフレーズが頭の中に浮かぶ。お前みたいな子供が大人にいてたまるか。あと女子高生。嗚呼そういえばここ、米花町なんだっけ……どうして今まで気付かなったんだろう。一番安全なのは家から出ない事だろうけど久しぶりの日本だから色々見て回りたい。命と欲、優先すべきなのはどちらか、うむむ……分かってはいるんだけどなぁ。
「お待たせしました。ハムサンドとカフェオレです」
「あ、どうも。ありがとうございます」
金髪色黒の店員によって運ばれてきたハムサンドとカフェオレ。ハムサンドは二枚分のサンドイッチを分断して四切れあり、端にはオニオンチップスが慎ましく乗せられている。カフェオレはいつも飲んでいるクルーズ・カフェのものとは違い、少し色が濃く苦みが強そうだ。運ぶ時に使われたお盆やテーブルの上にはミルクポーションやスティックシュガーの類はない。カフェオレだからポーションやシュガーはいらないと思ったのだろう。頼めば用意してくれるだろうが、こちらは初めての客だ。そんな厚かましい事は出来ない。
「いただきます」
手を合わせてサンドイッチを口に放り込む。数回咀嚼すると、口の中に仄かな酸味と芳醇な美味しさが広がった。
「あ、オリーブオイルだ。ん、でも他に何か……」
サンドされたハムにオリーブオイルと
「すっごい!安室さん安室さん!この人、隠し味のオリーブオイルに気が付きましたよ!」
え、これ隠し味だったの?二切れ目を飲み込み、残ったサンドを見る。味も形も、綺麗に整えられたハムサンドだ。見た目良しに味も良し、あのタクシー運転手が高評価するのも分かる気がする。
「でも “もう一つの隠し味” には、気付けないでしょうねぇ」
「ちょっと園子」
前髪をヘアバンドで上げた快活な少女が、我が事のように得意げに鼻を鳴らす。そんな少女を両脇にいるロングヘアの少女とボーイッシュな少女が嗜めていた。鼻を鳴らしてはいるものの、馬鹿にしている訳ではないようだ。あの様子は「私はサンドイッチの秘密を知っている。ふふん、いいでしょう?」という感じだ、悪意は感じられない。別に私は張り合う気はないので、眉を下げて「それじゃあ、」と言葉を紡いだ。
「その “もう一つの隠し味”が把握出来るように常連にならなきゃ、だね」
幸い滞在時間もたっぷりある。ここの店のメニューや雰囲気も好みだし、英国の皆にもこのサンドを紹介したい。ならばハムサンドの謎解明の為にも、ここの常連さんにでもなろうではないか。密かにハムサンドの真相解明を決意していると、今まで静かにカウンター席に座っていた眼鏡をかけた蝶ネクタイの似合う男子小学生が「すごーいっ!」とわざとらしい大声を上げた。
「お姉さん凄いね!初めて食べたのに、すぐ隠し味の一つ答えちゃった!食べた傍から分かったって事は、お姉さんオリーブオイル好きなの?」
ニコニコと愛らしい笑顔を浮かべてこちらに駆け寄る様は本当に可愛らしい。だが何故だろう。その愛くるしい様が、不審人物を尋問する敏腕刑事の姿と被ってしまうのは。少年の雰囲気も、小学生が纏うにしては固く鋭い。私何かしたかな。ハムサンドの隠し味を一発で当てる事がそんなに怪しい行為なのかな。引き攣りそうになる頬を何とか抑え込み、私は笑顔を作った。
「ううん。好きとかじゃなくて、日常的に料理に使っているからすぐに分かったよ。ロンドンじゃ、オリーブオイルは必需品だからね」
「え、お姉さんロンドンに行った事があるの!?」
ロンドンという言葉を出すと、さっきの怖い空気が一瞬にして吹き飛んだ。代わりに本来の子供のように、無邪気にロンドンについて聞いてくる。あ、これ地雷踏んだ?
「行った事というより、現在進行形でそっちに住んでるの。今は休暇で日本に帰省中なんだ」
「じゃ、じゃあホームズの聖地とか行った事ある!?」
「ホ、ホームズ……?」
「世界最高の名探偵、シャーロック・ホームズだよ!ベイカー街とか、マダム・タッソーの蝋人形館とか有名だよ!」
なんで分からないんだ!とばかりに眉を寄せる少年。そして遂には自分がこの世で最も敬愛するというシャーロック・ホームズについて熱く語り始めた。一方の私はテンションはとても冷めていた。別にシャーロック・ホームズを知らない訳ではない。そういえば
止まらない口とホームズ自慢に辟易していると、突然少年の頭に勢い良く拳が振り落とされた。ゴッチーンだか、ガッコーンだかただの拳骨からは想像も出来ない盛大な音が、拳と頭の間から聞こえる。だがそれを最後に、少年の口からホームズ自慢は止まり、代わりに苦悶の表情と共に呻き声が上がった。
「いってぇーっ!」
「こらガキンチョ!何でもかんでもホームズに繋げるその癖、止めなさいよ!相手の人困ってるの分からないのかしらぁ!?」
「だってこのお姉さん、ロンドンにいるのにホームズに興味持たないとかおかしいよ!」
ロンドンにいるには、ホームズに興味関心を持たないといけないのか(困惑)
「だ・か・ら!そのロンドン=ホームズって図式止めなさい!」
「そうだよコナン君。誰しも推理小説が好きって訳じゃないんだし。……それに、ロンドン住民は意外とホームズに無関心だと思うよ。“シャーロック・ホームズ” はイギリス生まれの、つまり地元の人にとっては当たり前すぎる存在だから、あんまり話題に出さないんじゃないかな」
「確かに。テレビで観光客がホームズを熱弁する姿はよく見かけるけど、地元の人達はホームズの話全然しないよね」
ヘアバンドの子、男性店員、そしてロングヘアの子の追撃により、荒れていた少年の気がだんだん穏やかになっていく。ホームズ面白いのに、と呟く少年にヘアバンドの子が睨みを利かせれば今度こそ少年の口は閉じた。
「ごめんなさいコナン君が……この子、重度のホームズオタクで……」
「あ、ううん。ちょっと吃驚したけど気にしてないよ。そういえばこの子、名前コナンっていうの?珍しい名前だね。弟さんなのかな?」
「いえ、訳あって家で預かっている子なんです」
「へぇー……小学生でホームズオタクってなかなか渋いねぇ」
「そうですよね。私の幼馴染もホームズオタクで……若い世代にシャーロック・ホームズって流行ってるのかなぁ」
首を傾げるロングヘアの子に、私は内心で苦笑を漏らす。流行ってないです、あなたの幼馴染さんが特殊なだけです。ついでにそこの小学生とあなたの幼馴染は同一人物です。声を大にして言いたいが我慢する、これ以上目を付けられたくないのでね。
……さてさて。ハムサンドも食べ終わった事だし、そろそろお
「さっき日本に帰省中って言ってたけど、それまでずっとロンドンにいたんだよな?あの口振りからして留学や出張なんて短い期間じゃないだろ。相当長い期間ロンドンに住んでたんだな。どこに住んでたんだ?」
少年と同じく無邪気に私に声を掛けるボーイッシュな女子高生。……ははは、
「タイニーロンドンって所に住んでるんダヨ」
「タイニーロンドン!?」
「それってロンドンの超一等地で、お金と幸福がないと生きてけない夢の街よね!?」
「貴族や有名な資産家がこぞって別荘やら自宅を立てているあの街だよな?凄いなぁ!お姉さん超お金持ちじゃん!」
街中で有名人とすれ違ったかのような黄色い悲鳴を上げる女子高生達。少し離れた所で事の成り行きを見守っていた店員達も口に手を当てたり目を見開いたり、様々な反応を見せている。
「タイニーロンドンって……あの?」
「えぇ……多分、僕と梓さんが考えている事が同じであれば、
タイニーロンドン。そこはお金と幸福の街。
人種が何であれ、金銭と幸福を持っていれば弱者でも頂点へ伸し上がる事の出来る一発逆転の夢の場所。
「そういえば確か、先週のニュースでロンドンタイムズの事やってたよね?」
「うん。タイニーロンドンの高級家具店に武装集団がいきなりやって来て――、」
「現地のアジア人女性にボコボコにされて、スコットランドヤードに拘束されたんだよね!」
「そう。それで後から判明したんだけど……その武装集団、世界的有名な強盗団だったんだって!」
「凄いよね!強盗団を一人で制圧した現地のアジア人女性!格好良いーっ!」
「いやぁ……日本まで伝わってるなんて、恥ずかしいなぁ……」
「「「「「……え?」」」」」
「……あ、」
・*・*・*・*・*・
「――、――はい。もしもし?」
「あどねぢゃあああああんんん!助けてぇぇぇえええんんんんん!」
「……間違い電話かしら」
「わああああああああん!」
私の生活、早速 ツンダ\(^o^)/オワタ
基本一話完結型のサクッと読める感じでこの作品は進行します。
最低5,000、最高は10,000文字かな。今回は5,000ちょっとの思いつく限り書きました。
コメントでありましたが、主人公はコナンの推理勢ほど頭は良くないです。ちょっと機転を利かせる時があるか、アイデアを思い付いたりするくらいです。
この作品に辿り着いた経緯and理由は?
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レイトン教授に惹かれて
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名探偵コナンに惹かれて
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その他(たまたま、勘違いスキー等)