砂嵐が吹き荒れ、太陽はその身を雲の奥へと隠し、砂に晒された何らかの生物の骨に不気味な虫が這い回っている。
幻影の砂漠と呼ばれるその地は絶えず砂嵐が起こり、
砦の一室からは太い声と激しい打撃音が聞こえる。中を覗いてみると様々な武器や木偶が揃えられており、その中心では一人の男が鍛錬に勤しんでいる。長剣に始まり大剣、双剣、三叉槍から手斧まで、男の扱う武器の種類は多岐にわたり、その鍛錬は異様である。そこに仇敵がいるかのような殺気を撒き散らし、巧みとは言えないものの風切り音を立てながら武器を振り回すその様に大抵の生物は近づく事は無いだろう。
血錆びのような赤茶色の髪を後ろで束ね、褐色の肌には汗一つ無い。
上着は着ておらず、一目で分かる程鍛え上げられたその肉体を惜しげも無く晒している。刃で刻まれ、槍で貫かれ、幾度も骨折と打撲を繰り返した男の肉体は見ただけでその人生が戦いに満ちていることを思わせる。
男の名はガノンドロフ。ゲルド一族唯一の男であり、王である。
彼はこれからハイラル王城へ謁見に向かい、表向きには王国へと忠誠を誓いに行くのだ。
真の目的は聖地へと赴き、トライフォースを手に入れる事。
黄金の大三角とも呼ばれるそれは単に黄金としての価値があるわけでは無く、触れた者の願いを叶える力があると言われている。
その力を以って闇の世界を作り上げ、支配する事こそが彼の最終的な目的である。
謁見の儀は滞りなく進んでいき、ガノンドロフが忠誠を誓う。
(従ってやろう、聖地への入り口を見つけるまではな……)
すると、不意に視線を感じ、窓の外を見てみると緑衣の少年とゼルダ姫がこちらを窺っていた。何故ここに部外者のガキが......?というガノンの思考は突如断ち切られる事になる。幼き頃より戦いに身を捧げて来た戦士の研ぎ澄まされた直感が遠くない未来を見せる。
そこにいるのは成長した緑衣の少年、ゼルダ姫、そして横たわる自分であった。
「ぬあっ!?」
「っ!?......どうかしたかね?」
「い、いえ、少し古傷が......」
苦しいが誤魔化せた事だろう。心の内まで読める訳では無いのだから。
それにしても恐ろしくリアルで写実的な予知だった。いや、恐らく心のどこかであの少年はガノンにとって鍵となり得るのだという確信があったのだ。
戦いに明け暮れた日々、誰も自分を殺す事は叶わなかった。戦士として、より強者と戦いたいというのは当然といえよう。自分が倒される未来を見て喜ぶのは狂っているだろうか。
楽しみが一つ増えたと邪悪に微笑む男が1人。
初投稿で処女作です。世界観に関しては全て自分の頭の中で考えただけなので、設定と違う所がしばしばあると思います。許せない方はブラウザバック推奨です。