手探りです
〜side ガノンドロフ〜
(あの小僧から精霊石の気配を感じた.....。まさかゴーマがあんな小僧に負けるとはな。ガキばかりと思って侮っていたか。)
儀式も終わり、ガノンは砂漠を一人馬を走らせていた。その戦闘能力の高さから護衛は必要ないわけではあるが、首領を一人にするのには訳があった。
ゲルド族は100年に一度しか男が生まれない種族であり、一族の中で総数を増やす事は非常に難しく、他の種族と交わる事で子孫を残している。今回の儀礼は多くの人間が集まるハイラル城下町へ行くという事でゲルドの女にとってはまたとないチャンスであり、外交の真っ最中という訳だ。
無論、それだけが理由というわけではない。『目当て』のそれは今正にガノンの前へとやってきた。怒りと憎しみが混ざり重く纏わりつく様な殺意を滾らせた4人の男と、鋭利な刃物の様な殺気を秘めた2人の男。その武器は戦鎚、長剣、大斧、曲剣、円楯にメイス、そして身の丈ほどの特徴的な大剣だ。
(ふん、やっと来たか)
「一応、何の用だと聞いておこうか。山賊よ」
「俺達が留守にしてる間に部下は皆殺し、宝は奪われて砦は壊滅……!!このままだと山賊としてのプライドがズタズタなんだよ……!!」
「兄弟達の仇だ。ここで死ね、魔盗賊」
問いに答えたのはそれぞれ戦鎚と長剣の男だった。頷く様に大斧とメイスの男が得物を構える。
ガノンはハイラル城へ赴く前、目を付けていた山賊の砦が戦力が薄いことに気づき、襲わせた時のことであると確信を持っていた。分かった上で挑発したのである。
「何のことかは分からんが、とっととかかってきたらどうだ?先手は譲ってやると言っているんだぞ?虫ケラ共よ」
4人の中で何かが切れる音がした。
「殺す!!!!」
誰が言ったか分からないまま、飛び出しそうな4人を抑えて大剣の男が弾かれるように飛び出した。担いでいた大剣を地面に下ろして引きずるように駆けていく。射程距離に入った途端、走る勢いを殺さずに一瞬背中を向け回転する力へと変換し、首から上を薙ぎ払う。その剣は赤い魔力を帯びており、秘めたる破壊力は絶大だと想起させる。
予想以上の実力にガノンは歯を剥き獰猛な笑みを浮かべると、自身の剣へ魔力を纏わせ正面から受け止めた。
ゴッギィィイイン!!!!
魔力と魔力がぶつかり弾け、砂を巻き上げる程の衝撃波が全身を叩くが大剣の男は渾身の一撃を容易く防がれた事に驚きを隠すことが出来なかった。その隙を見逃すガノンではない。大剣の腹を拳でかち上げ、空いた腹部に蹴りを叩き込み吹き飛ばした。
「げぁっ.......!!」
不意を打たれた形になった男は耐えきれず剣を手放してしまった。受け身をとれずに砂漠を転がり、動けなくなる男を尻目に残った者達もまとめて飛び出し、まずは長剣の男が切りかかった。ガノンは自身のやや厚みの長剣を右手でだらりと下げ、左に先ほど手に入れた大剣を担ぐ形で二刀で構えている。
本命は必殺の突き。小回りの効かない左を狙い、崩れたところを一気に突き崩す。それは本来ならば有効な手立てだったのだろう。この男以外には。
(こいつ.....!?俺の速度についてきているのか!?相手は片手持ちだぞ!?)
鍛え上げられた肉体と魔力での底上げにより、驚くべき回転率で両手の武器を操るガノンに戸惑いつつも剣を振るうが、先ほどまでの勢いはなく逆に大剣に大きく弾かれしまい隙を晒してしまう。ガノンは右手の長剣を右の腿に突き刺し、バランスが崩れた男の胴は魔力を帯びた大剣によりすぐに泣き別れることになった。
「虫が一匹潰れた程度でこの体たらくとは、期待外れだったようだ.....」
心底落胆したと言わんばかりの表情と対照的に、迸る魔力が獰猛に笑う巨大な猪頭の怪物を象った様に見えた。
「死ぬがいい、
蹂躙が、始まった。
書いてて楽しかったけど難しいですね、やっぱり