激しい戦いの中で兄川はどうするのか?
兄川に拷問同然の尋問をかけていた所に、深海棲艦が現われた!当然、尋問は中止された。
兄川「(助かった・・・?、それにしても、一体誰が?)」
鎮守府内にけたたましく鳴り響くサイレン。深海棲艦が鎮守府近海に現れたという知らせだ。普段は寮舎の中で大人しく生活していた艦娘達が一斉に戦闘態勢に入る。しばらく前線から離れた暮らしをしていたとはいえ、全ての基礎的な準備を終わらせる早さは、さすが軍で鍛え上げられた艦娘というところか。
提督代理艦や岩川からの2人も、天龍を兄川の警護に残した以外の全員が地下司令室にて所属艦娘への指示を与える。さらには、民間人の避難命令発令は勿論、近隣の枕崎、錦江、桜島、佐多の各鎮守府や岩川、佐世保グループ所属の鎮守府への応援要請も出した。今回の敵は50体以上に及ぶ大艦隊なのだ。死ぬ事は覚悟の上だ。
妙高「どうですか、敵の様子は!」
大淀「はい!敵のボスは戦艦棲姫。その周辺を取り囲むように、軽巡水姫、重巡棲姫、飛行場姫、タ級flagship、ヲ級flagship改、その他多数のelite,flagshipの存在を確認!」
妙高「被害状況は!?」
大淀「それが、連中は我が鎮守府の前で艦隊を停止させました。今の所、あちらから攻撃してくる素振りを見せません。」
祥鳳「新兵器の準備でしょうか?」
新島「わからないが、下手にこちらから攻撃すると、倍返しを喰らう可能性がある。各鎮守府の連合艦隊による包囲網の完成を急がせるべきでは?」
妙高「それで行きましょう。住民の避難が完了する前に包囲網を完成させ、避難完了と同時に、セオリー通りにまず艦載機で制空権の確保を!」
万一の時に備え、鎮守府正面での防衛に有効な艦配置と行動順を決めておいてよかったと、妙高と祥鳳は思った。
その作戦は、まず建物の陰から空母艦娘が、まず艦戦、次に艦爆or艦攻で一撃離脱の絨毯爆撃を仕掛ける。それが成功したのと同時に、密かに敵の背後に迫った雷巡による魚雷の一斉射。それに追従して、一部駆逐艦が敵を陽動したところを、状況に応じて水雷戦隊の魚雷攻撃、または戦艦、重巡の砲撃で足止めする。さらに今回は、艦娘の力がなくとも海水上で大きな効果を発揮するだろうと期待される、特殊な新型ミサイルも佐世保から用意されるという。
司令室の隅で、新島と岸田は
新島「岸田。今度の新型兵器だが、一体どういう効果があるのだ?」
岸田「一言で言えば、海上の深海凄艦に対して、海水で感電させるんです。水面に落ちれば目標に命中しようとしなくても同等の効果が発揮されますし、さらに空中で破壊されても、破裂した時に発する電磁パルスが一時的に電探やレーダーを無力化します。」
新島「しかし、雷が海水に落ちたときの感電範囲は周囲数十メートル程度だったと聞くが?」
岸田「そこで、デフォルトの化学現象の効果を大きく上昇させる霊的技術や魔術の出番です。雷の持つ威力をほぼそのまま周囲数キロメートルにまで拡大させる魔術を込めた式が、ミサイルの弾頭に詰まっているという噂です。今まで化学一辺倒で殺傷能力の限界が見えていた大型ミサイルに、艦娘建造や装備開発で培われた霊的技術を加えた事で、非科学的ながら広範囲かつ、平均以上の威力を持たせる事に成功したとのです。」
新島「よく大本営が許可を出したものだな。」
岸田「本土が直接深海凄艦にやられようとしているんです。幸い、そのミサイルも横須賀へ運ばれる途中に偶然近くを航行していたから、使わない手はないですから、使用する正当性はあります。」
新島「本当なら大本営の元で改良を重ねる方が優秀な兵器には仕上がるのだろうが、我々からしてみれば、現状のほうが都合がいい。」
岸田「やはり、天の意志は、艦娘や深海凄艦を必要としていないということですね。それにしても、奴は今地下の牢屋の中です。これでは、奴を巻き込めませんが?」
新島「そこは僕が何とかする。事が済むまで、お前はそこを動くな。」
岸田「了解しました。」
さて、作戦は開始された!新型ミサイルの到着が間に合わなくとも、敵を一箇所にまとめて潰すのは、いわば集団戦の常識。が、同じく戦士である戦艦棲姫:富士もその事は良く知っている。
富士「全員、好きなように散開!これからは各々で艦娘を撃破し、鎮守府を破壊し、目的地を目指せ!以上!」
レ級:ソニック「首領!敵の絨毯爆撃が!」
富士「想定済みだ!」
富士の指令が海王会全員に伝わったと同時に、指宿の空母、赤木、加賀、翔鶴、瑞鶴、飛鷹、隼鷹、龍鳳による爆弾の雨あられが海王会に襲い掛かる!
「!!!・・・・・・ワタシ・・・コンナ、ザコアイテニ、ヤラレルナンテ!!」
「グハァッ!オノレ、カンムス・・・!!」
「こうなれば特攻だ!Flagship戦士ビスタの最後を見ろ!海王会!万歳!!」ドドドーン!!
事前に調べた情報では、敵艦娘は余所からの寄せ集めばかりで、ここ最近、遠洋に出撃した事が無いらしいので、レベルも大したことはないと侮っていた。が、寄せ集めとはいえ、戦闘に出ているのは鬼姫級深海棲艦を撃破したこともある高錬度艦たち。超一流とはいえなくとも、ただのflagship程度なら負けない強さを持つ戦士達である。
その事を見抜けなかった一部の艦は、弾や艦載機を無駄に消費し、隙間無き爆撃、スナイプの如き魚雷、三式弾からの徹甲弾のコンボに晒されて、次々と轟沈していく。それでも最後に富士首領に役立てようと、水上を周りつづける駆逐艦や軽巡の大軍に特攻して、敵の壁を崩そうとした者もいた。駆逐イ級flagshipのビスタも自身の爆発に艦娘を巻き込もうとしたが、軽巡多摩、神通の連装砲乱れうちに遭い、最後の抵抗は達成されなかった。
だが、攻撃を掻い潜った生き残りは、戦いが好きな者共は自ら艦娘艦隊に挑戦し、富士に忠実な者共は水中を這うように進み、艦娘の潜水艦や駆逐艦、海防艦の魚雷、爆雷を避けながら、鎮守府の中心へ進む。
伊8「Komm schon!(かかって来なさい!)。深海凄艦!」
伊58「せっかく手に入れた安静の地を奪われたくないでち!」
伊8と伊58のダブル全門魚雷!
護衛棲水姫:アセラ「アタシがやります!行け!レッド部隊!」
富士に同行していた海王会のメンバーの一人、護衛棲水姫のアセラは、水雷レッド部隊兼親衛隊の2隻の特殊駆逐艦、ニチリンとミドリを放つ。2隻は敵の爆撃をものともせず、敵潜水艦の首元を狙って噛み千切りに来た!
伊8「アア!危ない!」
ミドリ「あんたの肉、うまそうだー!!」
伊8はから避け切れたが、伊58が間に合わなかった。それでも、両手を血に染めながら、ニチリンの口を開かせようと踏ん張る!
ニチリン「抵抗・・・しないでよ!」
伊58「ゴーヤは、まだ死ぬ訳にはいかないでち!」
富士「ミドリ・・・ニチリン・・・、死んだら許さんからな。」
アセラ「首領、行きましょう。彼女らならきっと大丈夫です。」
ヨ級flagship:エスプリ「首領、もうすぐ鎮守府の工廠前です。」
富士「うむ。ここから先、鬼姫級とflagshipは我に続いて鎮守府を制圧!それ以外は、水上、もしくは水中から仲間を援護しろ。方法は任せる。行くぞ!」
「「「リョウカイ!!」」」
一方、地下牢の中で椅子に縛られたまま身動きが取れない兄川と、変装している見張りの天龍は・・・。
天龍「くそ~!俺だって敵と戦わなきゃ行けねぇのに・・・!」
兄川「・・・どうやら、勝負は互角みたいだが・・・。」
天龍「互角だ?言っておくがな、今ここにいる艦娘はな、碌に戦闘訓練すらさせなかった以前より、はるかに強いんだぜ?それこそテメェなんか一ひねりよ。」
兄川「お前達らしくないよな・・・。お前らなら有無を言わさず、すぐ拳銃だろ?」
天龍「ハッ!また、話を煙に巻こうとしてやがる。もうその手は通じないっていってんだろ!」
そこに急ぎ足で新島がやってきた。
天龍「中佐!?何でこんなところに!?」
新島「天龍!妙高からお前に命令だ。兄川の見張りを俺に任せて、早く正面の応援に来てくれ、とな。」
兄川「お前・・・、天龍だったのか・・・?全然分からなかったよ。」
天龍「本当か!?もう、そこまで来てやがるのか・・・。すぐに行く!中佐。危なくなったら脱出路からそいつを連れて逃げてくれ!」
新島「分かっている。急げよ!・・・さて・・・兄川、いや津和昭雄。」
新島は天龍を見送ったあと、兄川の後ろにかかっている手錠を外した!
兄川「何の真似だ?」
兄川は固まった関節をほぐしながら新島に聞く。新島は拳銃を兄川の頭に狙いを定めていた。
新島「君にここから脱出するチャンスを与えようと思ってね。今から3数えた後で、君を追いかける。改めて君を見つけた後、この銃で頭か心臓を狙い撃つ。」
兄川「この非常事態に随分余裕だな。だが、天龍の言うとおりに、自分は貴様と一緒に脱出路から逃げるんじゃないのか・・・?」
新島「君を生かすなど、誰が好んでやるもんか!脱出するなら僕一人でやるさ。それに、あの通路は指紋認証でドアが開くんだ。」
兄川「そうかよ。」
新島「それじゃあ、早速始めよう。」
新島「・・・1・・・」ドキューン!!
兄川「!!」スッ・・・
新島「な!?」
兄川「ォアアァ!!」
新島はカウントダウンを始めた直後なら、すぐに引き金を引いて兄川を殺せると考えた。が、兄川のしゃがみ回避は弾が兄川に命中するより速く、その後すぐに天井ごと突き破る 勢いでのアッパーが新島の脳を揺るがす。そのまま間髪を入れずにジャンプして新島の頭を目掛けて足から全体重を乗せてキック&ドロップ!
新島「ガハッ!・・・・・・。」
新島は後頭部から血を流し死んだ。逃げるチャンスなどと相手を侮り遊ぼうとするから、こんな惨めな死を迎えることになるのだ。それも悪人に味方をしているなら当然の報いと言えようか。
兄川は、新島から胸ポケットの中の手帳と先ほど握っていた拳銃を持ち、ついでに下半身を隠すズボンも頂戴して牢から逃げ出した。新島の言うとおり、指紋認証でしか開かないのなら、新島の死体を脱出路の扉まで持って行くのは時間と手間が掛かりすぎる。今は一刻を争う事態。兄川はここに連れてこられた時の足取りの記憶を頼りに、緑色に光るマークとは逆の出口を探す。
工廠では、傷ついた艦娘や艤装の応急処置がひっきりなしに行われていた。破れた服のまま入渠用湯船に入り、すぐに高速修復剤をぶっ掛けられて体力が回復した所で、補修が終わった、または予備の装備を身につけ再び深海凄艦と戦いに行く。ここでは中破、大破した艦娘12人が待っている最中だった。
明石「まずいわ・・・。後、40個しかない!戦いはまだまだ続いているのに!」
夕張「私が、岩川に要求してきます!」
そこに奥の地下へ続くドアを突き破って現われた一人の男、兄川の姿を見て艦娘たちは驚愕する。
鈴谷「え、ちょ!?なになに!?」
時雨「君は誰!?」
加賀「それより、あなた一体どこから!?」
兄川「どいてくれ!怪我しても知らないぞー!!」
とっさに兄川は手に入れた拳銃を3発ほど上に向けて発砲した。彼を阻止しようと一部艦娘が襲い掛かるも、たちまち徒手空拳でダウンしてしまう。
勢いのままに艦娘を退けて、向かった先は憲兵などが使用する脚部艤装が収納されている棚。運よくサイズの合う予備が残っていた!
兄川「よし、これなら!」
とっさに艤装を足に履き、深海棲艦がいるであろう海を目指す。
その時だった。工廠の中が激しく揺れ、爆風で破壊された正面扉からトミヤマ海王会のボス:富士が現われたのは。
兄川「お前は・・・。」
富士「兄川誠。お前を連れ去りに来た。」
戦いはまだまだ続く。終わらせるキッカケは、例の新型ミサイルか、それとも・・・。