破壊と集結の兄川誠   作:松代眼鏡

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第1章 無終と反転の兄川誠 その12

 指宿鎮守府の艦娘を主体とする大連合艦隊は、戦艦棲姫:富士を首領とする少数精鋭の深海凄艦艦隊:トミヤマ海王会の襲撃から必死になって鎮守府を守るために死闘を繰り広げていた。鹿児島湾の外に展開していた岩川、佐世保所属の艦娘の強さもあって、形勢は艦娘側に有利だったが、富士とその他鬼姫級5隻とflagship9隻が、密かに鹿児島湾を突破し、工廠前に現われたという凶報が入って、一気に形勢と士気は逆転した。

 

 一番ショックを受けているのは指宿鎮守府で指揮を執っていた妙高、陽炎、祥鳳の3人だった。

 妙高「そんな事が・・・、潜水艦でもない艦が、私たちの包囲網を突破して・・・。」

 祥鳳「妙高さん!気持ちを切り替えましょう。彼女らが私たち並みの知性を持っている事が分かった以上、一部隊の人員を多くして数で押していけば・・・!」

 妙高「では、敵旗艦が現われた工廠に留まっている艦娘はどうしたらいいんですか!?敵が強すぎる上に、こちらの攻撃で工廠を破壊してしまう可能性があります!」

 祥鳳「それは・・・。」

 

 これからの作戦が行き詰まってしまった。下手に彼女らを刺激すれば、工廠にいる大事な仲間達は絶対に助からない。

 

 そこへさらに司令部の大淀から連絡が入る。

 

 大淀「提督代理!湾外で交戦中の佐世保第2、第3水雷戦隊より入電!南方向から深海海月姫と思われる鬼姫級深海凄艦1隻に包囲網が突破されました!」

 祥鳳「嘘!?」

 妙高「被害状況は!?」

 大淀「はい、軽巡那珂、駆逐村雨、夕立、浦風を残して全員大破。特に名取、龍田、北上、大井、天津風、照月の身体的損傷が激しいとの事。」

 妙高「たった一隻だけに!?いくら鬼姫級だからって、そんな力奴らには」

 大淀「ただ、同じ場所で抗戦していた敵も同じ様に大破させられたという報告も同時に入ってます。おそらく違うグループに所属する別の深海凄艦の可能性も」

 妙高「直ちに岩川、鹿児島湾連合の各艦隊に通達して!それで、その深海海月姫の行き先は!?」

 大淀「せ、戦艦棲姫の艦隊と同じ、指宿鎮守府にまっすぐ向かっています!」

 

 

 てんてこ舞いの指宿司令部をよそ目に、工廠の中では、兄川と富士の艦隊が相対していた。

 

 兄川「自分を連れ去るだと?何故今更?」

 富士「あの一件の後で、お前の持つ力を深海凄艦の力として利用するべきという声が強くなった。だから、深海凄艦のために、お前を我らの管理下に置かなければならない。」

 兄川「嫌だ、といったら?」

 富士「お前に拒否権はない!」

 

 富士の艤装、いや最も従順な手下が、その巨体に似合わぬ速さでジャンプし兄川を押しつぶそうとする!

 地面に大きくヒビが入るようなマウントを、兄川は横回転で華麗に避ける。戦艦棲姫の艤装の全体重を乗せたマウントは工廠内に大きな地震を引き起こした。

 

 揺れに足を取られた兄川に高くそびえる棚が敵意無く襲いかかる!

 

 兄川「!!」

 

 潰れて堪るかと、瞬時に腰を下ろし両手で徹の棚を持ち上げる。が、これで兄川は身動きが取れなくなった。

 

 兄川「(しまった!これでは避けられない!)」

 富士「今がチャンス!ホワイトアロー!」

 重巡棲姫:ホワイトアロー「お任せあれ!」

 ル級flagship:ヒート「我ら双子姉妹も」

 〃:フリコ「協力させていただきます!」

 

 この機を逃さないと、富士の指示の下、3人の強力な戦士の大砲撃を前に、兄川のいた場所は轟音と爆風の渦に飲み込まれていった。その余波が工廠の奥で動けなくなっていた艦娘にも襲い掛かった。

 

 「「「きゃあぁぁ!!!」」」

 

 

 

 これで兄川は動けまい。奥の艦娘は捕虜にしておくとして、海から来るであろう艦娘への対処をル級の双子やホワイトアローに任せ、富士とアセラは工廠の奥へと進む。

 

 その時だった。

 

 ホワイトアロー「首領!!港湾の向こうからテスタが高速で接近中!」

 アセラ「テスタですって!何であの娘が!?」

 ホワイトアロー「テスタは艦娘の抵抗を振り払いながら、たった一人で迫ってきます!」

 富士「誰にも計画の邪魔はさせん!直ちに迎撃しろ!(あの娘、一人で来たのか。)」

 

 

 

 さて鎮守府正面。アヴェンタ達には黙って出発し、吹雪に案内させて到着した指宿の地。だが、そこは先に現われていたトミヤマ海王会と艦娘達が激闘を繰り広げていた。あたり一面赤黒い世界を前に吹雪は立ちすくんでしまったが、テスタはそれでも兄川を救いに行くと言って聞かない。仕方なく、吹雪は近くの岩陰で彼女の帰りを待つことにした。

 

 テスタ「そこを退きなさーーい!!!」

 

 それからのテスタの進撃は、その場にいる全ての艦娘や深海凄艦を恐怖させた。

 

 ホ級flagship「首領!首領!至急応援を請う!応援を請う!・・・ってギャー!」

佐世保の霧島「深海海月姫は第2次防衛ライン突破しました!我々の陣営はほぼ全滅!敵はなお勢いを止めません!」

 

 殺すとまでいかなくとも、立ち向かった敵は全て、千切っては投げ、千切っては投げ・・・。随分昔にあった、一番最初の深海海月姫との戦い=艦隊作戦第三法=通称:シャングリラ戦争で効果があった「長門、プリンツ・オイゲン、酒匂」のみの連合艦隊を急遽編成してぶつけるも、

 

 長門1「あれだな!よし、全艦、全主砲斉射!ってー!!」

 プリンツ「Feuer!Feuer!」

 酒匂「ぴゃあぁぁ!でも、ほとんどきいてな~い!」

 

 テスタ「どきなさい・・・!」

 

 艦娘「うはぁぁぁ!!」

 

 効果はまるっきりナシ。艦娘も深海凄艦も発狂して我を失ったシャチも鮫も、テスタのz邪魔をした者は全てやられた。だが不思議な事に轟沈は出ていない。彼女なりに手は抜いたという事なのか。

 

 長門「お、おのれ・・・!だが、このままでは・・・」

 

 そしてテスタは僅かな抵抗さえも排除し、ついに工廠にいる富士達を見つけた!富士は、アセラ、ホワイトアロー、ヒート、フリコを従え、待っていたといわんばかりに全員がこちらを向いている。

 

 富士「ほう、私の誘いに乗ったのか。だが良かったのか?アヴェンタやシルフィらの助けも無しで一人で戦うつもりか?」

 テスタ「首領・・・、いえ富士!兄川はどこ!?」

 富士「奴なら、あそこで下敷きになっている。」

 

 富士がクイッと顔を向けた先に、工廠の機械の残骸が瓦礫の山と化していた。

 

 テスタ「・・・富士・・・!!」

 富士「今なら助かるかもしれん。さあ、どうする?」

 

 テスタ「あああぁぁぁ!!フジぃいいいいいい!!!」

 

 テスタの主砲が一斉に火を噴いた!だが、それを双子のル級が止める!そこからさらに、富士の艤装がイノシシのように突進してきた!

 

 テスタ「くはっ!!」

 艤装「ムォァアアアア!!!」

 

 テスタは、そのまま後の港湾部の海まで押し戻されてしまう。言語を理解しない本能のみの獣は、そのままテスタを水底に沈めようとその巨腕でテスタを殴りつける。が、一瞬の隙を突いて足を引っ掛けて転ばすと、かつてテスタ自身も感じた事のない怪力で富士の艤装を持ち上げ、それを

 

 テスタ「返して上げますわよ!!」

 

 昔の怪獣のように富士達のいる工廠へ投げ飛ばした!

 

 富士「何!?」

 ホワイトアロー「首領!」

 

 ホワイトアローは咄嗟に富士を突き飛ばして助けたが、反対にホワイトアロー自身が艤装に伸されてしまった。双方の艤装も打ち所が悪く、そのまま沈黙してしまった。

 

 ヒート「おのれ!!」

 フリコ「よくもホワイトアロー様を!」

 

 ル級姉妹の爆砲攻撃が炸裂。が、テスタには効かない。本当に何故ここまで強くなったのか、誰も知らない。こいつを超えられる存在が今までいただろうか?そして、これから出現するのか?今はただ、眺めるしかない。テスタと呼ばれた深海海月姫の悪魔も震えるような無双を。

 

 が、その無双に依然として立ち向かう者がいた!

 

 ドゴドゴーンン!!

 

 テスタの身体を焦がすような砲撃を与えた存在、それは、

 

 テスタ「あなたなのね。戦艦長門!」

 長門「貴様ほど骨のある相手は久しぶりだ。そこまで敵を求めているなら、私が相手になってやる!来い!」

  

 何と、先ほどのクロスロード組の連合艦隊の旗艦だった佐世保第1艦隊のエース。長門改二その人だった。テスタの猛攻で一時的にダウンしていたが、咄嗟の受け身のおかげで中破を免れていたのだ。そして今の彼女が積んでいる主砲こそ、噂の最強砲、人読んで51cm連装砲、それが2門!

 

 テスタ「邪魔しないで頂戴!あなたに用なんてないの!!私はただ愛しの彼を助けに来ただけなのよ!!」」

 

 テスタの反撃が始まる!撃っては撃ち返し、長門が懐に腹パンを喰らわせたなら、テスタは両腕で長門を羽交い絞めにする。このドサクサに紛れて2人とも始末してしまおうと照準を合わせたル級姉妹だが・・・。

 

 陸奥「姉の真剣勝負に水を差さないで!」

 島風「長門~!ここは私達がやっちゃうよ~!」

 

 長門と同じ艦隊の陸奥以下4人の高錬度艦娘の妨害のせいで、ル級姉妹はそちらの相手をしなくてはいけなくなってしまう。幸い、援護に回っていた潜水艦を呼び出す事が出来、人員は確保したが、戦闘は益々泥沼に嵌って行く気配がした。

 

 富士「仕方がない。ヒート達に水雷と空母の応援を向かわせろ。アセラは我と共に例の機械を調べる。」

 アセラ「リョウカイしました!」

 

 明石「こっちに来た・・・!」

 

 残った2人だけで、ついに目的の物があると思われる場所へ到達した。それは鎮守府の工廠に必ず1機は置いてある何の変哲もない建造装置なのだが、2人がそれを見つけた瞬間、歓喜に満ち溢れていた顔が一気に表情を無くしていった。

 

 アセラ「これは・・・、1代前の建造装置ではありませんか!?我々の調査と全然違う型式です!」

 富士「・・・ありえない・・・!毎日の如く潜水艦を派遣しては、偵察させていたというのに・・・。一体何時の間に!?」

 アセラ「そ、それについては私も言葉を隠せません・・・。

 富士「こんな・・・、こんな馬鹿な事が・・・!!、おい!」

 

 富士の威嚇とも取れる高圧的で下手に触れない声で大破艦が皆震え上がる。そのまま彼女の怒りのままに全員惨めに殺されるのを待つだけと、誰もが思った。だが、富士が呼んだのはただ一人だけだった。

 

 富士「そこのピンク髪のデカい艦娘!確か名は明石だったか!?」

 

 明石「わ、私・・・ですか?何のつもりか知りませんが・・・、あなた達の捕虜になるぐらいなら、ここで自決します!」

 富士「自決するのは、我の質問に正直に答えてからにしてもらおう。」

 

 戦闘能力はなくとも、この娘たちを少しでも助かる可能性があるのなら・・・、と一人富士を睨む明石。が、富士はそんなやせ我慢に気をかけることはなく、明石の胸倉を掴んで、ある事を尋ねる。

 

 富士「この装置を何時前の装置と取り替えた!?前の装置はどうした!?」

 明石「し、知りませんよ!どういうつもりか知りませんけど、私が来た時には既にこのタイプでしたよ!」

 富士「だが、資料やデータでは残っている筈だろ?死にたくないなら、おとなしくそのデータを渡せ。」

 明石「装置のスペック表と設計図なら、あなたが壊した棚のどれかにあります・・・。けど、今以前のタイプの資料は、本当に知りませんね・・・。」

 富士「貴様・・・、分かったぞ。こいつはカモフラージュなのか?表向きだけ新型に見せて、実は旧型なんだろ!?」

 明石「全然違います!どうしてそんな無駄な事をしなきゃいけないんですか!?」

 富士「これ以上、本当のことを言わないなら、貴様をこの場で拷問にかける。」

 

 富士の手に力が込められる。込められた分だけ明石は死に近づいていく。

 

 明石「ぐ・・・・・・ぅ・・・・・・。」

 アセラ「あまり首領を怒らせるな。さっさと真実を吐いたほうが、貴様の死はより尊い物となるだろう。」

 明石「そ・・・んな・・・な・・ま・・・を・・うらぎること・・・。」

 

 明石の息が途絶えようとしていた

 

 

 その瞬間、富士とアセラの後ろに積み重なった瓦礫の山が大きく吹っ飛んだ!そして、その刹那。

 

 アセラ「・・・ア・・・、グハァッ!」ドサッ

 

 アセラが首から地面に落ちているではないか。かろうじて意識はあるが、身体へのダメージは相当に大きかったらしく、ゆっくりと這いずるしか出来ない。

 

 明石「一体何が!?」

 富士「あいつか・・・。」

 アセラ「お前・・・あの時、死んだはずの・・・。」

 

 兄川「ウウゥ・・・!富士・・・。彼女たちを解放しろ・・・。用があるのは自分の筈だろ・・・!」

 

 そう、瓦礫に埋もれていた兄川は自力で瓦礫の山に穴を開け、瞬時に飛び出してから隙だらけのアセラの背中に蹴りを一発入れたのだ!しかも、ガライヤのときと同じく、目をライトの様に光らせ、髪は白く染まり、形相も鬼の如く険しい。

 

 富士「成程。死に際になると、お前の覚醒が始まるということか。空母棲鬼や南方棲鬼みたいな奴だ。」

 

 富士は明石を片手で投げ飛ばし、ゴキリと拳を鳴らして兄川に迫る。

 

 富士「だが、それでお前は最大の切り札を失った。ならば、」

 兄川「・・・。」

 富士「全力で殺すまでだ!」

 兄川「イクゾォォォ!!」

 

 富士と兄川、互いの拳と拳がぶつかる!互いに華奢な身体に似合わず、互いの拳が割れそうな力が押して押され、また押される。

 

 力勝負を制したのは、

 

 富士「大人しくしろ!!」

 

 富士の力に兄川は押された。が、兄川は体制を立て直すと、足元に転がっていたアセラの足を掴んで、そのまま富士を目掛けてジャイアントスイング!富士の攻撃態勢を崩した。

 

 が、兄川はそれ以上は深入りせず、正面から桟橋のほうへ駆け出した。

 

 富士「ふん、ここにいる艦娘を逃がそうというわけだ。もとから艦娘には興味がない。その誘い、乗ってやろう!行くぞ、ロクロク!」

 ロクロク「グ・・・グファァァ!!!」

 アセラ「あ・・・首領・・・、お怪我は?」

 富士「私は何のことはない。それより、お前も伸びてる場合じゃないぞ。」

 アセラ「リョウカイしました!」

 

 富士の艤装:ロクロクとアセラが目を覚ました。それを確認した後、宣言どおり艦娘を無視して兄川を追いかけていった。

 

 明石「私達、助かったの・・・?って、今の内に逃げないと!皆、動ける人は動けない人の肩を貸して!」

 

 明石は、夕張やまだ手足までやられていない艦娘の手を借りながら動けない艦娘を安全な所へ誘導しようとタイミングを見計らって外へ出た。

 

 

 各々の強者が好き勝手に暴れる一方で、当事者でありながら、蚊帳の外から様子をジッと見るしか出来ない妙高たちの方は・・・。

 

 祥鳳「現在の所、私たち鹿児島系の連合艦隊で残っているのは、戦艦と重巡、軽巡が3ずつと空母2と駆逐が2、潜水艦は全員大破。岩川と佐世保の本隊は僅かな中破のみで済んでいるようですが、敵も勢いが衰える気配はまるでなく、このままですと敗北の可能性が濃厚です。」

 妙高「天龍は大丈夫かしら・・・?」

 陽炎「それに、工廠に閉じ込められた明石たち14隻を助けなければいけないわ。この際だから、あいつは死んでも構わないけどさ。」

 妙高「でも、私達まで死んでしまえば、この指宿は敵の手に堕ちたことも同然。そうなれば、この国にまた大きな混乱を招く事になって、最悪、日本が崩壊しかねない事態に!」

 祥鳳「ですが・・・、もう私達に出来ることはありません。出来ることといったら・・・。」

 

 岸田「皆さん、朗報です!今、工廠の中にいた明石以下13人が無事に脱出したと、後方の陸軍臨時基地から報告がありました。」

 妙高「本当ですか!?」

 陽炎「やったじゃん!」

 岸田「それに、もうすぐ例の新型ミサイルの打ち上げ準備が完了するらしいです!」

 

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