岸田 「それに、もうすぐ例の新型ミサイルの打ち上げ準備が完了するらしいです!後は、タイミングを見計らって艦娘を陸地に上げれば完璧です!」
祥鳳「よかった・・・。これで一気に勝てます!」
妙高「とにかく、もう祈るしか私達に出来ることはないわ。」
岸田「いえ、もしミサイルが正常に機能しなかった時の事を考え、あなた達には大淀さん以外の全員で、外で待機してもらえませんか?万一の時には、あなた達が佐世保の艦娘の援護に回って下さい。」
陽炎「准尉はどうするのよ?」
岸田「先ほど、大本営に連絡を取って、あなた達の指揮補佐を担当する事にしました。ですので、大淀さんと共に此処で一生懸命頑張らせてもらいます。」
妙高「・・・分かりました。では、准尉さん、しばらくの間、あなたに私達の命の一部を預けます。」
岸田「確かに承りました。(何とか根回しは上手くいった。これで邪魔者をすべて排除できれば良しだ。それにしても中佐はどうしたんだ?脱出路を使ったなら、とっくに連絡があってもいい筈なのに!)」
さて、鎮守府全体が砲弾と爆弾、強者達の渾身の一撃で大きく穴が開いている中で、様々な思惑を持って戦う戦士たち。完全な互角と思われた各々の戦いが、徐々に決着が着こうとしていた。
ヒート「このお邪魔虫が!」
陸奥「私を舐めないでよね!この撤甲弾を受けてみなさい!」
陸奥の主砲から発射される火薬量1.5倍の徹甲弾がヒートを目掛けて飛ぶ。正直、陸奥自身も大きく期待はしていなかったが、
雪風「雪風のアイデンティティで全てを通して見せます!」
ヒート「ギャァアアアア!!」
超幸運の代名詞:雪風が傍にいてくれたから、陸奥の一撃は相手に最大ダメージを与える事に成功した。伊達なル級flagshipではないヒートが、そう簡単には死なない筈だが、彼女の悲鳴がフリコの意識を引き寄せる。
フリコ「ヒート姉さま!」
島風「貴方の相手は」
木曾「こっちだ!!」
フリコ「そんな、2人掛りで・・・ウワァァ!!」
フリコが絶命寸前の姉に気を取られている隙に、彼女を囲んだ島風と木曾。そのまま、2人のオールウェポンアタックが四方から攻めてくる。長い間佐世保最強の座を保持し続けた彼女らに、ル級一人程度を倒す事は簡単な事だろうか。
佐世保艦隊とル級姉妹の間を縫うように、テスタの下へ急ぐ兄川。さらにそれを追いかける富士とアセラ。
島風「おぅ!?生身の提督が戦艦棲姫から逃げてる!?」
木曾「そんな事言ってる場合か!見ろ、敵の増援が来たぞ!」
島風の驚きと共に発した声がル級姉妹の増援部隊の耳に入る。やがて水上に彼女らは姿を現した。リコリス棲姫を旗艦とする6隻の火力部隊だ!
雪風「島風!応援に来ました!あれが新手の敵ですか。」
リコリス棲姫:レッド・デビル「私はレッド・デビル!富士首領の部下が傷ついたと聞いて報復に来たわ!艦娘共、覚悟なさい!」
早速、開幕爆撃。が、2人の絶対に間違わない直感が冴えに冴え渡り、全てを避ける。そして、そのままレッド・でビルに雷撃をお見舞いする!
木曾「ハッ!軽いな。」
レッド・デビル「キャア!!・・・無茶苦茶するわね!でも、次はそうはいかないわよ!」
さて、テスタと長門は!
テスタ「兄川!何処にいるの!?兄川ー!!」
テスタは必死に辺り一辺に兄川の名を轟かせる。兄川の事を想っている彼女にとって、極めて真剣な行為だが、敵との戦いに集中しない態度が長門には面白くない。
長門「貴様の相手は私だ!」
長門、渾身の徹甲弾が3連発も炸裂する。しかも、それぞれの弾着地点は横3箇所に水柱の壁を作る。そこへ、
長門「今だ!陸奥!」
陸奥「ええ!」
2人の戦艦姉妹の息の合った火薬増量の徹甲弾のコンビ技、「二重連徹甲砲」が、水柱の壁を貫きテスタの心臓を狙う!
テスタ「!!」
あまりに突然の事態に唖然とするしかないテスタ。考えが纏まらない。諦める暇もなく死ぬのか?
いや、神様はテスタを生かす事に決めたらしい。
何故なら、
ドドドドオーーー!!!
テスタ「・・・?・・・!!」
兄川「ク、クゥ・・・、テスタ・・・無事か・・・!}
テスタ「兄川!?」
テスタの前に現われた男が、両腕を広げ、テスタが受けるはずだった傷と焦げ付くような黒い皮膚を代わりにもらった白い髪と肌の男、兄川誠だったからだ!
テスタ「そんな・・・、せっかく無事だったのに・・・。」
兄川「気に・・・してる場合じゃ・・・ない・・・。じぶん・・・は・・・まだ、戦える!」
あのまま長門型の必殺技をまともに喰らっていたら,兄川は即死していてもおかしくはなかった。が、テスタを狙う富士の放つ砲弾が、長門のそれよりもスピードが速かったために、兄川に当たる直前に2方向の砲弾がぶつかり、互いの爆発エネルギーが相殺されたのだ。
富士「奴は私の喧嘩相手だ。雑魚は失せろ!」
陸奥「そんな!・・・人間と深海凄艦が連携するなんて!」
長門「いや。あれは、互いが護るべき相手が一緒だった事から起きた偶然の筈。それより、」
長門の視線が自然に兄川へと向く。並みの艦娘の感性なら、提督が深海凄艦を護るほどにまで好意的という時点で理解不能だろう。が、一人の女として危険から彼女を護ろうとする男と、その男の無事を願ってここまで来た一途な女に、長門は興味を持った。
長門「なあ、陸奥。昔から艦娘と深海凄艦はどちらも互いの種族の亜種という定説は有名だよな。そして、艦娘はケッコンカッコカリで互いの愛を確かめ合うことで再び強くなれる。」
陸奥「ふ~ん。認めたくはないけど、深海凄艦も愛で強くなるって事でしょ。」
長門「加えて、あの兄川という男だ。深海凄艦を虜にした男なら、さぞ人の愛を知っているのだろうな。」
陸奥「私は何とも言えないけど。確かに悪い人ではないわよね。で、どうする訳?」
長門「勿論、最初の命令を実行するまでだ。全員を殺さず大破させ白旗を揚げさせる。」
長門が決意を新たに固めた時、無線に指宿の妙高から連絡が入る。どうやら自分達で佐世保の皆を援護するとのことだ。島風たちも3隻ながらリコリス棲姫と良い勝負をしているとのことだ。
長門「よし、ではこれより、私を旗艦とする即席連合艦隊を編成する!全員、この長門に続け!」
兄川「テスタ・・・。早く、ここから逃げるんだ。自分の仕事は済んだ・・・。また機を伺ってトライするさ・・・。」
テスタ「お願い!もう、これ以上自分を傷つけるようなことは止めて!私、決めたの!どんな時でもあなたを支えていく。あなたがピンチになった時は、私が助けるって!だから・・・、今は一緒に帰りましょ?アヴェやセレナ達に吹雪さんのいる皆のいる我が家へ、ね?」
兄川「ああ。(これが、「提督」として、「津和昭雄」としての最後の仕事になるかもな・・・。満足行く結果は得られなかったが・・・でも、それも悪くはないか・・・。悲しい過去を忘れて、愛する人たちに囲まれて、新しい世界に光をともして・・・。)」
アセラ「如何いたしますか?まさか、このまま兄川を逃がすなど・・・。」
富士「そうはさせん。全ての深海棲艦のために、邪魔ものは全員ここで消えてもらう!」
富士の放つ全弾攻撃が、再戦の合図となった。
兄川「これで最後だ!一気に駆け抜けるぞ!テスタ!」
テスタ「はい!」
妙高「この地は私達が護る!あの男からも深海棲艦からも!これ以上の犠牲は出したくない!」
長門「このままじゃ終われん!進化した深海凄艦や人間の力、見せてもらおう!」
その頃、鎮守府地下の司令室でも大淀が妙高たちに状況報告や命令を出し続けていた。
大淀「各人、散開しました!位置情報によりますと、佐世保第1艦隊の長門、陸奥が戦艦棲姫と戦いながら、兄川少佐と深海海月姫を追いかけている模様!護衛棲水姫については、私達指宿の妙高、祥鳳、陽炎が応戦。天龍もこちらの応援に駆けつけると報告がありました!新たに出現したリコリス棲姫部隊は、佐世保第1艦隊の木曾、島風、雪風で応戦しています。 加えて、工廠内で沈黙していた重巡棲姫が動き出し、2隻のル級flagshipを回収して東シナ海方面に逃げる模様。新型ミサイル発射まで、残り10分!妙高さん!その場にいる深海凄艦を出来る限り鎮守府内に引き付けてください!」
妙高「了解です。外洋の小破未満の艦に連絡し、逃走中の深海凄艦と例の少佐を含め、全員包囲します!」
岸田「(もうすぐだ。中佐はもう諦めるしかない。どうせ津和にやられて死んだ筈だ。噂には聞いていたが、ただでさえ力のある奴がさらに強くなった挙句、人殺しに抵抗がなくなるとはな。)」
ピロピロピロピロ・・・・・・
岸田のポケットがピロピロと何かのベルを鳴らしている。いつでもどこでも連絡が取れるように持ち歩いている衛星携帯だ。
岸田「失礼。もしもし。・・・、ええ、貴方の事はよく存じ上げております。それで竜宮路博士。今は命の危険が迫っている状況です。長話をしている場合では」
竜宮路「何を言ってる!?電話に出ているということは、君は安全な所から高みの見物なんだろ?それより、例の試作Ⅳ号雷撃ミサイルを指宿に撃ち込もうとしているのは君か?」
岸田は咄嗟に他の全員に知られたくない話と察し、一人誰もいない廊下で小言で話を進める。
岸田の携帯にかけてきた竜宮路博士とは、例の新型ミサイルの開発チームのリーダーに当たる博士であり、川内型艦娘の主砲のダウンサイジング化の成功を買われて新型ミサイルの開発を進めてきたのだ。
岸田「ええ、私がお願いしたんです。今、私達の味方をしている鎮守府が深海凄艦に襲われていましてね。私自身もミサイル開発の責任者の一人なので、その権限で偶然近くに運送中だった」
竜宮路「もういい!単刀直入に言う。今すぐ、ミサイルの発射を中止させろ!あれは君が考えているほど兵器として完成していない。」
岸田「と言いますと?最後にビキニ環礁で行われた実験では、予定通りに水深10メートル、半径5キロ以上に渡って50億ボルト、100万アンペアの電気エネルギーを流す事に成功した筈ではありませんか。」
竜宮路「何の障害もなく、ミサイルを撃ち落そうとする敵がいない状況ではそのまま水面で破裂するだろう。だが艦娘や深海凄艦には対空砲があるのを忘れたのか!?つまりミサイルはかなりの高確率で空中で撃ち落されることになるんだぞ!」
岸田「何故、空中で撃ち落されてはいけないのですか?完全に効果が発揮しなかったとしても、敵がミサイルに気を取られている隙に、こっちの駆逐艦か潜水艦の魚雷でもぶつけるのも一種の手として有効ではありませんか。」
竜宮路「逆だ!現在の状態のミサイルが空中で何らかの影響で破裂すれば、その時点で四方八方に自然以上の威力を持つ雷が、制御不能な光線銃のように無差別に周囲の物体にエネルギーを浴びせてくるんだ!
まず、海上にいる艤装を持った艦娘や深海凄艦、人間は黒こげで死亡か重症だ!さらに雷の性質上、船舶や周辺の木々、高い建物、電柱、避雷針に落ちた場合、避雷針そのものが今回の雷に耐えられなくなる!つまりだ、木製はおろか、金属やコンクリートの建物や大型船まで破壊、炎上させてしまう!映画の中の怪獣が口から吐く火炎放射や破壊光線並みの威力が、半径5キロにいる人や町を一瞬で火達磨にするようなものだぞ!」
岸田「・・・何ですって?」
竜宮路「だから、君の権限で今すぐ発射を中止させろ!運の悪い事に、どこぞのメディアがこの戦闘の様子を一部始終カメラで納めている。しかも無線インターネットを使った生中継だぞ!このままじゃ、君も私も首を括ることになるぞ!大本営は防衛のためなら、艦娘も民間人も平気で殺す極悪な過激派集団と永遠に敵視される事になるんだぞ!」
竜宮路の言葉はかなり焦っている。まだまだ未完成な兵器が暴走して艦娘や民間人まで殺したとあってはタダではすまない。博士も大本営も、開発に参加した団体全てが非難に晒されるだろう。場合によっては懲役か罪の重さに耐えられず自殺という未来もある。
だが、岸田はそれを知っての上か、即座に次の返事を伝えた。
岸田「竜宮路博士。発射は止めませんよ。むしろ、少しでも時間を早めたい気分ですよ。」
竜宮路「岸田・・・。軍人として人を殺しすぎて気でも触れたか?」
岸田「私の組織のために冷静になって判断した結果です。それがあるなら戦時体制と称した独裁政治や報道管制と合わせて、全ての敵対者を始末できるではありませんか。」
竜宮路「組織?敵対者?」
岸田「少し根拠のない話を申しますが、今度のミサイル発射であなたの言うとおりの結果が生中継や報告書を通じて証明されれば、近いうちにあなたの下に私のいる組織の関係者が、あなたに改良型ミサイルの開発を命令しに来るでしょう。より広範囲に高威力を持って、雷で生物や物質を破壊する兵器をね。その時に私の言う組織と敵対者の意味が分かるでしょう。」
竜宮路「・・・艦娘はどうする気だ?今の世の中で艦娘を弾圧するようなことをすれば、たちまち危険分子とみなされるぞ。そうなれば君達の居場所は何処にもなくなるはずだが!?」
岸田「竜宮路博士。艦娘が人間社会に参加させてもらえなかった最初の時代の事をお忘れですか?その時代の思想に我々が戻せばいいんです。・・・そうだ、これから博士も我々の一部になるというのですから、一つ教えておきましょう。我々の第一の目的は、人間至上主義への復古です。」
竜宮路「おい!艦娘を殺す気なのか?」
岸田「それ以上のことはいずれお話します。では博士、まだ作戦中なので失礼します。」
竜宮路「あ、待つんだ」プープープープー
岸田は竜宮路の声を遮って電話を切った。ミサイル発射まで後6分。そこからの距離と速度を考えれば、1分半で最初のミサイルが目標に到達する。そして、今回用意されたミサイルは、12本。岸田の脳裏にそれらの計算と数字が出てきた直後、岸田はある場所に無線をつなげ命令する。
岸田「作戦を早急に終わらせるために、佐世保提督代行の命令により、今すぐにミサイルを発射せよ!」
時を同じく、ミサイルが間もなく接近するというのに、なおも戦闘、逃避行、追跡を止めない戦士達。しかしこの時、兄川、テスタ、富士、長門、妙高、島風、レッド・デビル、ホワイトアローの全員が感じ取った事のない極めて邪悪で攻撃的な気配をゾクゾクと感じていた。
テスタ「兄川・・・。私、怖いの。何かおぞましい物がやってきそうで・・・。」
兄川「確かにな。早く逃げ出そう。ん?あれは・・・。」
富士「何だ・・・?この同族でも感じないような無機質な悪の気配は・・・?」
アセラ「首領も感じられたのですか?でしたら、戦闘を中止して逃げるべきでは」
富士「何処へ逃げる?見ろ、もうそこまで来ているぞ。敵の正体を知るまで私はここを動かん。アセラもそうしろ。私の跡を継ぐならな。」
何も知らない兄川とテスタはひたすら外洋へ突っ走る。逆に富士とアセラは留まる事にした。一方、ある程度は状況を知っている長門たちは空に護衛の艦戦を張り巡らせて、次の手はずの確認をしていた。レッド・デビルは既に島風にやられ捕虜として捕らえられていた。
島風「見てみて!リコリス棲姫を捕まえたよー!」
レッド・デビル「おのれー!殺さば殺せ!貴様らの監視の下で生きる気などさらさらないわ!」
長門「そいつを黙らせておけ。妙高!陸奥!ミサイルの発射時刻は!?」
陸奥「もう6分もないわ。付近の艦に連絡して、外洋か地上に避難しましょ。」
妙高「・・・しかし、あの男と深海海月姫は」
長門「今は、構っている暇はない。我々だけでも安全な場所に移るぞ。島風、聞こえているな。」
島風「おう!こっちはリコリス以外全員やっつけちゃった!後は、こいつと一緒に安全な所へ逃げるから。」
長門「なるべく急げよ!もしかしたら想像以上に広範囲な攻撃かもしれない!」
祥鳳「?・・・!、大変です!ミサイルが・・・予定より速く発射された模様です!」
長門「何だと!?」
妙高「そんな!?まだ、私達の避難が終わってないのに!?」
木曾「それならさっさと、陸地に逃げるぞ!島風、そのリコリス棲姫は置いていけ!」
島風「ええ~。せっかくの大捕り物だったのに~。」
レッド・デビル「艦娘と同行などこっちから願い下げだ!」
陸奥「遊んでないで、さっさといくわよ。この分だともうすぐ・・・」
妙高「あ・・・、あれ・・・!」
ついに全員の前に姿を現した、新型ミサイル:試作Ⅳ号。もう完全に無傷で生き残る事など不可能に近い。彼らの行動が吉と出るか凶と出るか、あるいは・・・。
次回、第1章最終回。
その後、誠に勝手ながら、しばらくの間、休載させて抱きます。読者の皆様には大変申し訳なく思っております。
今後とも、当作品をよろしくお願いいたします。