破壊と集結の兄川誠   作:松代眼鏡

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 今回から、自分なりにマジの外道のキャラが登場します。
 ですが、単なる外道として退場させませんのでご安心を。


第1章 無終と反転の兄川誠 その5

とある島で深海棲艦に見つかり、兄川と吹雪は手錠を嵌められ目隠しもされて頭も下げ続けたまま、何処へ向かっているかも分からないままに、彼らを捉えたル級艦隊の本拠地へ進んでいた。

 

 かなりの時間が経った気がする。目隠しと手錠を外され目に映ったのは、暗くて大きなホールのような所だった。ざっと1500人は入れそうだった。その奥の壇上には、以前教本に載っていた、深海海月姫と空母棲鬼のほか、多数の鬼姫級やflagshipの姿があった。さらに後ろを振り向けば、既に200体もの多種多様な深海棲艦が列を揃えている。その姿を艦娘に置き換えれば、大本営と変わらない風景があるようだった。

 

 やがて、空母棲鬼:アヴェンタが口を開く。

 

 アヴェンタ「顔を上げろ。」

 

 兄川は言われるままに顔を上げる。その顔がホールの光で照らされる時、ふとテスタが口をこぼす。

 

 テスタ「まあ、かっこいい顔!」

 

 その場にいた誰も彼も気が抜けてしまった。立場で言えば完全な敵の大将ともいうべき半分黒仮面の深海棲艦から素の調子で一番最初に言われたことが、何のことは無い顔のことでは調子が狂うのも仕方ない。

 

 兄川・吹雪「「・・・(はぁ?)」」

 アヴェンタ「テスタ!」

 テスタ「あ・・・、こほん!失礼。貴方の名前と種族、もしくは艦種は?」

 

 兄川「人間の男性の兄川誠です。日本海軍岩川鎮守府グループ指宿鎮守府にて一月前から提督業をしていました。」

 吹雪「わ、私は、特1型駆逐艦1番艦の艦娘、吹雪です。兄川司令官の配属になって1ヶ月の新米艦です。」

 

 テスタ「よろしい。では、早速本題に入りましょう。貴方達はなぜあの島にいたのですか。」

 兄川「自分が元いた鎮守府から逃げ出して、あてもなく海を進んでいたら偶然、例の島を見つけました。そこには、まだ人が使っている気配のあるログハウスがあったので、尋ねてみたのです。」

 アヴェンタ「何故、鎮守府から逃げ出す必要がある?提督という仕事が嫌になったのか?」

 サンダバード「もしそうだとしたらさ、そんな性格ドブスな男とは一緒にはいたくないものよ、ねぇ?」

 兄川「信じられないと思いますが、着任直後に、提督代理を名乗る見知らぬ艦娘に有無も言わさず拘束されたのです。外部から助けを求める事は出来ず、仕事として最低限の外出でさえ、彼女らの味方をする憲兵の監視があり、そのまま逃げようとしてもすぐに指名手配され、ありもしない罪を着せられて、社会の裏で殺されるのは確実だったでしょう。それほどまでに彼女達の態度や言葉が怖くて仕方が無かったのです。」

 シルフィ「兄川、と言ったか。だが、お前は既に鎮守府から脱走しているではないか。ならば既に手配されているだろう。今逃げ出した事と、過去の間に逃げ出す事の何が違うのだ?逃げたタイミングが今である必要はどこにある?」

 

 兄川「それは・・・、一つ目は、今までの理不尽と怒りに溢れていたタイミングならば、逃げた後でもう一度立ち向かう心の余裕がなかったと思っています。逃げて逃げて、逃げられなくなって無残に奴らに殺されたかもしれません。しかし、実際に脱走した昨夜は連中の正体を探ろうと心の準備を整えていました。あなたたちに匿って欲しいとは言いましたが、自分としては2,3日休んだ後は、方法は決めていませんが指宿に戻り、拷問に耐えてでも彼女らの事を聞き出し、いざと言う時は全面戦争に持ち込む覚悟もあります。」

 吹雪「え・・・!そんなのダメです。あんな得体の知れない人たちに正面から戦うなんて!」

 アヴェンタ「そこの艦娘は黙っていろ!」

 吹雪「・・・・・・はい・・・。」

 テスタ「兄川。一つ、と言ってたけど、第2の理由があるってこと?」

 兄川「はい。二つ目は自分と同じく鎮守府に着任したばかりの、こちらの吹雪です。実を言うと、今回の脱走を実行したキッカケを作ってくれたのは彼女なんです。吹雪の命がけの行為があったから、自分はここにいられるのです。」

 ルーチェ「ほう?」

 兄川「吹雪は、艦娘として生を受けて、まだ日が浅い。それなのに、艦娘として立派な心を持っているのに、理由も知らず、悪い連中の好きなようにされる事がどうしても許せなかった!もし、着任直後に逃げ出そうとしていたら、彼女の事に構っていられなかったでしょう。そして、しばらく経ってから吹雪を置いてきた事を思い出し、悔やみ続けた筈です。自分は過去の失敗を引きずってしまう性格ですから。」

 

 アヴェンタ「少し物足りないが中々面白い話だった。心の琴線にも触れたような気がした。だが、一つ気になる事がある。」

 兄川「・・・・・・」

 

 アヴェンタ「お前、誰かと戦っているのか?」

 吹雪「・・・え?」

 テスタ「アヴェ?それってどういう事?」

 アヴェンタ「それも目に見えやすい敵じゃなさそうだ。お前は、鎮守府を逃げ出す原因は自分を拘束した艦娘らしき女と言ってたが、その女達やそれに味方する憲兵には、大きな敵意を感じているようには見えない。それにお前はこうも言っていた。吹雪を悪い連中の好き勝手にされるのが許せない、と。」

 兄川「・・・はい。」

 アヴェンタ「お前の敵はどんなヤツなんだ?教えてくれれば、我々がお前に代わって、そいつらを殺してやっても構わないが。」

 

 アヴェンタから発せられた過激ながら素直な言葉の響き。正直に言うと、まだあの事は誰にも話したくは無い。何故なら、本当の自分は他人を心から信頼できないのと同時に、今の自分には忌々しい過去を無関係な人に話して巻き込む覚悟がないからだ。そんな事をして取り返しのつかない事になれば、もう全うに生きていく事が出来なくなるような気がする。

 

 兄川「・・・ごめんなさい。それについては話せません。今、心の覚悟も無く・・・口にすれば・・・自分が・・・自分を・・・・・・殺してしまう事になるから・・・。」

 

 兄川の精一杯の拒否であった。その口は非常に重く目から涙がポタポタと流れている。

 

 吹雪「司令官・・・。」

 テスタ「兄川・・・。」

 

 全員の間に沈黙が流れる。他の重鎮たちも、兄川をどうするかで迷っているようだ。

 

 

 

 が、ここで局面は大きく変わることになる!

 

 ヌ級:コンドル「テスタ様!、アヴェンタ様!申し上げます!トトカマ星に超サイヤ・・・じゃなかった!えーっと、その」

 アヴェンタ「コンドル。貴様の口癖はよーく分かってるつもりだがな、極めて場の空気を読まない発言は処罰の対象だぞ!」

 コンドル「申し訳ありません!ですが、本当に緊急事態なんです。9時方向で警備中の潜水艦からの連絡で、ガライヤ海賊団の大群が現われましたぁ!」

 

「「「ダニィ(何ぃ)!?」」」

 

 ガライヤ海賊団。その名を聞いた深海棲艦は皆一様に慌て始めた。

 

 テスタ「嘘!こんな時になんてこと・・・。」

 ルーチェ「あやつら・・・、また、我らが溜め込んだ金でも盗みに来たか!」

 サンダバード「あるいは、うちらのネットワークの掌握かもね・・・。」

 アヴェンタ「全員、直ちに迎撃体制を採れ!奴らを一人残らず生かして帰すな!我々から奪える物は何も無いと見せ付けてやれ!!」

 

 セレナ「皆様、脱出の準備が出来ております。」

 セリカ「いつもの訓練どおりにお願いします。」

 

テスタ「兄川と艦娘は、私達と共に避難して頂くわ。こっちについて来て。」

 兄川「それより、ガライヤ海賊団って何ですか?どうも、そちらの敵のようですが?」

 アヴェンタ「悠長に話してる場合ではない。今はその程度の認識で構わん!」

 

 アヴェンタに怒鳴られ、現状がよく分からないまま、テスタと共に基地の避難路を進んでいた。

 

 その頃、基地の外では、ガライヤ海賊団とテスタ艦隊の深海棲艦同士の激しい死闘があちこちで展開されていた。しかも、勢いはガライヤ海賊団の方が優勢だった!

 

 「今日こそ、テスタ艦隊を血祭りに挙げてやるぜ!」

 「人間共の文明に堕ちた奴らは深海棲艦じゃねえ!裏切り者だ!」

 「正直、人間みたいな同族殺しなんてしたくなかったがな!これも生き残るためだ!」

 

 ガライヤ海賊団とは、この一帯で暴れまわる最強の深海棲艦の一人、防空棲姫:ガライヤが各地の敗軍の残党や他の艦隊から追放された連中を集め、自分に逆らったり、狙った連中を例え同族であろうと容赦なく血祭りに上げる極悪非道な賊である。目印は、錆びた鉄のような色をしたヘルメットと棘付きの肩パッド。

 

 世界各地、何処にでも現れるため、遠洋は勿論、鎮守府近海の安全な海域にいた人々や艦娘も多数被害に遭っている。他の深海棲艦も奴らを見かけたらすぐさま逃げろと教えられる始末。

 

 テスタ艦隊が次々とやられていく様子を愉悦の境地で眺める、

 ヲ級:シェラ「ガライヤ様!外の連中はあらかた片付きました!これから、内部に突入します!」

 ガライヤ「あらかた?・・・てめぇ、俺が望むやり方を忘れちまったのか・・・、ん?」

 シェラ「いえ・・・、しかし、早く突入しなければ、テスタ達は」

 ガライヤ「ちょっと黙ってろ!!」

 シェラ「グハァ!!」

 

 シェラの言い分に腹が立ったガライヤは、シェラの後頭部を両手で掴み、そこに膝蹴りをかました。顔面をぐちゃぐちゃにされたシェラは、ただただ顔を抑えてのた打ち回るしかなかった。

 

 ガライヤ「いつも言ってるよな!?俺が認める結果は一つ、敵の全滅なんだよ!?中途半端に敵を残してんじゃねーぞ!あぁ!?」

 シェラ「も・・・申し訳ありません・・・!!」

 

 ガライヤ海賊団が今日まで結束力を維持した理由、それはボス:ガライヤの狂気ともいえる残忍さと独善性、過激さが与える絶対的恐怖だ。彼女に少しでも逆らったものは、絶対に逃がしはしない執念深さと死ぬまで続ける暴力が部下に逆らえないと思わせるのである。

 

 ガライヤ「今日は、このくらいで勘弁してやる。だが、二度目は無いぞ・・・。俺に対する忠告はな、俺への侮辱と思い知れ!」

 シェラ「は・・・、仰せのままに・・・。」

 

 

 一方の兄川たち。

 

 セリカ「もうすぐ出口です!海に出たら、南の方角へ!」

 

 もうすぐすれば、我々は安全な場所に出られる。そう思っていたが、

 

 ヒュルルル・・・・・・ドガドガー、ババッバッバ!

 

 最後の装甲空母姫サンダーバードが外に出た瞬間に、激しい爆発音が兄川たちを覆った。その巨大な水柱と基地の燃料パイプから舞い上がる火柱の奥から、獲物を狙う猛獣の目をした深海棲艦が迫ってくる。言われるまでも無くガライヤ海賊団だ。

 

 セレナ「あの肩パッドとマント・・・、この通路の事がばれてたというの!?」

 テスタ「お願い!貴方達は元からそういう性格ではないですよね?元の優しいみんなに戻ってください!」

 

 テスタ達の言葉に耳を貸したくないかの如く、テスタ艦隊の重鎮に躊躇無く砲弾をぶつける海賊団。

 

 アヴェンタ「潜れ!!」

 

 アヴェンタの掛け声でテスタ達は一斉に海底に身を隠した。だが、至近距離からの攻撃は避けるのも精一杯で、特に海に潜れない兄川と吹雪は格好の標的となってしまった!

 

 テスタ「(あれ?・・・兄川・・・?、兄川・・・!!)」

 

 訳も分からず必死のままに、海をジグザグに渡り、海賊団から逃れようとする兄川と吹雪。が、2人の航行速度は敵の雨あられの砲撃を避け切れるまでに至らず、確実に追いつめられていった。

 

 吹雪「いやぁ!・・・嫌だよぉ・・・!」

 兄川「(こんな所で死んでたまるか・・・、自分以外に頼れるものが何処にある?自分は死ぬわけには行かないんだ!神様よ!もしここで自分を死なす運命にしたら、あの世で神様とやらを殺す!)」

 

 生への凄まじい執着がとてつもない集中力を生み出し、死ぬ寸前のところで足を止めない兄川だが、吹雪のほうはすっかり絶望の前に怯えてしまっている。もう私は死ぬしかないんだ。そんな彼女の声が聞こえてきそうだった。

 

 兄川「まだ、終われな、ウガァぁぁぁぁ!!」ドーン!!

 吹雪「!!しれいかーん!!」ドドドドーン!!

 

 兄川と吹雪がいよいよやられた!その海底で身を潜めていたテスタの目の前で2人の重い体が沈んで行く。

 

 兄川「(冗談はやめてくれ・・・、自分は死ぬわけには行かないんだ・・・、あの時だって・・・、本当だったらただ死ぬしかなかったのに・・・・・・神様のおほしめしでここまで生きてこれたんだ・・・なのに、まだ何も成し遂げて無いのに・・・無様に死ぬ運命にしたいのか・・・。)」

 

 吹雪「(司令官・・・、次に生まれ変わった時は・・・もっと、全うな艦娘として、生きたいな・・・・・・。)」

 

 テスタ「兄川・・・!」

 セレナ「テスタ様!危険です!もう、あの男を助ける事はできません!」

 テスタ「でも・・・」

 セリカ「残念ながら、ここで死ぬことが彼らの運命だったんです。どうか諦めてください!テスタ様!」

 

 兄川に執着するテスタの心を静めようとするタ級姉妹。その目の前を相変わらずに沈み続けている2人の体。

 

 だが、よく見ると何かがおかしい。

 

 セレナ「あの艦娘の魂、まだ抜けていない。」

 

 なんと、吹雪の体と艤装はまだ生きている。すぐに救助すればまだ助かるかもしれない。

 

 セリカ「いや、それよりセレナ。あの男の体が・・・。」

 

 

 

 海上では海賊団が爆雷を次々と投下しながら、標的の死体が浮くのを待っていた。そこにあのガライヤも現われた。

 そこに兄川の死体がプカプカと浮かんできた。

 

 駆逐水鬼:クオン「!・・・ガライヤ様、人間の死体です。それも海軍の。」

 ガライヤ「みりゃ分かる!・・・大方、テスタがひっ捕らえた捕虜だろ。」

 水母棲姫:はくたか「しかし、人間の若い男にしては白髪が目立ちますね・・・。むしろ、そういう風に髪を染めているのでしょうか。」

 ガライヤ「別にいいさ。髪の毛なんて喰えねぇし。せっかくだから、ここで食っちまおう。俺、今、猛烈に腹が減ってるしさ。」

 

 そう言って、肉付きのよさそうな太股に牙をかけた瞬間

 

 兄川「オゥワァァ!!」

 ガライヤ「!!?」

 

 兄川の脚がガライヤの顔を吹っ飛ばすかのように回った!いや、回したというべきか?そして、同時に聞こえたあの周りの空気を振るわせる雄たけび。

 

 ガライヤ「・・・んだよ・・・。こいつまだ生きて」

 

 兄川「フンッ!!」

 

 ガライヤの顔にめり込む兄川のパンチ!ガライヤは吹っ飛んだ。そこにいたのは死体ではなかった!上半身は、防弾スーツ、海軍制服ともに完全に吹き飛び、髪を白く、目を黄色に光らせる兄川誠だった。




 はい。ヌ級:コンドルの台詞は、某伝説の超サイヤ人が初登場するDB映画の有名な台詞です。DBはよく知らないのに、ブロリーMADはよく見ている作者でございます。

 あらかじめ言っておくと、今回の兄川の変化の元ネタはDBではないです。

 それにしても、この映画の公開年は1993年なんですね。自分が好きな作品は、何かと1993年公開、連載開始の作品が多いような気がします。

次回と次々回は連日投稿になります。その後は通常の2日間隔での投降の後、その11~14までを連日投稿とします。ご期待ください!
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