破壊と集結の兄川誠   作:松代眼鏡

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 兄川VSガライヤ海賊団

 初の戦闘描写、特に格闘戦は意外と事細かに書く必要があるので難しい。


第1章 無終と反転の兄川誠 その6

「うそでしょ・・・」

 「・・・・・・くぅぅ・・・!」

 「・・・ぎぃ・・・・・・ぎぃ・・・!」

 クオン「高レベルの艦娘ならともかく・・・あの爆雷の雨あられを・・・。」

 ガライヤ「・・・てめぇ・・・結構、強いじゃん・・・。」

 

 ガライヤの頬を伝っていく汗の気持ち悪さと共に、今までに感じられなかった光のようなものが体を駆け巡る。今のガライヤを表現するならこんなところか。

 

 兄川「・・・・・・」

 

 兄川が歩く。水の上を一歩ずつ足を交互に上げて、歩く。重く、重く。海底に足音を響かせるかのように。

 

 その目の前にいるのは、敵のボス:ガライヤ。彼女を死なせまいと赤と青の糸を手に取りピンと張らせて睨みつけるクオンと、その手下が3体ほど前に立ちふさがるが、

 

 ガライヤ「俺の楽しみを横取りスンナ!!」

 クオン・手下「「「!!?」」」」

 ガライヤの砲撃が、ガライヤを守る筈だったクオン達を爆発にさらす。クオンは中破しながら辛うじて逃げられたが、3体の手下は赤い炎を上げて沈んでいく。

 

 「「「ああぁぁぁあぁあぁぁ!!!」」」

 

 ガライヤは外道で独りよがりで独善的だ。その底知れぬ我が侭な精神が、彼女に忠誠を誓った手下を一瞬で無にした。それを間近に見てしまった兄川。怒りで光る目が、ガライヤの瞳と過去のフラッシュバックの中に現われた銃口を重ねた。

 

 兄川「ヴォアァァァ!ヴァウァァアァァ!」

 

 目に留められない瞬発力で、ガライヤの顔面に掴みかかり、瞬速の言葉にふさわしい勢いで、腕にためた腕力を一気に水面に叩きつける!人型の防空棲姫の頭が一瞬機能する事を止めてしまうほどに。

 

 ガライヤ「・・・ケッ・・・ケッ・・・!」

 兄川「ヴウウ!!」

 ガライヤ「・・・痛いんだよ・・・・・・、やりやがったな!」

 

 ガライヤも負けないと、自由な右脚で兄川の股と尻を蹴っ飛ばす!前のめりになっていた兄川は頭から水面に叩きつけられる。それでもダウンからの立ち上がりは速かった。すぐに、脚部艤装を全開にして正面から左腕を伸ばしてラリアットを仕掛ける。

 

 ガライヤ「甘いんだよ!」

 

 お見通しだったガライヤの両手が兄川の左腕と首を掴む。ギチギチと死の迫る音を鳴らしながらガライヤの目の瞳孔が開ききる。

 が、兄川は白目を剥いてやられてはくれない。それどころか今度は兄川が右手でガライヤが首を絞めている左手を解くと同時に自分の胸に吸い込ませ、彼の左腕を止めているガライヤの右手の力を一気に抜く。

 

 ガライヤ「!?」

 兄川「ヴゥ!!」

 

 点と点を一瞬でつなぐ線のように、限界まで速さを高めた体裁きでガライヤの背後につく。そして、ガライヤの首を右腕だけで一気に締め上げる!

 

 ガライヤ「ガアア!お、お前ら・・・!な、に、して・・・やがる・・・。」

 

 改めて命の危険を感じたガライヤは部下に助けを請うが、だれも助けようとしない。いや、出来なかった。自分達にとてつもない恐怖を植え付けた張本人をさらに上回る力で新たな恐怖を植えつけた、正体が分かるようで分からない何かに、近づく気力さえ持てなかったのだ。別にガライヤ海賊団の面々が胃の中の蛙だと言いたい訳ではない。ただ今までの経験に当てはまらない恐怖が想像以上だったのだ。

 

 ガライヤ「おれ・・・を・・・助けろ・・・!!」

 

 そのままガライヤの命が尽きようとしていた所に!兄川の背中が3度爆発した!

 

 兄川「グハァァ!」

 

 後方へステップの要領で兄川から解放されたガライヤ。彼女は一瞬で理解した。兄川は自分の味方の援護射撃で崩れたのだと。一歩間違えれば、ガライヤごと倒してしまいそうな緊迫した状況の中で完璧な仕事をこなせそうな奴といえば、あいつらしかいない。

 

 ガライヤ「おそいぜ、GTR・・・。何、ボサッとしてんだ、撃てないなら上から押さえつけるんだよ!」

 

 すぐさま立ちすくんでいたガライヤの手下達が四方から彼を体重で押さえつける。水上艦は横と上から、潜水艦は海面の下から、兄川を圧力で殺そうとする。

 

 兄川「ギィィッィ・・・・!!」

 

 

 兄川の一瞬途切れた意識の中に、クルマの後部座席で自分を押さえつけるヤクザの姿があった。クルマはすでにガスタンクに突っ込んで辺り一面は火の海。フレームもエンジンもつぶれてボディ全体が火達磨になっている。その時の自分は何をする?・・・いや、どうやって逃げ出した?

 

 

 兄川「ウゥゥ!!・・・オォゥワァァァ!!」

 

 そうだ。火に包まれて到底触れはしないドアを力任せに掴んで外に飛ばした!

 それと同じ様に、自分の手の届く所にあった誰かの熱い銃身を掴んで弾いた!

 

 銃身を掴まれたチ級は上に乗っかっていた多数の深海棲艦ごとバランスを崩し、海に叩き込まれる。その瞬間をついて、兄川の艤装のスクリューがフル回転して近くを押さえていた深海棲艦に深手を負わせた。そのままラッセル車のように深海棲艦を跳ね飛ばし、自分を撃った相手の前に立ちふさがる。

 

 敵の主格は仮面をつけた3人、そいつらに追従するように他の手下が銃口を向け、艦攻、艦爆を飛ばしている。

 

 銀の仮面の南方棲鬼:R「ガライヤ様と一人だけで互角の戦いを見せるとは大したものだ。」

 赤の仮面の南方棲姫:T「だが、それは徒手空拳だけの話。」

 黒の仮面の南方棲戦姫:G「我ら、本物の艦隊との砲雷撃対空戦ならどうなるか、見せてみろ!・・・ッテー!」

 

 3人の内の一人が合図を出したと同時に、全ての砲、魚雷、爆雷、が一斉に火を噴いた!爆発が爆発を呼び、兄川を灰になるまで燃やさんとする火柱は30秒も続いた。

 

 兄川は心の底まで発火しそうな激しい熱気の中で、炎と煙の向こうに見える人影を睨んでいた。

 

 あの時と何もかも一緒だ。だが獣のように叫ぶしか声を思い出せなくても、忘れてはいけない。彼女らは身勝手な邪悪にまみれた悪人じゃない。己の知る卑劣漢の群れやガライヤとか名乗る防空棲姫とは違う。種族としてのアイデンティティと生きるために立ち向かわざるを得ない女たち。そうではなかったとしても、今は憎しみを向ける相手では無い。間違えてはいけない。

 

 兄川のギラつく目の光が少しだけ弱くなった。が、戦意を失った訳ではない。

 

 突如、迫ってくる魚雷の航跡。ハンドスプリングで炎の壁を突破した!魚雷の更なる爆発で予期せぬ方向へ吹っ飛ばされそうになるが、足を大きく開いてこれに対処した。

 

 R「艦爆隊。投下!続けて艦攻隊、アタック!」

 

 Rの指示で無数の艦載機が虫の大群のように襲い掛かる。たまに隙が出来たかと思えば、今度は戦艦や重巡の砲撃が迫る。迫ってくる相手本人が直接やってくるなら、そいつの腕でも足でも引っ掛けてバランスを崩せば勝機はあるが、遠くから飛び道具で一方的に嬲られる事で、これほどまでにイライラさせられるのだから、たまった物ではない。

 

 兄川「・・・・・・!」

 

 砲撃が止んだ所に巨大な艦戦が口を大きく開けて突っ込んでくる。

 

 兄川「!!」

 

 勝機が来た。

 

 兄川「ハァッ!!」

 

 次の瞬間に、南方三姉妹は驚愕する。

 

 何と言う事だ!男が艦戦の口に手を突っ込んで、そのまま空を飛んでいるではないか!

 

 G「何だ、あいつ!?我らの艦載機を使って宙に浮いてるだと!?」

 

 兄川を必死になって振り落とそうとする艦戦だが、艦戦の力では兄川のコントロールを超える事はできず、そのまま三姉妹の方向へ突撃する!

 

 R「まずい!こっちに来る!」

 T「あの艦戦もろとも撃ち落せ!」

 

 全ての対空砲が兄川を捕らえ、それぞれが交互に火を噴いて弾幕を作る。それを知ってか知らずか、兄川はとっさに手を離して落下する。急に重りが外れた先ほどの艦戦はバランスを崩し、運悪く浮上中の潜水艦カ級の一体に激突してしまう。

 

 そして兄川の姿勢が、両足を獲物目掛けて伸ばされ、両腕も飛行機のようにピンと伸ばす。そのまま速度を乗せて急降下!その矛先は・・・

 

 R・T「お姉さま!直上!」

 G「とび蹴りか!、そうはさせんぞ!」

 

 本当なら真横にすっと抜けるのが正解かもしれない。が、Gは敢えて正面からの防御に徹した。自分の航行速度と瞬発力より、山のように動かないと定評のある盾のような防御力の方が信用できたからだ。

 

 Gは両腕をクロスさせ、足と艤装に力を入れる。

 

 兄川「ゥオリャァー!」

 G「来い!化物!」

 

 まず、一発目!兄川のキックはGによって阻止された。跳ね返された身体は、少しGの身体の上で一度バウンドしてから、姿勢を整えて海に着水する。そこをTとRが一斉砲撃を仕掛ける咄嗟の作戦だった。

 

 G「恐れるにたら・・・何!?」

 

 Gの防御姿勢が崩れた!確かに兄川のキックはGの腕でバウンドしたが、その時の反発力が想像の何倍も強かった。もし姿勢にミスがあったら、自分は敵の足で抉られたかもしれない。

 

 更に驚く事に、兄川は再び身体を丸めながら宙に返った!そして2度目のキック体制、一瞬のあまりに本能としての防御も間に合わず、兄川の足に溜まった破壊力は、Gの仮面を超えてダイレクトにGの脳を激しく揺さぶる。そして、そのまま気絶した。

 

 この世の物とは思えぬ力を見せ付けられ、もはや訳が分からなくなっているTとRに兄川が瞬間移動の如くに迫る!

 

 T・R「嘘・・・だろ・・・。」

 兄川「・・・・・・ヴヴァアアァア!!」

 




 戦闘はもう少しだけ続きます。
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