空駆けるミシラ飛行隊 荒野のコトブキ飛行隊 作:紅の1233
ガタガタ...
不規則に大きく揺れる機体、何とかして機を安定させようと目の前の操縦桿を必死に握る。
「...チッ...!」
目線をずらすと高度計はどんどん低い値へ回っていく、燃料計も既に底を指してるしエンジン回転数を示す計器も同じだ。
機先には近付いてくる地面が見える。
「仕方ない、脱出!」
私は眼をつむり脱出レバーを思い切り引く、座席下のロケットが作動し風防を破って座席が外へ出る。
パラシュートが展開し体に重いGがのし掛かってくる。
開いた眼の先には乗っていた機が黒煙を吹きながら落ちていき、地面とぶつかり爆発した。
「ハァハァ...」
(まだ死んだわけじゃない、落ち着いて)
そう自分に言い聞かせまたゆっくりと眼を閉じて開いた。
「...!」
私は絶句した。
思ったりよりも地面が近くに見えた。
落下速度が思ったよりも落ちていないかったようだ。
私の頭は死の予感で一杯になった。
派手な破壊音と一緒に座席下部分が地面に着地した。そのまま座席が倒され空を見る形になる。
目の前には白糸のパラシュートと、パラシュート繋がった糸、その間に見える青い空が一瞬だが私には長く感じた。
そう思った矢先、私の意識は闇に包まれた。
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シズマツ
ラハマから南西に、飛行機で数時間かかる所にラハマより一回り小さい都市が存在する。
その名はシズマツ。
断層が町の真下を通りそこから大量の湧き水が湧いている。
富んだ水資源を生かし農作業が豊かになり、他の町への農作物の売買で成り立っている町だ。
東西南北に十字型に伸びた大通りを中心に建物が建ち並ぶ、北向きの大通りの先には飛行場と工業地区、南向きに貯水タンクと掘削施設、東向には大農場地区、西向きには住宅街が密集している。
西向きの大通りの一角、左に『パン屋シオノ』、右に『スズネ運送協会』に挟まれた小さなレンガ造りの建物。すると
バンッ!
ドアが乱暴に開かれ中から四人の女の子達が飛び出してきた。
「はやくはやく!」
「急いで急いで!」
オレンジ色のサイドテールにした髪の向きしか外観の違いがない双子が先に飛び出してきた。その後ろから
「おいおい姉貴を置いていく訳には行かないだろ!」
「二人とも待ってー」
灰色の髪を方で切り揃えた長身の女性が後に続いた。
そして彼女は杖を握りしめた緋色した長髪の少女をお姫様抱っこしていた。
そこへガタガタと音をたてて六輪のトラックが並走してきた。
直立6気筒水冷式ガソリンエンジンで後部の四輪を駆動し、後部には荷台を設け荷物や人員輸送に重宝している乗用車だ。
今は後部荷台の天井を幌で覆っていた。
「よう“ミシラ飛行隊”の嬢ちゃん達!そんな急いでどこ行くんだ?」
運転席から立派なアゴヒゲを生やした人が声をかけてきた。
『ジロウのおっちゃん!!』
双子が声を揃えると
「ジロウのおじさまも“現場”に?」
お姫様抱っこされた少女がそういうとジロウはにっこりして
「そうだよ、乗ってくかい?」
「いいのかジロウ!」
灰色の髪の女性が嬉しい声をあげる。
「二人とも何してるの?」
「早く乗って!」
後部の荷台を見ると既にあの双子が乗っていた。
「おい量産型!先に乗ってんじゃねぇ!」
「ちょっと顔に唾飛んだ」
「あっ、悪い姉貴」
彼女は今自身がお姫様抱っこしているのを忘れてつい声音を大きくしてしまった。
「姉貴は助手席に乗せればいいのか?」
「うん、そうしてもらうね」
トラックは四人の飛行隊員を乗せて走り始めた。
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シズマツ大農業地区端
大農業地区から少し離れた場所にシズマツ自警団が現場検証をしていた。
そこには燃えて墜落した衝撃でぐちゃぐちゃになった航空機の残骸が散らばっていた。
そこへトラックが到着し彼女達が降りてきた。
先に降りた双子が現場へ駆け寄ろうとすると
「おうなんだ、お嬢ちゃん達の出る幕じゃないぞ」
大きな体格をしたシズマツ自警団の一人がそう言いながら双子を制止した。
「お嬢ちゃん?こっちはミシラ飛行隊だよ」
双子の一人、サイドテールを右側に出した方が自警団員に反論する。
「ミシラだかなんだか知らないが所詮トーシローの集まり」
「撃墜数も私達より下、密かに税金の無駄とか言われ続けようやく出撃の機会が来たと思ったら出撃に手こずった。」
「それで手柄を独占しようとして今に至るって訳だね。」
自警団員の言葉を遮るように双子の会話が出る。
「練習も模擬戦もろくにやらない」
「保有機数は多くても半分以上が整備してない」
「団員の殆どは柄の悪い連中ばかり」
「町では威張り散らしてはしたない」
「よくそれで自警団やってられるね」
『ねー♪』
双子の会話に自警団員は顔を真っ赤にし始めた。
「こんのガキがー!!」
頭から蒸気が出るって位に怒ると
『キャー♪』
双子はキャッキャッ騒ぎながら逃げていった。
その様子に緋色の髪をして杖を支えに立っている少女はため息をついて、シズマツ自警団団長に向かって頭を下げた。
「作業に支障を出す行為をしてすいません。あの隊員には私がきつく言い聞かせますのでどうか御無礼を御許し下さい。」
そう謝ると自警団団長は苦笑いしていた。
「確かにあの双子の言ってるは正しいよ」
「しかし...」
緋色の髪の少女が何か言おうとしたところを後ろから肩に手を添えられた。
振り向くとあの灰色の髪をした長身の女性がいた。
「でも何もしないで税金泥棒だと言われてる事は平和だって事なんだろ、姉貴?」
「そうね...」
「でもよぉ...」
そう言って彼女は自警団団長を向く
「流石に三式戦闘機飛燕を常備するのはどうかと思うぜ」
そう、シズマツ自警団が使用している戦闘機は三式戦闘機飛燕と零戦二一型が主力だった。
その言葉に自警団団長は少し顔を曇らせた
「整備費だってバカにならないし過剰過ぎるんじゃないか?」
「そうは言っても上が決めたことだし...それに過剰であっても抑止力になるし...」
「となり町のラハマは九七式戦闘機じゃないか。それに団長、アンタが乗ってるのは三式戦闘機の飛燕だろ?あれ整備性悪いって聞いたぞ」
「そ、そうだけど...」
杖を持ったミシラ飛行隊団長は二人のやり取りから双子へ目を移す。
『鬼さんこちら♪鬼さんこちら♪』
「ウガー!!」
あの双子は団員をまだからかっていた。からかわれた団員もしつこく追いかけている。
その様子にため息を吐いてしまった。
すると、双子が残骸の方へ近付いていくのが見える。
「二人ともー残骸の方へ行っちゃダメー!!」
二人に叫んでもまるで聞こえていない感じだった。
双子は残骸の一つであろう、白い布で覆われた所に入ろうとした。
「次はかくれんぼだー!」
「いぇーい!」
二人は布をバッ、と勢いを付けてめくる。
『わっなんだ!?』
布が退けられると双子の前に物体が現れた。
黒色の椅子のような機械のような物体だった。
『あっ人だ!』
双子が叫んだその先、その物体の真ん中辺りに人がいた。黒色のヘルメットに地味な色の服装のため、一瞬物体の一部のように見えてしまったのだ。
「おいどうした、ってなんだぁ?!」
双子の声を聞きつけ駆けつけた灰色の髪をした女性も、双子と同じように謎の物体の人を驚いた。
「生きてる?」
「死んでる?」
「いや生きてる、」
灰色の髪をした女性は頸動脈に軽く手を当てる。鼓動を感じるし、ヘルメット?と思われる物についた透明なバイザーには周期的な曇りが生まれた。
「とりあえず病院へ連れていくぞ!量産型、これ外すのを手伝え」
『了解!』
三人はハーネスやヘルメット等を外しその人を機械から剥がす。
「うん?こいつ女だったのか...ジロウのおっちゃん!!」
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薄れ行く意識の中断片的に何かが聞こえてきた。
「はや...こい......びょういん.........」
「おう任し...」
その後ガタガタと左右に揺られ、更にエンジン音が響いてくる。
私は目を開けて回りを見ようとしたがそれよりも睡魔に襲われ、それは叶わなかった。
私が目を覚ますと病院のベットの上に居た。
目の前には私が着ていた、緑色のフライトスーツがハンガーに掛けられていた。横のテーブルの上には水の入ったボトルと小さなコップ、小さな白い花が入った花瓶が置かれていた。
私は窓の外を見た。そして驚愕した。
空を飛んでいたのは零式艦上戦闘機だった。