空駆けるミシラ飛行隊 荒野のコトブキ飛行隊   作:紅の1233

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昨日に向かって撃て

シズマツ飛行場横

ハナマル飛行機工場

 

全長2キロ以上ありそうな真っ直ぐな滑走路の端。

そこにハナマル飛行機の工場がある。

現在ミシラ飛行隊全機の点検を行っている。

工場前の駐機スペースには発送を待つ三式戦闘機飛燕とシズマツ自警団の零戦二一型、アオイの零戦五二型とオルカの流星もいる。

「あーあー、カッコ悪い。」

オルカは自分の流星の惨状に愚痴をこぼす。

「それにしてもよくここまで直したわね」

アオイも補修した箇所を見上げ、呟く。

以前、流星の後部座席付近はP-40の12.7ミリ機関銃によってグチャグチャにされた。

そして、補修されて出てきた流星の後部座席周辺の外板は銀色無地のままで、おまけに風防もまだガラスが入っていない状態だった。

「いやぁなんとか形にはなったよぉー」

ローズが顔についたオイルを手拭いで拭きながら、工場から出てきた。

「後は塗装して終わりか?」

「うにゃ、実はぁ内装とかも全部剥がしてやったからぁ操縦索も設定し直さないといけなくなっちゃってねぇ。」

「じゃあもう少しかかるのか?」

アオイはオルカの流星から目を移し、空を見上げる。

結局私達を襲撃してきたP-40については不明のままだった。

あれ以降イケスカの自警団からは何も説明がないし、ハナマル飛行機の同業者にP-40を整備したメーカーはないか調べたが手掛かりなしだった。

「あのP-40はなんだったのかしら...」

おそらく穴から入ってきた物だろう。

それより唯一の帰る手、穴についてだが全く情報が掴めてない。

70年ほど前に穴が閉じた事とそれ以降にも局地的に開いているのは確かだ。

だが、そんなオカルトみたいな物を信じられるのか?

自衛隊内でそんな事を言ったら乗務を外されて病院送りにされる。

しかもだ、私が知る限り第二次世界大戦前後に穴が空に開いたなんて記録は見たことがない。

「夢なら覚めてほしいわ...」

「なぁに上の空みたいな顔してぶつくさ喋ってんだ?」

「わっ!」

オルカがアオイの顔を覗きこんできた。

「どうした?イケスカから帰ってきてかれぼっーとすることが多くなってるぞ。」

アオイはのけ反りつつ

「なでもないわ!」

「なでもないわ?」

“ん”を忘れてしまった。

「それよりも、ただあの戦闘機が気になってね。」

「あぁあれか、化け物みたいな派手な口のマークを付けた奴。」

「そうそれ、私が一番気になってるの、あのP-40って飛行機が」

「ぴーよんじゅう?変な名前だな」

「いや、ぴーってのはpursuit aircraft、つまり追撃機って意味。40は型番みたいなもの。」

「パァ、エア?なんだそれ?」

「つまりアメリカの機体って意味よ。」

「アメリカ?」

「オルカ、あまり本とか読んで知識付けた方がいいわよ。」

「そう言ってもよお、俺はあんまり文字読むの苦手でさ。アオイは図書館で知ったのか?」

「いや、ここの図書館の本には載ってなかったわ。見たのは基地の資料室で...」

「基地?アオイ、お前記憶が戻ったのか?!」

「記憶、あっ。」

「あっ、てなんだよ。」

「ねぇねぇアオイアオイ」

アオイの視界の端に、オレンジ色の尻尾が見えた。

アオイの袖を誰か引っ張っている。

右にサイドテールをしているかリエだ。

「こっち来て、こっち!」

「ちょっと、リエ!」

アオイはリエに引っ張られていく。

「オルカー、流星の飛行準備できたよー。」

「あぁ」

オルカは疑ってそうな顔をした。

「アオイの奴、絶対何か隠してるな。いつか吐かせるか...」

━━━━━━━━━━━━━━━━━

リエが連れて来た所は、飛行場横の射撃場だ。

「実はね、コレクションの一部を撃ってみたいなーって思って試してみたらね、ジャムってたからね分解してみたら元に戻せなくなったの♪」

リエが指差す先でエリが机の前で唸っている。

「こっちこっち」

リエに手を引かれ、机の上を見ると、モーゼルC96がバラバラに分解された状態で置かれていた。

マウザー製の機関拳銃だ。

モーゼル、もといマウザーの作る銃は軒並み性能が良い、いい例が三式戦闘機飛燕に載っていたマウザー砲ことMG151/20だ、マウザー砲は当時ユーハングが保有していた航空機関砲の性能を凌駕し、防備の硬いアメリカ軍機に大穴を空けた記録もある。

だが、性能は良いがパーツ数が多いし整備が難しい。かのアメリカでさえ完全なコピー品を作ることができなかった。

さて話は戻って、C96も同様にパーツが多く、分解すると慣れた人でなくては組み立てられない拳銃だ。

そんなC96を前に口をへの字に曲げて腕組みをしているリエの様子は、とても可愛らしく見えた。

「どう直せそうエリ?」

「全然ダメだよリエ」

エリは首を横に降るだけだった。

以前エリ・リエの部屋を覗いた事があったが、女の子らしくない部屋だった。

壁には各種銃や古そうな時計に絵、机の上には何やら大量に印がつけられたイジツの地図と古びた手帳、本棚には大きさがバラバラの本が雑に並べられている。

雰囲気だけ言うなら冒険家な部屋だった。

唯一女の子らしい要素と言えば、ベットに置かれた二つのテディベアぐらいだ。

エリとリエはいったい何者?

なんてアオイが思っていたら、試射場の机の上に何か置かれているのが見えた。

エリとリエを残してその机の上を見る。

乗っていたのはライフル銃だ。

木目調の銃床が美しく、先には鞘に入った銃剣がついている。このライフル銃は、おそらく三八式歩兵銃だ。

推測なのは三八式によく似た銃は多く存在するからだ。

アオイはその銃を持ってみる。

第一印象は長くて重いだ。

三八式の重量は3.95キロある。今自衛隊で使われている89式小銃より400グラム程重い。

以前基地一般公開時に持たせてもらった事があるからよくわかる。

更に三八式の銃先には銃剣がついている。

三八式に付いてる一般的な三十年式銃剣は、長さが五十ニセンチある。ちょっとした包丁より長いし、手に持てば短剣として普通に使る。

それを全長一ニ八センチの三八式に装着すると、全長百八十センチにもなる。

試しにアオイの横に立たせてみたら、身長より長い。

ゴボウ銃なんて呼ばれていたそうだが、ぴったりな名前だ。

前床を左手、尾床を右手に持って前に構えてみると普通に長刀坂として使えそうだと、アオイは思った。

三八式が置いてあった机の上に弾薬箱が置いてある。

上には“三八、6.5mm”と書いてある。

やはり三八式だった。

開けてみるとクリップでまとめられた6.5ミリ弾が入っている。

三八式のボルトハンドルを引いて開い、開かない。

「あれ?」

何度引いても動かない、安全装置が働いているからだ。

ただ、三八式にはそのようなレバーが見えない。

不思議に思っていると銃身の後ろにあたるとこのダイヤルに気付いた。

「そういえば昔おじいちゃんがグアムで撃つ時に、ここを手で捻ってたような...」

試しにアオイも右の手の平でそのダイヤルを捻った、動いた。

「ビンゴ!」

これが安全装置だ。

ようやく開いて、クリップでまとめられた五発の弾薬を入れる。しっかり入れた所でボルトハンドルを引っ張って装填する。

よく映画とかで装填する際に、派手にガチャガチャ音が鳴ってる描写があるが、実際によく整備されたボルトアクション銃だと、シュコンと擦れるような音と金具が当たった小さな音がするだけだ。

ちゃんと落ちたクリップは拾って机に置く。数十メートル先の的を狙う。そして、引き金を引く。

ドン

カンッ!

金属の的に当たった音がした。

反動も小さいし発砲煙も少ない。

五発撃って机に置いてある手持ちスコープで的を見る。

距離は20メートル位だろうか。

でも、弾跡は思ったよりもバラけていない。

狙撃銃として見るなら三八式歩兵銃は優秀だ。

隣を見るとこれまた珍しい、十一年式軽機関銃が置いてあった。

三八式の弾薬をクリップが付いたまま使用できる、中々面白い機関銃だ。

いわゆるホッパー式機関銃という奴だ。

ホッパー式は余裕さえあれば幾らでも銃弾を装填出来るのが、長所だ。

上から抑えてる蓋をあげて、クリップで付いた弾を入れていけばいい。

他の機関銃みたいにいちいち弾切れするまで撃って、マガジンを交換するなんて必要がなかった。

十一年式はよく、なぜ箱型弾倉を使わなかったんだ?みたいな批判をされるが、当時他国で開発された軽機関銃を見てみると皆、弾倉の方式がバラバラだった。おまけに欠陥持ちばかり、高価、故障はする、重量は重い、そんなのばっかりだった。

ようやく形になったのは十一年式の制式化からの八年後に登場した、チェコ・スコバキアが作ったZB26/30だ。

ZB26は本当に優秀な軽機関銃だった。第二次大戦時のイギリスやオーストラリアも使用し、満州事変時の中国でも大量にコピー生産された、もちろんユーハングも鹵獲し使用していた。当時の写真を見ていると結構写っている。

十一年式よりも故障が少なく、丈夫で銃身の交換もしやすかったと、記録に残っている。

ただ命中精度はよくなかったとか。

ちなみにZB26の日本的な解釈が九六式機関銃だ。だが内部機構は日本オリジナル、単純なコピーだとは断言できない。側が似ているだけだ。

さて話を戻して、十一年式だ。

十一年式の照準器は右側に付いている。おまけに銃身が横に左に曲がっている。

海外ではもっとも醜い機関銃、なんて言われたりもするがいざ使ってみるとこんな形状にした理由がわかった。

いざ構えてみると、普通の銃を構えるよりも脇を閉めることになる。

弾倉に弾を入れた時の重量を考えるとバランスがとりやすい。

いざ撃ってみようと思ったら、

「油ツボに油がない...」

十一年式はまれに薬莢が機関部に張り付くことがあったので、上部のツボから油を弾丸に塗り付けて、張り付くのを防いだ。

その油がないのだ。

「…ちょっとがっかり。」

少し残念な気持ちもあったが、仕方ないとアオイは自分を言い聞かせた。

何せ戦後、完全に調整された十一年式で30発の連続射撃ができたのは2回に1回だそうだ。

逆に扱いになれていないアオイが下手に弄って、壊したりでもしたら大変だ。

「いい判断ね」

目線を十一年式から移すと見慣れた緑色の髪、ミュラだ。

「あっミュラさん。」

ミュラの手には黒いアタッシュケースが握られていた。

「ミュラさんも射撃に?」

「そうよ、頼まれた依頼品。」

ミュラさんはアタッシュケースを机に置き、中の物を取り出す。

置かれた物は三八式同様、木製の銃身のライフル銃。

だが、銃身、銃尾、ボルトハンドルの三つに分解されていた。

アオイが見たことない銃だ。

「これは...」

「二式小銃よ。」

二式小銃、九九式小銃を原型に前後に分割することを可能にした小銃だ。

主に空挺部隊に導入された小銃だ。降下の際にそれぞれを足に縛り付けておき、地上で組み立てて射撃する。

ミュラさんは慣れた手つきで二式を組み立てる。

二式の組み立て後の大きさは大体1.1メートル、銃剣を付けても1.5メートル程だ。

アオイがまじまじと二式に気付いたミュラが

「撃ってみる?」

と訪ねてきた。

「では、遠慮なく」

アオイは二式を持って構えてみる。

二式の重量は三八式とそれほど変わらなかった。

「弾丸はこれを使って」

ミュラが置いた木箱には『7.7』と書いてある。

アオイは五発弾丸を取り、二式に装填する。装填の仕方は三八式と変わらない。

再度構え、銃身を握る手に力が入る。

ガタ付きが生じていない。

こういう分解できる銃はガタ付きが生じるが、二式のジョイント部分は頑丈に作られていたためガタ付かない。そのまま白浜戦に使っても問題ない程の頑丈さを持っていたのだ。

発砲

少し三八式よりも衝撃が強く、音も大きかった。

だが、この衝撃も慣れそうだった。

元になった九九式小銃も大きな発砲音をしたため、敵味方がよーくわかったという。

これは三八式機関銃の使う三八式実包よりも二式の使う九九式普通実包の方が、口径が大きいし火薬量も多いからだ。

何で三八式はこんな威力の低い弾丸を使ったんだと言われるが、理由は簡単だ。

当時の倫理観だ。

殺すのは残酷だから負傷させるだけでいいという変な、本当に変な倫理観があった。

後に日露戦争で使った際に敵に当たって撤退したと思ったら、手当てして戦線に戻って来るという光景があったとか。

骨に当たれば貫通力を生かして粉砕できるが、これが肉になるとあんまり効果がなかった。

それで途中から弾薬を交換したって訳。しかも交換が始まったのは第二次大戦始まるちょっと前。

すぐに変えようとする所は評価するがタイミングが悪すぎる。

「中途半端なタイミングで配備を開始するから、部隊では変な混乱が起きる。」

と二式小銃の反動に苦しめながら、ぶつくさ言う。

更に二式小銃は頑丈な上、性能も九九式小銃と変わらない優秀な銃だったのに、実戦で使ったのは一回切り。

アオイがユーハングのやり方に文句を言っているが結局のところ

「ただの後出しジャンケン!」

後になって言えることばかりだ。

なんかイライラしてきて、二式小銃をちょっと雑に置く。

「ちょっと、荒っぽく扱わないでよ」

雑に置いた二式の心配をするミュラ。その横には

「おぉすごい!全弾命中してるよ、アオイって射撃のセンスいいね!」

いつの間にかスコープを用意して的を見ていたアニラがいたが、アオイの耳には入ってこなかった。

そして横に置いてある九九式軽機関銃を構える。

この九九式には面白い機構がある。

ちょうど左側にある照準を覗いたときに、弾倉の部分に残弾数が書かれている。

これも結局実戦中に見れる余裕があったかどうか謎だ。

おまけに九九式軽機関銃と九九式小銃の使う弾は互換性があるが、火薬量がそれぞれ違う実包を使っていたため完全な互換性がある、とは言えなかった。

アオイはフルバーストで九九式機関銃を撃つ。

普通は数発撃った所で引き金を離し、そしてまた撃っては離し、を繰り返すバースト射撃が基本だが、そんなこと忘れちゃっていた。

撃ち切るとその隣にある百式機関銃に手を出した。

百式機関銃は日本で実用化された今のアサルトライフル的な機関銃だ。だが現代のライフルとの違いが、マガジンを横から刺す所だ。

一瞬変だと思うかもしれないが伏せ撃ちする時の考えた設計だ。

「頼むから壊さないでちょうだい」

ミュラの注意をよそにバカスカ撃ち始める。

撃ち切るとアオイは手のスナップをして空のマガジンを横に跳ばすと、慣れた手つきで新しいマガジンを刺し撃ち始める。

そこへもう一つ射撃音が混じる。

横でアニラが十四年式拳銃を撃っていただが、

「あっ?詰まっちゃった?」

ジャムっていた。

ミュラが見る限りアニラの撃ち方に問題があると感じた。

「普通自動拳銃は撃った際の衝撃を利用して次発装填をしてるの、アニラみたいに肘を曲げて衝撃を吸収する撃ち方には合わないわ。アオイみたいに手首だけ動かして撃つやり方は、自動拳銃に適しているわ。」

「そうなんだ」

そこへ

「ようやく直ったー!!」

「たー!!」

エリとリエが組み立て終わったモーゼルを持ってやって来た。

「って、何でアニラはここに来たの?」

ミュラはしれっといたアニラに疑問を感じた。

「そうだった、実は新しい依頼が入ったからそれをアオイ達に伝えようとしたんだった。」

「新しい依頼?」

「確かミュラさんも同行して欲しいってボスが」

「私も?」

「そうだよ、それでアオイ達にも...、'×'!!」

アオイ達はどっから引っ張り出してきたのか、九六式十五糎榴弾砲の発射準備をしていた。

「装薬!」

「装薬こめー」

「こめー」

リエとエリがえっちらほっちらと装填していく

「あれはまずいんじゃないかしら?」

「ちょっと撃ちかた止め!!」

「ぅてぇー!!」

ズドォオン!!

発射の衝撃で砲両脇にいたエリとリエは○貫光殺砲を食らったのごとく、後ろに綺麗にぶっ飛び。

的を見ると弾着時の砂ぼこりでみえない。砂煙が収まったが的の姿はない。消し飛んだのだ。

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スズネ運送協会

 

「今回は派遣の仕事よ」

「派遣ですか?」

キシネの言葉に首を傾げるアニラ。

『どこに?』

エリとリエもそれぞれのサイドテールをしている方に首を傾げる。

「私も気があまり乗らないけど...“コウケツ運輸”への派遣よ。」

その言葉にオルカとアニラは眉間にシワが寄る。

対して

「おぉーコウケツ運輸かぁー!」

『コウケツ!コウケツ!』

エリとリエ、ローズはなんだか嬉しそうだった。

「コウケツ?」

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