空駆けるミシラ飛行隊 荒野のコトブキ飛行隊 作:紅の1233
理由はアプリ版のキャラにガッツリ名前かぶったから
私の記憶では、零式艦上戦闘機は動態保存されていてその数は少なくないと聞いていた。それでも保存されている型や色はバラバラ、総数も片手で数えられる程度のはずだった。
だが、今空を通過していった零式艦上戦闘機は全て同じ型で六機編隊、おまけに全機砂色の塗装をして飛んでいった。
砂色に近い飴色をした零戦は実際に存在したが今見た機体は、砂漠上空での使用を考えたデザート迷彩を施していた。
あれは...いったい...
「気が付いた?」
声がする方へ向くと左手に杖を持った少女が病室入り口に立っていた。髪は鮮やかなスカーレットで顔は大人びた雰囲気を出していた。
右足を少し引きずりながら彼女は私が寝ているベット横に来た。
「気分はどう?」
彼女の問いに私は窓の外を眺めながら
「ここは天国?それとも」
壁にかかった自分のフライトスーツを見て、
「地獄かしら」
と呟く
その様子に彼女は少し笑って
「安心して貴女は生きてるの、それよりお腹すかない?」
彼女は肩から下げたポシェットからリンゴと十徳ツールを取り出した。
「うん、頂くわ」
ここは甘えることにした。
彼女は椅子に座りリンゴを手際よく皮剥きし始めた。
今なら聞けると思って、私は話始めた。
「今空を通過していった飛行機だけど」
「あれはシズマツの自警団の零戦二一型よ」
「二一型...」
「ユーハングがこの地に残した物よ」
ユーハング?
聞き慣れない言葉だった。
「ユーハングって?」
「昔この世界に穴が開いてここイジツにやって来た人達よ、穴の向こうでは“日本軍”とか言ってたわ」
「っ...!!?」
日本軍!もしかして旧日本軍の事かしら、だとしたらこの世界は私の知る世界ではない。
いやそんなおとぎ話みたいな事が
「はい出来たわ、どうぞ召し上がれ♪」
彼女が横のテーブルに置かれた皿の上に、綺麗に切り分けられたリンゴを並べた。
「ほらどうぞ食べて食べて♪」
私はリンゴを一つ取って恐る恐る口に入れた。
甘い
旨い
口一杯にシャリシャリした食感が拡がった。
やっぱりこれは現実ね
リンゴを食べながらこれは現実だということを実感した。
「そういえば貴方の名前を聞いてなかったわね、私は“アニラ”」
アニラと名乗った彼女もリンゴを食べながら、私に尋ねた。
「“アオイ”...」
「アオイって言うの、ねぇアオイは何処から来たの?」
「何処から...」
まずいことになった。ここでもし仮に本当の事を言っても信じてもらえる訳がない、それに今の私はここから帰れる方法もない。
やっぱりここは
「...わからない」
こう答えるしかなかった。
「わからないの?」
「...覚えてない」
「覚えてないの?」
アニラは興味深々で聞いてくる。
「なんで?」
「なんでってそれは...」
答えに行き詰まってきた。そこに
「姉貴、そいつは記憶喪失だ。」
入り口側から声がすると思って向くと身長180センチ位ありそうな長身の女性が立っていた。灰色の髪から覗く眼は勝ち誇ったように鋭く、男勝りな雰囲気を出してる。
「記憶喪失?」
「記憶喪失って」
『なに?』
彼女の横から服装も体格も全く一緒の少女が出て来た。唯一違うのはオレンジ色に輝くサイドテールの出る向きぐらいだ。
「記憶喪失ってのは一時的に過去の記憶をなくしている状態だ。強く頭を打つと稀になるらしいぜ」
「へーよく知ってるわね」
「ふふ」
アニラが褒めると彼女はどうだとばかりに胸を張った。
だが双子がニヤリと笑って
「さっきの医者とそっくりそのまま言ってる」
「ってか診察書を読んでたら誰でもわかるよね」
「お前ら知ってたなら聞くな!」
「それ!」
双子の片方が怒って油断していた長身の彼女から、隠し持っていた診察書を取った。
「あっお前」
双子の片方が診察書を私に手渡した。私は診察書を見た。
そこに並べられた文字は
「読めない...」
読めない字だった。日本語や英語、キルリ文字が入り交じった文章だった。
「やっぱり読めないんだね」
いやアニラ、これは記憶喪失以前に本気で読めない
「それでアオイは行くところある?」
診察書をにらんでたアオイの前にアニラが顔を覗き込んできた。
「行くところ?」
「行くところないならうちに来る?いや、来てよ」
そう言ってアオイの手を取って強く握った。
「姉貴、そんな強く押したら...」
「ねぇ来ない?ねぇいいでしょぉ?」
長身の言葉を無視してアニラがグイグイ来る。
でも実際に私は今この世界に行く場所がない、ここから元の世界に帰れる保証もない。これから生活するとなると暮らせる場所が必要だ。
私は考えて答えを出した。
「では行くわ」
「じゃあうちに来るってこと?」
「えぇ暫く御世話になろうかと...」
そう言うとアニラは満面の笑みでアオイを抱き締めた。
「ありがとう!これで飛行隊員が増えた!」
長身の女性は唖然として双子は
「これで負担が減るぞ♪」
「これで休暇が増える♪」
と手を取り合って喜んでいた。
アオイは苦笑いしていたが、少し引っ掛かった。
飛行隊員?
「ちょっと待って飛行隊員って?」
「あっそうそう私達、ミシラ飛行隊って言うのほら皆自己紹介して!」
『はーい!』
「わかったよ、うぉっほん。俺の名前は“オルカ”宜しくな」
長身の女性はオルカと名乗った。
「はいはーい私は“エリ”♪」
「で、私は“リエ”だよ宜しく♪」
双子はそれぞれエリ、リエと名乗った。
外観も性格も一緒、名前も殆ど一緒、これは覚えるのは大変だと思った。
これがアオイとミハラ飛行隊の出会いだった。
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数日後アオイは無事退院した。
そして、文字も読めるようにはなった。
文字はパッと見は難しそうに見えるが文字配列的にはローマ字読みによく似ている。まだ完璧とは言えないが殆ど問題ない程度には使えるようになった。
病院窓口で私は簡単な書類を書いて病院を出た。出た先にはアニラとオルカが待っていた。
「退院祝いの花はねぇが、退院おめでとう!」
オルカはそういって拍手して祝ってくれた。
「それじゃあ行きましょう!あれに乗って!」
アニラが歩いた先には路駐された車があった。
やはりその車にもアオイは見覚えがあった。
3.6メートルちょっとの車体と縦長な小判型のグリルとその両端に付いた二つのライト
九五式小型乗用車だ
この型はおそらくロードスター型と呼ばれる型で後ろに開閉式の、屋根になる幌が付いている。
博物館で展示してある九五式小型乗用車は見たことがあるが、動ける状態を実際に見る、しかも乗ることなんて始めてだった。
運転席にオルカ、助手席にアニラ、後部座席にアオイが座って九五式小型乗用車は発進した。
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シズマツ北飛行場
大きな飛行船を横目に見ながら九五式小型乗用車は三つのハンガーの前に到着した。
九五式小型乗用車の乗り心地は悪くなかった。いや、現代の車と比べたら酷い揺れだが不快に感じる揺れじゃなかった。ちょっと癖になりそうだった。
なんて思いながらアオイはアニラとオルカについていった。
開いている一つのハンガーの中を覗くと驚いた。
中には艦上戦闘機烈風と艦上攻撃機流星が羽を折った状態で格納されていた。
烈風は元の世界では現存している機はなく写真だけが残る。いわば幻の飛行機だ。流星も機体の一部が残っているだけで、完全な形になって保存されている機はない。だがその幻の飛行機が今、目の前にある。
私は感動を覚えた。
「おーいなにつっ立っんだ。こっちだぞー」
隣のハンガーでオルカが手を降っている。
走って隣のハンガーに向かうとこれまたアオイの心を震わせる機体が止めてあった。
みかんみたいな橙色で全体を塗装した複葉機が止まっていた。
機体を上下から挟むように付く翼、それを支える支柱とワイヤー、簡単な風防しか付いていない操縦席、気筒むき出しの空冷星型九気筒エンジン。
「九三式中間練習機、まぁうちらは赤トンボって呼んでるけどな」
オルカは得意気に言ってるがそんな事はアオイはもう知っていた。
実機は河口湖にある博物館で展示されているのを見たことある。
それとそっくりそのまま同じものが今、目の前にある。
「ローズ、いるー?」
アニラが呼ぶと、赤トンボの影からレンチを持った女性が出てきた。
モデル体型で全体的にスレンダーだ。髪は鮮やかな瑠璃色で後ろで三つ編みに束ねている。
「アニラ、遅かったねぇ。その子が例の新入りだっけ?私は“ローズ”、宜しく。」
ローズはアオイに手を差し出した。だがすぐ引っ込めた。
「ごめんねぇ、握手しようと思ったんだけど。さっきまで機体弄ってたから手が汚かったや。」
アオイがローズの手を見ると真っ黒になっていた。
「名前はアオイ、だったよねぇ?実は私もミシラ飛行隊のパイロットなんだぁ。」
「そうなんだよ!ローズは凄いんだよ!飛行機にも乗れて整備も出来ちゃんだからね!」
「いやぁ照れるなぁ」
アニラの褒めに照れるローズ、ローズはつい指で軽く頬をかいたため、ローズの頬に黒い筋が入った。
「それじゃあ入社試験をやるよ!さあ来てアオイ!」
アニラは赤トンボの方へ来るようにと手招きした。
アオイにとってはこの世界に来て始めて乗る飛行機だ。
しかも生きてる内に複葉機に乗るなんて思いもしなかった。
そのうち各キャラの設定資料なんかも公開しようかな、まぁそれはまだ先の話で